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『実り多き遠征』@栃木SC通信

2008年6月30日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

okinawa5.JPG決断は下された。

玉のような汗が黙っていても噴き出してくる気候条件。疲労はいつも以上に早く体を蝕む。体温の上昇は脳に熱をこもらせ正確な判断を困難にする。

前線から相手を追い回せば、足が鈍るのは目に見えていた。 そこで、ラインを深く保ち、背後のスペースを消去することを選んだ。目の前でボールを動かされているぶんには構わない。ただし、個々が受け持つゾーンに相手が入ってきたら厳しく潰しに行く。例えばサイドバックにはオーバーラップを仕掛けるなど持ち場を放棄するリスクを避けさせた。マークを受け渡しながら守ることで体力の消耗を出来る限り軽減させる。攻撃参加したことで息が上がり、戻りきれずに穴を空けることを嫌ったのである。赤井秀行と岡田佑樹の両サイドバックは守りに比重を置いた。高位置に顔を出した回数は数えるほどだった。内へ絞り込みセンターバックのカバーに回るなど、専守防衛に徹する。

全体が間延びし、バランスを欠き、足を攣るなど先に悲鳴を上げたのは、地の利があるはずのFC琉球(以下、琉球)だった。自信たっぷりに柱谷幸一監督は勝因を語る。

「ここまでいい準備をしてきた。トレーニングの成果により体力が落ちなかった」

栃木では体感できない沖縄の暑さと湿度。出来ることは自ずと限られてくる。それを見越し、みっちりトレーニングを積んだ。練りこんだ戦術、守備の約束事は見事なまでにはまった。90分間コンパクトな守備ブロックは破綻することなく、球際で激しく体を寄せたことでコースを切るなど決定的なシュートを許さず、連続失点を4試合で止めることにも成功する。

序盤からリズムよくボールを回す琉球に対し、栃木SCは焦れずに我慢できた。入念な下準備がなされていたからであり、落合正幸曰く「ボールの取りどころがはっきりしていた」ことが小さくない。落合と鴨志田誉が位置する、ボランチラインで引っ掛けてから、いい状態でボールを持てた時だけ攻撃に人数を割く。ポゼッションよりもカウンターに的を絞った。

「攻め込まれていたというよりも、攻めさせていた」

佐藤悠介は前半をそう振り返る。フィニッシュに持ち込まれる回数の多さには苦言を呈しつつも、概ね内容には満足そうだった。前節、オブラートに包むことなく「何もない」と吐き捨て、会場を後にした口振りとは明らかに異なっていた。普段は味わうことのない、味わいたくもない状況で、「柔軟に頭を使いながら戦った」結果の勝利に手応えを掴みもした。佐藤は続ける。「こういう状況のゲームの対処としてはよかった」。今後に繋がる確かなものを手に入れられた充実感が窺えた。

それは指揮官も同じだった。

「栃木もこれから暑くなる。ゾーンでブロックを作って守れた、この試合をベースにしたい」

自分達のストロングポイントを前面に押し出すだけのサッカーに、相手の長所を引き出しながら体力を削いでいき、粘り強く戦うことで一瞬の隙を見逃さずに仕留める戦い方が加わった。思い出されるのは昨季の対FC岐阜戦。綺麗な3ラインが進撃を阻み、効率よく2ゴールを叩き出しての完勝だった。ニューウェーブ北九州戦では5バックを、ファジアーノ岡山戦ではあ4―1―4―1を試みるなど、少しずつ使えるオプションは増えてきている。多様性は育まれ、夏場を乗り切る下ごしらえと、終盤に向けた備蓄は滞りがない。

勝ち越しているとはいえ内容が芳しくないアウェーで、勝率を高めるには打って付けの試合運びを可能にする、
大きなヒントを獲得できた。南国で得たものは勝点3だけに止まらなかった。実り多き遠征となった。

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