ホーム > 栃木SC通信 > プレーバック:対三菱水島FC戦@栃木SC通信
プレーバック:対三菱水島FC戦@栃木SC通信
2008年3月22日 大塚秀毅 | この記事のページ | コメント(0) | トラックバック(0)
※メンバーが大幅に変わっているために参考にならない可能性大
昨シーズンまで栃木SCに在籍。今シーズンから三菱水島FC(三菱水島)に籍を移した萩生田真也は言った。
「栃木を出て(サポーターの)ありがたみが改めて分かった。独特の応援は凄い」
秋田は仁賀保でのドローにより4位との勝ち点差はとうとう二桁の10となり、残り試合数を考えれば昇格は限りなく厳しいものになった。過酷な現実を突き付けられるも、サポーターは諦めていなかった。1時間前のスタンドは閑古鳥が鳴いていたが、試合開始時間が近付くに連れてメインスタンドは埋まり始める。秋の温かな陽射しに照らされたバックスタンド芝生席も家族連れや子供達の姿が目に付くようになる。公式記録によれば3734人が足を運んだ。平均観客動員数4506人には及ばなかったが、極端に落ちることもなかった。客足が遠のいてもおかしくはない状況に置かれても、これだけのサポーターがスタジアムに集結してくれたことに選手、スタッフ、クラブは感謝しなければならないだろう。
対TDK SC戦後、入れ替えを示唆した通り、栃木SCはスタメンをいじってきた。陣容はGK原裕晃、4バックには左から石川裕之、谷池洋平、山崎透、高野修栄、中盤はボランチに米田兼一郎と久保田勲、左ワイドに小林成光、右ワイドに高安亮介が入り、前線は横山聡が上野優作とパートナーを組んだ。 片野寛理、只木章広、小原昇に代わり、石川、高安、横山聡が起用された。
前節アローズ北陸に1―2で敗れるも、手応えを感じた三菱水島は、ここまで10ゴールの松岡大輔がサブに回った。元栃木SCの長身FW松永一慶がトップに入る4―5―1を敷いた。
電光石火の一撃が炸裂した。ショートCKから久保田のクロスをフリーの横山聡が叩きつけるヘディングシュート。開始1分の出来事だった。鮮やかな先制劇。
「プレッシャーを前線から中盤から掛ける。失った瞬間に速いプレスを掛け、相手が逃げてきたら後で跳ね返す。前半から飛ばし、ハイプレッシャーを掛けさせた」(柱谷幸一監督)
幸先のいい先制点がリズムを生み出す。「リラックスできた」(久保田)栃木SCは攻守に積極的だった。秋田では拾えなかったセカンドボールを米田と久保田が拾いまくる。上野と横山聡のフォアチェックに、ボールの誘引。小林と高安はサイドからゴリゴリ仕掛けた。そして、連動した守備からの素早い攻守の切り替えで圧倒。
「ボールに対して一歩、二歩と寄せる意識の差が大きかった。ファーストDFが狙い、周囲も狙う。後はやり易かった」(谷池)
15分には高安が山崎からのサイドチェンジのボールを受け、トラップと同時に松岡宏晃と入れ替わりPKを獲得。上野がこれを外すも大勢に影響はなく、依然としてイニシアチブを握ったまま試合を押し進める。
「当てるのが精一杯でした。自分じゃないみたいでしたね」と取材陣を笑わせながら、「後がないので結果が出てよかった」と一転して真剣な眼差しで語ったのは横山聡。ボールを掻っ攫った小林の左クロスはニアサイドの上野の頭上を越える。逸機したかに思われたがファーサイドへと走り込み、滑り込みながら懸命に伸ばした右足でゴール上段にダイレクトボレーを突き刺した。ハートの伝わるスーパーな一発。 2度目の”ゴリダンス”は控え目だった。
その後も圧を掛け、好機を作りだし続けた栃木SCは、終盤にCKから谷池が2戦連発弾。「嬉しいが、これから不吉なことが起こりそうで恐い」とおどけるほど喜んだ。窮地はロスタイムにGK原の頂けないプレゼントパスから中川心平にシュートを許したシーンだけだった。
