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戦評:対ニューウェーブ北九州戦@栃木SC通信

2008年10月20日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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人目をはばからず入江利和は落涙した。タオルを頭から被り、顔を覆い隠した横山聡はベンチから立ち上がれなかった。南省吾GKコーチが手を貸さなければ歩けないほど憔悴しきっていた。

後半32分、ニューウェーブ北九州(以下、ニューウェーブ)はDF登録、193センチのタチコを浦和レッズの闘莉王よろしくFWとして前線に据える。投入の意図は単純明快。パワープレーからビハインドを帳消しにすることだった。

イニシアチブを握られながらも、決定機は作らせなかった栃木SCだったが、最後の最後に警戒していたタチコに高さで競り負けた。ロスタイムに踏ん張り切れず、勝点2は掌からするりとこぼれ落ちた。

沈痛な面持ちの入江は言葉を絞り出した。

「負けている相手がパワープレーを仕掛けてくるのは分かっていたが、失点してしまった。今日のゲームは、その一点に尽きる」

相手の選択肢は限られており、繰り出してくる攻撃も想定できた。それだけに、防ぎ切れずに勝利を取り逃したダメージは小さくなかった。

「ベンチからの声を聞くのではなく、全員がピッチで何が起こっているのかを考えなければならない」(佐藤悠介)

結局、足りなかったのは「対応力」だった。

地上戦ではなく、空中戦を挑んでくることは明白だった。高さを封じるためには、出来るだけゴールから遠ざけるのが鉄則である。また、引いてブロックを構築し、守り通すならばセカンドボールは死に物狂いで拾わなければならない。しかし、「大きいFWが入り、引いてしまった」(赤井秀行)ことで、Pボックス内への侵入を許し、バイタルエリアでも後手を踏むことになる。結果的に守備網を突き破られてしまった。

「あの時間帯は技術や戦術よりも、『どれだけ勝ちたいか』。気持ちの問題だと思う」

試合終了間際の最終局面で重要性が増すのはメンタル面でのタフさである、と向慎一は口にする一方で、戦術面の指摘も忘れなかった。

「コーナー付近や自分の位置でもボールをキープできた。時間を使えればよかった」

刻一刻と変化する事態に対応するには、どうしたらいいのか。頭をフル回転させ、最良の答えを導き出さなければならない。個人としての優れた判断力、そしてチーム全体の意思統一が求められる。


先週の天皇杯3回戦、対ロアッソ熊本戦に勝利(PK決着。5―3)したことで、忘れかけていた味を思い出した栃木SC。公式戦未勝利は6試合で止まるも、肝心なのはリーグ戦での勝利である。ニューウェーブをホームに迎えた「J2準加盟ダービー」は、栃木銀行がマッチスポンサーとなり、「一万人で創ろうビッグウェーブ」と銘打たれた。ロアッソ戦で機能した3―5―2の布陣は、GK小針清允、DFは鷲田雅一、山崎透、赤井、MFは底に鴨志田誉、左に入江、右に岡田佑樹、トップ下に向と佐藤悠介が並び、2トップには上野優作と横山聡が指名された。

××△××と勝ち星に見放されたニューウェーブだが、前節ジェフリザーブズから勝利を挙げ、負のスパイラルから一足先に抜け出した。4―3―3を採用し、3トップの一角には新戦力のアランが入った。

「前半の立ち上がりから物凄い勢いで来られたことで戸惑った」

ニューウェーブ・与那城ジョージ監督が舌を巻くほど、栃木SCの立ち上がりは完璧だった。トップにボールが収まり、サイドを起点に波状攻撃を仕掛け、あっさりと先制点を奪う。岡田の鋭利な切り返しからの右クロスに横山が飛び込む。堪らずDFがファウルを犯してPKを獲得。これを佐藤が冷静にゴール右に沈める。

