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プレーバック:対横河武蔵野FC戦@栃木SC通信

2008年5月 9日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

※メンバーが大幅に入れ替わっているために参考にならない可能性大

岐阜は長良川競技場。米田兼一郎、片野寛理の2ゴールを守り切った栃木SCは、12試合ぶりの勝利を挙げた。と同時にそれは、柱谷新体制となってからの初勝利でもあった。5月3日の対横河武蔵野FC(以下、横河)戦以降、見放されていた勝ち星を手に入れた。

ひとつの勝利が悪しき流れを断ち切った。肩の荷が下りたことで安心感が芽生え、気が緩むのも致し方がないこと。久方ぶりの勝利をじっくりと味わっていたい。その気持ちは痛いほどに理解できるが、いつまでも余韻に浸っているわけにもいかない。戦いは続くのだから。

指揮官はトレーニングで感じ取っていた。「安心したことで強いチームになった気になっていた」と。チームに蔓延していた心の隙を見抜いていたのだ。 そこで、「次の横河戦で勝たないと岐阜戦の勝利は意味がなくなる。絶対に引き分けではいけない。勝たないといけない」とネジを締め直した。すると、選手達の口から「引き分けは負けに等しい」という言葉が聞かれるようになったという。

気持ちの引き締め、入れ替えに成功。アルテ高崎戦以来3ヶ月以上、遠ざかっているホームゲームでの必勝態勢が整った。連勝を狙う栃木SCの陣容はGK原裕晃、DFは片野寛理、山崎透、照井篤、高野修栄、中盤はボランチに堀田利明と米田兼一郎、左に小林成光、右に只木章広、2トップは上野優作と山下芳輝が組んだ。サッカーのセオリーに則る。前節からメンバーをいじらなかった。

後期に入り4戦4勝と負け知らず。ただいま、3位につける横河。好調を維持しているがDF瀬田達弘は出場停止、エース村山浩史も怪我によりサブに回った。攻守の要を欠いた。

「互いにコンパクトにやっていたので動きが少なかった」と、前半を振り返った柱谷監督。4―4―2同士(横河は4―5―1に近かったが)が、正面からがっぷり四つに組んだことで、膠着した時間が続いた。全体が圧縮されたことで、使えるスペースは限られてしまう。

序盤こそここ数試合、入りがスムーズな栃木SCが米田のミドルシュート、山崎がCKからゴールを脅かすが、ゴールは割れない。逸機するとラインを高く設定し、最後尾に4人を残した横河の守備に対して手詰まりに陥る。「目の前で回されていたので恐くなかった」と山崎が言うように守備は強固だったものの、攻撃では精彩を欠いた。

横河は得意とするロングボールに、前線からの素早いチェックを敢行。活路を見出そうとするも、4バックと中盤の4人が形成する栃木SCの2ラインを破れなかった。

横河はカウンターから池上寿之の右クロスをファーサイドで中島健太がダイビングヘッド、栃木SCはFKのこぼれ球から只木がボレーシュートを放つも、両チームとも終盤の好機を生かせなかった。

後半の頭、山下アウト。火曜日に京都サンガFCから合流したばかりの小原昇を投入する。その小原。いきなり度肝を抜くキックオフゴールを狙う。「(上野)優作さんと話をして、GKが前に出ていたので・・・自分の意気込み、自分(の気持ち)を持ち上げるために」打ったと意図を述べた。

残念ながら枠を外れるも、インパクトに残る栃木デビューを飾った小原。「前半、スペースに抜ける人が少なかった。裏に抜ければDFラインは引く。そうすればもう一人のFWがバイタルエリアを使える」と考え、果敢に背後へと飛び出す。動き出しは抜群だったが、肝心のシュートが決まらない。1、16分と絶好機を迎えるが、ゴールネットを揺らせなかった。しかし、フレッシュな小原の、アグレッシブな動きに触発されるようにチームは活性化された。前半は上野をターゲットにしていたが、一転して裏へのボールが増加する。ゴールへの意欲も高まった。

