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プレーバック:対ソニー仙台FC戦@栃木SC通信

2008年4月19日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

※メンバーが大幅に変わっているために参考にならない可能性大

選手自身による街頭PR活動が奏効したのか、七夕のこの日、後期ホームゲーム開幕戦には6252人もの観衆が県グリーンスタジアムに足を運んだ。京都サンガFCから移籍してきたばかりの米田兼一郎は「こんなに良い雰囲気で(サッカーが)できるとは思っていなかった。感謝したい」と述べた。

京都で佐川印刷SCに1―1のドロー、柱谷新監督が就任し気持ちを新たに乗り込んだ沖縄での後期開幕戦、FC琉球は0―1で前期(1―0で勝利)の借りを返された。アウェー2連戦では望むような結果が出せなかった。勝利からは9試合も見放され、中位に甘んじている。これが栃木SCに突き付けられている現実である。

勝利を願い駆け付けた6000を越える観衆に、久方ぶりの歓喜を味わってもらうために栃木SCはソニー仙台との一戦に挑んだ。陣容はGK原裕晃、4バックは左から片野寛理、山崎透、照井篤、横山寛真、中盤はボランチに堀田利明と米田、左に小林成光、右に永井健太が配され、上野優作と吉田賢太郎が2トップを組んだ。「サッカー選手は試合に出てなんぼ。自分自身のチャレンジ。京都でお世話になった柱谷監督のために」。移籍早々に初先発の機会を得た米田は栃木SCに籍を移した心境をそう語った。

前期の対戦では敗れはしたが180cm台の選手をズラリと並べ、高さを武器に圧倒したソニー仙台。佐藤英二監督曰く「サイドから崩すためにスピードがあり、クロスの精度が高い選手を揃えた」結果、「高さよりも裏のスペースへ抜け出す」ことを目的としたメンバー構成になった。一転して平均身長は下がった。フォーメーションは4―4―2を選択した。

「守備でのアプローチ。マイボールになったら2トップにクサビを入れて仕掛ける。激しく積極的にやれた」と柱谷監督。その言葉通り序盤から栃木SCがポゼッションで勝り、ペースを握る。上野の落としたボールを米田がはたき永井がフィニッシュ。幸先良くソニー仙台ゴールを脅かすと、直後には小林のスルーパスから吉田賢太郎がサイドネットを突く惜しいシュートを放つ。ボランチから本職のサイドに戻った小林が効いていた。水を得た魚のように溌剌とプレイし、左サイドで起点になった。そこへ上野、米田、片野が絡んで素早いサポートから巧みな連係を見せる。上野のスルーパスから小林が飛び出し、中央でフリーだった吉田賢太郎にパスを送ったシーンは決定的だったが、自殺点をも覚悟した思い切りの良いクリアに阻まれる。

逸機するも「バランスを重視した」(堀田)ボランチからの展開で攻勢であり続けた栃木SCだが、セットプレイ後に鋭利なカウンターを食らっては肝を冷し、照井の緩慢なミスから本多進司にシュートを打たれてしまう。単純なミスが目に付くも形勢は逆転されることなく、永井が小林と米田のシュートをお膳立てするなどしたが、時間が経過するに連れて勢いは失われていった。好機も自ずと減った。サイドに起点を設けられなくなってしまったことが原因だった。

スコアレスで折り返し、迎えた後半。ソニー仙台の活動量はアップした。「セカンドボールに対する修正。ボランチが上手いので潰す。スペースを埋める」(佐藤監督)など、守備のバランスを整えることに重点を置いたことが吉と出た。栃木SCは押し込められる。特に守備が不得手な永井のサイドから何度も攻められたことで守勢に回ることになる。と同時に攻撃力は殺がれた。体力面にも問題はあったが、水漏れ箇所を補修するために永井を引っ込め、深沢幸次を投入した。

しかし、セカンドボールが拾えなくなり、前線にボールが収まらず、出足でも劣った栃木SCの劣勢に変化はなかった。それでも、やや気負いが感じられた吉田賢太郎に代わり横山聡がピッチに立つと、次第に風向きが変わる。貪欲にゴールを狙ったことで強引に手綱を引き寄せる。一気に押しきろうと3枚目のカードを柱谷監督は切った。その時、歴史な瞬間が訪れた。交代のボードに8が灯る。後半26分、堀田アウト、茅島史彦イン。「全く記録のことは気にしていませんから」。さばさばとした表情で連続フル出場記録が途絶えた堀田は言った。91試合で大記録はストップした。ベンチ外だった山下芳輝、スタメンから外れた谷池。これでアンタッチャブルな存在はいなくなった(GK原を除く)。

