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『タイミング』『危機を回避するために』@栃木SC通信

2008年2月24日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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『始動の速さ』

淡々と。記者の質問に答える様子からは、左モモ裏の筋肉を痛めて出遅れたことによる焦りも、ポジションを確保しなければという気負いも感じられなかった。

「とりあえず試合が初めてだったので無理をせず、怪我なく試合を終われたら。自分のプレーを出せればいいかなと」

試運転となった初の実戦。FWである以上、松田正俊は「攻撃で起点になる。点を取ること」を念頭に臨んだものの、特段アピールするつもりはなかったようだ。順調に回復している患部と会話をしながら、現時点でのコンディションを確かめる。むしろ、比重はそこに置かれた。結果は二の次。しかし、対戦相手との実力差が、望外の好結果をもたらしてしまう。滑らかにボールを引き出し、上野優作のゴールに間接的に関与する。また、自らもチーム4点目となるゴールを、空中戦の強味を生かしたヘディングで決めた。ゴール前で相手に与える威圧感は強烈であり、存在感は際立っていた。

「(状況が)厳しくない中でやれたのは気持ちよかった」

汗を流した程度のプレーでも目に見えるカタチで結果を残してしまうのあたりは、さすがである。

柱谷幸一監督は言う。

「ボールを受ける動き出しのタイミングがいい。だから、いいボールが入ってくる」

パスをもらう前の下準備が滞りなく行えているから味方は松田を見つけ易い。ルックアップする。既に始動している。躊躇いなくパスを供給できる。気が付けば自然と互いの呼吸が合っている。自分の間合いに引き込める。ストライカーに必要不可欠な要素である。

30分限定の出場だったが、「患部に違和感はない。コンディションで遅れを取っているので取り戻したい」と話した松田の状態を把握できた柱谷監督は「明日、リバウンドが来ていなければ月曜日からトレーニングを入れる。岡田のように30分、45分と頭から使う。(佐藤)悠介、(小林)成光、向と合わせてやらせたい」と遅々として進んでいなかった攻撃のコンビネーションに着手する考えを示した。

松田もステップを踏む心積もりでいる。

「試合はやっていなくてもみんなのプレーを見ていたのでイメージは湧いていた」

周囲のプレーに対する具体的な映像が頭の中で出来上がっていることから、試合で使用可能なフィジカルを養いつつ、連携を深める作業も並行して行えればと思っている。

「あのへんからでもアピールできれば。期待してもらってもいい」

あのへん、とはゴール前のこと。そして、アピールするのはFKから、である。直接ゴールを狙ったFKは惜しくもポストに嫌われた。だが、感触は悪くなかった。松田は不敵に笑った。確かに、笑ったのだ。照れ笑いなどではない。十分すぎる手応えを感じ、こみ上げてくる感情を抑え切れなかったに違いない。佐藤という良質なプレイスキッカーがいるが、松田も虎視眈々と蹴る機会を狙っている。

 

『つまらない失点を回避するために』

JFLで指揮を執ったことで分かったことがある。対戦チームの狙い所が。

「しっかりと守って、中盤につけるボールをボランチから奪って前掛かりに攻撃してくる」

対横河武蔵野FC戦ではボランチにボールをつける機会が目立った。ボランチにボールを預けること自体は悪くない。ただ、柱谷監督は一辺倒になることを恐れている。状況によっては2トップの足元へもっとボールを入れてもいいのではないかと考えている。中盤で引っかかれば、それだけカウンターを食らう回数も増える。不要なリスクはなるべく減らしたい。

対福島ユナイテッドFC戦、こんなシーンがあった。CBの鷲田雅一が下りてきたボランチの落合正幸にパスを出した。自陣の深いところ。掻っ攫われれば失点を覚悟しなければならない場所である。敵は落合にプレッシャーをかけられる位置に3人もいた。にもかかわらず、鷲田はボールをつけた。果たして、ボールを喪失。事なきを得るも褒められたプレーではなかった。

柱谷監督は鷲田に問い掛けた。

「(斎藤)雅也や引いてきたボランチ、(右サイドバックの)岡田に出せるだろうと」

返って来た答えは、こうだ。

「見えているが怖かった」

前方からは猛烈な風が吹き付けた。パスの距離が長くなればなるほどスピードは殺されてしまう。コントロールも落ちる可能性が高い。そのことを鷲田は危惧したのだ。横パスを出してインターセプトされ、フィニッシュに結び付けられてしまうのではないか、と。互いの距離感が狭いことを承知で、落合のスキルを信じて出したパスは、しかし致命傷となりかねなかった。「(パスを、隣の味方を)飛ばすところは怖かったんじゃないでしょうかね」。柱谷監督は特異な状況下にあったことから、一定の理解を示した。だが、だからといって看過することはできない。

「CBと特に落合のところで2、3回からまれた。取られると真正面から攻撃を受ける。決定的なシーンを作られる可能性があるので、はっきりさせる」

具体的な修正ポイントとしては、鷲田に関してはボールをつける位置とタイミングが適切で、選択として間違っていないのか。落合に関しては、いい準備が、つまりボールを受けられる状態にいられるのかどうか。最終ラインからボランチに入るボールに噛み付かれたら、有能なアタッカーは高い確率でゴールを陥れる。それだけ、ミスが1度でもあってはならないポジションなのである。

「守備はできてきたが安心するとまたできなくなるので、もう一度確認したい」

キャンプを総括した柱谷監督のコメントである。攻撃陣の連携も深めなければならないが、キャンプで主眼を置いた守備も再度、詰めていかなければならない時期に差し掛かっているのかもしれない。つまらない失点を喫しないために。念には念を。

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