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『得がたい感覚』『慢心せず』@栃木SC通信

2008年3月 2日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

tochgiisc4.JPG  『フィーリング』

好感触に自然と顔がほころぶ。あんなに無防備に笑う上野優作を、栃木SCに加入してから見たためしがない。

「案外いいですよ、ねえ」

2トップを組んだ松田正俊との関係性に関して問われた上野の回答である。上背があり、前線でポイントを作れ、ボールを収められる。役割としては重複する部分が多々あるものの、誤解を恐れずに言えば上野は純粋なポストプレーヤーではない。それぞれの特長を上野が語る。

「僕の方が動く。マツ(松田)が真ん中にいる感じ」

昨季はクサビを受ける仕事を主に求められたが、本人も自覚しているように左右のスペースへと流れながらボールを後方から誘引するプレーをした方が、生きるし、味方を生かしきれる。所属がアルビレックス新潟だった時、前線の僅かなスペースを上野は見出し、我が物としていた。タイプが似ていることからフィットしないのでは、との見方が強かったが、どうして、意外と様になっている。対福島ユナイテッドFC、対大宮アルディージャ、対湘南ベルマーレ戦の3試合でコンビを組んだ。記録したゴール数は松田2、上野3である。共に故障明け。万全のコンディションではないことを考慮すれば、悪くない数字である。

負傷離脱から復帰して日が浅い。攻撃のトレーニングは満足に積めていない。それでも、「案外あっさり」と呼吸が合った。「攻撃のカタチがある程度できた」。その理由を上野は「感じられる選手がいる」と表現した。それは佐藤悠介であり、岡田佑樹であり、落合正幸であり、向慎一であり、そして言うまでもなくパートナーの松田である。また、こんなことも言っている。「今年は個のレベルが上がった」。個が上澄みされたことで、感じ合えるツボを互いに共有できる。だからこそ、受け手と出し手の関係が良好になり、心地よいタイミングでのプレーが可能となっている。

「代表ではよく言われますが、誰が入ってもいいチームは寄せ集めでもいい」(上野)

仕上がりは上々、纏まりが出てきているとはいえ、新加入選手が大半を占める、言わば新チームを立ち上げたに等しい状況下にある2008年度の栃木SC。コミュニケーションが不十分な点も、当然ながら散見される。しかし、個々の能力が高いからこそ得られる感覚は易々と手に入れることはできず、だからこそ貴重であり、個性の理解度が深まれば、その強味は更に増すに違いない。フィーリングが合っている。これは最大の武器になる。

 

『慢心せず』

サテライト中心ながら大宮アルディージャ、湘南ベルマーレを無失点に封じ、それぞれ1-0、2-0と勝利することができた。だが、この時期は結果よりも、内容にウェイトが置かれる。そのことを柱谷幸一監督は十二分に理解している。だからこそ、様々なテストを敢行し、確かな手応えを得ても満足することはなく、ブラッシュアップすることが本番に向けて必要不可欠であると感じている。

「0だったからいいのではなく、(相手のミスで)助かったシーンもある。そこは突き詰めたい。もう一度、洗い直して修正する」

湘南戦の前半。ゴールを決めたのは栃木SCであるが、好機の数では相手が勝った。ドリブルへの対応の拙さ、攻守の切り換え時のもたつきが窮地に結び付いていた。「川鍋とワシ(鷲田)は強く、コンビネーションもよくて守れている」(柱谷監督)。なるほど、ボランチラインを突破されてもCBの一枚が潰しに出ることで危機を未然に防いでいた。「中盤での取られ方が悪く、厳しい部分もあったが落ち着いて対応できた」とは川鍋。カバーリングできるポジションも取れていた。1対1での強さは頼もしい。しかし、攻め込まれ、決定機を作られてしまったのも事実である。バイタルエリア(決定的な仕事ができる地域)の閉めが甘く、後手を踏んでしまう。川鍋は言う。「ボランチとの連携(を図る)。後ろはラインを下げるとボランチとの間が空くので、ボランチが落ちてくるのか、ラインを上げてFWを潰しに行くのか。オチサン(落合)とシン(向)と話し合いたい」。ドリブルで向かってこられた時にどう対処するのか。ラインが整っていない時のポジショニングはどうするのか。堅牢な守備組織を構築するために、やるべきことはまだ、ある。

「松田と上野のところでボールが収まり、2列目がボールを受けて展開できている」(柱谷監督)。坂本勇一、稲葉久人の大卒新人には難儀な作業が2人にはできている。前線にボールが入れば攻撃の幅は広がりを見せる。相変わらず左サイド偏重ではあるものの、タッチ数の少ない連動したプレーから相手守備網を混乱させることも可能になってきた。先行していた守備にようやく遅れを取っていた攻撃が追い付いて来たように映るが、指揮官の見立ては少し異なる。「個の力でやれている部分が大きい」。物足りないようだ。要求は厳しい。「2トップと係わる動き、2トップの関係性を高めれば、いい攻撃ができる。そうすれば、自ずとサイド攻撃も生きてくる」。松田と上野、佐藤などの個のクオリティに依存するのではなく、周囲を巻き込んだ肉厚な攻撃がイメージとしてあるのだろう。後方から湧き出るように複数の選手が飛び出して絡んでくる。理想である。個で相手を凌駕し、連携が図れていれば、ゴールを奪える確率が低くなるはずはない。停滞気味の右サイドの攻撃も活性化される。傍目には熟成に時間を要するのではないかと思えるコンビネーションであるが、柱谷監督は平然と言ってのけた。「コンビネーションはそんなに深く(時間が)かからない。(開幕までの)2週間で入れられる」と。

悔いを残して開幕を迎えないように。綻んだ箇所を早急に修繕していく。慢心が入り込む余地など微塵もない。

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