勢いは止まらない。鴨志田、向、岡田と繋がり、再び向へ。豪快なヘディングシュートが枠内を捕えるも、GK水原大樹の好守に阻まれる。絶好機を逸するも、前線から圧を掛け、中央とサイドを臨機応変に使い分けた栃木SCの攻勢は続いた。岡田の左足からのミドルはゴールを脅かした。3バックは時に4枚になるなど柔軟性を発揮。ゴロクロスを宮川大輔に合されたシーン以外、危機を招くことはなかった。

ビルドアップはスムーズで、ポゼッションでも勝った栃木SC。が、15分を過ぎたあたりからスローダウンしてしまう。縦パスが減少し、横パスやバックパスが急激に増えたことが一因だった。アグレッシブさは次第に損なわれる。カウンターから佐藤悠介がドリブルで持ち上がるも、フィニッシュには至らなかった。

守備には一定の評価を与えるも、攻撃には不満を抱いた柱谷幸一監督。「0―0のつもりでもう1点取りに行こう」と選手を送り出すが、後半の立ち上がりもエンジンは上手くかからなかった。カウンターから入江が駆け上がり、中央の向が打ったミドルは、またしてもGK水原にセーブされてしまう。都合3本のシュートを記録し、内2本が決定的なものだったが、この日の向は運に見放されていた。

追加点を得られないまま時間が経過すると、焦りからかパスが粗雑になる。圧倒的優位だったポゼッションを手放し、パス回しは滞った。CKから冨士祐樹にダイビングヘッドを浴びるもGK小針のセーブで難を逃れる。思うに任せない展開に陥った栃木SCは、ズルズルとラインを下げ、5バック気味になったことで受けに回る。一人一人の距離感が遠くなり、2トップは完全に孤立し、攻撃は単発に終わる。選手交代に望みを託すも、活性化は図れなかった。

前傾姿勢をとってきたニューウェーブに対抗するには、早めに精彩を欠いた上野を下げて稲葉久人を送り出すことで、恐怖感を植え付けておく手もあった。フレッシュな稲葉が前線からチェイスすれば、安易にロングボールを蹴り込まれる回数を減らすこともできたはずである。「相手のDFラインにプレッシャーに行けず、ロングボールが入ってきた」と赤井は振り返る。稲葉が登場したのは44分。柱谷監督の動きはあまりにも遅すぎた。

形勢を逆転できずに迎えたロスタイム。クリアボールを拾った中央の宮川が左の冨士にはたき、供給されたクロスをタチコが頭で叩き込む。この人、FC琉球時代にもグリーンスタジアムでゴールを決めている。相性抜群なだけに、マークを外してはいけなかったのだが……。競り合いに屈した鷲田は、その場に突っ伏した。個の脆弱さを露呈した。

山崎は言う。

「あのまま行くとは思えなかった。チームとして2点目を取らなければいけなかった」

チーム状態が上げ潮であったならば1点でも十分に守り切れたかもしれないが、今の栃木SCは悪循環を脱し切れていない。最少リードで勝ち切れるほどの強さは戻っていない。だからこそ、2点目が欲しかったのだが、眼前の勝利に目が眩み、消極的に振る舞ったことで、みすみす7試合ぶりの勝点3を失った。首位のHonda FCが勝利を収めたことで差は絶望的な7にまで開いた。

「結果は変えられない。勝点1を取ったことを前向きに考えるしかない」(柱谷監督)

連敗が止まったことにささやかな喜びを見出すしかない現状は寂しく、酷く悲しいが、憂いている暇はなくなった。とにかく前を向き、天皇杯のように一戦必勝のトーナメントが今後6試合控えていると考え、戦い抜くしかない。

JFL後期第11節 栃木SC1―1ニューウェーブ北九州 観衆6533人 @栃木県グリーンスタジアム

〈栃木SC〉交代:入江(→斎藤雅也)、上野(→松田正俊)、横山(→稲葉)

〈ニューウェーブ北九州〉GK水原大樹、DFドグラス、岩倉一弥、佐藤真也、市川瞬(→タチコ)、冨士祐樹、MF桑原裕義、佐野裕哉、FW藤吉信次(→日高智樹)、アラン(→森本惟人)、宮川大輔
  

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