ホーム > 栃木SC通信 > プレーバック:対カターレ富山戦(YKK AP版)@栃木SC通信

プレーバック:対カターレ富山戦(YKK AP版)@栃木SC通信

2008年5月24日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

※メンバーが大幅に入れ替わっているために参考にならない可能性大

秋田わか杉国体関東予選、後期第8節の対佐川急便SC戦の雷雨延期により、栃木SCは実戦から遠ざかってしまった。そのことに関して柱谷監督は「延期で疲労がとれた。どこに試合(佐川戦)が組み込まれるのかが問題」と、特段、試合間隔については気にしていなかった。

変則的な日程により後回しとなった後期第7節。「引き分けは許されない。トーナメントのような気持ちで臨んだ」(小原昇)対YKK AP(以下、YKK)戦の陣容はGK原裕晃、4バックの並びは左から片野寛理、山崎透、照井篤、高野修栄、中盤はボランチに堀田利明と米田兼一郎、左ワイドに小林成光、右ワイドに只木章広、2トップには上野優作と小原昇が起用された。

前節、横河武蔵野FCを5―1で蹂躙したYKKは、ただいま3位。そのうち2ゴールを挙げたDF濱野勇気は出場停止だったが、朝日大輔、牛鼻健、長谷川満のベテランアタッカー陣は健在。しっかりとスタメンに名を連ねた。

入りの10分は上々。左サイドの小林を軸にサイドから組み立てを図れた。が、Pボックス内のルーズボールを、FW猿田浩得にクロスバー直撃のシュートを浴びたあたりから、リズムに狂いが生じる。引っ掻き回したのは162cmと小柄な猿田だった。

「照井クンと山崎クンの高さをすり抜けたい。うちの高いトップ(長谷川)の間もすり抜けたい。ドリブルも得意なので間を突きたかった」 

猿田を先発させた意図をYKK楚輪博監督は、そう語った。バイタルエリアで小刻みに動き、マークが掴み難いポジショニングは絶妙だった。狙い通りの動きからチャンスメイクし、ゴールを脅かしもした。「14、はっきりしろ!!」。堀田の怒声である。捕らえきれず、アクセントをつけられていたことが理解できる。とにかく、元愛媛FCの14番は厄介だった。

攻守が切り替わる。前線に人数を割き、時には最後尾を2人にするリスクを冒す。ゴールを割るには十分な人数が揃うも、アイディアとオフ・ザ・ボールの動きが不足した。サイドにボールが入っても手詰まりに陥る。また、YKKのリトリートが速かったこともあるが、“各駅停車”のビルドアップが拙攻を重ねる原因に。横パス、バックパスが頻発。プレッシャーを受け、守備陣形が整っているところに苦し紛れの放り込み。壁に穴が開くはずもない。あまりにもナイーブなボール回しだった。

栃木SCは只木のクロスから小原が左足、YKKは星出悠のクロスから猿田がヘディング、と互いに好機は作るもゴールネットは揺らせなかった。

只木のクロスを口火に、小原のループシュート、影を潜めていた片野のオーバーラップ、と後半の立ち上がりからアグレッシブになった栃木SC。

「後半はボールが繋げるようになり、4―4―2の優位性が出せた」(栃木SC柱谷幸一監督)

サイドを有効活用し、ゴールを生んだ。高野の右クロスを中央で小原がダイビングヘッド。待ち焦がれたFWのゴールが決まった。それは、柱谷新体制となってから初めてのことであった。

先制点で付いた勢い。そのままの流れで追加点を奪う。またしても小原が。GK中川雄二とDFでもたついた間に只木と上野が襲い掛かる。「自分も行かなければ」と連動した小原に、DFは気が付かなかった。ボールを掻っ攫いGKとの1対1を難なく制し、ゴールに流し込んだ。

「FWが点を取っていない。チームとしてよかったのでは」という一方で、「正直、移籍してきてプレッシャーや責任を感じていた。点を取れたことで自信になり、ホッとした」。心地好い疲労を感じながら、小原は胸を撫で下ろした。責務を全うしたことで。

「2点取ったからよかったんじゃないですか」。柱谷監督は報道陣の笑いを誘ってから、「小原は補強で入り、結果を出したかったと思う。本人も我々にもよかった」と、一転して真剣に評価を口にした。愛弟子の活躍に顔はほころんでいた。

