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プレーバック:対横河武蔵野FC戦@栃木SC通信
2008年5月 8日 大塚秀毅 | この記事のページ | コメント(0) | トラックバック(0)
※メンバーが大幅に入れ替わっているために参考にならない可能性大
前節、栃木SCはFC岐阜に、横河武蔵野FC(横河)はアローズ北陸に敗れたことで、ともに無敗記録はストップした。1敗同士、昨季前期9節で対戦した両者は、偶然なのか必然なのか、今季も前期9節で激突することになった。
これまでの対戦成績は8勝3敗2分けと栃木SCが圧倒している。
「連敗はできない。勝たないと上位に離される」(高橋監督)一戦。栃木SCは横山聡と吉田賢太郎を初めて組ませた。その他のメンバーはGK原裕晃、4バックは左から高野修栄、谷池洋平、山崎透、北出勉、中盤はダブルボランチに山田智也、堀田利明、左に石川裕之、右に高秀賢史を起用した。センターFWの位置を不動のもとしていた山下芳輝、右サイドの小林成光には休養が与えられた。北出、山田、石川が先発に戻り、山崎は今季初出場初先発となった。
エース小林陽介を筆頭に主力が抜けた横河武蔵野FCであるが、前期8節終了時点で栃木SCと勝ち点17で並びながらも、得失点で1上回り4位につけた。失点3という数字が戦力ダウンをしたと囁かれながらも、上位に顔を出している一因であることが伺える。先のトレーニングマッチでも守備の安定感は抜群であった。
序盤から積極的だったのは栃木SCだった。前から圧を掛ける。DFラインに、ボランチに。横河が得意とするロングボールの出所を潰し、封じ込めた。相手の長所を消し去る。この作戦は奏効した。
しつこいほどに追い立てられたことで横河はリズムを作り出せない。対照的に栃木SCはスピード勝負。「スピードの槍」横山聡、高秀が持ち味を発揮した。高秀が獲得したCKからはゴールを脅かしもした。チームの勢いが背中を後押ししたのか、キャプテン北出が堀田の横パスを受けると右足を一振り。ロングレンジから先制弾を突き刺した。一瞬の出来事に大挙して武蔵野市立武蔵野陸上競技場まで駆けつけた栃木SCサポーターも取材陣も、何が起こったのか把握するのに時間を要した。それだけ、意外性のあるゴールだった。「自分はゴールを決める選手ではない」と言いながら、「相手4バックが上がらないと聞いていた。立ち上がりからアグレッシブに打とう」とは心に決めていた。そんな北出の果敢な姿勢が実を結んだ。ちなみに北出は移籍後、嬉しい初ゴールとなった。
守備では2トップに連動するように周囲もプレスを掛け続け、攻撃では高秀を軸に裏を突く狙いが定まっていた。高野、山崎が危険なエリアでミスを犯した以外、前半はほぼパーフェクトな試合運びをした。惜しむらくはCKのリバウンドを高秀が左足で放った強シュート。ジャストミートしたが枠を外れた。本人も手応えがあったのだろう。悔しさを露にしていた。「あとは決めるだけです」。下を向いてポツリ。
ビハインドを背負っていた横河はスイッチを切り替えて後半に臨んできた。村山浩史が立て続けにゴールに迫った。流れを持って行かれそうになる可能性もあった時間帯、横山聡の追加点が生まれる。「DFは前に強いが裏にスペースが空くと分かっていた。狙い通り」。堀田のスルーパスに抜け出し、GKとの1対1では一旦はシュートを足に当ててしまうも、運良くルーズボールは横山聡の頭上に。ヘディングで難なく押し込んだ。 ゴール後に披露したパフォーマンスは自称“ゴリダンス(ゴリと呼ばれていることから)”。「これからゴールを重ねることで浸透させたい」と満面の笑みを浮かべながら冗談とも本気ともつかないコメントを残した。
リードを広げたことで、横河は意気消沈するかに思われたが、聖地・武蔵野陸上での今季初ゲーム(マッチデイより)は落とせないと、愚直なまでに自分達のスタイル――ロングボール主体の攻撃――を貫き通す。大多和卓がPボックス内でポスト直撃のシュートに反転シュート、瀬田達弘がCKからフリーでヘディングと、好機を作り出しゴールに襲いかかった。肝を冷された栃木SCは高秀が2本シュートを放つが決定力を欠く。
小刻みなステップからのドリブルで存在感を示し、栃木SCにとって最大の脅威であった大多和。後半17分に2枚目のカードをもらいピッチを去る。煩わしかった選手が抜け、数的優位になり、留めを刺したかったところだが、「退場者を出してもモビリティ(機動力)が上がりマークが掴まえ難くなることもある」(吉田賢太郎)と言う通り、一歩も引く気配のない横河に押し込められる。11対10になってから劣勢に回った原因を「やりたいことがちぐはぐだった。蹴ってきたからセカンドボールを拾うのに全体が下がった」と北出は分析した。ゴール前での対応が多くなる。
2点差をつけられても、数的不利になっても、自分達が築き上げてきたサッカーを継続させる。その気迫と執念に気圧された部分があったことは否めない。凄味さえ感じさせた横河。やりきる姿勢には脱帽である。
