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戦評:対SAGAWA SHIGA FC戦@栃木SC通信

2008年10月 5日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

164.JPGハーフタイム、柱谷幸一監督は選手に問い掛けた。

「サッカーをやっていて楽しいのか?」

無難な立ち上がりだった。アウェー、しかもチームは3連敗中と、中断期間を挟んだものの状態は芳しくない。リスクを冒して前からボール狩りを行う必要はない。ゆったりとしたリズムは、置かれた状況を考慮すれば悪くはなかった。ただし、よくもなかった。スコアが動き易い、開始10分を過ぎても、変調しなかったからである。出力は一向に上がらない。淡々と同じリズムを刻むだけ。攻守に彩が全くなかった。まっさらな画用紙に延々、鉛筆で直線を描いているようだった。

「前半は面白くなかった。仕掛けようとしない。パスを受けない」

柱谷監督は45分を振り返り、バッサリと切り捨てた。自分達からアクションを起こさないのだから、事態を改善し、面白くできるはずがない。受け身のサッカーに終始したことで、イニシアチブはSAGAWA SHIGA FC(以下、佐川滋賀)に移り、先制まで許してしまった。

叱咤されて臨んだ後半戦。早々に追い付く。ゴールでついた勢いを維持して攻勢に転じるも、押し切ることは、試合を引っ繰り返すまでには至らなかった。バイタルエリアから小林成光がシュートを放つのが精一杯だった。流れは来ているのにもかかわらず、積極性に欠けることで、波に乗り切れない。手綱を握っただけに過ぎず、手繰り寄せることはできなかった。またしても、形勢は佐川滋賀に傾き、敗北を喫した。

「たかがサッカー。何かを失うわけじゃない。思い切りプレーしなければ面白くないのに・・・」

受動的に振る舞い、能動性に乏しい選手に対し、指揮官は首を傾げるしかなかった。

最善を尽くし、それでも力が及ばなければ諦めもつくだろう。が、力を出し切れずにプロとしての資格を剥奪され、ハイレベルなステージで己を磨く機会を失うとしたら、それほど悲しく、後々まで悔いが残ることはないのではないか。

「純粋に点を取れば勝つ。取れなければ負ける。もう一度、原点に戻りサッカーを楽しむ」

苦境に立たされた今、最も必要なもの。上野優作は、伸び伸びとプレーすることを挙げた。新たな試みと泥沼の連敗に起因する重圧。選手達から感じるのは、痛々しいほどの窮屈さである。ボールに初めて触れた頃、無我夢中でボールを追っ掛けた頃の初々しい感情を思い出し、失敗を恐れることなく、溌剌とプレーするべきである。積極的なミスに罵声は飛ばない。咎められることもないのだから。

サッカーで飯が食える。ほんの一握りの選手にしか与えられない権利を手放すのは、あまりにも勿体ない。


2位に陥落した栃木SCは約1か月のブレーク期間中、御殿場でミニキャンプを張り、佐藤悠介をボランチに据える4―2―3―1を取り入れ、トレーニングマッチを組むなど、リーグ戦再開に向けた準備を行った。再開後の初戦である対佐川滋賀戦を、「キャンプが有意義だったと思える試合にしたい」と意気込みを語った柱谷監督。連敗を3で食い止め、天皇杯を含む怒涛の9連戦(3回戦に勝利すれば試合数は膨らむ)の入り口を、味を忘れた勝利で飾るべく、選抜した11人は以下の通り。GK小針清允、4バックは左から斎藤雅也、鷲田雅一、照井篤、岡田佑樹、中盤は落合正幸と佐藤のダブルボランチ、上野の1トップ下に稲葉久人、横山聡、小林が並んだ。

リーグ戦連敗で14位に沈み、天皇杯も1回戦で敗退した昨季の覇者・佐川滋賀。こちらも4―4―2の変則である4―2―3―1を選択した。

上野がピッチの横幅を上手く使い、落合が潰して得たボールを佐藤が散らす。ある程度は狙い通りに試合を運んだが、スローインから中村元にトラップであっさりと体を入れ替わられ、フリーでのシュートを打たれたあたりから引き気味になる。全体が下がることでボールを奪う位置が低くなり、相手が帰陣してしまい、カウンターを繰り出すも、望んだほどの成果は得られなかった。タッチ数の少ないパスが散見されるも、フィニッシュには結びつかない。