疲労の色が濃かった堀田を下げ、中盤をより攻撃的なダイヤモンドに移行する。底に米田、左に茅島、右に深沢、頂点に小林を据えた。均衡を破る態勢を整える。積極性を前面に打ち出した深沢は存在感を際立たせ、横山聡は途中出場ながら6本ものシュートを記録し(正確には7本だと思うが)、その大半が絶好機だったが精度を欠き、GK金子進が好守を披露したこともありネットを揺らせなかった。「決定機を作れることは評価できる。しかし、それを決めなければならない。チャンスを生かさないと、勝負強くないとプロではない」と柱谷監督は自身がFW出身であることから辛口だった。また、チームとしてゴールを奪えないことに関しても触れ、「最後の精度、クロスの質や高さなどを前の選手が持っていないと勝てない。能力の部分に差がある」と分析した。詰めの部分の重要性は選手も痛感している。「ドリブルで抜けることはベースとして、その次。クロスやパスがずれている」(永井)
 
終盤の猛攻も結実することなく試合はスコアレスドローで終了した。勝ち点1を手にしたが、またしても勝利を掴めなかった。遠かった。つまり、勝ち点2を逃したと表現する方が適切。
 
「サポーター、ファンが多いのは財産。勝ちたかった。そうすればリピーターも増える。勝って面白いゲームを観た人が友人に話せば(単純計算で)1万2000人になる。こういう試合では勝たなければならない」
 
柱谷監督はサポートしてくれる人達のありがたみを強調し、語り口は淡々としたものではあったがドローという結果に悔しさを滲ませた。
 
一方で、可能性と自信も口にした。

「昼のトレーニングを開始して2週間が経ち、コンディションは上がっている。あと2、3割上がる。今日よりも激しく積極的なゲームができる」
 
JFL後期第2節 栃木SC0―0ソニー仙台 観衆6252人 @栃木県グリーンスタジアム

〈ソニー仙台〉GK金子進、DF橋本尚樹、木村孝次、亀ヶ渕幹、飯川裕太、MF大谷哲也、西洋祐(→高野和隆)、千葉真也、平間智和(→石原慎也)、FW本多進司(→金子央朋)、村田純平

 

『独自色が出始めている』

初陣となった後期第1節のFC琉球戦。合流して2日目のトレーニングで「頭の中に(思い描いている)メンバーはいる」と口にした柱谷新監督であるが、蓋を開けてみれば高橋前監督時代と先発、選手交代に大幅な変化はなかった。準備期間が4日、試合前日には解説の仕事をこなしての現地入りだったことを考えれば、大胆な手に打って出ることが容易でなかったことは想像に難くない。選手を見極めるという目算もあったのだろうが、あえて大きなリスクを冒すことはしなかった。
 
監督就任から慌しかった1週間が経ち、ようやく腰を据えてトレーニングに取り組むことができるようになった。Bチーム主体で臨んだ日立栃木ウーヴァスポーツクラブとのトレーニングマッチ、前節の対FC琉球戦(0―1の敗戦)の2試合で「選手の特徴を見られた」。「名前と特徴を憶えている」段階を終え、迎えた実質“初采配”となった対ソニー仙台戦では、柱谷監督の独自色を幾つか見ることができた。
 
先ず先発メンバー。6人も入れ替えた。京都サンガFCからレンタル移籍をしてきた米田兼一郎、エース吉田賢太郎の先発起用には驚きはなかったが、これまでスーパーサブだった永井健太をスタートから使い、コミュニケーションが最も要求されるDFラインをいじった。先発の座を不動のものとしていた高野修栄、谷池洋平、北出勉が外れた。代わりに片野寛理、山崎透、横山寛真が前の試合から唯一残った照井篤とラインを組んだ。今季初めて実戦で最終ラインを形成したわりには、相手を無失点に抑えたことが雄弁に物語っているように破綻することはなかった。窮地は前半5分に食らったカウンターくらいだった。「前線からプレスに行っているので、蹴り込んでくるボールを跳ね返せる力を信じて使った」照井と山崎のセンターバックは柱谷監督の期待に応え、「守備も強い。カタ(片野)は上がっていける。ヨコ(横山寛真)もカタもよくやってくれた」と両サイドバックに対する評価も高かった。

一方で注文もつけた。

「最後の10分、(ラインを)上げられない。蹴り込んだら相手をオフサイドポジションに置き去りにするくらいガッと上げる。何回も最後の10分、上げられるように言ったのだが・・・」

