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プレーバック:対TDK SC戦@栃木SC通信
2008年4月 4日 大塚秀毅 | この記事のページ | コメント(0) | トラックバック(0)
※メンバーが大幅に変わっているため参考にならない可能性大
5月に入り昨季の上位陣との5連戦で栃木SCが残した結果は1勝2敗2分けだった。リーグ戦序盤の勢いは殺がれた。見事なまでに失速した。足踏みしている間に佐川急便SC、FC岐阜、ロッソ熊本のトップ3に大きく差を広げられる。過ぎ去った5月は「悪夢」以外のなにものでもなかった。前節のホンダFC戦で上位陣との対戦を終えたことから、気持ちを切り替えて先ずは3連敗中のホームでの連敗を止めること。そして、前期の残された4試合で全勝を飾り、頭ひとつもふたつも抜けた3チームとの距離を縮めておきたいところ。
JFL新参者のTDK SC(以下TDK)戦のスタメンは先週から不動だった。GK原裕晃、4バックは左から高野修栄、山崎透、谷池洋平、北出勉、中盤はボランチに小林成光、堀田利明、左サイドに石川裕之、右サイドに久保田勲、センターFW山下芳輝の下に佐野智洋が配された。
開幕3連敗を喫するも、持ち直しホームでは無類の強さを発揮している「内弁慶」のTDK(つまり、アウェーは分が悪い)。初昇格チームとしては10位(前期13節終了時)と健闘し、FC岐阜を抑えて全国地域リーグ決勝大会をトップ通過したことが伊達ではないことを証明している。シーズン前に補強した元J戦士、松田正俊(元京都)はチームトップの6ゴールをマークし、2トップの一角を占めた。布陣は4―4―2だった。
スムーズな入りを見せたのはアウェー不敗と「外弁慶」栃木SCだった。右サイドの久保田が起点となる。石川、佐野に絶妙のクロスを供給した。石川は痛恨の空振り、佐野のダイビングヘッドは枠外も感触は悪くなかった。自身も果敢にミドルレンジからシュートを狙った。
がっちりとペースを握り、サイドとチームコンセプトのひとつである「山下を高い位置で使う」ことができた。21分にはボランチとして2試合目となる小林がボールを掻っ攫い、ドリブルしながらグングンと加速。Pボックス内での折り返しを佐野、山下が詰めた。惜しくもファールを取られるが、数人が絡んでフィニッシュに至った。
その後も、小林が山下とのワンツーから右サイドを崩してシュート、堀田が枠を捉えるロングシュートを放つなど好機を作り出した。圧倒的攻勢に立ったことから、ゴールを決めておきたかった。
山下は振り返る。「前半で決定的な場面が何本かあったが、決めきれなかったことが最後まで響いた」。結果的に連敗を止めるも、足を運んだ3775人がカタルシスを得られなかったのは、前半に決定機を逸し続けたことも一因として挙げられる。
加賀潤がGKとDFの中間に入れた右クロスを長身の松田がヘディングで競り勝ったシーン以外、4バックはシュートを許さなかった。もっとも、その1本が失点に繋がる窮地だったことはいただけなかったのだが。また、山崎の横パスミスに、カウンターから4対4の同数に持ち込まれるなど、何本か危ないシーンは散見された。
「相手の背後を突く、サイトにボールをあて、トップにクサビを入れ、ボールも人も動き、相手を追い越していく」(小松勉監督)サッカーを志向しているTDK。後半の頭から運動量を増やしたことで中盤のプレスが機能し始め、松田にボールを集めながら右サイドから組み立てを図った。思い描いているプレイが可能になる。勢いに乗ると距離のある位置から松田が直接FKを蹴り込んだ。ポストに嫌われるも、気をよくした松田はドリブル突破からゴールを脅かした。
相手と絡まりあいながら倒れた佐野が負傷し、そのままベンチに下がる。代わりに登場した永井健太が傾きかけた流れを断ち切るべく、スピーディなドリブル突進に、抑えの効いたミドルシュートを放つ。CKからは頭で山崎、谷池と繋ぎ最後は北出もヘディングシュートするが間一髪でクリアされてしまう。ボールは収まらず、チグハグな攻撃が繰り返されるも、流れは引き戻せた。