次第にポゼッションを高め、左サイドを軸に攻め入った佐川滋賀。31分にPボックス内でフリーとなった竹谷英之のゴールで先手を取る。空中戦に長ける竹谷に頭ではなく、左足で豪快に決められた。個のスキルで劣るも、モビリティと運動量でカバーした佐川滋賀の攻撃に栃木SCは手を焼く。ショートカウンターから小林の右クロスを稲葉が合わせるもヘディングは力なく、佐藤の直接FKもGK森田耕一郎に弾き出されてしまう。攻撃を仕掛けるも、シャープさが欠落し、ゴールを脅かせなかった。攻守両面でかかる両サイドへの負担、佐藤にボールを集中させ過ぎたことによるスピードダウンが原因だろう。

「もっと怖がらずに行こう」(柱谷監督)

指示を仰いでから覚醒するのは、指揮官の本望ではないが、後半開始1分にFKの混戦を横山が制する。試合を振り出しに戻し、ボールを取る位置が高くなったことで、形勢を逆転するも、ゴールを脅かせなかった。

「いい時間帯に1点を返せた。その流れで2点目を取れなかったことで、自分達を苦しめた」

先制され、同点とするも、勝ち越せない。横山は、「自分達の足りない部分」を、歯を噛みながら語った。

栃木SCの活気は徐々に失われ、逆に劣勢にあった佐川滋賀が奪ったボールを縦に早く流し込み、ゴールに迫った。25分、FKから山根伸泉にマークを剥がされ被弾。

交代出場の向慎一からのスルーパスに、前線に残っていた佐藤が左足を振るも僅かに枠を反れた。機を逸するも同点としたい栃木SCは、4―3―3と前に厚みをもたらす。人数を揃えるが、中盤を薄くしたことが裏目に出る。バイタルエリアを巧みに利用された。致命的となった3点目は竹谷と中村がゴール前で起点を構築し、裏を突いた米倉将文に奪い去れた。

「広いスペースでの1対1は、うちのセンターバックでは厳しい」(柱谷監督)

ならば、もっと警戒すべきだったのではないか。前掛かりになっていたとはいえ1対1で負けてはいけないことを前提に、安易に背後へボールを入れられないようにする、など。失点は個の責任であるが、対戦相手から脆弱と読まれている中央から崩されたのだから組織力が不足していたともいえる。

ロスタイムに横山が競り合いで獲得したPKを佐藤が蹴り込み、1点差とするも焼け石に水だった。点差は最少であるが、内容にはかなりの開きがあった。

連敗はとうとう4にまで伸びてしまった。順位は逆転されず2位のままだが、日曜開催の3位ファジアーノ岡山、4位横河、5位カターレ富山との勝点差が縮まる可能性は高く、つい最近まで独走していた栃木SCが後続の集団に飲み込まれるのは時間の問題となった。

事態は更に深刻度を増している。病巣は容易に摘出できない。しかし、「ここを乗り切らないとJFL優勝は難しい」とは横山。続けて「(厳しい)局面を打開するのはピッチの選手。選手達で打開するしかない」。サポーター、コーチ陣も共闘するが、結局は選手自身がやるしかない。誰も助けてはくれない。だからこそ、佐藤は強いプロ意識を求める。

「選手一人一人がプロとして、色んなものをボクだったら家族を背負っている。若い選手はそれが何なのか、問いかけて欲しい。(昇格レースは)そんなに甘いものではない」

JFL後期第10節 SAGAWA SHIGA FC3―2栃木SC 観衆1181人 @佐川急便守山陸上競技場

〈SAGAWA SHIGA FC〉GK森田耕一郎、DF旗手真也、谷奥優作、影山貴志、大杉誠人、MF大沢朋也(→吉村修平)、加納慎二郎、山根伸泉(→岡村雅幸)、田谷高浩(→米倉将文)、FW中村元、竹谷英之

〈栃木SC〉交代:小林(→向)、稲葉(→深澤幸次)、上野(→松田正俊)
  

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