トレーニングで柱谷監督は執拗に時間を意識させているが、まだ選手達には浸透していないようだ。フィジカルコンディションも発展途上にある。苦しい時にどれだけ挫けそうな己と相手との勝負に勝つことができるのか。勝ち切るにはさらなる心身両面での精進が求められる。就任会見で指摘した栃木SCのウイークポイントである「フィジカルベースが相手よりも劣る」点は、解決手段のひとつとして時間も鍵となってくる。一朝一夕には向上しない。積み重ねが物を言う。しかし、時を待つのではなく、「年齢が若い方が伸びる」、回復力に差異があることから平均年齢を下げ(いままでよりも2歳近く下がった)、運動量を上げる策も講じている。ただ手をこまねいているだけではない。

意外と言っては失礼だが、先発に抜擢された永井。この起用にも明確な意図とメッセージが込められていた。「90分間プレーする体力はない。技術に不満もあるが、縦へ仕掛ける、前へ行ける強さがある」と永井を評した柱谷監督。足りない守備力と体力に目をつぶったのは、強引なまでのドリブルを生かしてチームを鼓舞し、攻撃的なサッカーを展開したかったからだ。永井は右サイドで1対1になれば果敢にドリブル突破を試み、加えてチャンスメイクにフィニッシュと持ち味を発揮した。「狙い通りアグレッシブにやれた」(柱谷監督)一因に挙げられる。

また、柱谷監督はこんなことも言っている。

「1対1で攻守に勝てないと、戦わないと使わない。そういう選手を使うことでチーム内に競争原理を働かせる」
 
運良く米田を獲得することができたが、シーズン途中での補強は厳しい。現有戦力で残りのリーグ戦を戦い抜き、J2昇格を果たすためには、永井や途中投入された深沢幸次のように前を向いたらとにかくゴールを目指す、闘争心を剥き出しにした姿勢を求め、そして固定観念にとらわれることなくフラットに選手を見ることで常に互いを競わせ切磋琢磨させる目論みでいる。短所を補って余りあるほどの長所を買って永井を最初から使ったことには、そんな指揮官の思いがあった。
 
攻勢だった前半。「ベースの部分を確認した」トレーニングの成果がはっきりと表れていた。ビルドアップには必ずダブルボランチのどちらか一枚が参加し(落ちるとも表現する)、ボールをサイドに散らしつつ、クサビも打ち込み、背後も狙った。ピッチの横幅を有効利用することでサイドハーフを起点に攻撃を繰り出しもした。その際サイドバックも自陣に引っ込んでいることなく適度な距離感を保つことを忘れない。背後に控えフォローに入れる態勢を徹底させたことでサイドハーフやボランチが孤立することを防いだ。ポゼッションも上がり、前線の連動性も高まったことで個に依存するのではなく、複数の選手が絡みながらゴールに迫ることができるようになった。良質なトレーニングを消化していることで、当たり前のことが当たり前にできるようになってきた。損なわれていた躍動感が散見されるようにもなった。

試合内容は格段に良くなってきている。だからこそ、勝ちたかった。連続フル出場記録が途切れた堀田利明はいった。「内容よりも結果にこだわりたい」。今は何よりも勝利、勝ち点3に重きが置かれ、喉から手が出るほど欲しい。だが、結果が思うようについてこないのが実状である。FC琉球戦でスタートを切った柱谷新体制。ソニー仙台戦は痛み分けのドローに終わるも、やりたいサッカーの方向性が感じ取れた。三段跳びに例えるならばホップに成功したといえる。あとは着実なステップを踏み、高々とジャンプするだけである。

ひとつのゴールが、1勝が悪しき流れを断ち切り、連勝という好循環に繋がる気配はこれまでよりも濃厚に漂っている。



※おまけ

栃木SCは千葉県市原市の市原スポレクパークで2月2日から8日間のキャンプを張った。最終日はキャンプ中に組まれたトレーニングマッチ(TM)3試合(ジェフリザーブズ、国際武道大学)の締めとなるソニー仙台と対戦した。試合形式は45分×2本だった。

1本目のスタメンはGK小針清允、DFは左から入江利和、鷲田雅一、山崎透、赤井秀行と並び、中盤はボランチに落合正幸と向慎一、左に深澤幸次、右に小林成光が配され、2トップは横山聡と稲葉久人が組んだ。交代はGKのみ。小針に代わり途中からGK柴崎邦博が入った。ちなみに、昨季まで栃木SCに所属していた谷池洋平はソニー仙台のCBの一角として出場していた。