茅島史彦、西川吉英と交代カードを切り、悪しき流れを好転させ3点目を狙ったが、結局ゴールを割ることは叶わなかった。カウンターの機会が巡ってきてもスピードに乗りきれなかった感のあった吉田賢太郎。スタンドから何度もコールを投げかけられたが「残り20分あたりから両足がつっていた」ことで「サポーターの声援にも苦笑い」でこたえるしかなかったそうだ。期待されたゴールを決められなかったことで「自分でも残念だった」と唇を噛んだ。
「欲を言えば3、4点取れた。つめの甘さが課題」(高橋監督)。それでも、2―0と0に抑え、勝ち点3を確実に手にした。「ひとり一人がもう一回、優勝するには何をしたらいいのか考えた。敗戦から学ばないと。あれ(FC岐阜戦の負け)が『絶対に勝つ』という気持ちに繋がった」と北出。昇格するためには許されない連敗を、勝利への意欲、ひたむきに走り回るという原点に立ち返ることで食い止めた。
JFL前期第9節 横河武蔵野FC0―2栃木SC @武蔵野市立武蔵野陸上競技場 観衆1405人
〈横河武蔵野FC〉GK大石和夫、DF石川清司、瀬田達弘、太田康介、小山大樹(→片山育男)、MF本多剛(→中島健太)、池上寿之、原島喬、野木健司(→長沼圭一)、FW大多和卓、村山浩史
『徹底的に』
意思統一は図られていた。
出場停止明けの横山聡が、先発復帰した吉田賢太郎が、前線から激しくボールを追い回す。執拗にチェックされたことで横河武蔵野FC(横河)は、DFラインからロングボールを供給することが難しくなった。横山聡と吉田賢太郎の2トップは止まらない。苦し紛れにDFがボランチへと繋いだボールへも鋭く反応した。前にボールを運べない横河は、バックパスに横パスと、逃げるシーンが目立った。
「守備は下手ですけど、一生懸命に走ろう。DFラインとFWのラインが間延びしないように、2人で前線から追ってやろう」と吉田賢太郎が話せば、相棒の横山聡も「ロングボールを蹴らせないように、(吉田)賢太郎と自分でプレスをかけられた。コースを限定できた」と、してやったりだった。
相手の配球元を無力にする。その意味は事の外、大きかった。
遡ること約2ヶ月前。栃木SCは千葉合宿の総仕上げとして横河とトレーニングマッチを行った。日立栃木(関東1部リーグ所属)を皮切りに、ジェフ千葉、鹿島のJ1勢との対戦で勝利し、これまでの成果を確認するために同一リーグのチームと一戦交えた。結果(主力組主体)は1―1のドローだったが、内容は目も当てられない、惨憺たるものだった。終始、押し込まれた要因は明らかだった。ロングボール戦術にはまってしまったのだ。背後から次々とロングボールを蹴り込まれ、DFラインは辛うじて跳ね返すもセカンドボールを拾えずに、ズルズルとラインは後退し、面白いように両サイドから崩された。「サッカーになっていないよ」。高橋監督は顔を赤らめて憤慨した。「横河は例年、仕上がりが早い」(高橋監督)とはいえ、シーズン前に苦い経験をした。
全く自分達のサッカーができていない様子を、惨状をベンチから眺めていたのが横山聡だった。ラスト15分の出場に留まった横山聡は、「トレーニングマッチで後ろからロングボールを蹴られて、セカンドを拾われ、イニシアチブを握られたので、キッカーへのプレッシャー」を意識した。その成果は如実に現れた。横河の出鼻を挫き、前半思うようなサッカーをさせなかった。過去の蹉跌を繰り返すことなく、学習能力の高さを証明した。
それは、DF陣とボランチにも当てはまった。
両手を叩き叫ぶ。「セカンド」。ボランチの山田智也は何度も何度も耳にタコができるくらい言って聞かせた。味方にセカンドボールの重要性をすり込んだ。洗脳したと置き換えてもいいほどだ。“あの日”のピッチに山田も立っていた。痛い目にあっていたひとりだった。同じ轍は踏まない。気迫がみなぎっていた。
眼前でクロスから同点となるヘディングシュートを叩き込まれた山崎透は言う。
「ロングボールしかないと言われていたので対応できた。走ってギリギリで跳ね返せた。持ち味である高さを出せた」
右サイドバックとして、対面の選手に四苦八苦した北出勉は語った。
「監督を抜きにして選手達でミーティングを行い、DFラインとボランチでセカンドをいかに拾えるかを話し合った。堀田(利明)さんと山田が(セカンドボールを)拾い、うまく散らしてくれた」
煮え湯を飲まされた選手達は監督から指示されただけではなく、自主的に考え、相手の戦略を予想した上で、見事なまでに対応策を練り上げ、実行に移した。90分を通して無失点という結果を残し、前回は勢いに屈した前半をシュート2本に抑え込みもした。
横山聡と吉田賢太郎の2トップ、北出が入った4バック、山田と堀田のダブルボランチ。いずれも、頭にあったキーワードは「徹底的に」だった。前線は骨惜しみないボールへの寄せ、ボランチはセカンドボールを拾う、守備陣はロングボールを弾き返す。初黒星後の大事な一戦。連敗が許されない状況に追い込まれたことで結束力が生まれ、頑固なまでに自らのゲームプランを最後まで押し通せた。この1勝は単なる1勝では収まらない価値あるものとなった。
※後期の回顧録は明日、アップします。
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