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プレーバック:日立栃木ウーヴァスポーツクラブ対青森山田高校@第88回天皇杯全日本サッカー選手権大会1回戦
2008年9月20日 大塚秀毅 | この記事のページ | コメント(0) | トラックバック(0)
天皇杯2回戦に臨む日立栃木ウーヴァスポーツクラブ。2センターバックの一枚、栗原が出場停止、その他のメンバーも社会人チーム特有の理由から離脱を余儀なくされるとのこと。ベストの布陣でも勝機を見出し難い、格上のジェフリザーブズに対し、どのように戦うのか。空中戦に長ける栗原を欠くことで、GK井野正行は守備範囲を広げる必要性を感じていた。個人的には1回戦で中盤をコントロールしていたボランチの前田和也がJFLレベルのプレッシャーの中でもボールを散らせるかに注目したい。
【回顧録】
第88回天皇杯全日本サッカー選手権大会1回戦は9月13、14日の2日間の分割開催となった。初日にはSAGAWA SHIGA FC(滋賀県)、ガイナーレ鳥取(鳥取県)、TDK SC(秋田県)のJFL3チームが、カテゴリーが下の地域リーグに籍を置くチーム、大学生に苦杯を舐めるなど、ちょっとした波乱があった。今年も昨年同様にHondaFCが成した下剋上が各地で連鎖的に起こるのだろうか。
栃木SCがJFL前期首位ターンを果たしたことにより、空いた県代表の枠を手にしたのが日立栃木ウーヴァスポーツクラブである(以下、日立栃木)。作新学院大学を下し(5-2)、3年ぶり2回目の本選出場。前回は初戦でアイン食品に1-2と惜敗し、涙を呑んでいるだけに初白星が欲しいところだろう。4-4-2の陣容はGK井野正行、DFは左から工藤裕晃、林容史、栗原英明、高木健太、中盤は前田和也と舘澤統吾のダブルボランチ、左に石川裕之、右に石川大、三輪宏真と斎藤巧が2トップを形成した。
対するは5年ぶり、こちらも2回目の出場となる青森山田高校(ちなみに2003年度は5-2で栃木SCに敗北を喫した)。県決勝で八戸大学を4-0で破るも、高円宮杯全日本ユース(U-18)サッカー選手権大会と日程が重複しているために、「普段は出場していない9名」(黒田剛監督)を先発起用せざるを得ない状況に陥り、ベストメンバーを組むことは困難を極めた。
立ち上がり、日立栃木は冷や汗をかく。栗原のGKへのバックパスが弱く、食いつかれそうになる。辛うじて難を逃れると、Pボックス内で石川裕之に絶好機が巡ってくる。が、「トラップしようか迷った」ことで左足のアウトにかけたシュートは枠を逸れてしまう。
逸機するも三輪の安定したポストプレーを軸に、前田がボールを両サイドに散らした日立栃木が優勢に試合を進める。劣勢の青森山田は拾ったセカンドボールを早めにDFラインの背後へと送る、シンプルな攻撃を繰り出すも、それしか手立てはなく、柔軟性に欠けた。しかし、黒田監督曰く「個の技術がどれだけ大人相手に通用するのか」を主眼に置いたことから、連係の部分に関して元々多くは望めなかったのである。拙攻を重ねたのも致し方がなかったといえる。
流れを掌握するも雑なプレーからスローダウンしてしまった日立栃木は、中盤の4人に加えて両サイドバックもポジションを入れ替えるなど目まぐるしく動くが、好機を生み出せない。逆に縦パス一本をクリアしきれずにドリブルシュートを40分、サイドを切り崩され至近距離からのシュートを43分に浴びてしまう。いずれもGK井野の好守により事なきを得るも、仮にゴールを割られていたとしたら勝機は遠のいたかもしれない。所属する関東1部のリーグ戦後期では出場機会に恵まれなかったGK井野であるが、大舞台で大仕事をやってのけた。
「あの時間帯に取れたことで後半へ向けて余裕を持てた」と横浜誠監督は振り返り、「得意のパターンで点を取れたことが大きかった」とはキャプテン前田の弁。決定機を阻止した後の前半ロスタイム、日立栃木が先制点を挙げる。左からのFKをファーサイドで栗原が頭で折り返し、中央で舘澤が合わせた。ヘディングシュートが突き刺さり、内容はお粗末ながらも前半をリードして折り返した。
後半も序盤に先制点と全く同じカタチから、つまりFKから栗原の高さを利してゴールを窺った日立栃木だが追加点を奪えず。球際での甘さが目に付くようになると、青森山田にシャープなカウンターを繰り出されるなどリズムを乱す。形勢は徐々に相手に傾きかける。だが、前田が食い止めた。石川大とのワンツーから中央突破を図り、鮮やかに2点目を奪い去った。「自分は声を出して引っ張るのではなく、プレーで引っ張る」タイプと自らの特徴を語った前田。豊富な経験を活かし、悪しき流れを断ち切った。リードを広げた日立栃木は、栗原が2枚目の警告によりピッチから追い出される数的不利の状況も、バランサーとしての役割を全うし、味方が留守にしたスペースを埋め続けた石川裕之を中心に守り切った。スコアを動かされることなく2-0と完封勝利を収め、ジェフリザーブズと対戦する2回戦へと駒を進めた。
昇格を目指すJFLのチームとの対戦に向けて横浜監督は、「相手にボールを支配されるかもしれないが、0に抑えてチャンスで点をとりたい」と抱負を述べた。会見に同席した(滅多にお目にかかれない光景)前田は言う。「あと1試合、勝てばJと対戦できる。昨年まで在籍した(モンテディオ)山形とやりたい」。ジェフというハードルを超えて古巣との対決に思いを馳せた。
体格で勝る相手に対して怯まずに立ち向かえたこと、同年代の選手とマッチアップしただけでは見えてこない選手のキャラクターが把握できたこと、冬の選手権を前に戦力の見極めが改めてできたことを収穫とした黒田監督。敗戦を受け入れつつ、「日程をどうにかして欲しい」と訴えた。これは負け惜しみではない。5年ぶりに県予選を突破したメンバーが本戦では高円宮杯と重なることで使えない。ガチンコ勝負が出来る唯一の場を奪われてしまう事態を「勿体ない」と嘆いたが故のメッセージである。黒田監督の言葉は次第に熱を帯びた。「高円宮杯に出場することが決まっているチームには、水曜日にナイターの試合を行う」などの構造的な改革の必要性を説き、協会に日程調整の工夫を求めた。Jチームだけが優遇措置を受けられる現行の仕組みに疑問を投げかけもした。現場の声が上にまで届くことを願う。
天皇杯全日本サッカー選手権大会1回戦 日立栃木ウーヴァスポーツクラブ2-0青森山田高校 観衆545人 @栃木県グリーンスタジアム
<青森山田高校>GK櫛引正敏、DF宮嶋壮磨、赤坂勇樹、谷上誠、矢島光桂、山下翔平(→北嶋佑一)、MF天内佑輝、高橋裕司(→中島龍基)、三田尚希、FW高屋翔平(→見守憂)、成田鷹晃
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