「前期と運動量、攻撃の組み立てが違った。スペースの作り方が上手く、正直サッカーのレベルの差を感じた」
敵将・熊代正志監督も脱帽するほど、出来過ぎた前半だった。
些か集中力に欠けた後半の頭。高松健太郎にフリーでシュートを浴びる。が、GK原が好守で凌ぐ。先程のミスを帳消しにした。肝を冷やすも危機を脱すると緩みは消え、再び三菱水島ゴールへと襲い掛かる。スムーズに敵陣へと侵入するスピード感のある攻撃は迫力満点だった。横山聡、小林が立て続けに絶好機を迎える。だが、自ら潰してしまうと、僅かに天秤の針は相手に傾く。 ロングボールを多用し、高松が忙しなく動き回りながら起点となり攻勢に立つ。アドバンテージを有していたことからポゼッションを高め、いなせればよかったのだが、まともに攻撃を受けてしまった。課題が残った。
「夜勤明け」でガス欠を起こすも最後まで試合を捨てない、ファイトする三菱水島の反撃に手を焼いたが、途中投入のインパクトプレイヤー深澤幸次が留めを刺した。44分に左サイドを駆け上がり横山聡のハットトリックを完成させるお膳立てをし、終了間際には左足一閃。強シュートをぶち込んだ。
「何回もチャンスを与えられ、ゴールというカタチが欲しかった。ボールを受けたら打とう、と思いました。ライバルでスタメンの高安の存在がシュートを打たせた」
何時になく饒舌に深澤はゴールシーンを振り返った。高安の活躍が刺激となり待望のゴールに繋がった。生存競争が奏効したといえる。
今シーズン最多の5ゴールで圧勝。
「これまでは安定感があるもアグレッシブさに欠けた。決定力、スピード感が不足して点が取れなかった。トレーニングを積み自分達のスタイルがよくなっていることは感じていたが・・・攻撃のスピード、決定力がないところが今日は上手く出せた。今後も前半のテンポの試合をやりたい」
指揮官は表情こそ崩さなかったが、結果に内容が伴った試合に満足げだった。
マンネリ化した試合前の花火とは異なり、いつ見ても大量得点の“打ち上げ花火大会”は飽きがこない。遅きに失した感は否めないが、5発の花火はどれもが美しく、心に響いた。
JFL後期第11節 栃木SC5―0三菱水島FC 観衆3734人 @栃木県グリーンスタジアム
〈三菱水島FC〉GK永冨裕尚、松岡宏晃(→三宅一徳)、小原一展、萩生田真也、木村卓也、渡辺晋平(→岸田茂樹)、山下聡也、川口正人(→曽根祐一)、中川心平、高松健太郎、FW松永一慶
〈栃木SC〉交代:上野優作(→山下芳輝)、高安亮介(→永井健太)、小林成光(→深澤幸次)
『柱谷サッカーを完成させるのに不可欠なラストピース』
絶望の淵に追いやられた秋田遠征での収穫は、高安亮介と深澤幸次の果敢なドリブル突破だった。いや、正確をきすならば、“だけ”だった。全体的に低調だったチームにあり、フレッシュな両者の立ち向かって行く姿勢には、心を揺さぶれるものがあった。柱谷幸一監督も例外ではなかったのだろう。一定の評価を与え、こう述べた。
「(深澤)幸次と高安のサイドからチャンスを作れた。そこは多少、収穫だった。これからはガリガリやれる選手、ポジションを取るというひたむきな選手にチャンスを与える」
修学旅行の引率により只木章広のコンディションが万全な状態ではなかったにしろ、高安に出場機会は巡ってきた。しかも、待望のスタートから。
「初めてのスタメン。今まで出られない時間が長く、一生に一度のチャンスだと思ってやりました。精一杯DFしてゴールに絡む。とにかく走ろう、と」
早速、開始1分に生まれた横山聡の先制点に絡んだ。その後も「走る。前へ仕掛ける」アグレッシブさを前面に押し出す。CK、FKをもたらした。
