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戦評:対カターレ富山戦@栃木SC通信

2008年9月 8日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

203.JPG些細なことかもしれない。結果論と言われれば、それまでである。もしかすると、大勢に影響はなかったのかもしれない。しかし、容易に見逃すことはできなかった。

前半終了後、驟雨と雷雨により、後半開始時刻は45分もずれ込んだ。再開がアナウンスされた後、先ずピッチに顔を出したのは、前半を1―0とリードして折り返したカターレ富山(以下、富山)だった。ホームの栃木SCはギリギリまで“待機”していた。

「中断の可能性もあると考えていた」敵将・楚輪博監督は、中断期間中の様子を語る。

「うちはサブトラックで動いていた。栃木さんは座っていた。だから、『しっかりやる姿勢を見せようぜ』と話した」

栃木SCの前半45分は芳しいものではなかった。頭を整理する時間、修正点を話し合う時間は必要不可欠だった。元来、ハーフタイムにはたっぷりと時間を使う。しばしば審判に促され、ようやくロッカールームから出てくる、「遅刻」の常習犯である。そのような嫌いがあるにしても、富山戦では相手より先にピッチへ足を踏み入れ、水を含んだ芝の状態を確かめるなど、先手を取るべきだった。

「速く動いてピッチコンディションを確認し、チャレンジャーとして臨む」(楚輪監督)

ビハインドを背負った栃木SCに必要だったのは、後半に向けて富山が入念に行った下準備と、気持ちだったのではないだろうか。後半の序盤に押し込めたとはいえ、総じて気概に乏しかった。対戦前には順位で上回っていたが、試合では劣勢に立たされていた。ならば、雨を見方につけるために、恵みの雨とするために、折り返し地点を過ぎた時に少しでも前に出ることで、精神的に揺さぶりをかけなければならなかった。

「雰囲気的にも選手同士で声を掛け合うなど、富山の方が勝ちたい気持ちが勝っていた」(稲葉久人)

消極的に振る舞ったことは小さくなかったといえる。仮にロッカールームを先に飛び出す勢いが栃木SCにあったならば、結果は異なっていたかもしれない。勝ち運に見放されたチームは、勝機を手繰るために必須の積極性を欠き、受け身に回ってしまった。それでは、「トーナメントが一戦一戦続く」「このゲームに勝たないと4位以内が見えない」、と一戦必勝の思いで挑んできた昇格レースの好敵手に勝てるはずがない。

悪しき流れを断ち切れる機会を得ながら、自ら逸した栃木SCの敗戦は決して偶然ではなかった。


4試合未勝利も栃木SCは首位を維持。前半戦に稼いだ貯金が物を言っているものの、前節にHondaFCに屈したことで、差は僅かに1に縮まり、懐はかなり寂しくなった。蓄えが底を突く前に、陥った負のスパイラルから抜け出さなければならない。栃木SCの陣容は、先週の対水戸ホーリーホックとのトレーニングマッチとほぼ変わらなかった。GK小針清允、4バックは左から斎藤雅也、鷲田雅一、照井篤、岡田佑樹、中盤は底に落合正幸と向慎一、左ワイドに深澤幸次、右ワイドに小林成光が入り、上野優作と横山聡の2トップ。変更点は川鍋良祐が外れ、故障明けの鷲田が復帰。今季初出場の照井とセンターバックのコンビを組んだ。

5連勝後に2連敗。栃木SC同様に失速気味の5位・富山は、中盤をボックスにした4―4―2を選択した。「ボールも人も動く」サッカーをコンセプトに掲げている。

「やってきたことへの強い意志が足りなかった」

柱谷幸一監督が嘆いたのは、トレーニングの成果が全く発揮できなかったからである。タッチ数の少ないパス回しで相手を翻弄し、2トップを利しながらサイドに振る攻撃が展開できなかった。

立ち上がりこそポゼッションを意識したプレーが散見されたが、時を経るに連れて鳴りを潜める。原因を向は、こう語る。

「(ボールを)大事にしようとし過ぎた」

慎重に、ミスをしないようにプレーしたことで、アグレッシブさは殺がれていった。前へボールは入らず、サポートに行かず、攻守の切り替えでも後手を踏んだ。大胆さは損なわれ、無難なプレーに終始した。

