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プレーバック2007:対FC琉球戦@栃木SC通信

2008年3月15日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

※メンバーが大幅に入れ替わったことにより参考にならない可能性大※

Jリーグより遅れること2週間、栃木にもサッカーの季節が到来した。

2月20日に全会一致で承認された「準加盟申請」。改善すべき点は残されているものの、先ずは「J2」へのハードルをひとつ越えた。これを受け高橋監督、37名の選手達のモチベーションは俄然、上がった。規約が「原則2位以内」から「4位以内」に緩和されても、頭にあるのは優勝のみ。そのために、昨季JFLを制したホンダFCが積み上げた勝ち点83を上回る86を獲得することを宣言した。勝ち点86を勝敗に換算すると27勝5分け2敗となる。落とせる勝ち点は僅かに16。過去最高順位が4位ということを考えれば大胆な数字である。また、他チームも栃木SC同様にオフに慌しい動きを見せ、戦力補強を図ったことから例年以上に厳しい戦いが予想される。それでも、掲げた目標にブレはない。あえて重圧と言う名の荒波に立ち向かう。

不退転の決意で挑む第9回JFL。開幕戦のカードは昨季と全く同じ、FC琉球とだった。

ボランティアスタッフの増加、臨時駐車場の手配、宇都宮駅からのシャトルバスの運行など、触れなければならない話題には事欠かない。でも、やはり焦点をあてなければならないのは、観客動員ということになるだろう。フロントの動きが全く見えなかったことから、6153人を集めた昨季の開幕戦を下回るのではないか、との見方が強かった。

ところが、である。出足から好調だった。2個所設けられた入場ゲートには長蛇の列。人で溢れかえった。キックオフ1時間前にメインスタンドは、ほぼ埋まった。日向のバックスタンド、ゴール裏へと移動する人の波は試合が始まっても、なかなか途切れることはなかった。「(今日の観衆は)7、8千人くらいかな。1万人が目標だけれど」。試合前にそう話した新井賢太郎社長の予想は良い意味で裏切られることに。公式発表によれば1万2539人がスタジアムに足を運んだ。蓋を開けてみれば昨季の2倍以上の数字を叩き出した。JFL新記録(過去最高は2004年。ザスパ草津対大塚製薬戦の1万3743人*参照:羽ヶ丘データスタジアム*)とはならなかったが、栃木SCのホーム試合としてはもちろん過去最高記録である。悲願であった“1万人超え”を果たした。「準加盟申請」を通過させたことといい、一気に記録を更新した観客動員といい、フロントの尽力には脱帽である。

探し回って、ようやく会えた。コールリーダーのシゲルさんとである。最早、儀式のひとつと化している握手をがっちりとかわした。「今年は勝負、と言われるが、こっちは毎年勝負のつもりで応援している。今日も熱くいくよ。よろしく」と意気込みを語り、人込みの中へと消えていった。いつも絶やすことのない笑みはより一層輝きを増し、目はまるで子供のようにキラキラしていて眩しいくらいだった。人を惹き付ける天賦の才を持っている。密かにそんなことを思っている。

そのシゲルさんが選手入場のタイミングを見計らい合図を送った。次の瞬間、スタジアムには恒例となった紙ふぶきが舞った。キイロ一色に染まる。ここ数年、目にしているが何度見ても、見飽きることはない。光りに映えるキイロは幻想的な雰囲気を醸し出し、我々を非日常へと誘ってくれた。サポーターの演出に負けまいと、フロントもバックスタンド裏から花火を打ち上げた。空に咲いたキイロの花も、それはそれで綺麗だった。互いの意地の張り合いが相乗効果を生み、多いに開幕戦を盛り上げた。もちろん、栃木SCと今やセットである「県民の歌」も猛々しく歌われた。

前置きが長くなってしまって申し訳ない。ここからが戦評である。

1週間前の中央大学戦とのトレーニングマッチのメンバーが、ほぼそっくりそのままスタメンに名を連ねた。GK原裕晃、4バックに左から高野修栄、谷池洋平、照井篤、北出勉、中盤はボランチに堀田利明と久保田勲、右に小林成光、シャドーに横山聡、ワントップには山下芳輝を起用した。唯一の変更点は左サイドだけ。吉見康之と入れ替わったのは石川裕之。「今年は良い調子で来ている。技術はJリーガーと遜色のないものを持っている」。高橋監督が石川を先発させた理由である。フォーメーションは4―5―1を採用した。

