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プレーバック:対カターレ富山戦@栃木SC通信

2008年9月 6日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

記憶を辿ってみる。プロ生活を振り返ってみても出場停止、警告を受けた回数は数えるほどだという上野優作。

後半17分、イエローカードを提示される。

「僕自身、気を付ける。(カードを)もらわないように注意したい」

自省しながらも一方で、JFL2年目でも容易には拭い去れない審判の笛に対する違和感。「気を付けていても、もらってしまう」。パートナーを組む松田正俊も同様に戸惑いを隠せないという。昨年からカテゴリーをJFLに移すが、体に染み込んだJでの感覚は抜け切れていないそうだ。

大学リーグとの差異を感じたのは、ルーキーの斎藤雅也である。プレシーズンマッチで退場を宣告された。早々と「JFLの笛」の洗礼を受けた。今季、チーム全体として、基準の定まらないにジャッジに悩まされ、苛立っている感は否めない。これまで当然のように流されてきたプレーでファウルを取られ、自らのリズムを狂わされ、挙句の果てにカードまで頂戴してしまう。フラストレーションが溜まり、食い下がってしまうのも無理はないが、不要な抗議などで出場機会を失ってしまっては元も子もない。闘志は対戦相手に向けるべきである。

対カターレ富山(以下、カターレ)戦でも出場停止にリーチがかかっていた深澤幸次が、Pボックス内でドリブルを仕掛けたまではいいが、明らかに審判を欺く行為でシミュレーションを取られた。次節の出場が不可能となる。その他にも累積警告3枚で黄色信号が岡田佑樹、川鍋良祐、落合正幸と欠くことの出来ない選手に点滅している。向慎一の謹慎が今節解け、次戦は佐藤悠介と石舘靖樹が戻ってくるが、交代で主力がピッチ外へと追い遣られる事態は回避しなければならない。

「結局、最後に積もり積もって自分達の首を絞めることになる。注意しないと。チーム全体として意識していかなければならない」

上野は警鐘を鳴らす。

佐藤の3試合出場停止中に副産物として鴨志田誉の台頭、石舘が左ワイドで使える目処が立つなど底上げが図れた。1勝1敗1分けの五分と成績もまずまずである。しかし、タラレバになるが、例えば佐藤が継続的に出場していたならば勝点を4ではなく5もしくは6に伸ばせ、更に言えば9獲得できていたかもしれない。そう考えると今後の栃木SCにとって、怪我以上にファウルトラブルが順位の浮沈を左右する要素となるかもしれない。再度、フェアプレー精神の徹底を監督と選手には求めたい。

虎の子の1点を守り切りHonndaFCを退けた栃木SC。富山に乗り込み対ガイナーレ鳥取戦に続き、カターレとの「J2準加盟ダービー」に臨んだ。陣容はGK小針清允、DFは左から斎藤、鷲田雅一、川鍋、岡田、中盤はダブルボランチを落合と鴨志田が組み、左ワイドに向、右ワイドに高安亮介が配され、上野と松田が2トップに据えられた。

富山に拠点を置くアローズ北陸とYKK APの統合が発表されたのは、昨年9月のことだった。青天の霹靂とは、まさにこのことだろう。県サッカー協会主導で成された合併。スムーズに準加盟の権利を勝ち取り、初代監督にはYKKを率いていた楚輪博氏が就いた。昨季、優勝をさらった佐川急便東京と大阪の連合チーム(旧・佐川急便SC)に匹敵する戦力を有し優勝候補に挙がるも、ここまで12戦して5勝4敗3分けと中位に甘んじているのが現状である。メンバーを固定したのは栃木SC戦が今季初といったところに、「融合」を掲げるチームの模索と苦悩が透けて見える。