手綱を握ったところで石川アウト、茅島史彦イン。間もなくTDKは千野俊樹が2枚目のイエローで退場する。前々から火種はくすぶっていたが、退場劇を境にして両チームはエキサイトする。些細なボディコンタクトにもナイーブな笛を吹く主審に苛立つ。拍車をかけるようにGKが接触プレイで負傷しゲームが中断され、神経を逆撫でした。「とにかく冷静に戦うこと。集中力を切らさないこと」を高橋監督は指示するも、栃木SCの選手達は平常心を失っていく。高橋臣徳、富永英明と続けて退場者を出したのはTDKだったが、それを尻目に栃木SCが落ち着いて試合を運べたとは言い難い。これまでも審判団に試合を破壊され、ラフプレイを受けるなど荒れた試合は多々あったが、大人の対応を見せていた。ジャッジに不満を漏らさず、相手の挑発行為をいなすなどして。だが、思うに任せない試合展開により自己制御が効かなくなってしまった。酷い判定に憤る気持ちも理解できなくはないが、戦う相手を間違えてしまった。誘いに乗り、自滅してしまったと言っても過言ではない。
3人を欠いたTDKに対し、右サイドバックの北出を中盤に上げ、左サイドの茅島にボールを預けては、切れ味の鋭いドリブルから精度の高いクロスを上げてゴールネットを揺らそうと試みる。が、「後手に回ることが多く、6、7人で守れる練習をした。守り切れる自信があった。ここ最近、負けていない(5月は3勝2分けと無敗)こともプラスに作用した」(小松監督)TDKの壁を打破できない。ロスタイムに得た3度のCK、いずれもショートCKから小林がクロスバー直撃のシュート、茅島のクロスに山崎がボレーシュート、谷池がフリーでヘディングシュートを放つが、ゴールを割れなかった。
ホームでの連敗は3でストップしたが、負のスパイラルからの脱出を目論見た、連勝の足掛りとするための一戦は、スコアレスドローに終わった。順位は昇格圏内の4位から5位に落ちた。「優勝から離れてしまったと実感している。J昇格も危機感を持ってやらなければならない。反省している」と高橋監督の声には当然ながら力はなかった。22本ものシュートを打ちながら無得点、絶対的に有利な状況を活かしきれなかったチームに罵声が浴びせられたのは自然なことだった。サポーターからの熱いメッセージを真摯に受け止めなければならない。
「入り方は悪くないが決めきれずに雰囲気が悪くなり、焦ってしまった。先に点を決めていればイライラせずにプレイできた。(試合が途切れ途切れになったことで)集中力を保つのは難しい。それでも、自分達のプレイを最後までやり通し、点を決めなければならなかった。審判よりも自分達に問題があった」
押していた前半に先手を取れなかったことでリズムが乱れ、試合を荒れ模様にしてしまったと山下は総括し「FWが点を取れていれば・・・」と唇を噛んだ。
「試合の度にやりたいことは、はっきりしてきている。この状況を打開するには精神的な強さが必要。無我夢中で入ったゴールが切っ掛けになるかもしれない。自分自身、栃木の良さがゴールに結び付いた時に結果が付いてきて階段を登れる。練習の一本、一本、ワンプレイ、ワンプレイが積み重ねになる」
苦境を乗りきるにはどん底から這い上がる精神な逞しさ、栃木SCの特長である泥臭さ、試合を想定した強い気持ちで練習に取り組む姿勢を持つことが大切であると茅島は強調した。
最後に堀田の言葉で当コラムを締め括りたい。
「何をしなければならないのかを考え、優勝に向けて選手、スタッフ、フロントもそこを明確にする必要がある」
一枚岩になるためには、ベクトルがバラバラでは話にならない。
JFL前期第14節 栃木SC0―0TDK SC @栃木県グリーンスタジアム 観衆3775人
〈TDK SC〉GK小野聡人、DF小沢征敏、岩瀬浩介、富永英明、高橋臣徳、MF高林佑樹、千野俊樹、加賀潤(→阿部琢久哉)、池田昌広、FW三浦俊輔(→成田卓也)、松田正俊
『困惑』
