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プレーバック:対HondaFC戦@栃木SC通信
2008年5月17日 大塚秀毅 | この記事のページ | コメント(0) | トラックバック(0)
※メンバーが大幅に入れ替わっているために参考にならない可能性大
就任直後、柱谷幸一監督は、こんなことを言っていた。
「中断期間前までになんとかしたい」
国体、天皇杯が挟まれることで1ヶ月近くリーグ戦が休みとなる。JFLのひとつの特色である。それまでに、(就任時)8試合も勝利から見放されていたチームの立て直しを図り、劣悪な練習環境などの整備にも着手することで、戦える集団への改革を推し進めるプランを思い描いた。基礎的な部分の工事を済ませ、上位陣と五分の戦いを演じながら、再開後に対戦する昨シーズンの下位チームから確実に勝ち点3を手に入れられるようにする。最終的には昇格最低ラインである4位に滑り込む算段でいた。ターゲットは4位。目標をより鮮明にすることで足並みを揃えた。
雷雨延期により9月末に組み込まれた佐川急便SC戦を除いたこれまでの戦績は、3勝3敗1分け。ひとつの区切りと見定めていたホンダFCとの一戦は、勝てば勝ち点で並ぶが得失点差で上回り順位は逆転。加えて中断期間と合間の首位・佐川戦を気持ちよく迎えられるか否か、という精神的な要素も絡んだ大事な試合となった。会場は栃木県総合運動公園陸上競技場。公式戦が実施されたのは2003年の対FC京都1993戦以来のことだった。
一戦必勝。左サイドバックのファーストチョイスである片野寛理を累積警告で欠いた栃木SCの陣容はGK原裕晃、DFには左から高野修栄、山崎透、照井篤、横山寛真、中盤の形成はボランチに堀田利明と米田兼一郎、左に小林成光、右に只木章広、上野優作と小原昇が最前線に並んだ。
前年度覇者もフォーメーションは4―4―2。守備の核である安部裕之が不在も、前期の対戦では出場機会のなかったエース新田純也がスタメンに名を連ねた。
左から右へ、右から左へ。サイドチェンジを意識的に織り交ぜながら、右の只木を起点にした栃木SC。序盤の15分、リズムは悪くなかった。戦前から意図した通りサイドから攻められた。それは、ホンダFCにも言えることだった。サイドバックとサイドハーフの連係がスムーズであり、チームとしてサイドの使い方を熟知していることで、劣勢を跳ね除ける。中盤の攻防では一進一退だったが、時が経つに連れてサイドの利し方が抜群であることから優位性を発揮する。そして、必然的にゴールが生まれた。
前半21分、右サイドで柴田潤一郎が切り返し、上げたクロスを新田がヘディングシュート。きっちりとサイドネットに収めた。左利きの柴田が右に配されることは情報として入っていたという。左足を警戒するように、と指示も出ていたが、ケアしきれなかった。「うまく周囲と絡んで突破し易いカタチを作り、起点になれた。特長を発揮してくれた」とホンダFC・石橋眞和監督が高評価すれば、「キープ力、クロス、スピードなど相手のワイドの方が、レベルが高かった」と柱谷監督も絶賛した。
「連動してグループを作らないと厳しい」(只木)
「圧力は感じなかったが、出し手と受け手の動きができなかった」(横山寛)
失点の影響を隠しきれなかったのか中盤の構成力が落ちた栃木SCは、全体の噛み合いが悪くなる。互いのフィーリングにズレが生じた。パスが繋がらない。精密機械のようである米田にもミスが目立った。簡単にボールを失う。手探りの、苦し紛れのパスが通るはずがない。上野のポストプレイは不安定だった。ボールが前で収まらない。単純な放り込みに逃げた。
リズムの乱れをホンダFCは見逃さなかった。今度は左サイドを攻略。クロスのルーズボールを西望実が滑り込みながら突き刺した。
まさかの2失点。自分達のサッカーが展開出来ない。苛立ちが募り始め、生命線であるコレクティブな守備は崩壊した。プレスが緩んだ隙を突かれる。ロングレンジから糸数昌太が振り抜いた左足はゴールネットを揺さ振った。前半だけで今季初となる3点を献上。
「一時的に中盤を厚くして守備を固めることを選択してもよかったかもしれない。1失点で堪えていれば・・・。試合状況を読んでの対応力や修正力を磨かなければならない」
只木は趨勢を決した3失点目を激しく悔いた。
後半の頭に柱谷監督は2枚のカードを切った。一枚目の高安亮介には「縦への突破から躍動感をもたらすこと」を、2枚目の久保田勲には「3バック気味にして高いところでプレイさせる」狙い。この交代は奏効した。3点のアドバンテージがあるホンダFCのプレスが弱まったにしても。期待に違わず高安と久保田が働いたことで活性化される。
イニシアチブを完全に掌握した。そこまではよかったのだが、さすがはホンダFCである。綻びをすぐに修繕する。浅めのライン設定によりスペースを消去した。コンパクトにされたことで高安の勢いは止み、久保田はサイドに張り出すも肝心のボールが届かなかった。久保田、只木、小原がパス交換し、途中出場の山下芳輝が反転シュートを繰り出すも、枠を反れていった。前後半、唯一の決定機をも決められなかった。
せめて1点でも。一矢報いることすら叶わず、にわかに信じ難い大敗を喫した。記録したシュートは僅か2本だけだった。
「(後半ロスタイムの)山崎の退場シーンが今日の試合を象徴していた」
黙考した末に発した柱谷監督の言葉である。常套句である「アラート(用心深く、機敏な)」を多用し、試合を振り返る。言葉を詰まらせながら。