電光石火の先制劇だった。右サイドからのスローインに好反応した向が倒されてPKを獲得。これを横山聡が豪快に突き刺す。落合がアンカーとして最終ラインの前にどっしりと構えていてくれるからこそ、向は大胆にゴール前に顔を出すことができた。ボランチのお手本のような米田兼一郎(徳島ヴォルティスへ移籍)が抜けた穴は大きいように思えたが、どうやら中心選手の1人として柱谷幸一監督が期待を寄せている落合が埋めてくれそうである。あっさりと先手を取った栃木SCだが、波に乗り切れない。攻撃陣に故障者が続出したことで攻撃のトレーニングに時間を割けたのが1、2日だったことから、コンビネーションを駆使してゴールに迫る回数は数えるほどだった。攻守が入れ替わっても動き方はぎこちなく、スペースメイキング、セカンドボールに対するサポートなど、改善する余地があるだろう。「前線のクサビの意識付けを、かなり意識的にやった。まだ、合っていない部分が結構ある。反省をして、まだ日が浅いので、これからよくなるし、よくなっていけば」とは横山聡。流れるような展開は1度だけ。入江のクサビを横山聡が落とし、ドリブルで持ち込んだ深澤がシュートを放ったシーン(GKに弾かれる)。それ以外はアタッキングサードにボールを運んでも詰まってしまう場面が散見された。

拙攻が目立ったのは事実。しかし、無理にパスを回して引っ掛かることを避けてミドル、ロングボールを多用したのは、意図的だったようだ。不出場だったものの佐藤悠介が明かしてくれた。単調に映った攻撃にも明確な意思が存在していた。仙台が4-4-2でラインを浅くしてきたこと、前線にボランチからクサビが思うように入らなかったことで、左サイドの入江のところに起点を設けた。攻略が困難なエリアを避け、サイドバックとワイドがポイントになり、一旦サイドに預けてからFWを背後へと走らせる。ポゼッションだけに固執することなく、相手のやり方に対して自分達がどうアクションを起こすのか。この日は敢えて裏を突き、DFラインを下げさせることで全体を間延びさせる戦術を採用。ある程度、サイドを利した狙い通りのカタチは作れていた。

守備陣をリードしたのは鷲田だった。仙台の執拗なロングボール攻撃にも臆することなく、強気なラインコントロールで何度もオフサイドトラップの網にかけた。常時、前線との距離感を確かめながら、コンパクトフィールドを壊さないように努めた。小刻みなライン設定、空中戦の強さ、足元の確かなスキル。頼もしいDFリーダーになってくれそうである。気掛かりは右サイドバック赤井のところ。2度も赤井のサイドから窮地を招いてしまった。一人だけの責任ではないが、ワイド、ボランチ、CBとの連携を深める必要があるだろう。試合は横山聡がプレスを掛けて奪ったボールを自らが蹴りこんで追加点を挙げ、2-0で45分は終了した。「練習試合で点を取りたい、アピールしたいと思っていたので2点取れてよかった」。横山聡は安堵の表情を浮かべていた。

2本目はGK柴崎、4バックを斎藤雅也、川鍋良祐、照井篤、赤井が形成し、ダブルボランチに久保田勲と鴨志田誉、左に深澤、右に高安亮介が入り、2トップに起用されたのは稲葉と坂本勇一。交代は柴崎→武田博行→飯田健巳、赤井→岡田佑樹、稲葉→石舘靖樹。岡田と石舘は交代した選手と同ポジションに就いた。

安易なパスミスが多発。波状攻撃を仕掛ける前に失ったボールをカウンターに繋げられる。落ち着かない試合運びも、右の久保田から稲葉→坂本→深澤とボールがピッチを横断し、最後はオーバーラップした斎藤が惜しいシュートを打ったあたりからリズムを掴み始める。この一連のプレーは綺麗だった。その後もサイドチェンジを織り交ぜながら、高安の突破力を生かした、アグレッシブな攻撃からゴールを伺う。が、シュートは枠を反れるばかり。高安が2本、坂本が1本、枠を捕らえなければならないシュートを外した。守っても全体的にプレスが緩く、仙台に攻め入られ、好機を演出されもしたが、無失点でクローズ。CKから坂本がニアサイドで競り、ルーズになったボールを再びプッシュし、1-0で2本目も栃木SCが勝利した。

トレーニングマッチ 栃木SC3(2-0、1-0)0ソニー仙台 @市原スポレクパーク

 