後半26分に千野俊樹、36分に高橋臣徳、さらに富永英明が41分にピッチから追い出される。立て続けにTDK SC(以下TDK)は3人の選手を失った。11対8と栃木SCにとっては、0―0とスコアレスの状況を動かすには最高の環境が整えられた。しかし、数的優位の時間帯が相当つづいたにもかかわらず、ゴールをこじ開けることは終ぞ叶わなかった。前期第13節ホンダFC戦と同様、勝ち点2を取り逃した。
攻め崩せなかったドローという結果を「今の状態を物語っている」と堀田利明は表現した。
今の状態とは。
堀田の言葉を借りる。
「どういうサッカーをやっていくのか。選手交代でチームが変わってしまう。今までやってきたことが変わる。ひとつのことを徹底的にやらないと」
ひとつのことを徹底するとは。
「ポゼッションサッカーを継続するのか、茅島(史彦)と永井(健太)の“槍”を入れてサイドから攻めて立てるのか。はっきりとしない部分がある」
どうやら、後半に拙攻を重ねた原因は、個々のイメージがシンクロしていなかったことにあるようだ。
前半はボールが回った。サイドに起点を設けながら、センターFW山下芳輝を有効利用することで、相手陣内でゲームを押し進めることに成功する。イニシアチブを握り、シュート数は二桁の11本を数え、好機も数多く生み出せた。守備陣はTDKのシュートをたった1本に抑え込みもした。それぞれのやりたいこと、やるべきことが噛み合った申し分のない45分間だった。ゴールを得られなかったという一点を除いては。
自分達のリズムで試合を運べた。確かな手応えを感じて臨んだ後半。開始5分で2戦連続して先発の座を射止め、エネルギッシュに駆け回っていた佐野智洋が負傷退場する。急遽、永井がピッチに投入された。マーカーをものともしない重戦車ドリブルに強シュートとストロングポイントで存在感を際立たせる。2アシストを記録した前節から好調が維持され、新境地の1.5列目で自由自在に相手を撹乱した。
永井が攻撃をリードし、ゴールに近付いたかに思われたが、実際にはバランスが取れていたとは言い難かった。ゲームプランとして佐野の途中交代はあらかじめ決まっていたようだが、不測の事態に見舞われ、交代時期が早まったことで小さな亀裂が生じる。
「(永井投入で)やっているサッカーが変わった。佐野が居た時はバランスが取れていたが、永井が入り背後ばかりを狙うようになってしまった」。ボールが繋がり、複数の選手が絡むことでフィニッシュに持ち込めた前半。打って変わり後半は前線の2、3人での攻撃が目立ち、厚みが損なわれた。波状攻撃など行えるはずもない。
堀田は続ける。「入ってきた選手に合わせるのか、(前半から継続してきたサッカーを)突き詰めるのか。明確にしないと、やっている選手は不安になる。見ていて自信を持ってやっている選手が少なかった」。
前半からの流れを寸断させることなく、途中交代した選手をも巧く使いこなせればよかったのだろうが、局面、局面における個々の意識のズレが、それを阻んだ。ゆえに、困惑し、柔軟性に乏しい一本調子のサッカーに陥ってしまった。TDKがゴール前に人数を割いて守りを強固なものにし、試合をコントロールする能力に著しく欠けた主審のジャッジに神経をすり減らされたことも影響したが、残り時間での好機が全てCKからという事実が示すように、オープンプレイから有効打を繰り出せなかったことが分かる。
「スタイルが確立されていない」と谷池洋平が指摘したように、チーム戦術が絞り切れないようでは、臨機応変に刻々と変わる事態に対応することは困難である。ポゼッションか、サイドアタックか、カウンターか。先ずは、軸となるべき“栃木SCのサッカー”を打ち出さなければならない。選手補強など二の次だ。さもなければ、マッチデープログラムにも書いたのだが「同じことを繰り返すだけ」である。
出口が見えない迷路を抜け出すには、確たる指針が必要である。それなくして、勝利という名のゴールには辿り着けない。
※回顧録は2日に分けて掲載致します。仁賀保編は明日。
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