基本的な戦術に大差はなかった。2トップを軸にサイドから攻撃を繰り出す。前半の序盤、栃木SCは右の高安にボールを集める。カターレは長谷川満をターゲットにしながら松下和磨を背後に走らせた。拮抗した展開ながら幾分か優位に立っていた栃木SCであるが、左ワイドで初先発の向が機能不全に陥り、上野と松田へのボールの収まりが次第に悪くなるとペースが乱れる。長谷川がミドルを飛ばした30分あたりからカターレが流れを掴んだ。ボールを繋ぐ、または蹴る。使い分けの巧さで勝り、立て続けにゴールを脅かした。渡辺誠はCKのリバウンドから、松下は西野誠のロークロスからのヒールシュートに加えて、ロスタイムに朝日大輔のスルーパスから裏を突いた。シュートミスに救われ、ゴールライン上での上野のクリアにGK小針の捨て身のブロック。窮地を脱した栃木SCは、鴨志田のシュート1本に抑え込まれる。

0―0で迎えた後半。蓋をされていたサイドでの攻防で高安がイニシアチブを握れるようになる。次々と敵陣でFKを得るが、好機に結び付けられない。逆にハイボールから長谷川がフリックし、途中交代の石田英之に決定的なシュートを浴びた。が、GK小針が横っ飛びで弾き出す。難を逃れると深澤と横山聡を送り出して形勢を逆転しにかかる。だが、「流れは悪くなかった」と言うものの、「ポゼッションしていれば、落ち着いてゲームを運べたかもしれない。前へ急いでしまった」と高安。縦方向へばかりボールを動かしたことで、変化に乏しかった。尽く前線へ供給したボールを跳ね返される。29分には石田のバックヘッドから肝を冷やされる。驚異的な反応でGK小針がかき出すも、スタンドの大歓声に背中を押されたカターレの攻勢は続く。ゴール前で石田は危険な香りを漂わせた。

終盤に差し掛かると互いに中盤が間延びし、撃ち合いの様相が色濃くなる。圧を強めてきた相手の反動を利用してカウンターを打ち込みたかったが、しかし機会が巡ってくるも栃木SCは連携を欠いたことで自ら潰してしまう。勝点3を狙って送り込まれた稲葉久人は勝負所を見誤った。ゴールネットは揺れず。スコアレスでタイムアップとなった。

「アウェーの成績が悪いので流れを変えようと。立ち上がりは悪くなかったが、その勢いのまま点を取って攻め切る力強さが足りなかった」(上野)

アウェーでの連敗は2で止まるも、記録したシュート数はたったの3本。勝点1を分け合ったというより、辛くも手に入れたと表現する方が適切だろう。守備陣は奮闘するも、攻撃陣は沈黙したままだった。組し易い相手ではなかったが、お粗末なゲーム。それでも、柱谷幸一監督は前向きだ。

「失点0は大きい。悠介が戻ってくるので守備が安定していれば、攻撃面でパワーが出せる」

次節の相手は昨季の王者・SAGAWA SHIGA FCである。勝利をもぎ取り、拾った勝点1の価値を高めたい。 そして、勝ち切れなかった鬱憤を晴らすように果敢な、高揚感を得られるようなサッカーを披露して欲しい。

JFL第13節 カターレ富山0―0栃木SC 観衆2548人 @富山県総合運動公園陸上競技場

〈カターレ富山〉GK中川雄二、DF中田洋平、金明輝、濱野勇気、西野誠、MF野崎良、渡辺誠、上園和明、朝日大輔、FW長谷川満(→永冨裕也)、松下和磨(→石田英之)

〈栃木SC〉交代:向(→深澤)、上野(→横山)、高安(→稲葉)  

 

『単調と執着の狭間で』

攻撃回数はカターレ富山(以下、カターレ)と比べても劣っていたわけではなかった。右ワイドの高安亮介を起点にサイドアタックを仕掛けられていた。好機を演出できるカタチに持ち込めていたことは事実であるが、攻め切れたとの印象が希薄であるのは、やはりシュートで攻撃を完結させられなかったからだろう。柱谷幸一監督は「クロス、ラストパス、シュートの正確性とパワー不足」を原因に挙げた。攻撃を結べなかったことは小さくなかった。

多少アバウトなボールからでもフィニッシュにまで至ってしまう。これまで質量の隔たりとは無関係に対戦相手から与えられた脅威は、ゴールを強く意識した姿勢があったからに他ならない。翻って栃木SCにはシュートを打ち切れないことから怖さ、迫力、圧迫感が感じ取れなかった。ゴールを目指す意欲が著しく欠落していた。

