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戦評:対流通経済大学戦@栃木SC通信

2008年7月20日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

ryu1.JPGのサムネール画像1―2のビハインドで迎えた後半頭、横山聡はベンチに下げられた。前期第17節、対アルテ高崎戦。残りの45分間、背番号10はピッチに立つことを許されなかった。

とり立ててパフォーマンスが悪かったわけではない。ボールを引き出す動きは巧みだった。その証拠にGKとの1対1のシーンを作り出し、シュートこそ外しはしたものの、高安亮介の同点弾に繋がるプレーに関与した。しかし、無常にも交代は告げられる。代わりに入った石舘靖樹は流れを生み出し、逆転勝利に一役買った。勝点3、前期首位ターンを喜びはしたが、消化しきれない思いが残る。

「高崎戦、前半で代えられた。悔しかった」

横山はそう述懐する。

挽回の機会を窺うも、足首の怪我により戦線離脱を余儀なくされる。横山不在の穴を埋めるように新鋭・稲葉久人が台頭。決定機を逃さない勝負強さを発揮し、ゴールを積み上げ、ポジション争いに名乗りを上げる。開幕から好調を維持する上野優作と石舘靖樹は前線で確たる地位を築き上げた。

焦燥感が募らなかったといえば嘘になる。だが、横山はさほどライバルたちの動向に関心を持たなかった。

「イナ(稲葉)が取っていたからではなく、自分には常に危機感がある」

試合に出ていても消えない切迫感。結果を残さなければならない。サバイバルに身を置くことの重圧に押し潰されることも少なくない。現に前期は3ゴールしか挙げられなかった。他人を意識するよりも、己に打ち克つ。普段から横山が心掛けていることである。

傷が癒えスタメンに抜擢されたことを意気に感じ、前期最終戦で味わった屈辱をぶつけた結果が、ハットトリックに結び付いた。21試合目にしてようやくハットトリック達成者がチームに現れた。それがエースの横山であることに意義がある、と柱谷幸一監督は考える。

「3点を取って取られたことで(印象が)薄くなったが、聡が活躍したことでイナ、ダテ(石舘)、マツ(松田正俊)が『やらなければ』という気持ちになる」

シーズン前、FWの核に指名された横山の大爆発は、前線の活性化を促すに違いない。

「悔しさはピッチで晴らさないと」

わだかまりと訣別できたことで、覚醒したエースの顔にはほっこりとした柔和な笑みが戻った。


不得手な撃ち合いに持ち込んでしまった前節のソニー仙台戦を落とし、ホームに帰ってきた栃木SC。必勝を期し、『宇都宮夏の陣 リベンジナイト PartⅠ』に臨んだ。陣容はGK小針清允、4バックは左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田佑樹が入り、中盤はボランチに落合正幸と向慎一、左に佐藤悠介、右に高安が並び、上野と横山が2トップに配された。斎藤、向、横山が先発に復帰した。

北京五輪予備登録選手の林彰洋がゴールマウスに君臨する流通経済大学(以下、流通経済)は、関東大学リーグ前期を首位で折り返したメンバーをずらりと揃えた。「他のJFLのチームとは違う。一人一人が強い。教育されている」(上野)流通経済は、主力が名を連ねた時にはJFLの上位を食すほどの実力を有する。果たして、栃木SCも餌食となりかけた。プロ予備軍のポテンシャルは空恐ろしい。

前節の反省が活かされなかった。時間もピッタリ開始4分。先手を取られる。Pボックス内へ侵入されたフランク・ベロカルに左足を振られる。喫してはいけない失点を許し、1週間前の悪夢が甦るも、すぐさま振り出しに戻す。CKを横山が中央から頭で流し込んだ。5月のホーム2連戦以来(計3ゴールをマーク)、つまり2ヶ月ぶりのゴールとなった。お約束。ゴリダンスにペヤングポーズもきっちり決めた。

