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プレーバック:対ロアッソ熊本戦@栃木SC通信

2008年10月11日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

※メンバーが入れ替わっているために参考にならない可能性大。

場所は足利市。天気は雨。ぬかるんだピッチ。相手はロッソ熊本。ちょうど1年前、1―3と大敗を喫した時と全く同じ状況が揃った。汚辱を注ぐために待ち焦がれた対戦。リベンジを果たし、1ヶ月近く白星のないホーム試合で勝利を収め、上位に肉薄したいところ。

アウェーの横河武蔵野FC戦から中2日と強行日程が組まれたゴールデンウイーク3連戦の最終日。「準加盟クラブ」同士、ライバル対決のスタメンに選ばれたのはGK原裕晃、4バックは左から高野修栄、山崎透、谷池洋平、北出勉、中盤はボランチに山田智也と堀田利明、右に小林成光、左に高秀賢史、センターFW山下芳輝の下に横山聡が配された。前節、温存された小林成光と山下が先発復帰した。

1年でのJ2昇格プランが頓挫したロッソ熊本(ロッソ)。新に元日本代表DF上村健一、JFLで実績のあるFW北川佳男(元アローズ北陸)、小林陽介(元横河武蔵野FC)などを補強し、戦力に厚みを持たせた。不退転の決意、本気度が伺える。ジェフリザーブズ、ガイナーレ鳥取に足元をすくわれ2連敗したが、その後は3連勝と持ち直して栃木SC戦に挑んできた。フォーメーションは中盤をボックス型にした4―4―2。2トップは現JFLトップスコアラー(9ゴール)の高橋泰と小林陽介を組ませた。“栃木SCキラー”北川はベンチスタートだった。

栃木SCが0―1と惜敗したFC岐阜戦に遥々、自ら足を運んでスカウティングを行っていたロッソ・池谷監督(本稿著者の隣席で細かいメモを取っていた)。「狙い所は分かっていた。そこを封じていいところを出せた」と視察した甲斐があったことを口にした。

池谷監督が留意した点は「左が速くワイドに張り出していた。ボランチからの展開」だった。立ち上がりから左の高秀を自陣に釘付けにしようと、ロッソは右から圧力を掛けてきた。高秀を消去する作戦に打って出る。この先制攻撃は成功した。「相手は縦を切ってきた。スピードを殺しに。常にマークが2枚ついていた。背後に弱いと聞いていたが、背後を突けなかった。警戒されていた」と高秀。一旦は圧が弱まるもボールが入ると対面の市村篤司が適度な距離感で応対してきたことで、ドリブル突破からのセンタリング、CKを獲得するなど本来の役割を全くさせてもらえなかった。

また、「相手がイニシアチブを持っていた。積極的なDFができなかった」とは堀田。山田と縦の関係を築き喜名哲裕と小森田友明のダブルボランチをチェックするはずが、逆に掴まってしまう。「相手にコントロールされていた感じ」と掌の上で踊らされているような感覚を味わい、「前を向いて仕事ができなかった」と厳しいプレスの餌食となる。ボールを持たされてしまう。

高秀と堀田。マークすべき選手をしっかりと抑え込んだロッソ。昨季の対戦でも3―5―2から4―4―2に布陣をいじったことが奏効したように、今回もスカウティング能力に長けていることを証明した。

「相手のプレッシャーが早く起点を作らせてもらえなかった」と高橋監督が言う通り、サイドの高秀は進路を塞がれ、供給源の堀田が潰されたことで「GKとDFの間に早いボールを出そう。両サイドを突こうとしたがボールが出なかった」。そのため有効な攻撃が繰り出せなかった。

出鼻を挫いたロッソはロングボールとテンポのいいパス回しを織り交ぜながら攻撃を組み立てた。「跳ね返しても跳ね返しても、ボールが跳ね返って来た。セカンドボールを拾えずにラインが上げられなかった」(谷池)。上手くスペースへとボールを蹴り込んできたロッソの戦術にはまる。明らかに今までの相手とボールの質が異なっていた。ボランチはDFラインに吸収され、セカンドボールを先に取られてはミドルレンジからシュートを浴び続けた。熊谷雅彦のミドルを皮切りに西森正明、小森田が枠内を捕らえる正確なシュートを打ち込んできた。GK原のファインセーブで難を逃れるも、緩いバイタルエリアを我が物とされてしまう。