FKからのトリックプレーで石田英之にゴールを脅かされると、自陣でプレッシャーを受けていないにもかかわらず、単純なクリアが目立ち始める。濱野勇気という有能なDFがラインを束ねる富山に単調なロングボールが通じるはずもなく、トップへのボールの収まりはさらに悪くなった。

対照的に富山は前線の長谷川満と石田がボールをしっかりと預かり、セカンドボールの確保率も高まったことで優位に立つ。自陣、敵陣でのセカンドボールへの反応を繰り返し確認してきた富山。尽くボールを拾った。トレーニングを実践で生かす。先制点のシーンもトレーニングが実を結んだ、と楚輪監督は話す。32分、渡辺誠がリフティングしながらドリブルを仕掛け、追い越しをかけた朝日大輔がスルーパスに反応。右から豪快にゴールネットを揺らす。背後から追い越しをかける。狙ったカタチから先取に成功。ゴールで波に乗った富山は立て続けにゴールに襲いかかる。

綻びは早急に修繕しなければならない。失点を喫したサイド、つまり栃木SCの左サイドは機能不全だった。仕事が明確でなかった深澤はサポートに乏しかったこともあるが、フリーで上げたクロスがGK中川雄二の正面に飛び、ポジショニングも曖昧だった。精彩を欠き、前半42分に引っ込められた。代わりに稲葉が投入される。

バケツを引っ繰り返したような突然の豪雨と雷による45分の中断を挟んで開始された後半戦。クリアボールに食いつかれそうになる危機を脱すると、次第に栃木SCにリズムが生じる。左右のサイドから圧をかけられるようになり、稲葉はサイドでの突破に加えて、Pボックスでも存在感を際立たせた。だが、アタッキングサードにまでボールを運ぶが、パスやクロスが引っかかってしまい好機を生み出せない、じりじりした時間帯が続く。

拙攻を重ね、前掛かりになった背後を取られ、カウンターを浴びると、形勢はまたしても富山のものとなった。後半に記録したシュート数は同数でも、際どいシュートを枠内へ飛ばした富山と、空砲に終わった栃木SCとでは雲泥の差があった。渡辺に石田と相手の決定機をGK小針が渾身のセーブで凌ぐが、24分にFKから鷲田が長谷川に制空権を譲ったことで再びゴールを割られる。

2点を追う栃木SCは、33分にCKから照井が折り返したボールを横山が頭で捻じ込む。反撃の狼煙は上がり、小林の右クロスから横山がファーで再度ヘディングシュートを打つが、ポストに嫌われた。これで栃木SCの攻撃は打ち止め。坂本勇一、松田正俊を次ぎ込みパワープレーを敢行するも、富山も高さに長けるDF金明輝を送り出し、対策を練ったことで攻撃は滞った。都合3度、相手の絶好機を防いだGK小針の奮闘に攻撃陣は報いることが出来ず、3連敗と泥沼からの脱出は叶わなかった。前日、横河武蔵野との決戦を制したHondaに首位を明け渡しもした。

「同じ過ちを繰り返している」

そう話すのは横山。不安定な立ち上がりを引きずることで相手に先行を許し、試合を難しくしている。その「染み」は容易く取れない。だが、危機的な状況を跳ね除けなければ次へは進めない。勝ち切れた前半戦のような流れを掴むためには、自信を取り戻すには、やはり勝点3を取るしかない。言い飽きてしまったが、絶対条件は先に失点しないこと、である。これをクリアしない限り現状では暗闇から這い上がれない。

JFL後期第9節 栃木SC1―2カターレ富山 観衆3321人 @足利市総合運動公園陸上競技場

〈栃木SC〉交代:深澤(→稲葉)、上野(→坂本)、向(→坂本)

〈カターレ富山〉GK中川雄二、DF中田洋平、堤健吾、濱野勇気、西野誠、MF渡辺誠、景山健司(→金明輝)、上園和明、朝日大輔(→姜鉉守)、FW長谷川満、石田英之(→木本敬介)
  

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