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『乏しいバリエーション』@栃木SC通信

2008年5月26日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

ochi3.JPG攻撃回数はカターレ富山(以下、カターレ)と比べても劣っていたわけではなかった。右ワイドの高安亮介を起点にサイドアタックを仕掛けられていた。好機を演出できるカタチに持ち込めていたことは事実であるが、攻め切れたとの印象が希薄であるのは、やはりシュートで攻撃を完結させられなかったからだろう。柱谷幸一監督は「クロス、ラストパス、シュートの正確性とパワー不足」を原因に挙げた。攻撃を結べなかったことは小さくなかった。

多少アバウトなボールからでもフィニッシュにまで至ってしまう。これまで質量の隔たりとは無関係に対戦相手から与えられた脅威は、ゴールを強く意識した姿勢があったからに他ならない。翻って栃木SCにはシュートを打ち切れないことから怖さ、迫力、圧迫感が感じ取れなかった。ゴールを目指す意欲が著しく欠落していた。

こんなシーンがあった。深澤幸次の右クロスをファーサイドで待ち受けていたのは稲葉久人。ゴールを得るための選択肢はたんまりとあった。ダイレクトでヘディングシュートを放つ。一旦、胸でトラップしてから縦に突っかけて自らシュート、あるいはゴールライン深くまでえぐってからのセンタリング。Pボックス内ではエゴイスチックに振舞ってもいい。FWならば。稲葉が出した答えは、内側に位置していた松田正俊へのパスだった。間違いとは言い切れない。松田のシュートが決まっていれば賢明な判断と解釈されたことだろう。しかし、松田はもたついたことでシュートのタイミングを逸し、DFに阻止されてしまった。勝負しなかったことが裏目に出た一例である。

「ゴール前で消極的に映るシーンがあった」と振り返る向慎一は、「シュートが少なかった。もっとミドルを狙っていれば」と唇を噛んだ。鴨志田誉も同じような思いを抱いていた。「ボクやシン(向)がミドルを狙い、FWは多少強引にでも打つ必要がある」。そうすれば、シュート3本という不甲斐ない数字は残らず、勝点3を得られたかもしれないとの思いは強い。綺麗に打ってゴールを決めてやろう。そんな気持ちが大胆さとアグレッシブさを殺いだ。

キャプテンマークを巻いた落合正幸は言う。

「チャンスメイクで終わっている。シュートで終わっていない。スリッピーなグラウンドコンディションだからこそ、遠目からでも打てば何かが起こるかもしれない」

言葉は熱を帯び、鋭くなる。

「局面で『ボールを持っている選手がやってやる。イニシアチブを握ってやる』と思わないと。アタッキングエリアで遠慮していても仕方がない」

クロスを上げ切る。シュートを打ち切る。「やり切る」ことが出来なかったがために、焦燥感は次第に強まり、安易な方法に逃げてしまった。悪癖が露呈する。「狙ったわけではなく、苦し紛れに蹴り込んでしまう」(鴨志田)攻撃面の課題が。

「ツインタワーへ放り込まれた際のトレーニングをした」

そう話したのは、カターレのDFリーダー濱野勇気。2トップに照準を定め、前へとボールを入れてくることは想定済みだった。CBを組んだ金明輝と共に上野と松田に制空権を譲らなかった。栃木SCにとって前線へのボールの収まり具合が、好不調のバロメーターとなる。ストロングポイントを潰されてしまっては、思うようにサッカーを展開することは難しい。対策を練られた相手に対し、分かりきった攻撃を仕掛けることは無益であり、足枷としかならない。手詰まりと勝点の喪失は親密である。

一本調子と執着は紙一重の関係であるが、勝機が見出せないと判断したならば、状況に応じて別の手を打つべきだった。「真ん中に、バイタルエリアにワンクッションあればよかった。(2トップが)ラインの前で起点を作れていれば」と上野は悔い、「ボールを繋げていれば違う展開になっていた。カウンターや分厚い攻撃ができた」と、鴨志田はボールを走らせるべきだったと反省の弁。「闇雲に蹴り込んでいるから、FWにいいカタチでボールが渡らず、シュートが打てない」と続けた。

「繋いでボールを運んでから、DFラインをFWが押し込んで下げる。クロスを入れて、セカンドボールを拾っていく」

単調に前へボールを預けるだけではなく、ポゼッションしながら横方向の動きを取り入れ守備網を崩すパターンを柱谷監督は描いていた。が、ピッチに立った選手達は実行に移せなかった。トレーニング不足なのか、それとも着手できていないのか。

開幕から漂う攻撃面の閉塞感は、バリエーションの乏しさに起因している。ロングボールを放り込んでいくことを薄め、パスを回しながら打開を図っていく方向性を濃くすることが必要な時期に差し掛かっているのではないだろうか。スカウティングが成され、2順目ともなれば対戦相手も手の内を読んでくるだけに。

確たる型は存在する。それを変形、派生させる準備は整っているのだから、そろそろ次の段階へと強化を推進して行くべきである。引き出しを増やせないようでは、袋小路を彷徨いかねない。
 

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