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プレーバック:対流通経済大学戦@栃木SC通信
2008年4月25日 大塚秀毅 | この記事のページ | コメント(0) | トラックバック(0)
※メンバーが大幅に変わっているため参考にならない可能性大
試合前日の金曜日、衝撃のニュースが流れた。突然の現役引退表明。吉見康之がスパイクを壁に掛ける決心をしたのは今週の初め、月曜日だった。爆発的なスピードと破壊力抜群のシュートを生み出した足が悲鳴を上げた。完治した右膝とは逆の左足前十字靱帯損傷がピッチを去る要因となった。
粛々と引退セレモニーが執り行われる。ユニホームを脱ぎ、ネクタイを締めた姿も様になっていた。端正な顔立ちが映える。高橋監督から花束を受け取った吉見。サポーターへ向けての挨拶では言葉を詰まらせた。「吉見、ありがとう」。スタンドからは温かい感謝の言葉が贈られた。「これからも戦う気持ち、ひとつになる意味で」と考えていたことを行動に移す。アップを終えてロッカールームに引き上げて来るチームメイト一人ひとりに吉見は声を掛けた。それは、現役生活との別れの儀式のようであり、新たな人生を歩むための決意を表しているようでもあった。
三菱水島FCに0―1と惜敗したことで、今季のアウェー無敗記録が途絶えた栃木SC。吉見の引退と上野優作のホームデビューを白星で飾りたい一戦の相手は流通経済大学(以下、流通経済)だった。陣容はGK原裕晃、4バックには左から高野修栄、遠藤雄二、谷池洋平、横山寛真、中盤はボランチに堀田利明と小林成光、左に茅島史彦、右に西川吉英、上野優作の相棒には横山聡が指名され2トップを組んだ。
関東大学リーグとの日程がバッティングすることでベストメンバーを組むことが困難だった流通経済だが、大学日本選抜に選出された5人を除き「現時点でのベストメンバーを組んだ」(中野雄二監督)。ゴールマウスを守るのは日本代表候補にも選ばれた林彰洋。フォーメーションはオーソドックスな4―4―2だった。
「前回(三菱水島戦)よりもよかった。ボクの高さを周囲が意識し、サポートが早かった」(上野優作)
GK原からのゴールキックを競り落とすと横山聡が鋭く反応し、ゴールを脅かした。小林とは敵陣で上手くパスコースを切り2人でフィニッシュまで持っていった。横山聡はGK林の飛び出しに屈し、小林は決定的なシュートを外すが、序盤からイニシアチブを握れたのは「うちになかった高さ。前線でターゲットになり、基点を作る」(高橋監督)仕事を上野優作がこなしたからに他ならない。
すんなりとリズムを掴んだ栃木SCだが、攻撃力を買われ左右に配された茅島と西川、ボランチというよりもトップ下に近い位置を取った小林が攻撃に比重を置き過ぎたことでバランスが崩れた。「堀田がバランスを取ることで小林を前に前に押し出す」試みは一定の成果を挙げはしたものの、「小林は中盤でボールを持ててもシンプルにさばいて、高い位置で個人技を生かす。ミドルゾーンでシンプルにプレイし、前線で上野(優作)、横山(聡)と絡んでゴールを取る」ことが高橋監督の狙いだったが、思うように事は運ばなかった。アンバランスになり、中盤は堀田ひとりの実質“ワンボランチ”となってしまう。前線は肉厚になったが、中盤は薄くなってしまった。供給源が限られたことでボールの循環は悪くなり、ロングボールに依存してしまう。相手のプレッシャーが甘かったにもかかわらず。
パスのタイミングがひとつズレ、攻め入ってもラストパスの精度に乏しく、互いの距離が開き始め、全体がぶつ切りになった。淡白な攻撃ばかりを繰り返す。単発だったがマイボールを背後へと蹴ってきた流通経済の方が、動きはダイナミックだった。
ゴールの匂いなど皆無に等しかったが、スルーパスに抜け出した横山聡がマイナスのクロスを入れ、走り込んだ茅島がダイレクトシュート。惜しくもGK林に弾き出されるが、続くCKからファーサイドで空中戦を制した上野優作のヘディングシュートのこぼれ球を小林がプッシュして先手を取る。先制してからも流れは栃木SCにあり、西川がPボックス内で強シュート、素早いリスタートから最後は横山聡が詰めるもゴールは割れなかった。「2点目が遠かった」。試合後に上野優作は振り返った。
