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プレーバック:対流通経済大学戦@栃木SC通信
2008年4月26日 大塚秀毅 | この記事のページ | コメント(0) | トラックバック(0)
※メンバーが大幅に変わっているために参考にならない可能性大
来季も栃木SCに残りプレイできるか、否か。既存のプロ選手の契約に関する最終結果は来週の金曜日、30日に文章で通達される。
「一人ひとりどうなるのか。みんな嫌な雰囲気を感じていると思う」
指揮官は敏感に現場の空気を感じ取っている。現役時代に選手として、引退後に監督として契約更新を体験しているだけに、気持ちの揺れが手に取るように分かるのだろう。それでも、決断は下さなければならない。監督業で最も酷な仕事のひとつかもしれない。
正式な契約を交わしていないにしても来季の続投が決まった柱谷幸一監督は、「12月と1月は大切。来年どういう成績になるのか。この時期に6、70%は決まる」と豪語する。来るべき勝負の年へ向けての下ごしらえ、編成が最優先事項であることを強調した。残す選手、切る選手、補強する選手と、頭の中に構想は既に出来上がっている。あとは細部を詰めるだけである。
晩秋の11月、取り分け契約問題でナイーブになる下旬を「ブルーになる(気分が滅入る)」と表現したのは横山聡。直近の試合ではゴールを荒稼ぎしている。FWとしての結果を残している、いま一番たよりになる選手でも不安は募る。「結果が出ているのでアピールになれば・・・」と話す声に力はない。
「栃木に来た時に、栃木で(選手生活が)終わってもいいと思った。1年、1年のつもりで後悔しないように。悔いは残したくはない」
決意を新たにJからJFLに舞台を移して挑んだシーズンは、スタートから思うようにゴールが生まれなかった。「前半戦、点を取れなかったことが心残り」と振り返るとおり、マークしたのは僅かに2点だけ。「2年連続の0円提示。この時期は嫌だ」という思いは、纏わり付いて離れない。
複雑な思いを抱えながらも、プロである以上は残されたリーグ戦を全力で戦い抜かなければならない。監督と選手にとっては、優勝や昇格が懸かった試合とは異なる、難しさと繊細さを伴うラスト2試合となることが予想される。
アウェイ、龍ヶ崎に乗り込んだ栃木SCの陣容はGK原裕晃、4バックは左から石川裕之、山崎透、谷池洋平、片野寛理が並び、久保田勲と米田兼一郎がダブルボランチ、左ワイドに深澤幸次、右ワイドに小林成光が配され、上野優作と横山聡が2トップを組んだ。
大学リーグ最終節を控えている流通経済大学(以下、流通経済)は、大きな背番号の選手が大半を占めた。当然ながら前期ファインセーブを連発した、北京五輪日本代表のGK林彰洋も控えにすら入っていなかった。
ライバルである高安亮介の負傷により先発のお鉢が回ってきた深澤の左サイドを軸に、トップの上野と横山聡にクサビを打ち込む。外と内から攻めようとするが、攻守の切り替えが遅く、好機が演出できない。次第に流通経済のプレスが厳しくなると、意図のないボールを蹴ってしまう。センターバックに高さに長ける選手を据えた流通経済の思惑に陥る。セカンドボールを拾えず、リズムを掌握できないまま時間だけが経過する。
Pボックス内への侵入を防ぎ、事なきを得たのも束の間だった。続くCKから走り込んできた長身DF飯田真輝に豪快なヘディングシュートを突き刺される。「警戒していたセットプレイ」(片野)から失点してしまう。
前半45分を米田は「失点以外は悪くなった」という一方で、拙攻を重ねていたように映った原因として「シュートまで行っていなかった」ことを挙げた。打つには打ったが脅威を与えるほどではなかった。
ハーフタイムの最初の5分、ロッカールームに入らず選手の様子を伺っていた柱谷監督。その後、かなりきつい言葉を選手に投げつけた。
「前半、悪いゲームをしていないのに、なんでCKからポコンと取られて(気持ちが)落ちるんだ。こんなことを何回もするな」
打てば響く。後半開始4分、久保田の左クロスから上野が競ったこぼれ球を山崎がダイレクトボレー。すぐさま試合を振り出しに戻した。
ゴールをこじ開けたことで、ようやく攻撃がカタチとなる。フィニッシュまで持ち込めるようになった。そして、立て続けにゴールに襲い掛かり、ミスに付け込み加点する。相手がクリアし損なったボールを米田が小林へと繋ぎ、最後は横山聡が反転シュートを叩き込んだ。「後ろを向いていたのでいけるかな」。GK清水慶記が打って来ないだろうとの読みを逆手に取った頭脳的なゴールだった。
逃げ切りを図りたかったが、すぐに武藤雄樹に2―2に戻される。シーソーゲームは、互いにサイドを利してゴールに迫る展開が増える。栃木SCは負傷退場の上野に代わった山下芳輝がサイドに流れては起点を構築、流通経済は旺盛な運動量と前半から厄介だった左ワイドの加来謙一が主体。
点の取り合いに終止符を打ったのは、「むこうの流れで点を取れたのは大きい」と語った山下だった。流通経済のカウンターを食らっては耐え凌ぐ時間帯が続くも、片野の右クロスが左へ抜け、横山聡が縦へ突っかけ入れたクロスはルーズになり中央の山下の足元へ。「こぼれくるとは思わなかったが、あのポジションにいたのはいいこと」。冷静に押し込んで雌雄を決した。
後半にめまぐるしい動きをみせた試合は、栃木SCの逆転勝利で幕を閉じた。