激しいプレッシャーにさらされ、ビルドアップもままならず、ボールの収め所が見出せなかった栃木SC。高秀のパスから横山聡が飛び出すも上村のスライディングブロックに阻止され、ルーズボールを高野が上げるが中の山下はヘディングシュートを打ちきれなかった。前半、唯一の好機を逃す。

出し手と受け手のイメージが共有されることなく、パスを出しては相手のボランチラインで引っ掛かるシーンが多発し、高秀一辺倒の単調な攻撃には余裕の対応をされてしまう。山下のポストプレイなどを挟み、ワンクッション入れていればマークのズレも生じたのだろうが、工夫が足りなかった。

優勢のロッソも序盤のミドル以外、好機を作り出せなかったが熊谷のスルーパスから西森が抜け出しシュートするもふかす。最初の45分間はスコアレスで終える。

雨脚が強まった後半。秒殺される。DFの間に走り込んだ高橋に熊谷が浮き球のパスを届ける。帝京高校の同級生である山崎が先に体を入れるが、突っつかれボールを掻っ攫われる。勢いそのままに強奪したボールを強シュート。ゴールネットを揺らした。開始1分もしないうちの失点。「集中力不足だった」。キャプテン北出は臍を噛んだ。

先制点を手にしたことで勢い付いたロッソはスピードが増す。簡単にボールをさばいてはサイドに運び精度の高い、危険なクロスを上げてきた。熊谷、小林陽介が決定的なシュートをするが、高野が必死のDFで食い止める。西森の良質なセットプレイのボールから小森田、矢野大輔にヘディングをあわされ、喜名にミドルシュートで脅かされもしたが、守備陣が踏ん張り追加点を許さなかった。

失点を1に留めていた守備陣の奮闘にゴールで応えたかった攻撃陣だが、「苦し紛れのパスが多くて、グラウンドコンディションが悪かったこともあるがボールが繋げなかった。DFがロングボールに強いことは分かっていたが対抗してしまった」と横山聡が振り返ったように、攻撃は前半から改善の兆しすら垣間見られなかった。

それでも、山田を下げ、西川吉英が投入されると、僅かながら活気付く。小林成光の右クロスからセンターで高秀が、CKの流れの中から再び小林成光が入れたクロスを山崎がヘディングシュート。だが、高秀のシュートはGK小林弘記の正面を突き、山崎は頭を振り過ぎたことで枠内に飛ばせなかった。同点機を逸する。

「中盤の優位性をもてていた」(池谷監督)ロッソは出足が鈍い栃木SCのプレスを飄々とかわしては、2トップにボールを預けた。全体的に噛み合いの悪い流れを変えようと小林成光を引っ込め茅島史彦を送り出すが、さしたる効果はなかった。ロッソペースに変化はなく、左から西森が供給したクロスを小林陽介にヘディングで綺麗に流し込まれる。リードを広げられて終戦。

FC岐阜戦に続き、ロッソ熊本との「準加盟クラブ」対決をホームで落とした。それも、自分達のサッカーをさせてもらえずに。試合後、感情を滅多に表に出さない堀田が、人目をはばかることなくペットボトルを床に投げつけた。それだけ、この一戦に懸けていたのだろう。物にあたるのは褒められたことではないが、気持ちは十分に理解できた。

「悔しいし、残念。(昨季)ホーム、足利でロッソに負けているので悔しい思いでいっぱい」と俯き加減で高橋監督は話し、「DFもいいし、中盤もいい、前の2トップもいい。バランスも強さもあり、昨年のロッソより1枚も2枚もパワーアップしていた。完敗でしょう。やられてしまった」と素直に力負けを認めた。

これまで積み重ねてきたものを、屈辱的な敗戦を喫していたロッソにぶつけるはずが、またしても返り討ちにあってしまった。勝ち点3と確かな手応えを持ち帰られた。谷池は言った。「攻守になにもなかった」。深い悲しみと、現状のままでは優勝することが困難であるという現実は残されたが。