流れを引き寄せたところでゴールを得たかったのだが、自陣での緩慢なミスに加えて、足が止まったことでリズムを明け渡すことに。出足が鋭く、意外なほどにショートパスを繋ぎながら、ピッチを幅広く利した横河の攻撃に後手を踏む。更に「ルーズボールを拾えなかった。FWと中盤の距離が空いてしまった。中盤がDFラインに吸収された」(米田)ことで、状況は悪化した。

劣勢に立たされ、攻め手を見出せなかったが、途中交代の横山聡が猪突猛進。GKへのバックパスに食らいついた。フィニッシュには至らなかったが幾分か流れを呼び込み、GK原も枠内を捕らえたシュートを弾き出す。貪欲な姿勢と、好守がゴールを生んだ。

横山聡の右クロスにファーサイドで只木が詰めようとするも、マーカーの池上も踏ん張る。押し込めなかったボールは再び右サイドへと跳ね返り、ゴールラインを割りかけた。そこへ、突如として現れたのが米田だった。頭でプッシュ。先制点にして、決勝点を叩き出す。米田は2試合連続のゴール。「米田はストライカーっぽくなってきた」。試合後、関係者と談笑していた柱谷監督が本人に聞こえるように話す。それを聞いた米田は、照れ臭そうだった。「後半は盛り返したが、選手交代でいい流れを作られ失点に繋がった」と敵将・依田博樹監督は臍を噛んだ。

三度、巡ってきた好機を小原が逃し、左サイドを崩されてあわや失点のシーンを演出され、先制点の切っ掛けとなった深沢幸次(途中出場)の大流血騒動と、試合が終了するまでは慌しかった。それでも、ロスタイム3分を上手くやり過ごし、栃木SCがやっとこグリーンスタジアムで勝利を掴んだ。

バックスタンド、サポーターの目の前、メインスタンドと3箇所で数珠つなぎとなった選手とスタッフは万歳三唱。喜びを皆で分かち合った。スタンドで振られた内輪や掲げられたタオルマフラーは、打ち上げ花火のように綺麗で、これでもかというほどに黄色かった。

「非常に組織化され、リスク管理ができていることから、難しいゲームになることは予想していた」試合は、柱谷監督の言葉通り困難なものとなったが、接戦をものにしたことは小さくない。 「(横河との勝ち点が勝敗により)11か5か。その違いは大きい」(柱谷監督)からだ。 岐阜、横河と立て続けに上位陣を食した。これで次に控えるトップ2のロッソ熊本、佐川急便SC戦に万全の状態で挑める。

空中戦を尽く制した山崎は力強く語った。

「力のあるチームを抑えたことは自信になる。ゼロにこだわっていきたい。今日みたいな展開に持ち込めれば、勝てる」

JFL後期第5節 栃木SC1―0横河武蔵野FC @グリーンスタジアム 観衆3650人

〈横河武蔵野FC〉GK金子芳裕、DF大澤雄樹、立花由貴(→石川清司)、太田康介、小山大樹、MF中島健太、尹星二、野木健司、池上寿之(→村山浩史)、原島喬、FW大多和卓(→本多剛)

 

『二面性と柔軟性』

 

栃木SCは前後半で2つの顔を見せた。
 
4バックとフラットな中盤の4人が構築した2ラインに、FWが加勢することで守備ブロックをより頑強なものとする。間に入ってくる選手を挟み込み、奪ったボールは2トップの上野優作か山下芳輝の足元へ。懐の深いポストプレイからのリターンパスを足掛りに両サイドから攻め崩す。この前半45分間の試合運びに対して、横河武蔵野FC(以下、横河)・依田博樹監督はこんな印象を述べている。
 