『ベクトルを合わせることの重要性』

キャンプを振り返り、佐藤悠介が言う。

「方向性は見えていると思うので、いいキャンプだったと思う」

収穫はフォーカスした守備面だろう。アタッカー陣が怪我を負ったことで必然的にキャンプは守備を中心としたトレーニングにならざるを得なかった。連日、ビデオを見ながらトレーニングで浮き彫りとなった課題を修正した。入念にチェックを繰り返したことで、柱谷幸一監督が守備のキーファクターとする「チャレンジ&カバー、ラインコントロール、スクリーン、ボールへのアプローチ、サンド」などの共通理解が図れた。例えばDFは鷲田雅一、ボランチは落合正幸が軸であるが、パートナーが変わろうともベースの部分がしっかりと構築されたことで守り方にブレが生じない。ジェフリザーブズ(1-0)、国際武道大学(2-0)、ソニー仙台(3-0)とのトレーニングマッチ3試合を完封できたのは、守備組織が段階を踏んで仕上がってきているなによりの証拠だろう。天候に恵まれなかったキャンプだったが、「予定通りやれた」と柱谷監督が口にしたのは、「守備はかなりやれている」との手応えを掴んだからに違いない。

「どうやって11人で守るのか。どこでプレッシャーを掛けるのか。ファーストDFのコースの限定の仕方など、当たり前のことだがチームが同じ方向を向く。ひとりが取りに行っているのに、周囲が動かないのでは意味がない。皆が同じ方向を向くことが今回のテーマだった」

佐藤は何度も「同じ方向を向く」ことの重要性を説いた。ベクトルが同じということは、つまりコミュニケーションが取れているということ。この時期、トレーニングマッチの勝敗よりも、攻守におけるイメージがどれだけシンクロできているか。その点に重きを置くべきだと強調する。それは柱谷監督の目指すサッカーにどれだけ近付けているのかを測るバロメーターを知っているからこその発言なのかもしれない。

佐藤は言う。

「ボクは昔、監督とやっているので(志向する)サッカーが理解できている。完成度とか。これをやれば、これくらいの状態になることが分かっている」

指揮官の理念を叩き込まれている選手が、佐藤以外にも在籍していることはチームの完成度を促進する。個が突出していてもユニットとして機能しなければ過酷なリーグを勝ち抜き、テッペンになど辿り着けない。新加入選手が大半を占めるチームが、一致団結して目標を達するには目線を合わせなければならないのは言わずもがなである。

他方で、先送りになってしまった攻撃に関しては個のレベルアップの必要性を感じてもいる。

「J1、2のチームもそうだが点を取るところですね。いいトレーニングを監督がしてくれてもPボックス内での個人のアイディアとかクオリティは選手が持っているもの(が関係してくる)。シュートが枠に飛ばない、シュートが入らないのは僕自身も含めて個人の練習になってくる。11人でボールを運んで攻めて守るが、最後の部分は個人的な問題になってくるので、そこの精度を上げていきたい」



『柔軟な発想力』

昨季と体質的に似通った部分があるのかもしれない。

「真面目で言われたことはしっかりやるが、そればっかりになるのは困る」

佐藤は現在のチーム状態をそう把握し分析した上で、「自分で考える必要がある。局面、局面で色々なことが起こるので個々で修正をする。グラウンドで起こっていることを自分達で考え、対応していく。その力を付けていかなければならない」。そのために、上野優作と共にこれまでの経験を若手に還元していきたいと考えている。

表現こそ違うが、柱谷監督も対応力について言及している。

「ゲームでの90分の使い方。相手のやり方に対してどう戦っていくのか。極端に固めた戦術で戦うのではなく、柔軟に考えてやっていく。それが90分のペースを作る。ひとつのカタチしかなく、相手が対応してきたら、相手のペースで終わってしまう。いろんなことを自分達が使えるようにならないと」

臨機応変に戦わなければならない。その一例としてショートパスを持ち味とするヴァンフォーレ甲府を引き合いに出した。細かいパスを繋いで引っかかって逆襲を食らうのでは意味がなく、大きなサイドチェンジや大胆に背後を突くパスを混ぜるなど、その場の状況を読みきる力を養うことを求める。ひとつのことを突き詰めて徹底的にやるのではなく、バランスよく試合を運び、相手が守り難いサッカーを展開する。ソニー仙台戦を見た限りでは、高いラインを押し下げるのに長いボールを、サイドから意識的に使った。浅いラインが深くなれば中盤が空き始め、バイタルエリアから崩せるし、トップがボールを受けられるようにもなる。ボールを付け難い中央から侵略するのではなく、サイドを有効活用する。分かり易いビビットな単色ではなく、色彩に富んだサッカーを理想系として掲げる。

言われたことをただ単に忠実に実行するのではなく、頭を柔らかくしておくことで刻々と変化する局面で思考を停止させることなく正しい判断ができるようにする。今年も攻守両面で「アラート(用心深い。敏感な)」な状態を持続させることがポイントになってくるだろう。

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