JFL前期第10節 栃木SC0―2ロッソ熊本 @足利市総合運動公園陸上競技場 観衆3016人

〈ロッソ熊本〉GK小林弘記、DF上村健一、有村光史、市村篤司、矢野大輔、MF喜名哲裕、小森田友明、熊谷雅彦、西森正明(→山口武士)、FW高橋泰、小林陽介(→吉井孝輔)

 

『同じことの繰り返し』

勝因を問われたロッソ熊本・池谷友良監督は、躊躇うことなく答えた。
 
「単純だが気持ちだと思います。強い気持ちでファイトしてくれた」
 
勝ち点3をライバルから得られた要因は、個々人のスキルでも、ぬかるんだピッチコンディションを考慮しての戦略でも、栃木SCのストロングポイントを消せたことでもなかった。強調したのはシンプルだが引き出すことが非常に困難な、それでいて発揮された時にはあらゆるものを凌駕する強烈な力を兼ね備える「気持ち」だった。
 
「気持ち」で勝ったことで「1対1の局面で自分達にボールが転がり」「一歩早く、一歩長く」足を出すことができた。戦う姿勢を前面に押し出したことで勝機をたぐった。
 
翻って敗軍の将・高橋高監督。
 
「相手の方が気迫と集中力があった」
 
技術、組織力などでロッソが上回ったことは事実であるが、昨季のホーム(足利市)での対戦と同様に「気持ち」で屈してしまったことが大きな敗因であることも、また真実である。
 
「競り合いで勝てなかった。相手の方が強くて大きかった。セカンドボールも拾われた。イニシアチブを握れなかった。攻守のバランスがよかった」

空中戦で後手に回る。セカンドボールを奪われてしまう。それでは、自分達のサッカー――ボールポゼッションを高め、サイドから切り崩すこと――が出来るはずもない。

「気持ちで負けない。メンタル面の重要性を選手に話したい」

3日前に勝利した横河武蔵野FC戦では、ハイボールを難なく処理し、セカンドボールをボランチが拾ってはボールを散らした。ロッソと蹴って来るボールの質こそ違ったが、横河のロングボール戦術に対抗できたのは、選手間で話し合い練り上げたゲームプランが実行に移せたこと以上に、受身になるのではなく最初から向かって行くメンタル面の強さがあったからこそ。スタミナ配分など考えることなく、ガンガン前線から走り回ったこと、惜しみないプレスを掛けられたことが小さくなかった。不恰好でも、愚直に勝利を求める。なりふり構わない栃木SCの原点が、そこにはあった。大切なこと、忘れていけないことを再確認した。しかし、前の試合の収穫を次の試合に活かせなかった。継続性に乏しい。克服されていない課題である。

「切れたら駄目だと言っていたのに切れてしまった。同じ事を繰り返してしまった」

先制点を振り返っての堀田利明の弁である。高橋泰に叩き込まれたゴールは、後半がキックオフしてから1分と経っていなかった。後半開始前に栃木SC側のゴールネットが急遽、補修された。数分の中断を挟んで試合再開。絶対に切らしては、集中力を欠いてはいけないところで、耐え切れずに失点を喫した。一瞬の隙を突かれた。思い起こせば、昨季1―2と逆転弾を食らってから、すぐさま3点目を追加されたのはキックオフしてから間もなくだった。堀田が「繰り返してしまった」と激しく後悔し、憤ったのはそんな過去があったからだった。

「もっと戦う姿勢を出さないと」

直前に起こったことを消化しきれていなかった堀田は絞り出すように、蚊の泣くような声で話した。1―3と蹂躙された昨季の試合後も似たコメントを堀田は残している。

彼我の実力差は歴然としていた。初めて土をつけられたFC岐阜なんかよりも。だが、だからといって負けるとは限らない。隔たりは容易には埋まらないかもしれないが、埋める努力はできた。戦う「気持ち」で。

2年連続して同じ相手に、同じ場所で、同じ様な負け方をする。これほどの屈辱があるだろうか。個人の能力、組織力で劣っても、気持ちだけは引けを取らない。そんな栃木SCをサポーターは愛し、支えてきたのではないだろうか。スマートに勝つよりも、泥臭く。一敗地に塗れようとも、心に響く試合をすべきである。

1年の時を経ても変わらなかった結果と気持ち。このことを真摯に受け止め「這い上がるのみ」(キャプテン北出勉)。いつまでも高い授業料を払ってばかりはいられない。

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