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プレーバック:対アルテ高崎戦(後期)@栃木SC通信

2008年6月20日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

※メンバーが大幅に入れ替わっているために参考にならない可能性大

実行委員が告げる。白線が消えたことによりキックオフ時間が10分遅れることを。台風20号の影響である。空が号泣。急ピッチで作業を行うスタッフなどお構いなし。雨脚は弱まるどころか、一層激しさを増した。幸いにも田んぼ化は免れたが、ピッチコンディションは劣悪だった。

雨と“重馬場”と栃木SC。この組み合わせは芳しくない。2年連続してロッソ熊本との雨中足利決戦を落としていることが、脳裏にこびり付き離れないからだろう。長良川でFC岐阜に完勝(2―0)、遡ればザスパ草津を相手に0―3から3点を僅かな時間で一気に返した試合もあったが、叩きつけるような雨ではなく靄がかかる程度の霧雨だった。マイナスイメージが先行してしまう大雨に、ダントツの最下位・アルテ高崎(28試合を消化していまだ勝ち点6)が相手では負けられないという重圧は自ずと強くなり、試合は難しいものとなった。

5―0と大勝した前節の三菱水島FC戦から入れ替わったのは、累積警告により出場停止となったDF山崎透だけだった。サッカーのセオリー――勝ったチームはいじらない――に則った布陣はGK原裕晃、DFに左から石川裕之、谷池洋平、横山寛真、高野修栄、中盤はダブルボランチに米田兼一郎と久保田勲、左ワイドに小林成光、右ワイドに高安亮介が入り、横山聡と上野優作が2トップに配された。山崎の代役である横山寛真は国体予選と本選を除けば、本職のセンターバックでは初先発となった。

「後期はチーム力が逆転しているかもしれない」。前期(4-0で敗戦)の対戦時にそう言い残したピポ監督が突然退任し、アルテ高崎は栃木SC戦から渡辺克之新体制で再スタートを切った。

「(高野)修栄のCKが決まっていれば大量点の流れが掴めた」

柱谷幸一監督が振り返ったのは前半3分の出来事。高安が獲得したCKを久保田が蹴り、高野がニアサイドでヘディングシュート。絶妙のボールとシュートだったが、ポストに嫌われてしまう。三菱水島戦では開始早々のゴールが趨勢を決したといっても過言ではないほど大きなウェイトを占めた。それだけに、逸機したことでリズムに乗り切れなかった。

「ロングボールが多いので、セカンドボールを意識して拾えていればいいゲームになった。ルーズボールを取られていては、好機は作れない」(米田)
 
平均年齢23.3歳と若いチームはボールへの寄せが速かった。荒削りな部分も垣間見られたが、旺盛な運動量と球際の激しさを武器にイニシアチブを渡さない。高須洋平がゲームを作り、手数をかけずに小川雄司と田中靖大(この人、栃木SCのセレクションを受けた)の2トップがゴールに迫る。シンプルで無駄がなかった。攻守におけるパフォーマンスは最下位に沈んでいるチームであることを忘れさせるほどだった。
 
CKから小柴翔太が放ったヘディングは決定的だったが、枠を反れる。肝を冷された栃木SCは、横山聡と上野へクサビを打ち込むが、サポートが遅く次の展開に持ち込めなかった。左は小林と石川にFWが絡んでコンビネーションで、右は高安が単独突破を図るが、サイドからの攻撃も好機には結び付かなかった。ロビングをゴール前で上野が胸で落とし、横山聡が左足を振るもGK岡田大が好守を披露。またしてもゴールは得られなかった。
 
サイドチェンジから左の小林がカットイン。シュートはサイドネットへ。後半立ち上がりのシュートは枠外だったが、揺さ振り空いたスペースを有効利用する狙いは、ハーフタイムの指示通りだった。高安に代わり深澤幸次が投入されると活力が増し、チームとしやりたいこと、やるべきことが実行に移せるようになる。右に回った小林はクロッサー、左の深澤はドリブルを活かす突貫小僧と化したことで攻め手が見出せるようになった。

サイドから圧をかけることで閉塞感は打破される。少しずつ流れを引き寄せた。CKからフリーだった米田のダイビングヘッドは再びGKに阻止され、交代出場の小原昇のワントラップボレーはクロスバーを叩くも、3枚目の交代カード山下芳輝がついにゴールをこじ開ける。高野の右クロスはGKに弾かれるが「吸い込まれるようにボールがきて、リラックスして打てた」打点の高いボレーシュートはネットを揺すった。目の醒めるような一発にアウェイをホーム化したサポーターは沸き、ベンチも総立ちとなった。
 
サポーターを煽りに煽った山下。小林のバックヘッドスルーパスから抜け出し、GKをかわしたまではいいがシュートを打ちきれず。追加点をもたらすには至らなかった。が、警戒していた相手セットプレイを跳ね返し、1―0と僅差ながらも2連勝を飾った。
 
3試合連続ゴールを逃した(そのことを問うと本人は苦笑いを浮かべた)ものの、無失点に封じた谷池は言う。

「『スリッピーでもカバーして粘ろう』と4人で互いに声を出し、集中して守れた。大勝後の試合は難しいが、1―0で勝てたことは大きい。耐えて決めて勝つのは強いチームになるためには必要。こういう試合をものにするのは大切」
 