流通経済は拙い立ち上がりの流れを引き摺ったまま試合を進めてしまう。宇佐美潤がゴールに迫ったシーンしか見せ場はなかった。
ハーフタイムに中野監督から「暑い中でも若いのだから運動量で負けるな。FWにクサビを丁寧に入れよう」と2点の指示を受けた流通経済。後半に入ると活動量が増し、目指しているパスサッカーが可能となり、右サイドの西弘則は切れ味の鋭いドリブルから存在感を際立たせた。
学生特有の豊富なスタミナに押し切られた栃木SCは、中盤をひとりで切り盛りしていた堀田がDFラインに吸収されると、バイタルエリアはスカスカになり、セカンドボールを取れなくなる。それでも、カウンターから小林がCKを獲得。中央で上野優作がドンピシャリのヘディングシュートを放つがGK正面を突いてしまう。逸機する。突き放せない。
辛くも難を逃れた流通経済はクイックリスタートから西がドリブルで突進。上野優作を振り切り、狭いニアサイドをぶち抜いた。一瞬の隙を突き、個人技から試合を振り出しに戻す。「高い選手に集中してしまい、8番(西)の個人技にやられた」と高橋監督は臍を噛んだ。「控え目だったがシュートにいくなど意図したプレイをしてくれた」と中野監督は称賛した。
30℃を超える猛暑。時間が経過するとともに体力が削り取られていく。目に見えて運動量は低下し、プレスが掛からないことから中盤のスペースは使い放題に。足が鈍ることのない流通経済の攻守の切り替えに手を焼く。幾度となくカウンターを浴びては冷や汗をかかされた。CKから好機を迎えるもGK林に大器の片鱗を見せつけられゴールネットは揺らせない。逆に対応に窮していた高野が西を捕まえきれずにクロスバーを直撃するあわやのシュートを放たれてしまう。
当初の予定通り茅島と西川アウト、石川裕之と高秀賢史が投入されるが流れは変わらない。3枚目の交代カード吉田賢太郎はドリブルから打開を図り、ラストパスを上野優作に届けるがシュートは打ち切れなかった。ロスタイムにはFKから遠藤がダイビングヘッドを繰り出すも、またしてもGK林の守備範囲に飛んでしまった。
運に見放された感もあったが「決定機をGKが2、3本防いでドローになった」と中野監督が褒め称えた通り、安定感のあるセービングに2点目を阻止された。一方でこんな見方もできる。GKの好守があったにしても、この試合は敢えてこれまで使うことを避けて来たが“決定力不足”に泣いたとも。数多くの絶好機を作り出したことが動かぬ証拠だ。
得点機をものにすることができずに1―1のドローに終わった。暗い、暗いトンネルの出口には辿り着けなかった。どん底から這い上がれない。勝ち切れない。窮状において大切なことは、と問われた上野優作は答えた。
「練習が必要。練習です。練習をもう少し大事にしたい」
特効薬などない。日々の積み重ねがものをいう。練習でできないことが試合で発揮されるはずがない。練習から自己を極限まで追い込む。自己研磨なしに喉から手が出るほど欲しいものを手に入れることはできない。もっともな意見である。
JFL前期第16節 栃木SC1―1流通経済大学 @栃木県グリーンスタジアム 観衆2528人
〈流通経済大学〉GK林彰洋、DF赤井秀行、染谷悠太、加藤広樹、宮崎智彦、MF西弘則、三門雄大、千明聖典(→金久保順)、宇佐美潤(→徐錫元)、FW田村洋平、沢口泉(→武藤雄樹)
『取捨選択』
流通経済大学(以下、流通経済)・中野雄二総監督は、はっきりと言いきった。
「栃木の調子がよければ、1―0で逃げ切ったと思います。栃木の煮え切らない部分、課題があるのだろうなと見えました」
端から見た第3者の目には、そう映った。そうであるならば、ピッチでプレイしている栃木SCの選手が同様の思いを抱くのは、不思議なことではない。
「裏へのボールが少ない、縦に遅い、昨年よりも勢いがない、などと言われている。縦に速いサッカーをするのか。上野(優作)さん、山下(芳輝)のポストプレイからサイドに展開するのか・・・」