与那城ジョージ監督、藤吉信二、比嘉リカルドにブラジル人が抜けたFC琉球は、オーソドックスな4―4―2で臨んだ。

「うちはベテランが多いからさほど緊張しなかった」とキャプテンの北出が言うように、序盤からアグレッシブに前に出た。前線から山下と横山聡がプレスをかけ、「ボールを回してくるイメージがあったので高い位置で潰そう」と堀田は久保田と2人で果敢にボールに食いついた。

入り方に成功したことでイニシアチブを握り、ロングボールとクサビの使い分け、「サイドが第一。次に山下」(堀田)と優先順位をはっきりとつけて攻撃したことが奏効する。石川と小林の両サイドに起点を設け、そこにサイドバックの北出と高野が絡んでの効果的なアタックを繰り出せた。久保田の左クロスから小林がダイレクトボレー、小林の右クロスから横山聡がオーバーヘッドと好機を生み出す。優勢に試合を進め、前半の半ばを過ぎた頃だった。サイドチェンジのボールを受けた石川がドリブルで突っかける。FC琉球は堪らずPボックス内でファール。PKを得る。すかさず、子供達は反応した。甲高い声で「やーました」コールを送る。期待通りキッカ―は山下。GK野田恭平の逆を突いた。左側に力強く蹴り込む。が、無情にもポストに弾かれてしまう。絶好機を逸する。

「ポストに跳ね返り自分の元へ戻って来る時もあるが、今日は違ったので駄目なのかな」と気落ちした山下だが、挽回の機会が巡って来る。横山聡がドリブルで持ち上がり、右へ走り込んだ山下にはたいた。先ほどのように迷うことなく右足を振り抜いた。股間を通そうとしたシュートはGKに防がれる。運に見放されたかに思われたが、何時の間にか混戦になっていたゴール前。ひょっこりボールが目の前に現れた。これまで決まらなかったシュートが足を伸ばしただけでゴールラインを越えた。「入って良かった」(山下)と胸を撫で下ろし、「思わず出てしまいました」と歓喜のポーズを披露。駆け寄ってきたチームメイトと喜びを分かち合った。

ゴールこそ1点しかマークできなかった栃木SCだが、FC琉球を寄せつけずに前半を折り返す。

「2点目を狙ったが攻撃が単調になってしまった」(高橋監督)。久保田がゴールライン深いところまでえぐり、小林がフリーで放ったシュートくらいしか好機を作り出せなかった。攻め急ぎ、前半は起点になっていたサイドを活用できなかったことで、後半は拙攻を繰り返すことに。ジョーカーの吉見、新人の高安亮介とスピード系のアタッカー投入も実らなかった。追加点を奪えず。

前半、飛ばしたことで運動量が落ちた栃木SCは守勢に回る。FC琉球は右サイドを軸に攻め込んできた。枠をとらえたミドルシュート、一気のカウンター、ドライブの効いた直接FKとゴールを脅かす。しかし、GK原が好守を連発したことでゴールを割ることはできなかった。

3度、冷やりとしたシーンはあったが、不思議と失点するとは思わなかった。それは、ボランチラインで攻撃の芽を摘めたこと、攻守の切り替えが比較的スムーズに行えたこと、絶対に1点を死守するという守備意識が感じられたからだろう。

結局、山下の先制点がそのまま決勝ゴールになり、栃木SCが開幕戦を勝利で飾った。

「今までの選手と新加入選手の噛み合いができていない。試合を積みながら微調整をしたい。これから(チーム力を)上げていきたい」と語った高橋監督。攻守両面でまだまだ改善が必要な点はあるが、「白星スタートができた」のはなによりである。


第9回JFL開幕戦 栃木SC1―0FC琉球 @栃木県グリーンスタジアム 観衆1万2539人

〈FC琉球〉GK野田、MF濱田、仲里、石井、栗田、MF佐藤(→比嘉雄作)、渡邉(→古賀)、秦、三原、FW石井(→黒田)、関

 