FKから佐藤が直接ゴールを狙い、右サイドは高安が制圧し、ゴール前は上野と横山のコンビが冴え渡る。波に乗った横山はバイシクルシュートを繰り出すなど、果敢にゴールに迫った。16分、背後を取るもGK林彰洋に防がれる。24分、FKを再び頭で合わせるも枠外へ。守備でも横山は貢献。セカンドボールを確保するために尽力した。

確かなスキルを軸に、頻繁なポジションチェンジ、例えばCBの1枚を攻撃参加させるなどして試合を優勢に進めた流通経済であるが、決め手に欠ける。2トップにボールが入ると脅威であったが、綺麗に崩すことに執着した嫌いがあったことでフィニッシュに至る回数は限られた。

対照的に栃木SCは効率的かつ効果的な攻撃を行い、43分、44分と横山が連続ゴールでハットトリックを完成させた。逆転弾はカウンター、リードを拡げる一発はFKからのクイックリスタート。いずれもお膳立ては上野と佐藤だった。最高潮の雰囲気に水をさす。川鍋が掴み倒してPKを与える。これを田村洋平がブーイングを浴びながら冷静に沈める。ロスタイムに不要な1点を献上。後味の悪さが残った。

お口直しに高安が放ったミドルを契機に後半序盤からゴールに襲い掛かる。佐藤はループシュート、鷲田は超ロングシュート、横山は相手クリアボールに足を伸ばした。ところが好機を逸し、ラインが後退したことで緩くなったバイタルエリアを突かれ、流通経済に反撃の糸口を提供してしまう。押し込められる時間帯が続き、ついに後半24分に決壊する。池田圭のクサビから途中出場の西弘則に反転シュートを叩き込まれる。アドバンテージは消え去った。

「ブロックが作れていれば守りきれた。相手が来る前の準備、コミュニケーションが足りなかった」(柱谷監督)

所謂、アラート(機敏な。注意深い)な状態を保持できなかった。失点の原因は明らかだった。

「鬱陶しい、と思われるのが持ち味」

そう語るのは途中交代の石舘。懸命に同じくフレッシュな稲葉と前線から激しくボールを追い回した。アグレッシブなフォアチェックは地味ながら効力を働かせ、手綱を手繰った。前からプレスをかけたことでコースは限定され、落合と向がボールを掻っ攫いカウンターのスイッチとなる。35分に佐藤の左クロスから稲葉のヘディングシュートはバーを越えるも、40分に途中から送り出された小林成光のマイナスのクロスを石舘が頭で突き刺した。気迫がゴールとして結実した瞬間だった。

「10分あればFWにはワンチャンス来る。それをものにするか、しないか。ものに出来るのがFWの実力だと思っている」(石舘)

不機嫌だった先週とは打って変わり、決勝弾に満面の笑みを浮かべていた。

流通経済はパワープレーを敢行するも、栃木SCは上手くやり過ごし、勝点3を手中に収めた。

「連敗すると流れがズルズルと悪くなる。勝てたことは大きい」と斎藤。上野は「前回の対戦で負けているのが大きかった。昨年までだったら勝てなかったが、今年は勝ち切れる強さがある」と勝因と今季の強みを語り、「首位が負けるとカッコ悪いでしょ?」と最後に笑いを誘った。

内容には乏しかったが、同じ相手に2度負けず、連敗を回避。ホームでの連勝も途絶えさせることなく、最低限のノルマを果たした。リベンジは成った。

JFL後期第4節 栃木SC4―3流通経済大学 観衆3928人 @栃木県グリーンスタジアム

〈栃木SC〉交代:高安(→小林)、上野(→稲葉)、横山(→石舘)

〈流通経済大学〉GK林彰洋、DF石川大徳(→比嘉祐介)、山村和也、加藤広樹、宮崎智彦、MF宇佐美潤(→西弘則)、千明聖典、フランク・ベロカル(→林相協)、船山貴之、FW池田圭、田村洋平
  

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