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『プロの資格を得るために』

2008年7月20日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

ryu7.JPG石舘靖樹は腸が煮えくり返る思いを抱えながらベンチで戦況を見守っていた。

「学生相手に何やってんだ」

開始早々に失点するも、横山聡の3連続ゴールで試合を引っ繰り返す。3―1で快勝するはずの試合は、しかし前半ロスタイムにPKを蹴り込まれ、後半の半ばに同点に追い付かれたことで、クロスゲームとなってしまう。

「ヨコさん(横山)が盛り上げてくれているのに、3点も取られてしまった。FWはやっとゴールを取れたのに追い付かれることで、『また一からか』としょんぼりしてしまう」

前線の選手の思いを石舘は代弁した。

乱打戦は出来るだけ避けなければならない。そのためには、取るべき人が取り、守るべき人がしっかり守る。失点を最小限に抑え、作り出した好機を結果に結び付ける。今、チームのベースとなる戦い方は揺らいでいる。前節のソニー仙台FC、今節の流通経済大学に3点ずつの計6点も与えているからである。2試合続けて先手を取られもしている。守備は崩壊しているといっても過言ではないだろう。不安定さが望むべき試合運びを困難にしている。

「1対1で優位に立たなければならない」(落合正幸)

「個のところでやられている」(斉藤雅也)

失点の原因、問題点は顕在化しており、選手も自認している。個の力量が足りていないということを。

1失点目はダブルマークを容易く外され、2失点目は川鍋良祐がマッチアップで後手を踏み、3失点目は鷲田雅一が相手の鋭い動きに対応しきれなかった。昨季、柱谷幸一監督が求めてやまなかったのが“個の強さ”である。補強により手にしたはずだったが、開幕から重要な局面で競り負けるシーンが目に付く。守備陣から力強さは一向に伝わってこない。失点数ほどに内容は芳しくないのが実情である。

決定力不足が即座に解決されないように、個々のレベルも易々とアップするものではない。一朝一夕にいかないからこそブロックを築き上げ、組織で守り切ることの重要性は増すのだが、単に枚数がゴール前に揃っているだけの状態が失点を呼び込んでいる。引いて守りを固めることは悪くはないが、共通理解が出来ていないまま下がることは大きなリスクを伴う。

「コミュニケーションを取って欲しい」

怒鳴り散らすことも時には必要であるが、的確なコーチングが連動性を生み、危機に瀕する回数を減らす、と柱谷監督は考える。互いが声を掛け合い、気を配り、周囲を使い合うことで守り易くなる。意思疎通が図れていれば、個人の足りない部分を補足できるのだが、声が出ていないから機能は高まらない。不十分な準備とコミュニケーション能力の欠如が大量失点の一因となっている。

「もう少しメンタル的な強さが必要。プロでやっていく。飯を食っていく。それがなければ、この世界では生きていけない」(柱谷監督)

個の脆弱さは何も技術面に限った話ではない。精神面にも該当する。

ミスをする。1対1を制される。そこで下を向くのではなく、弱みを相手に、味方に、ベンチに悟られず、持ち直してプレーする図々しさを有していなければならない。「プロのメンタルに値しないところがあった」。指揮官は不満を包み隠さず露にし、厳しい言葉を投げつけた。プロとして不可欠な要素を保持していない選手が何人かいたからである。

栃木SCは昇格を懸けたシーズンを戦っている。J2、J1とステップを踏めるクラブであり、その中で結果を残せば国内のトップクラブに引き抜かれ、或いは海外へ飛び出すことも決して夢物語ではない。にもかかわらず、キャリアを積み重ねられる機会に恵まれているのに、上り詰めてやろうという剥き出しの野心は希薄である。

現状に甘んじていては、未来は切り開けない。ふてぶてしくて逞しいくらいでなければ、難攻不落の堅陣は敷けない。リフレッシュは必要であるが、オフの2日間を己と向き合う時間にあてるのも悪くないのではないか。現役生活は極めて短い。サッカーに身を捧げる時期があってもいい。

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