「ポストプレイ中心のサッカーは(守る側としては)やり易かった。スピーディなサッカーが前半は見られなかった」
 
栃木SC同様に4バックを敷いた横河も、「先制点を与えないことを大前提に」守備から試合に入った。浅いライン設定、前線からの執拗なチェイシングと、全体をコンパクトにした守備戦術は機能した。攻めあぐねるのも無理はない。また、スピードを武器に攻める駒を揃えたわけではないことから、推進力に欠けるのはある程度、織り込み済みだったとも言える。
 
決して組し易い相手ではないことを分かっていながら、柱谷監督は不満を感じてもいた。

「2トップが下りたところでボールを取られていた。前にボールが収まらないと2トップの優位性が生かされない。『後半はもっと裏にボールを入れろ』と指示した」

修正を施す。上野と山下をターゲットに攻撃を組み立てることから、DFラインの背後を突くことに方向転換を図る。そのゲームプランを実行するために送り込まれたのが、後半のスタートから登場した小原昇であり、横山聡、深沢幸次の交代選手だった。

「オフ・ザ・ボールの動き方が持ち味」

小原は自身が語る特長を遺憾なく発揮した。代わり端、上野の落としたボールから絶好の得点機を逸しても、気にする素振りなど見せない。例え実らずとも繰り返し繰り返し、旺盛に背後のスペースを伺い、味方からボールを引き出した。

それは、相棒の横山聡も一緒だった。「小原の加入が、いい刺激になっている」と指揮官が話した通り、愚直にボールを追う。「平均的には物足りないが、突破力とシュートは相手を破る武器になる」と評された深沢は、前を向いて仕掛けた。小原の投入で風向きを変え、深沢がドリブルで突っかけ、繋いだボールから横山聡がロークロスを入れたことで、米田兼一郎の決勝ゴールが生まれた。狙った通りのカタチからゴールをこじ開ける。

前半の試合内容ではゴールを奪えない、と読んだ柱谷監督の英断は奏効した。試合の流れと相手の出方を読み切り、柔軟な対応を見せた。2トップをそっくり取り替えるという発想は、これまでにないものだった。修羅場を潜り抜けて来ただけのことはある。

0―1と惜敗した依田監督は言う。

「後半の方が嫌な戦い方をされた。栃木の勢いのあるサッカースタイルはやり難い」

表現こそ違うが開幕戦を戦ったFC琉球の吉沢英生監督も、同じ趣旨のコメントを残している。その他のチームの監督が口にし、警戒するのは大概が“スピード”である。主力と監督が変わっても、すり込まれている栃木SCのイメージとは、やはり縦方向へのスピードであり、アグレッシブさ、走り回ることなのだろう。安定感のあるサッカーよりも対戦相手にとって脅威なのは、スピードに乗った選手が次々と背後を突いてくる攻撃なのだ。

そのあたりのことを踏まえながら、柱谷監督は今後の展望を語った。

「堀田(利明)と只木(章広)がメッチン(米田)とゲームを作る。勝負所で2トップ、ワイドを入れ替えていきたい」

FWのファーストチョイスは上野、ボランチの軸は米田、最終ラインは4枚、2ラインによる堅牢な守備ブロック。失点を許さない手堅いサッカーにプライオリティが置かれることに変わりはない。負けが許されない状況なのだから。だが、思考を停止することはない。横山聡、吉田賢太郎、小原昇のFW陣、深沢幸次、本田洋一郎、金子剛などスピード系の若い選手を絡めることで、サッカーに幅を持たせていく腹積もりでいる。

相手の攻撃を跳ね返しながら機を伺う安定した守備ありきの組織的なサッカーと、リスクを冒しながら果敢にゴールを目指すサッカー。この二面性をケース・バイ・ケースで使い分けられれば、勝ち切れるチームに変貌することは不可能ではない。

僅か5試合の実戦で自分のカラーを打ち出し、結果を出した柱谷監督。改革は加速度的に押し進められている。

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