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プレーバック:対MIOびわこ草津戦@栃木SC通信

2008年5月 5日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

※メンバーが大幅に入れ替わっているために参考にならない可能性大

第87回天皇杯全日本サッカー選手権大会1回戦を免除された栃木SC(栃木県代表)。その1回戦でちょっとしたインパクトを残したのがツエ―ゲン金沢(石川県代表)である。ただいまJFL2位、J2昇格がいよいよ現実味を帯びてきたロッソ熊本(熊本県代表)を延長の末に破った。勢いは止まらず2回戦ではロッソ(現・ロアッソ熊本)と同じくJFL所属のFC刈谷(愛知県代表)をも食した。北信越リーグは海外リーグに照らし合わせれば4部相当。そのチームが3部に当たるJFL勢を立て続けに撃破した。スーパーバイザーを務める宮沢ミシェル氏の知名度が勝っていたツエーゲンだが、若干ながら見方が変わったのではないだろうか。

ジャイアントキリングなる言葉が天皇杯では見受けられるが、それはJチームを下した際に用いられることが多い。「打倒J」。J1、2計30チーム以外の合言葉は同じである。

だが、些か趣の異なるチームもある。今大会のパンフレットには「アマチュアから見た天皇杯」なる特集が設けられている。栃木SC、流通経済大学(大学枠)と共に紹介されているのがFCセントラル中国(島根県代表)。4年連続4回目の出場となるが、過去3回はいずれもJFL勢の前に涙を呑んだ。当面の目標である中国リーグからの脱却、JFL昇格を果たすために「打倒J」ではなく、「打倒JFL」を成し遂げることが悲願となっている。背伸びをすることなく、自分達の現在地を確かめ、JFL越えを達することで、地域リーグ決勝大会に弾みをつける。

チームの色が異なれば、掲げる目標もまた様々。天皇杯の醍醐味であり、特徴でもある。巨大な敵はJチームだけではないのだ。

ロッソが負けたニュースバリューは大きかったが、幾分かは劣るものの近大附属和歌山高校(和歌山県代表)勝利の報も驚きを伴い伝えられた。苦杯を舐めたのは、なんとFCセントラル。思惑通りに事は運ばなかったようだ。

「若いチーム。経験がない。一人ひとりのポテンシャルは高いものがある」

自らが率いるチームをそう分析したのは、三重県代表の四日市大学を退け勝ち上がったFC Mi‐OびわこKusatsu(滋賀県代表)(FC Mi‐O)監督に就任したばかりの戸塚哲也監督(前FC岐阜監督)。勝利を放棄したわけではないが、テーマは「カテゴリーが上の相手と、どのように戦っていくのか」にあった。先発の平均年齢が24歳と低く、右サイドバック浦島貴大は19歳。全員がアマチュアであり、仕事をしながら夜にトレーニングを行っている。昔日の栃木SCと瓜二つ。これからのチームであることが伺える。見据えるのは全社と略される全国社会人サッカー選手権での優勝、そして地域リーグ決勝大会での躍進。前身が廃部となった佐川急便京都のFC Mi‐O(現・MIOびわこ草津)もまた、着実なステップアップを視野に入れ、強化を押し進めている。

対戦相手が長期的なプランを思い描いているとはいえ、一発勝負のトーナメントでは何が起こるか予測不能。

「カテゴリーが下だから受けに回ろうとは思わなかった。自分達のゲームをやろう、と伝えました」

栃木SC柱谷幸一監督は緩みがちな手綱を引き締めた。陣容はGK原裕晃、DFには左から片野寛理、谷池洋平、照井篤、高野修栄、ボランチに堀田利明と米田兼一郎、左に小林成光、右に只木章広が中盤を構成、2トップは上野優作と横山聡が務めた。

「いつもチャンスをもらっているが結果を出せなかった。このチャンスを逃したら後がない」

悲壮な決意で試合に臨んだという胸の内を明かしたのは横山聡。水際に立たされた横山聡は、開始4分にFKからヘディングシュートを突き刺す。先手を取ったことで波に乗った栃木SCは「堅かった。雰囲気に呑まれた」(戸塚監督) FC Mi‐Oを押し込む。2トップが背後を突き、両サイドバックは旺盛な攻撃参加を披露。相手に攻める暇すら与えない。