こんなシーンがあった。深澤幸次の右クロスをファーサイドで待ち受けていたのは稲葉久人。ゴールを得るための選択肢はたんまりとあった。ダイレクトでヘディングシュートを放つ。一旦、胸でトラップしてから縦に突っかけて自らシュート、あるいはゴールライン深くまでえぐってからのセンタリング。Pボックス内ではエゴイスチックに振舞ってもいい。FWならば。稲葉が出した答えは、内側に位置していた松田正俊へのパスだった。間違いとは言い切れない。松田のシュートが決まっていれば賢明な判断と解釈されたことだろう。しかし、松田はもたついたことでシュートのタイミングを逸し、DFに阻止されてしまった。勝負しなかったことが裏目に出た一例である。

「ゴール前で消極的に映るシーンがあった」と振り返る向慎一は、「シュートが少なかった。もっとミドルを狙っていれば」と唇を噛んだ。鴨志田誉も同じような思いを抱いていた。「ボクやシン(向)がミドルを狙い、FWは多少強引にでも打つ必要がある」。そうすれば、シュート3本という不甲斐ない数字は残らず、勝点3を得られたかもしれないとの思いは強い。綺麗に打ってゴールを決めてやろう。そんな気持ちが大胆さとアグレッシブさを殺いだ。

キャプテンマークを巻いた落合正幸は言う。

「チャンスメイクで終わっている。シュートで終わっていない。スリッピーなグラウンドコンディションだからこそ、遠目からでも打てば何かが起こるかもしれない」

言葉は熱を帯び、鋭くなる。

「局面で『ボールを持っている選手がやってやる。イニシアチブを握ってやる』と思わないと。アタッキングエリアで遠慮していても仕方がない」

クロスを上げ切る。シュートを打ち切る。「やり切る」ことが出来なかったがために、焦燥感は次第に強まり、安易な方法に逃げてしまった。悪癖が露呈する。「狙ったわけではなく、苦し紛れに蹴り込んでしまう」(鴨志田)攻撃面の課題が。

「ツインタワーへ放り込まれた際のトレーニングをした」

そう話したのは、カターレのDFリーダー濱野勇気。2トップに照準を定め、前へとボールを入れてくることは想定済みだった。CBを組んだ金明輝と共に上野と松田に制空権を譲らなかった。栃木SCにとって前線へのボールの収まり具合が、好不調のバロメーターとなる。ストロングポイントを潰されてしまっては、思うようにサッカーを展開することは難しい。対策を練られた相手に対し、分かりきった攻撃を仕掛けることは無益であり、足枷としかならない。手詰まりと勝点の喪失は親密である。

一本調子と執着は紙一重の関係であるが、勝機が見出せないと判断したならば、状況に応じて別の手を打つべきだった。「真ん中に、バイタルエリアにワンクッションあればよかった。(2トップが)ラインの前で起点を作れていれば」と上野は悔い、「ボールを繋げていれば違う展開になっていた。カウンターや分厚い攻撃ができた」と、鴨志田はボールを走らせるべきだったと反省の弁。「闇雲に蹴り込んでいるから、FWにいいカタチでボールが渡らず、シュートが打てない」と続けた。

「繋いでボールを運んでから、DFラインをFWが押し込んで下げる。クロスを入れて、セカンドボールを拾っていく」

単調に前へボールを預けるだけではなく、ポゼッションしながら横方向の動きを取り入れ守備網を崩すパターンを柱谷監督は描いていた。が、ピッチに立った選手達は実行に移せなかった。トレーニング不足なのか、それとも着手できていないのか。

開幕から漂う攻撃面の閉塞感は、バリエーションの乏しさに起因している。ロングボールを放り込んでいくことを薄め、パスを回しながら打開を図っていく方向性を濃くすることが必要な時期に差し掛かっているのではないだろうか。スカウティングが成され、2順目ともなれば対戦相手も手の内を読んでくるだけに。

確たる型は存在する。それを変形、派生させる準備は整っているのだから、そろそろ次の段階へと強化を推進して行くべきである。引き出しを増やせないようでは、袋小路を彷徨いかねない。

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