柱谷監督も同様のコメントを残している。

「最下位のチームに勝てると思ったかもしれないが、サッカーはそんなに簡単ではない。苦しいゲームを勝ち切ることで勝ち点3を掴み、チームにとっては自信になる。こういうゲームを勝つことがリーグ戦では必要不可欠」
 
圧勝後の辛勝。落差の大きな2試合で手にした勝ち点6からはチームの成長具合が窺える。順位が下のチームであろうともタフに戦えるようになった。メンタル面の脆弱さは薄れつつある。残り5戦5勝。昇格は依然として厳しいが、怒涛の7連勝で今季を締め括れる状態にまでチームは持ち直した。期待は膨らむ。あくまでも連勝に対してだが。

JFL後期第12節 アルテ高崎0―1栃木SC 観衆562人 @高崎市浜川競技場

〈アルテ高崎〉GK岡田大、DF石川貢、小柴翔太、山本朝陽、山田裕也、MF杉山琢也(→チアゴ)、濱岡寛、今井雅貴、高須洋平、FW小川雄司(→川勾邦明)、田中靖大(→水野和樹)

〈栃木SC〉交代:高安(→深澤)、上野(→小原)、横山聡(→山下)

 

『好敵手による触発』

焦燥感はなかった。ただし、山下芳輝には歯痒さがあった。バリエーション豊富なポストプレイは観衆を魅了するに足るものだが、FWというポジションに求められるのは結果。つまり、点を取ること。責務を果たせないことからスタメンを外され途中出場が続く。少ない時間ながら答えを出す機会は与えられていた。が、肝心要のゴールは容易に奪えなかった。チームの勝利に貢献できない。トンネルの出口に辿り着けない。その期間は思いの外、長かった。
 
柱谷監督は決断を迫られていた。前半を五分五分のスコアレスで折り返した後半。先ず深澤幸次をピッチに送り出す。サイドのてこ入れを図った。停滞した試合は徐々に動きを見せ始める。次は前線の活性化である。タイプの酷似した選手を交代する。その常套手段を敢えて用いなかった。そこには「調子のいい選手を使う」という明確な意図が存在した。上野優作に代わり登場したのは、今週のトレーニングでパフォーマンスが上向きだった小原昇。通常ならば山下を選択するはずが、この日は異なった。フレッシュな選手が攻撃をリードする。手元に残されたカードはあと一枚。ようやく起点を設けられたサイドをさらに強化するか、それとも前の選手を入れ替えるか。「最後は永井(健太)か山下で悩んだが、山下を入れた(横山聡アウト)」。結果的にこの采配はズバリ的中することになる。
 
「だいたいの感覚で。中に入れればなんとかなる、と思っていました」。高野修栄が入れたクロスボールに反応したのは小原だった。身を寄せられたことでGK岡田大はキャッチできなかった。パンチングで難を逃れるも、セカンドボールは山下の元へと向かった。右足から繰り出されたのは、スキルの高さを誇示するかのような華麗かつ豪快なジャンピングボレー。ふかしてしまっても不思議ではないシュートを突き刺した。鮮やかな一撃は攻守を連発、当たっていたGK岡田をしても止めきれなかった。

際立つのはキックの精度。コースを狙い分けたシュートが心地好くネットを揺らす。「確実に決めよう」。1本1本を無駄にしない姿勢、全体練習後の自主練習の成果がようやくカタチとなって現れた。「練習が結果に繋がった。嬉しいし、ホッとした。踏ん張ってくれたDFの頑張りに応えられた」。山下は胸を撫で下ろした。安堵するのも無理はない。前期13節の対ホンダFC戦以来、ゴールから遠ざかっていたのだから。16試合ぶりに恍惚の瞬間を味わう。

「力が抜けてリラックスして打てた。ゴールが入る時は、そんな感じですね」。ゴールの感触を思い出しながら、しかし冷静沈着に語る山下。

――前節の横山聡選手のスーパーゴールが刺激になったのでは

そう水を向けると熱のこもった言葉が返って来た。

「聡には負けられない。ライバルですから。『ライバルがやったからオレもやる』。そういう雰囲気がチームをよくする」

前の試合で待望の初ゴールをマークした深澤も、躊躇いなくシュートを打てた理由としてライバル高安亮介の存在を挙げていた。聡が高難度のボレーを決めたならばオレも。触発され闘志に火がつき山下は決勝点を叩き出せた。ハイレベルな生存競争は好循環を生み出している。

試合後サポーターに挨拶をすませると、山下をチームメイトが取り囲んだ。ゴールを決めたアフリカ人選手が披露するような歓喜の集団ダンスが始まった。飛び跳ねながら手を打つ。輪の中心にいた山下は戸惑うも空気を読み参加したが、機を見計らったように周囲は踊りを止めた。独り取り残される。お茶目なチームメイトの悪戯に山下は笑みを浮かべていた。

「久しぶりに笑顔が出た。ダンスには加わらないといけない。ああいう雰囲気はチームがひとつになっている証拠。残り試合も同じ雰囲気でやれれば、昇格する可能性も有り得る」
 
小原の加入とゴールが横山聡に危機感を植え付け、横山聡の活躍が山下のモチベーションを上げた。次は上野の番である。セットプレイ時の守備、前線からのフォアチェックと献身的な働きは特筆に価するが、2トップの一角として出場している以上「なにもできなくても点を取れれば解決する」(柱谷監督)FWの仕事をも果たさなければならない。好調なFW陣の波に乗らない手はない。

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