ワンサイドゲームの様相が濃くなり始めた時だった。照井が最終ラインで信じ難いプレゼントパス。警戒していた冨田晋矢にドリブルからゴールネットを揺らされる。失点直後にも横パスを狙いすまされ、再び冨田にシュートを打たれる。が、GK原の好守とポストで命拾い。

「1―1で慌てる必要はなかったが気持ちの面で落ち込み、ネガティブになってしまった」(堀田)

前半の終盤に只木の惜しいシュートがあったものの、悪い流れは後半まで尾を引いた。ゴールで自信を掴み、緊張感から解放されたFC Mi‐Oがイニシアチブを握る。セカンドボールを拾えず劣勢の栃木SCだったが、深沢幸次の投入で形勢を変えた。上野が頭で落したフィフティ・フィフティのボールを深沢が競り合い、マイボールに。慎重に左から折り返したボールを横山聡が流し込んだ。

しかし、リードするが試合を殺せない。

「奪ったボールを速く攻撃に繋げる。カウンターの機会を逃さないようにしよう」

戸塚監督が志向するサッカーを体現したFC Mi‐Oに、何度も攻め入られゴールを脅かされる。オフサイドの判定に救われ、安部雄二郎のシュートはGKの正面に飛び、ロスタイムに壽健志がドリブルから放ったシュートは僅かに枠を反れていったが、柱谷監督曰く「スリリングな展開」を招いた。勝利を手にし、3回戦に駒を進めるも、心臓に悪い時間帯が続き過ぎた。

「内容は悪くなかった」と口々に監督、選手は語るが、失点を喫した後、追加点を挙げてからの試合運びは拙かった。改善の余地があるのは火を見るよりも明らかである。0―3と粉砕されたホンダFC戦と比すれば、内容は向上したのだろうが、それも限られた時間のみ。首位・佐川急便SCとの大一番を前に不安が募る。

勝ちゲームのコラムを悲観的に締めるのは好ましくないので、最後にアビスパ福岡戦へ向けての柱谷監督の抱負を。

「最初の20分の内容を継続させたい。守って勝つだけではなく、いいポゼッション、いい守備、いい攻撃、ボールが繋がるなど、内容もいいチームと言われるようにしたい。結果だけではなく内容も求めたい」

東京ヴェルディ1969を沈めた感動と興奮を凌駕するのは容易ではない。リアリズムに徹すれば勝率は上がるが、それでは昨年以上の感情の揺さ振りを提供できない。指揮官は分かっている。だからこそ、ある程度のリスクを背負うことを承知で戦う腹積もりでいる。

第87回天皇杯全日本サッカー選手権大会2回戦 栃木SC2―1FC Mi‐OびわこKusatsu @栃木県グリーンスタジアム 観衆1034人

〈FC Mi‐OびわこKusatsu〉GK田中剛、DF根岸誠貴、田尻知己(→波夛野寛)、石澤典明、浦島貴大(→桝田雄太郎)、MF金東秀、劉敏哲(→内林広高)、若林玲緒、壽健志、FW冨田晋矢、安部雄二郎

〈栃木SC〉交代:小林(→深沢)、上野(→山下芳輝)、米田(→久保田勲)

 

『恐れず、前へ』

木っ端微塵に打ち砕かれたホンダFC戦での記者会見。柱谷幸一監督は敗因を幾つか挙げた。いつもと違うスタジアム、食事の時間、集合場所、暑さなど。些細な事だが、選手が普段とは異なる条件、状況下にアジャストできなかった点を強調。そして、「どんな条件であろうともタフに戦えなければならない」と要求した。
 
