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プレーバック:対ソニー仙台FC戦@栃木SC通信
2008年4月18日 大塚秀毅 | この記事のページ | コメント(0) | トラックバック(0)
※メンバーが大幅に変わっているため参考にならない可能性大。
ジャケット一枚で十分だろう。見込み違いも良いところだった。侮った。東北の寒さを。曇天模様の仙台に降り立つ。身震いがした。とにかく、寒かった。北国特有の体の芯をえぐるような冷気は、冷え性にはこたえた。コートが必要だったことを後悔する。
今季初のアウェー取材となった仙台遠征。もちろん、栃木SCの勝敗、試合内容にプライオリティが置かれていたが、サッカー専用のユアテックスタジアムを生で拝むことも楽しみのひとつであった。最寄駅から5分とかからないアクセス環境は何物にも変え難く、スタンド全体を覆った屋根は反響効果が抜群であり、ピッチとスタンドの距離感も程よくて心地好かった。日本平スタジアムも惚れ惚れするような造りだったが、ユアスタのコンパクトゆえの圧迫感はまた違った趣があった。改修、新設が予定されている栃木SCのホームスタジアム。観戦に訪れていた新井賢太郎社長は、何を思ったのだろうか。
プレス席に座ると、雨がパラパラと落ち始め、体感温度はグッと下がった。吐く息が白い。にわかに信じ難い光景を目にする。関東の人間からすれば冬に逆戻りした天候の中、栃木SCはソニー仙台と対戦した。
アルテ高崎に4―0と圧勝した栃木SCのメンバーは、前節から不動だった。「勝っているチームはメンバーをいじらない」。サッカーの原則である。GK原裕晃、DFには左から高野修栄、谷池洋平、照井篤、北出勉、ダブルボランチに堀田利明と山田智也、左に石川裕之、右に小林成光、センターFW山下芳輝の下にシャドーとして吉田賢太郎が起用された。
既に3敗と出足で躓いたソニー仙台。平均身長179.5cmと高さに長けた選手を揃えた。フォーメーションは4―4―2を選択した。180cm以上が6人。自ずと戦術は予想され、警戒すべきことも分かっていたはずなのだが・・・。
「いつもよりパワーを使い、23番(金子央朋)と9番(村田純平)が前線で競ってから一気に攻撃を仕掛けてくる」ことは高橋監督も選手も読み通りだった。ところが、「浮き球で勝負してくるのは分かっていたが、跳ね返せなかった。相手の術中にはまってしまった」(小林)。
早めにトップにボールを当て、セカンドボールを拾い、両サイドバックを効果的に使ってきたソニー仙台に試合を支配される。劣勢に回り、西洋祐の低空ミドルがGK原を襲い、千葉慎也にはスペースに飛び出されループシュートを打たれ、不用意なパスミスから金子央朋にはミドルシュートを許した。前半のロスタイムには橋本尚樹の右クロスをフリーで村田純平に頭で合わされた。万事休す。失点覚悟の状況であったが、運良くシュートはGK原の正面に飛んだ。頭を抱える村田。安堵の溜息が漏れた栃木SCスタンド。
出足が遅れ、動きに乏しく、一発狙いの単調な攻撃、サイドで数的優位を作り出せないなど、栃木SCは全体的に精彩を欠いた。シュートは僅かに1本だけと、お粗末な内容だった。
それでも、序盤に好機はあった。小林が内側へとドリブルで切れ込み、山下のポストプレイを利し、シュートまで持ち込む。一旦は弾かれるもセットプレイの流れの中で、ゴール前に残っていた谷池がルーズボールをプッシュ。インゴールのように見えたが、ボールはコロコロと優雅に枠から反れていった。「あれが入っていれば、優勢に試合を進められた」と高橋監督は悔しがった。たった一度、逸機しただけで、流れは一方に傾く。サッカーの恐ろしさを改めて痛感させられた。
前半の勢いそのままにソニー仙台は、後半も立ち上がりからゴールに迫った。多彩な攻めから攻略を試みた。
押し込められていた栃木SCであるが、「(対面の)2番(橋本尚樹)がいいリズムを作っていたので自分が主導権を握ってやろう」と茅島史彦が「チャンスに絡むこと。運動量」を意識した動きでサイドを疾駆すれば、後半頭から同時投入の横山聡も前線からの惜しみないチェイシング、ポストプレイ、スペースへの飛び出しから活性化に貢献した。
やや、盛り返したところでゴールは生まれた。堀田のクサビを山下がダイレクトではたき、ゴール前で横山聡、山田が絡んで最後は小林が左足でコントロールシュートを隅に沈める。「相手がトラップしたら狙ってやろう」。マーカーがクリアしにくいボールと予測した小林は、トラップした直後を見逃さずに、体を寄せて窮屈な体勢ながら先制点を叩き出した。対アルテ高崎戦のループシュートに続き、難易度の高いシュートで2戦連発弾。吉田賢太郎、石川、小林と前半は消えていた3人のうち、誰が変えられてもよかった状況で、小林だけが後半もピッチに立った。「皆が守ってくれているから責任感がある。監督にも信頼されているから結果を出さないと」。見事に小林は期待に応えた。
山下のジャンピングボレー、横山聡の反転シュートとフィニッシュに至る回数が増えても、ソニー仙台は怯まなかった。ホームでの敗戦、4敗目を回避するために左サイドから圧を強める。後手に回った栃木SCは耐え凌ぐしか手はなく、再び防戦一方に。終盤にはパワープレイを仕掛けられもした。身をていしての懸命のブロックなどで乗り切ったが、猛攻は凄まじかった。「一番、苦しい試合だった」。疲労が滲んだ北出の言葉が、そのことを如実に物語った。
