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『精神的な摩耗が招いたパフォーマンスの低下』@栃木SC通信

2008年9月 8日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

kt2.JPG落胆の色は濃かった。溜息をつくように話し始めた。

「分かっているがやろうとする意志が足りない。凄く残念だった」

名指しこそ控えたものの、容易に想像できる。柱谷幸一監督が前半の終盤で交代を告げた深澤幸次に関して主に言及していることを。

「上手くボールが収まらなくても守備で貢献する。動き回り、ボールを追っ掛ける。他にも出来ていないことがあった。メンタル的な弱さを感じた」

キャプテン佐藤悠介と石館靖樹の出場停止により、左ワイドでの先発機会が巡ってきた深澤だが、攻守に漠然とした印象しか残せずに、42分間でピッチを去った。サイドに開ければクロス、内に絞れば2トップと絡むなど、必死に自分の特性を活かそう試みたが、空転した感は否めない。左サイドでコンビを組んだ斎藤雅也を孤立させ、自らも浮いてしまうシーンが目に付いた。持ち味を発揮できなかった。

「何人かプレッシャーを感じていた選手がいた。怖がることはない。(自分のプレーを)やればいいのだが」(柱谷監督)

プレッシャーに蝕まれた一人に、向慎一が挙がる。

「硬さがあった」

向本人の弁である。前半、ワイドの位置でボールを持てる時間があると察知した。距離の近かった深澤のサポートに回れると思った。だが、行けなかった。消極的だった自己のプレーを、こう例えた。「安全牌」。物怖じしないはずの向だが、前へ出られなかった。推進力を働かせ、攻撃に厚みを加えられなかった。ボールを失ってはいけないとの思いが、普段通りのプレーを躊躇わせ、ボールを散らしながら攻撃のリズムを作り出すことを困難にした。リスクを背負う覚悟が不足していた。稲葉久人が投入されてからは、アグレッシブにサポートを行い、前方へ飛び出すことも出来た。途中から修正が利いたのだから、最初から不可能ではなかったはずである。「不満が残る」。唇を噛んだ。

出来るはずのプレーが出来なくなる。原因は明らかである。これまで晒されたことのないプレッシャーである。それは勝利の味を忘れたことで自信を喪失していることに起因している。結果を欲するあまり、プレーが慎重になり、思い切りの良さを損なわせた。

「流れが悪く、ナーバスになっている」

柱谷監督は現在のチーム状態をそう見ている。殊に大卒新人、または2、3年目の選手が精神コントロールに欠けている、と見て取る。大学リーグでの豊富な経験を有していても、舞台が変われば、圧し掛かるものも自ずと変化する。今現在、プレッシャーを上手く処理することが出来ていない。

チームの編成上、若手を起用せざるをえない。脆弱なメンタルでは、この先の胃がきりきりするような昇格レース終盤を勝ち抜けない。そこで、メッセージを発した。開幕からセンターバックの一角を占めてきた川鍋良祐を外したのである。代わりに入ったのはベテランの照井篤だった。起用の意図は、こうだ。経験のある選手のプレーを見せることで若い選手に刺激を与える。2失点はしたものの、照井自身のパフォーマンスは及第点だった。声を張り上げ、球際では激しく当たっていた。闘志は全面に押し出されていた。しかし、カンフル剤とは成り得なかった。指揮官の思いは届かなかった。

萎縮した選手がいた一方で、溌剌とプレーした選手もいる。交代出場の稲葉である。1対1になれば果敢にドリブルで勝負を挑み、FWとポジションを入れ替えてはゴールを狙いもした。手詰まりの状況を打開し、起点を構築したのは紛れもなく稲葉だった。縦へと仕掛け続けた稲葉でさえ、「首位のプレッシャーがあると感じるし、重みを感じている」。削り合いを続けることによる精神的な消耗は、ここにきて小さくなくなってきている。精神的疲労はパフォーマンスの著しい低下を招いている。

「若い子たちにいいプレーを出させてあげたい。いい面を引き出してあげたい」

ゲームキャプテンを務めた落合正幸は、経験で劣る若手を伸び伸びプレーさせられなかったことを悔いた。だが、柱谷監督の言葉を借りれば、「大卒は(経験が)浅いではすまされない」。結束力は勝者となったカターレ富山を見れば分かるように重要ではあるが、経験値に勝る選手に頼りきりではチームとしての機能性は高まらず、個人の成長も望めない。

首位から滑り落ちたことで一戦の比重は、より一層高まった。10月に入ればノンストップで身を引き裂かれるような激戦が続いていく。常人には計り知れないプレッシャーが襲ってくる。それを力に変換できるだけの精神的な逞しさ、余裕がなければ押し潰されてしまう。幸いチームには佐藤という逆境をプラスに転換できるクラッチプレーヤーが、最高のお手本がいる。話を聞いてもいいだろうし、一挙手一投足に目を凝らすことで必要な部分を盗むのもいいだろう。決定的に欠落している自信を取り戻すには、自らがアクションを起こし、勝ち取るしか他に手はない。

対ファジアーノ岡山戦ではフィールドプレイヤーの平均年齢が低かったにも関わらず、勝利を飾ることができた。ベテランの後方支援があったにしても、若手主体でも十分に戦えることは実証されている。どんな状況であろうと縮こまることはないのである。  

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