「ボールが遠くにあるのにアラートな状態ではないから反応できない。アバウトな縦へのボールをカバーできない。いい準備ができていればクリアできたはず。守備も、メンタル面もアラートな状態でできなかった。球際でも尽く競り負けてしまった。1対1で激しくいけなかった」
また、「大事な試合で100%の集中力で入れなかった」ことを敗因のひとつとして挙げ、「色々と条件が異なろうとも強いメンタリティを持ち、タフに戦えるようにならなければ」と付け加えた。
小原は言う。
「今日のことを引き摺らない。(大敗の)影響はないが攻撃的になった後半にゴールを取れなかったのは課題だった」
勝利を得られなかったことはもちろんのこと、それ以上に攻勢に転じてから1点も返せなかったことが痛かった。敗れても次の試合に希望を抱かせる材料がなにもなかったことは、今後へ向けて不安をより一層かきたてる。ライバル達が足踏みをしようとも。
吹き始めた追い風が向かい風に変わるほどの完敗。今シーズンのワーストゲームと言っても過言ではない内容と結果だった。人生もサッカーも容易に事は運ばない。
JFL後期第9節 栃木SC0―3ホンダFC @栃木県総合運動公園陸上競技場 観衆5588人
〈ホンダFC〉GK川口剛史、DF堀切良輔、河住一仁、石井雅之、桶田龍、MF柴田潤一郎(→田阪祐治)、西望実、糸数昌太、土屋貴啓(→増田勝文)、FW鈴木弘大、新田純也(→川島大樹)
<栃木SC>交代:高野修栄(→久保田勲)、小林成光(→高安亮介)、堀田利明(→山下芳輝)
『下準備』
事前準備を入念に行う。柱谷新体制となってから際立つ特徴のひとつである。顕著な例としてアウェイでの対FC岐阜戦(2―0)が挙げられるだろう。スカウティングと緻密な戦略が勝機を手繰った。現時点での今季ベストゲームだった。
対戦相手も無策ではない。当然ながら策をろうしてくる。今回はホンダFCの方が一枚上手だった。用意周到な対策が3ゴールを導き出し、浴びたシュートが2本の無失点と完璧な守備を披露するに至った。栃木SCにとっては手痛い、今季最低の試合となってしまった。成す術なし。手も足も出なかった。
ホンダFC・石橋眞和監督は攻守において2つのテーマを掲げ、今週のトレーニングに臨んだという。1つは「カウンターから失点するケースが多いことからボランチとサイドバックの仕事の修正」。もう1つは「攻撃面でシンプルにスペースでボールを受けること」。
攻撃に比重を置きがちだったボランチには、アンカー(舵取り)の役割がこなせる西望実と糸数昌太を配し、バランスを保つことを心掛けた。「中盤でイニシアチブを取られた。トップに入った後のセカンドボールを取られてしまった」と只木章広。守備ブロックを作り、DFとボランチが上手く挟み込んだ。それにより、「2トップを抑えないと後手に回る。あそこにボールを入れるのを先ずは抑え、次の展開を防ぐ」(石橋監督)ことが可能となった。
コレクティブな守備をされたことで、上野優作と小原昇の2トップは消去された。共に放ったシュート数は0。対峙した石井雅之と河住一仁の両センターバックは屈強であり、なおかつバイタルエリアに注意を払われたことで思うようにボールを引き出せなかった。トップにボールを預ける。基本的な作業を阻止された。思惑にはまる。
右サイドバック堀切良輔のオーバーラップが、どれほどの威力を持っているのか。アウェイの都田で嫌というほど思い知らされた記憶が蘇る。ゴールラインを割ろうかというギリギリのボールからクロスを上げ、ピタリと味方に合わせた時には思わず唸ってしまった。しかし、アグレッシブなだけに、持ち場を留守にしがちになる悪癖も。それは、左サイドバック桶田龍にも当てはまる。そこで、功罪入り混じる攻撃参加に、「徹底したつるべの動き」を求めた。立ち上がりは栃木SCに分があったサイドの攻防も、気が付けば何時の間にかホンダFCが制していた。ダイナミックさを逆手に取れたのは、僅かな時間だけだった。
柱谷監督は「2対1で崩せずに物足りなかった。両ワイドの選手が大胆に、恐がらないで自信を持って高い位置で勝負して欲しかった」と嘆いた。サイドバックとサイドハーフのコンビネーションでは、明らかに見劣りした。小林成光と高野修栄、只木と横山寛真の意思疎通が不十分だったにしても、キーポイントだったサイドの綱引きで負けてはいけなかった。3失点中2点がサイドを破られてから。数字が雄弁に物語っている。
リードを得てからホンダFCは堅守速攻に切り替える。なるほど、パスはアバウトであり、栃木SCの守り方も拙かったが、常にフリーになれるポジションを取っていたことは動かし難い事実。カウンターから何度か冷やりとさせられた。スペースを突く。ゴールを取られる前後でも、狙い通りの攻撃を許していた。
ホンダFC戦への下準備としては、栃木SCも栃木トヨタカップ決勝で出場したFW全員がゴールを決め、高安亮介、久保田勲、横山寛を試すなどシミュレーションはできていた。チーム状態は上向きであり、感触は悪くなかった。情報も手に入れ、抜かりもなかった。それでも、勝ち点3を掴めないということは、「相手が強くなってきているので、伸ばさなくてはならない部分がある」(只木)ということだろう。
良質なトレーニングを入れ、情報戦で勝り、試合でもイメージを実践できる力が必要とされてくる。個でも組織でも。
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