畳み掛けた栃木SC。とりわけ先制後、すぐさま手にした2点目は大きかった。2点のアドバンテージが得られれば、リーグ最少失点のDF陣が耐えきれるからである。猛攻に晒されるも、窮地は一度きり。FKからトリックプレイに引っ掛かりそうになっただけ。ここは、サイドネットに救われる。

ゴールは最良の薬だった。劣っていたモビリティでも引けをとらなくなる。人もボールも活発に動くようになる。前線からのフォアチェックが機能し、全体のプレスの掛かりも格段によくなった。堅守速攻に徹したことで、やりたいサッカーが明確になったことも小さくなかった。

前期の対戦では立て続けに失点、終盤に2点を返して辛くも追い付いた。それをそっくりそのままやり返される雰囲気を醸し出させない安定感があった。柱谷監督は「プレッシャーをかけられても、もう少し上手くかわし、前に来たら裏を使うなどできればよかった」と苦言を呈したが。それでもロスタイム2分をやり過ごし、勝利を収めたことで「3位の相手にホームで2点を取って、勝てたことは大きい」と勝ち点3の意味を述べた。

結果論になるが汚辱に塗れたロッソ熊本戦からの3週間は、栃木SCにとってメンタル面でプラスに作用したようだ。悪夢を払拭するには程よい期間ではなかったのだろうか。

敵将は言った。「前半は五分五分だったが、後半は完敗だった。(小原の1点目には)栃木のサポーター、現在の立場がシュートから感じられた。頭から突っ込んでいく、ダイビングヘッドからは気持ちが伝わってきた。私としては痛いのですが・・・」

続けて「1点取ってから、もの凄い声援だった。(ボクは)Jリーグを経験しているが、Jに近い声援とバックアップがあった。サポーターの迫力には完敗でした」

気迫のこもったプレイと大歓声に脱帽していた。素直に負けを認めるところは、敵将ながら好感が持てる。

さて、もうすぐ夏休みが終わる。それは学生だけではなく、少なからず栃木SCにも影響する。只木、高安亮介、山崎、片野など教員組が昼のトレーニングに参加できる回数が限られてしまうからである。調整を図るにしても限度がある。先の4人は国体メンバーでもある。プライオリティがどちらに置かれるかは判然としない。「こういう時に、お金をもらっているプロが奮起して9月以降、頑張って欲しい」。指揮官は控えに甘んじているプロ選手に檄を飛ばした。

1敗も許されない過酷な状況。乗り切るにはチームとしての総合力が問われる。そこには、メディアもサポーターもフロントも含まれる。突き付けられた現実は厳しいが、まだ昇格に向けての運は僅かながら残されている。例えばそれは今節、守備の要だった濱野が不在だったこと、試合後に御輿のように担ぎ上げられた心強いコールリーダーの復帰などからも伺える。

パッタリと止みそうだった追い風がまた、吹き始めた。

JFL後期第7節 栃木SC2―0YKK AP戦 @栃木県グリーンスタジアム 3633人

〈YKK AP〉GK中川雄二、DF堤健吾、川野毅、小田切道治、MF萩原洪拓(→石黒智久)、星出悠、黄学淳、牛鼻健(→景山健司)、朝日大輔、FW長谷川満、猿田浩得(→大西康平) ◆太字はカターレ富山所属◆

〈栃木SC〉交代:小林(→久保田勲)、只木(→高安)、上野(→山下芳輝)

 

『間隙を縫う』

YKK陣内に8人による1本のラインが引かれた。

栃木SCのマイボールになる。守から攻へと移行。その作業が非常に遅かった。上野優作と小原昇の2トップに加えて、両ワイドの只木章広と小林成光がゴール前に位置するも、守備ブロックを作らせる時間を与えたことで攻めあぐねた。YKKの4枚は栃木SCの4人に目を光らせていた。迅速な守備網の構築があったにしても、サイドにボールが入ってからが拙かった。そこから先がなかった。ふわりとした逃げのアーリークロスが供給されるも、あっさりと跳ね返された。

相手が3―5―2を採用すること、守備時に3―4―3の陣形を取ること、前からチェイシングしてくることは、事前のスカウティングで分かっていた。だから、今週のトレーニングでは4バックとダブルボランチで、プレスを掻い潜りながらボールを運ぶことを徹底した。

