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『熟成』@栃木SC通信

2008年7月 6日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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不得手な足元ではなく、スペースでボールを受けた稲葉久人は快速を飛ばしてゴールへ突き進んだ。勢いそのままにPボックス内でDFとの駆け引きを制し、雌雄を決する3点目を叩き込んだ。シャープなカウンターを発動させたのは、稲葉のゴールをアシストしたのは、DFリーダーの鷲田雅一だった。

 

普段はCBのパートナーを組む川鍋良祐が入ってきたボールを潰す役割を担う。が、この日は鷲田が積極的に前に出ることで、ボールを掻っ攫うシーンが目立った。理由をこう話す。

 

「ボールの流れが読み易いパス回しを、相手がしていた。流れを読みきれた」

 

落合正幸と鴨志田誉(途中から向慎一)のダブルボランチがフィルターとなり、ボランチが前線の選手に指示を飛ばすことでコースを限定させるなどした。インターセプトを狙い易い状況が生み出されたのは、前線から連動した守備が出来ていたからである。フォアチェックを繰り返した上野優作は自身の2ゴールよりも、献身的に守備に貢献できたことを、むしろ評価した。

 

「自分のやろうしているサッカーができた」

 

試合の立ち上がりは拙かった。佐川印刷SC(以下、佐川印刷)に攻め入られた。危険なクロスを上げられもした。しかし、ピッチの選手に焦りはなかったという。押し込められても平静を保てていた。

 

「むこうはガチガチ来ていたが、90分は続かない。こっちとしては型にはめることができた。ボールを繋がせていた感じ」

 

決定的なシュートを浴びなかったことで思惑通りに事が運んだと、右サイドバックの岡田佑樹は言う。

 

「ブロックを作り、耐えることで相手がばてる。途中から体力が落ちた。暑い中でも体力を消耗せずにカウンターを打てた」

 

川鍋は前節の沖縄での経験が活かされたと考えている。

 

劣勢の時間帯に好機を作らせることなく凌ぎきれば、フィジカルコンディションで勝る後半に勝機は必ず訪れる。上野は言う。

 

「前半に失点をしなければ、いい展開に持ち込める」

 

その言葉通り後半は動きが鈍重になった佐川印刷に容赦なく襲い掛かり、3点を強奪した。対戦相手の大半はスタミナに不安を抱えている。だからこそ、序盤からフルパワーで臨み、リズムを乱すために先手を取ろうとする。佐川印刷も然り。それに屈しなかったことが、結局は大量点に結び付いた。

 

灼熱の地で身に付けた対応力は、失点せずに粘っていれば勝ち切れるとの自信を育んだ。勝点3以上の収穫をもたらした遠征だった、と改めて痛感したことは想像に難くない。現にそれは先の岡田と川鍋の発言からも窺える。

 

2試合連続の零封にも、鷲田の表情が崩れることはなかった。無失点を「これが当たり前」と言い切りもした。

 

「自分達の力が出せれば、しっかりと守れる。今までの試合の経験は無駄ではなかった。積み重ねることで熟成される」

 

能力の高い個人が1対1の局面で負けることなく、チャレンジ&カバーなどの連係を怠らなければ、格段に守備ブロックの強度は増し、自ずと結果はついてくる。失点数はただいまリーグ最小を誇る。しかし一方で時折、脆さも露見する。完成度が高いとは言い切れない。最終ラインを束ねる鷲田は言う。

 

「0に抑えられたことを嬉しいと思うのではなく、当然だと捉えなければ成長しない。満足せずにやっていきたい」

 

まだまだ個も組織も成熟できる余地が大いに存在する。糊代がある限り満ち足りることはない。鉄壁の守備ラインを築くための研鑽は、日々のトレーニングと実戦を通じて続いていく。

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