あけすけに谷池洋平は戸惑いを口にした。ロスタイムに2―2とされた対ホンダFC戦でも「スタイルが確立されていない」と言い、チームの軸を定める作業を怠り続けることによる危険性を強調した。また、言い回しこそ違うが堀田利明も11対8と数的優位に立ちながら、スコアレスドローに終わった対TDK SC戦後に、“核”となるものがない、と嘆きに近い心情を吐露した。
苦境に立たされた時、思うように結果がついてこない時、すがれるものが悲しいかな今の栃木SCには存在しない。昨季は打ち合い上等のスピーディなサイドアタックに加えて、堅守といっても差し障りのない4バックという寄る辺が確かにあった。翻って前々回、前回のコラム、マッチデーでも触れたので、いい加減に書き飽きてしまったのだが、ゴールを奪い取るまでのルートが開拓されておらず、行き先の見えない道を漠然と歩いているのが今季である。
開幕前に高橋監督が掲げたのが「ポゼッションサッカー」。ボール保持率を高め、パスを回しながら機を覗い、ゴールにより近い位置で山下を効果的に使いながら得点力をアップさせることがそもそもの狙いだった。山下が絡んでのゴール、或いは山下自身がゴールを決めることはあったが、前期が終わろうとしているにもかかわらず志向しているサッカーの完成度は恐ろしく低い。個々人の能力で勝ち切れたのは序盤戦だけ。5月3日の対横河武蔵野戦で勝利して以来、実に7試合(ホーム3連敗も含まれる)も白星から見放されてしまっている。無理もない。
それでも、更迭されても文句の言えない戦績しか残せていないにもかかわらず、高橋監督は頑として自らの主張を曲げない。「戦術を大幅に変えることはない」と言うのである。つまり、今後も「ポゼッションサッカー」に固執し続けるようだ。
昼間の練習が取り入れられた。日を追う毎にコンディションは上がっていくだろう。チーム状態も良好になる。でも、果たしてそれで結果が、勝利が付いてくるのだろうか。容易ではない、といわざるを得ない。どんなサッカーがしたいのか。曖昧模糊としているからである。
「Jを目指すには色々なことがある。選手、スタッフが迷わないでJ2昇格という目標をしっかり持ち、自分のやるべきことをしっかりやる。チームがあっちを向いたり、こっちを向いたりしないことが大事」
最後まで目標(あくまでも優勝することだと個人的には考えている)を見失わないことは大切である。高橋監督の意見はもっともだ。一方で、違和感を禁じえない。試合毎にメンバーを入れ替える。本来はセンターバックの選手をサイドバックで起用する。突如として4バックから3バックへ移行。それを継続せずに一度きりで封印。悪しき流れを断ち切りたいとの思いは痛切に伝わるが、最も方向性が定まっていないのは監督ではないのだろうか。激しく揺らいでいる。
上野にロングボールを執拗に蹴り込んでもいい、サイドアタックを復活させてもいい、守りを固めてからカウンターを打ち込んでもいいだろう。徹底的にやるならば。チーム戦術として愚直なまでにひとつのことにこだわるならば。そして、リーグ戦の折り返し地点に差し掛かっても一向に機能する気配のない「ポゼッションサッカー」に見切りを付けるならば。
例えば闘争心、走り負けないこと。これは永遠に捨ててはいけない、保持しなくてはならないものである。しかし、戦術は変更可能だ。切り捨てて構わない。チームにフィットしないものを何時までも重宝していても無益なだけである。監督を交代できないのならば(する気がないのならば)、戦い方を変える以外に負の連鎖から抜け出す方法はないのではないか。
我々は見守ることしかできない。だが、それにも限界がある。幸いにして過去の財産は残されている。劣悪な練習環境は改善されつつある。これを機に些か安定性を欠いても、原点である「スピーディでアグレッシブなサッカー」を今一度、思い出すのも悪くはない。
谷池は訴えかけるように語った。
「失点をしても1、2点。勝つにはとにかく点を取ることを意識しないと。リスクを冒して点を取らなければならない。取らないと勝てない。リスクを背負って前に出る。もっと、前に出ないと・・・」
残り18試合。遅くはない。まだ間に合う、と信じたい。
※後期の回顧録は明日、アップします。
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