PKをゲット(キッカー上野優作は失敗)したシーンは殊に秀逸だった。サイドチェンジのボールを絶妙のトラップで前方へと落とす。ワントラップでマーカーを抜き去った。間合いを計り損ねたDFは置き去りにされ、後追いになりたまらずファウルを犯す。裏を取られ、PKを与え、イエローカードをもらった三菱水島FC松岡宏晃。「DFがPボックス内で裏を取られてはいけない。イエローをもらい退場して10人になるのを恐れ」(熊代正志監督)引っ込められた。PKを獲得し、さらに対面の選手を“退場”させもした。「若いし、キレがある。DFにとっては勝負されるのは嫌ですね」と元栃木SCの萩生田真也が言う通り、厄介で脅威を抱かせるプレイで存在感を示した。敵将・熊代監督も絶賛した。「スピードがあり、自分の使いたいスペースを作り使えていた。うちとしては抑えきれなかった」。
「すいません。足、攣りました。でも、セーブしてプレイするよりも、仕掛けたかったので」
常に勝負を挑んだ。貪欲で、好戦的だ。3人に囲まれても、もろともしない。特長である切れ味鋭いドリブルで縦へ縦へと突っかけ続ける。右サイドを共に崩した横山聡には、決定的なラストパスを供給した。しかし、繰り返されたドリブルは体力を削った。疲労は極値に達していた。後半20分過ぎ、ピッチに倒れ込む。これまで臨時講師の職にあることからトレーニングは専ら夜が中心だった。今週は職場に都合をつけ、昼のトレーニングに参加できるよう取り計らってもらった。周囲とのコミュニケーションを深めるに至るも、スタミナは容易に付くはずがない。分かっていた。最後まで持たないことを。それでも、体力を温存しながら90分ピッチに立ち続けることよりも、行けるところまで行く、ことを選んだ。
フィジカルに課題を残すも、良くも悪くも安定感が売りだったチームに高安という異物が混じったことで、前への意識は格段に増し、推進力が生じたことは紛れもない事実である。「4―4―2のワイドは縦へ行ける、局面を打開できる、スピードがある、などの要素がないと攻撃力が出ない」。高安が披露したプレイは柱谷監督が求めていたものであり、柱谷サッカーを完成させる上では必要不可欠なピース。守備ブロックを機能させるためにワイドには只木と小林成光が起用され続けてきたが、リトリート(一旦、下がり守備陣形を整える)よりも前からハイプレッシャーを掛ける戦術が吉と出たことで、今後は高安が重宝される可能性も出てきた。
「学校の都合でトレーニングに参加できなかったが、只木が不在ということで是非使いたかった。元々ポテンシャルは高く、これくらいは出来ると思っていた。使っていくことで伸びていく。あと1ヶ月で今シーズンが終わるが、学校側と調整をして高安が出られるようにしたい」(柱谷監督)
起用すれば期待に応えてくれると想定はしていた。活力となり、チームに勢いを付けられると。だが、ライバル深澤の闘志にも火をつけ、望外の5ゴールを得る原動力になるとまでは、柱谷監督も予想がつかなかったに違いない。
「レギュラーが確定したわけではないので、改めて競争へ向けて頑張ります」
強気に攻め、化学反応を起こしたアタッカーは謙虚に語るも、定位置争いに堂々と名乗りを上げた。
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: プレーバック:対三菱水島FC戦@栃木SC通信
このブログ記事に対するトラックバックURL:
- 新着記事
- カテゴリー
- Pages
- Archives
- Comments
-
- TrackBacks
-
- Tags
- Feed
- Search
-
コメントする