しかし、トレーニングと実戦は異なる。「FWとの距離が遠かった。クサビのパスを入れられず、バックパスをしてしまった」と高野修栄。思うに任せない。最後尾で上手くボールを回しながら、「引かれる前に速く攻めることに優先順位を置いた」攻撃はできなかった。

「ある程度やれた部分もあるが、やれなかった時にカウンターやチャンスを作られた。(ボールを運ぶ)イメージは持っている。相手の陣内に持ち込めもした。ただ、そこから先、チャンスを作れなかった」

ビルドアップに関して柱谷幸一監督は一定の評価をしつつも、攻勢に転じた時に単純にボールを蹴ってしまったことで不満も口にした。「待ち構えている相手にボールを入れても厳しい」。そこで、山崎透などに「繋いで食いついてきたらパスを出す。もっと繋げ」と指示した。後半開始8分に先制、13分に加点と連続ゴールがチームに勢いを付け、流れを変えたことは事実だが、単調なボールが減ったこともリズムを生んだ一因だった。恐れずにボールを相手ゴール方向へ持って行く。縦にパスを入れなければ、脅威とは成り得ない。

閉塞感が漂ってしまったサイドからの崩し。左サイドバックの片野寛理は「パススピードが遅く、互いの距離が近かった」ことを問題点として挙げた。改善するには意思疎通を図り、状況判断力を向上させ、サポート意識を高めることを強調した。2ゴールを叩き出した小原は「前半はチーム自体が悪かったが、FWの動き出しも悪かった。前線は、はっきりした動きが必要。そうすればボールが入る」と反省。そこで後半は「DF2枚がFW2人についていた。ボクが引けばどうなるか。上手くマークをぼかすことができた。引いたことで(小林)マサミツさんが内へ入り、皆もアグレッシブにできた」と、単に前に張り付いているだけではなく流動的に動くことで、全体を活性化させられたことを口にした。

5バック気味に守りを固めた相手を攻略する。容易ではないが、柱谷監督には具体的なビジョンがある。

「例えば(高野)修栄が高い位置でボールを持っても、3―5―2のワイドが対応したり、ボランチが寄せてくる。センターバックがずれてくることもあるが、そのずれた瞬間を上手く使う。修栄がボールを受けた時、只木や小林が斜めに走りボールを受けて起点になる。或いは小林が斜めに走ったところを使わないで、2トップにボールを入れてコンビネーションを駆使する」

ビルドアップ同様に選手間で、サイドからの切り崩しのイメージは共有されている。自分達がどうアクションすれば、相手がどのようなリアクションをしてくるのか。トレーニングでの確認事項には、常にそのことが組み込まれていた。反復することですり込みはできている。ただし、「イメージは掴んでいても、タイミングや技術やキックの精度が不足している」(柱谷監督)ことから、現段階では具現化が難しい状況にある。

4―2―4、時には2―4―4と前に厚みを持たせる。両サイドバックはオーバーラップを果敢に仕掛けることが期待されている。先ずは守備ありきのチームだけに、スロースターターのように映り、前半は力をセーブしているようにも見えるが、多少のリスクは覚悟の上で攻撃態勢を整えてはいる。それでも、ゴールがなかなか奪えないのは個々人の問題。技術と戦術理解度が柱谷監督の求めるレベルに達していない。

だが、指揮官は言う。

「JFLで3―5―2は特殊だったが、準備をしてやりたいことが出せた。いいトレーニングを積んで準備をして試合で出せれば自信になるし、トレーニングに対する集中力も上がる」

当然だが日々のトレーニングでできないことが、試合で発揮されるはずがない。攻撃のカタチは、守備組織を整備するよりも時間を要する。狙い通りにサイドから攻め立てるには、良質なトレーニングと時間が不可欠である。昇格の危機に瀕しているだけに時間的な制約はあるが、そこは学習能力を高めて補完するしかない。

“間隙を縫う”。自分達からアクションを起こし、相手を疲弊させ隙を突いてゴールを陥れる。白旗を揚げさせるくらいの逞しさが求められる。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: プレーバック:対カターレ富山戦(YKK AP版)@栃木SC通信

このブログ記事に対するトラックバックURL:

コメントする