『安定という褒め言葉』

FC琉球・吉澤監督の栃木SC評は興味深かった。
 
「恐さは半減したが、安定した戦い方をしていた」
 
さらに突っ込んで質問をしてみた。恐さが半減したとは。返って来た応えはこうだ。

「(昨年は)ボールを奪ってから速い攻撃を仕掛ける嫌な印象があったが、今年は(攻守が)安定していた」

続けて「栃木SCは安定していて良かったなあ」としみじみ。

自らが指揮するチームの収穫は「90分、足が止まらなかったこと」。一点だけだった。現段階での彼我の実力差を認め、真摯に受け止めていた。

昨季JFLを制したのはホンダFCであり、そのチームを率いていたのが吉澤監督だった。最優秀監督賞にも輝いた名将である。

優勝経験のある監督が短時間の会見で繰り返した「安定」という2文字。これは今季の栃木SCに対する最大級の褒め言葉であり、重要なキーワードになってくる。

3―6―1のフォーメーションでスタートした昨年は吉田賢太郎、西川吉英、佐野智洋(高秀賢史)のスピードを活かし、相手を捻じ伏せる“超攻撃的なサッカー”を志向した。一定の成果を挙げるも、手の内を読まれ始めると苦戦を強いられることに。

そこで、方向転換を図る。4バックをベースとした「いい守備からのスピード豊かなサッカー」へ。持ち味であるスピードを保持しつつも、守備に比重を置くようになった。先ずは守備ありき。この方針は奏効した。天皇杯ではJチームに勝利、善戦。リーグ戦の終盤6試合は4勝2分けと負け知らず。ある程度、計算が成り立つチームへと変貌を遂げた。

ツボにはまればゴールが量産可能な爆発力、一発殴られても二倍返しできる破壊力、観衆を魅了してやまない点を取り合う試合は減少した。

しかし、攻撃力と引き換えに得た守備力は、チームを一段上のステージへと押し上げた。僅差でも試合をものにできるようになった。「不安定さ」がなくなり、堅実になった。

迎えた2007年の開幕戦。スコアは1―0と最少だった。数々の好機を生み出し、放ったシュート数が20本であることから、ちょっぴり寂しい感じもする。決定力不足、得点力不足などの常套句が聞こえてきそうである。確かに肝心なところでゴールを決められなかったことは課題であるし、1万人を超える観衆にとっては些か物足りない印象を残したかもしれない。

だが、JFL初制覇、そして、J2昇格を狙うチームとしては、大事な初戦で「内容よりも、とにかく勝つ」(高橋監督)ことができたのは小さくない。しかも、無失点で。これは大差での勝利よりも価値がある。

昨季、構築された“強固な守備”が途切れることなく今季に引き継がれ、結果を出したからだ。前半の守備はパーフェクトだったが、後半スタミナが落ち始めると我慢の時間が続いた。それでも、集中力を切らすことなく踏ん張った。寸前のところで崩壊の危機を免れたのは、4バックならば守り切れる、といった自信と経験があったからこそ。

肝を冷されるシーンもあったが、90分全般の試合運び方は「安定」したものだった。欲を言えば2点目を奪い、リードを広げたかったが。

前半に先制し、失点することなくそのまま試合を閉められた。昨季までの栃木SCだったならば、FC琉球戦のような展開に持ち込むことは容易ではなかったはず。困難なミッションを実行に移せたのは蓄積された財産――4バックを主体とした高い守備意識――のおかげである。

失点せず、最少得点での勝利。派手さはない。でも、地味であることも優勝を狙うためには求められる要素のひとつである。

敵将が羨望の眼差しで見つめていた戦い方。それこそが、テッペンに立つために栃木SCが追求し続け、完成の域に達するようにしなければならない理想のカタチである。

開幕戦で確実に勝ち点3を手に入れただけでも合格点がつけられるが、格下の相手に対しても勝ちきれる“栃木SCのスタイル”がしっかりと出せたことは収穫だった。

「チーム力は6、7割」と語る高橋監督。目標としていた「8割」には届かなかった状態での滑り出しとしては悪くない。むしろ、上々である。

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