「技術、戦術が足りないというよりも、メンタル的な強さが、このチームには欠けているのを改めて感じた」(柱谷監督)
チームに巣食うメンタル面の脆弱さが、再び顔を出した。指示を仰がないと集中力が途切れ途切れになってしまう。叱咤されないと目が覚めない。カミナリを落とされてから吹っ切れたのか、格段に動きがよくなった後半の3ゴールが何よりの証拠である。
決定的に欠如していることを無理に求めることはしない。技量、戦術が未熟ならば基礎からやり直す必要があるが、問題が補えることが可能な“気持ちの部分”であることに柱谷監督は憤怒したのだ。
「(自分たちのプレイを)やりきって勝てなければ、力が足りないと認めればいい」
点差が開こうとも、怖がらずに自分たちのプレイを100%やり遂げる。要求はシンプルである。しかし、思うに任せない。この課題の克服は来季に持ち越されそうである。
JFL後期第16節 流通経済大学2―3栃木SC 観衆815人 @龍ヶ崎市立陸上競技場たつのこフィールド
〈流通経済大学〉GK清水慶記、DF沢口雅彦、飯田真輝、加藤広樹、石川大徳(→田村健之輔)、MF細貝竜太、佐藤高志(→藤田貴史)、保崎淳、加来謙一、FW沢口泉(→山下訓広)、武藤雄樹
〈栃木SC〉交代:上野(→山下)、深澤(只木章広)、横山聡(→小原昇)
『責任感と重圧で養うメンタル』
現有戦力を柱谷幸一監督は、こんな風に分析している。
「Jで駄目と言われて落ちてきた選手。元からの選手は最後のセレクションで引っかかった、大学時代はレギュラーではなかった。自分に自信がない状態でうちに入って来ている。自分のプレイが確立していないので、ちょっと駄目な時に弱い部分が出てしまう」
例えば0―1、1―1の状況から同点、あるいは逆転することは困難を極める。拮抗した試合を勝ちに結び付けられないのだ。苦境に立たされると個々人の中に潜む弱気の虫に抗うことができなくなってしまう。前節の対佐川印刷SC戦では1点のリードを守り切れずに、引っくり返されて敗北を喫した。脆さが露呈してしまう。
対流通経済大学戦も然り。「よくもないが、普通のレベル」で推移していた試合は、先手を取られてことにより、ゲーム内容が一変してしまった。急激に落ち込んでしまった気持ちの立て直しが容易に図れない。ハーフタイムを挟み、自分達で気持ちを入れ替えたというよりは、「プロなのだから、サッカーで飯を食っていくならば、1点を取られたくらいでゲーム内容を変えるようなプレイをしていては駄目だ」(柱谷監督)と、発破を掛けられたことで尻に火が付き、今季初となる逆転勝利を収めた。喝を入れられたことで撃ち合いを制することができた。リーグ戦33試合を消化して劣勢を跳ね返せたのは、たった1試合のみ。勝負弱さと、無失点に封じ込めなければ勝機を見出せないことが分かる。
ビハインドを背負うことで急降下してしまうメンタル。それを養うために責任を持たせ、敢えて重圧を掛けることで荒療治を行った。手荒い処置を施されたのは、右サイドバックを務めた片野寛理だった。
序盤からオーバーラップを仕掛けようとするも、ポゼッションが覚束ないことから無謀なトライとなってしまう。留守にしたスペースを逆に対面のドリブラー加来謙一に使われる。胸の透く攻撃参加と正確なキックが持ち味だが、依然として守備面での不安定さは拭えない。サイドの攻防で後手を踏むことに。CKからの失点にも絡んでしまう。秋田での対TDK SC戦では、ミスを連発するなど低調なパフォーマンスが目に付き、途中で引っ込められた。試合後、名指しで批判されもした。怪我の影響もあったが、その後の出場機会は激減する。「プロ意識が感じられない」選手の代表格として位置づけられてしまった。
柱谷監督は何回も突破を許したことで、左サイドバックの石川裕之を右に回すことも考えたという。だが、敢えてスイッチすることなく、交代もさせずに、今回は最後までプレイさせた。片野のために、そしてチームのために。目先の1勝を犠牲にするリスクを背負うことで、来季に向けてメンタルを鍛え上げるリターンを狙ったのだ。片野には「負けたらお前の責任だからな」と、他の選手には「片野のために点を取って来い」と負荷を掛けた。谷池洋平とダブルマークに行くも、あっさりとかわされ決定機を作られてしまうなど、片野の守備には危なっかしさが散見された。持ち場を相手優位に進められる展開が続く。失点に繋がらなかったことで「なんとか持ち堪えて良かった」(柱谷監督)というのが正当な評価だろう。詰めるべき余地は大いにある。
押し込められ、守備での鬱積したストレスをぶつけるように、片野は山下芳輝の決勝点の足掛かりとなるクロスを供給した。プラスマイナスゼロにはならないが、やられっ放しではなかった。「アマチュアは調子がいい、悪いでよかった部分があった」と話す片野。不得手な守備で苦しみ、指揮官から多大なる重圧を受け、それでも下を向くことなく戦い続けたことで、抜け切れなかったアマチュア体質が、甘えが幾分かは改善されたのではないだろうか。
「マンツーマンで負けたら、そいつの責任にしないと強くはならない」(柱谷監督)
窮地に追い込むことで、そこから這い上がる力を蓄え、自信を植え付けさせる。明確な意図の下に実行された実戦でのメンタルトレーニングは一定の成果を得た。
しかし、勝者のメンタリティを手にするまでには至っていない。これを如何に兼備させるのか。続投が決まった指揮官の手腕が問われる。
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