屈辱的な敗戦から2週間が経った。精神的な部分での成長は少しでも見られたのか。否。残念ながらナイーブな一面を晒してしまった。

前半4分に先制するが、34分に凡ミスから失点を許す。幸先よくゴールを得るも、躓いた途端に浮き足立ってしまった。「1―1にされたが時間帯も早く、(押し込んでいた時間と)同じ内容で進められれば勝てると思っていた」柱谷監督の思惑とは逆に、選手は動揺の色を隠せなかった。押し込んでいた時間帯のパフォーマンスを取り戻せない。後手に回る。ハーフタイムに「もう一度、いいゲームをやろう。集中力を高めよう」と送り出したが、FC Mi‐OびわこKusatsu(FC Mi‐O)が積極的に前へ出て来たことで押し込められる。選手交代が奏効し、深沢幸次がゴールに絡む活躍をして勝利するも、「メンタル面を強くしなければ・・・」と指揮官は歯切れが悪かった。

「サッカーはミスが起きる。その後になにができるのか。(攻勢だった状況と)同じ内容でプレイできることが大事。ミスをしても死ぬわけじゃないんだから」
 
チームにリカバリー能力が欠如していることを指摘した。
 
さらに、失点の切っ掛けを作った照井篤を引き合いに出し、メンタル面に関して言及した。

「(失点で)テルは自信をなくした。それまでは、中盤に(ボールを)つけたり、いいパスもあり、『テルは上手くなったなぁ』と思っていたが、1本のミスでパスが出せなくなった。恐がってしまった」
 
責任感が強く、真面目である性格が災いしたようだ。「ボクのようにちゃらんぽらんで『勝てるだろう』と思えない。メンタルの部分で弱さがある」と付け加えた。

脆さはチーム全体に該当する。安定感が売りのスタイルは、大崩はしないが、一方で大爆発も期待できない。FC Mi‐O戸塚哲也監督の言葉を借りれば「やりたいサッカーが想像できる。恐くない。オーソドックス」ということになる。表現こそ違うがホンダFC石橋眞和監督も同様のコメントを残している。打たれたら打ち返す。対戦相手が嫌がる威圧感は損なわれ、逞しさも喪失した。バランス感覚にプライオリティを置いたことで。それが、良くも悪くも今年の栃木SCの特徴である。
 
3―6―1ではなく、4―4―2だから。一理ある。フォーメーションがメンタルに及ぼす影響は小さくない。4バックから3バックに変更することでスイッチが入った試合もあったのだから。
 
しかし、根本的な問題は別にあるように思える。控え目に、大人しくなってしまったのは、戦術に縛られてしまっているから、とも言える。
 
堀田利明は、こんなことを言っている。

「背後を狙えたのはよかったが、ポストプレイのサポートが薄かった。もう少し中の厚みを出し、クロスボールに合わなくてもセカンドボールを拾ったり、プレスをかけて相手に楽にボールを蹴らせないなどできたはず。恐がることなく前へ出てもいい」
 
バランスを重視するあまり、攻守交代で躊躇いが見受けられるケースがある。ワイドやサイドバックがいい状態でボールを持っても、待ち受けているのが2トップだけ、もしくは多くて3人と数的優位に持ち込めない。精度の高いボールが供給されるならば話は別だが、多くは望めない。となると、人数を割くしかない。リスクを覚悟してでも。
 
どうしても感じてしまうひ弱さ、メンタル面での脆弱さは、恐れずに前へ出ていくアグレッシブな姿勢が鳴りを潜めてしまっていることが一因なのではないだろうか。柱谷監督が及第点を付けた前半20分までは、グイグイ横山聡が攻撃を引っ張っていた。触発されるように全員が伸び伸びと大胆なサッカーを展開していた。
 
ミスをしても、必ず挽回してやる。それくらいの揺るぎ無い芯の強さが欲しい。積極的なミスはむしろ柱谷監督も大歓迎なのではないだろうか。腰が引けて逃げのプレイに終始するくらいならば。
 
攻撃は最大の防御。どんな相手でも向かってこられたら脅威を抱き、後退りをしてしまう。無闇矢鱈に前へ行け、とは言わないが、前方への意識を強めても大怪我はなしない。果敢な守備ができるのだから、攻撃も不可能ではない。

恐れず、前へ。

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