「首位に立つことを意識した」(高橋監督)試合は、困難なものとなったが「0で抑えればうちはまけない」と常々いわれている守備陣が踏ん張り、攻撃陣が決定機を確実にゴールに結び付け、「1―0で勝ちきる」ことができた。他チームが足踏みをしている間に勝ち点3を積み上げられたことは大きかった。6節を終えて得失点差でFC岐阜を上回り首位に立ったからだ。苦戦の先には、ちゃんとご褒美が用意されていた。
「苦しい中でも勝ちきれる力がある」
高橋監督が自信を持って語った通り、試合を重ねる毎に逞しさは養われ、安定感も増している。勢いだけで突っ走った一昨年とは異なる強さが、今の栃木SCにはある。
JFL前期第6節 ソニー仙台0―1栃木SC @ユアテックスタジアム 観衆854人
〈ソニー仙台〉GK内田謙一郎、DF橋本尚樹、山本僚、藤倉寛、飯川裕太、DF亀ヶ渕幹、西洋祐、桐田英樹(→平間智和)、千葉真也(→高野和隆)、FW金子央朋、村田純平
『懸念の右サイド』
後半13分、小林成光のコースを狙ったシュートが決まり、栃木SCが先手を取った。ソニー仙台に前半45分を支配されていただけに、値千金のゴールだった。
数少ない好機をゴールに繋げられたことで、形勢は逆転し、栃木SCの時間帯に突入するかに思われた。だが、思うに任せない。千葉真也に代わりピッチに送り込まれた高野和隆に振り回されることに。中盤の左サイドに配された高野和隆。挨拶代わりに村田純平へと良質なクロスを供給し、自らは思い切り良くミドルシュートを放った。更に左サイドバック飯川裕太のオーバーラップを助長と、栃木SCにとっては厄介極まりない存在となった。サイドの綱引きでは完全に屈した。
相手の起点を潰そうと高橋監督は手を打つ。イエローカードを一枚もらっていた小林を下げ、ジョーカー永井健太を投入した。ここ数試合キレのある動きを披露している西川吉英、ボランチとサイドができる久保田勲がベンチに控えていたが、あえて永井を入れた。
この交代には2つの意図があったのではないか。ひとつはスピードと馬力のあるドリブル突破から「追加点を取る」こと。もうひとつは“抑止力”を働かせようとしたこと。リードを広げることが最大の狙いであったことは確かであるが、それよりも制圧されていたサイドにおける攻防で優位に立とうとした。ゴールしたにもかかわらず悪い流れを、抜群の攻撃力を有する永井で断ち切る。守備力では永井に勝る西川と久保田で守りを安定させることよりも、攻撃的に力で押し切ることを選択した。
結果的に講じた策は奏効したとは言い難かった。「10番(高野和隆)がフリーで(スペースに)入るタイミングがある。しっかり対応しろ」と高橋監督は盛んに指示を飛ばしたが、「スペースに入られてしまい苦戦をした」と右サイドバックの北出勉。無失点に封じることはできたが、最後まで手綱を引き寄せられなかった。相手の軸を圧し折れなかった。
トレーニングマッチから右サイドの守備はチームの懸念材料だった。主力組とされていた選手が出場した試合。ジェフ千葉、横河武蔵野FC戦では、いずれも右サイド(相手にとっては左サイド)のクロスからゴールネットを揺らされた。リーグ戦で唯一、喫したジェフリザーブズ戦での失点も同様だった。
原因は、はっきりとしている。中盤とサイドバックの間のスペースが、ポッカリと空いてしまうのだ。「コバ(小林)も永井も攻撃的な選手だから、自分がケアーしてあげられれば・・・」と北出は責任を感じているようだが、個人が担当できるエリアには限界がある。「DFはラインを崩さない(ことが第一)。前に出るのではなく、中盤が戻って来るのを待つ」ことがチームの共通理解である以上、北出はアタックに行きたくても容易には行けない。躊躇っている間に相手はスペースに侵入。クロスを許す。悪循環にフラストレーションは溜まっていることだろう。
「自分が行くのか、ボランチが行くのか。バランスを考えながら詰めていきたい」(北出)
得点力と粘りのあるドリブルが持ち味である小林の特長を殺さないためには、守備の負担を軽減させるには、北出とダブルボランチで話し合う必要がある。状況によって生じてしまう広大なサイドのスペースを誰が埋めるのか、を。
幸いにしてソニー仙台戦ではゴールを割られることはなかったが、栃木SCの右サイドの守備が万全ではないことは顕在化してしまった。今後は強豪との対戦が続く。対戦相手はスカウティングをしているであろうことから、確実にウイークポイントを突いてくる。6戦して失点は1と、現時点では申し分のない数字を残しているが、課題を先送りにしてしまうことになれば、必ず痛い目にあう。早急な対処が求められる。
北出が前に出て最終ラインの残り3人がスライドするのか、それともダブルボランチの一枚がサイドに加勢するのか。やり方は色々あるだろう。栃木SCにとって最良の守り方を模索し、追及してもらいたい。
※後期の回顧録は明日、アップします。
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