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戦評:対ガイナーレ鳥取戦@栃木SC通信
2008年10月31日 大塚秀毅 | この記事のページ | コメント(0) | トラックバック(0)
首位を独走するHondaFC(勝点63※後期第12節終了時)の優勝は、下位との対戦を残し、格下相手に取りこぼしの多い嫌いがあるにしても、ほぼ間違いないだろう。
となると、昇格条件である4位以内を懸けた残り3枠を「J2準加盟クラブ」である2位ファジアーノ岡山(勝点55)、3位栃木SC(勝点54)、4位カターレ富山(勝点51)、5位ガイナーレ鳥取(勝点50)が争うことになる。後期12節終了時点で、2位と5位との勝点差は僅かに5。眼下には横河武蔵野FC、流通経済大学、FC刈谷が付けており、1試合の結果次第でめまぐるしく順位が入れ替わる、混沌とした状態が続いている。傍から見れば面白みのある、当事者としては胃の痛む大混戦を引き起こしたのは、他でもない栃木SCの急激な失速なわけであるが。
「昇格レースで勝点3を取るためには、内容よりも結果が最優先される」(柱谷幸一監督)
勝点3を取るために、どんな方法を見出せばいいのか。
昇格のライバルであるガイナーレ鳥取(鳥取)との一戦で、栃木SCは前節の3―5―2から3―6―1へとシフトした。トップを1枚削る代わりに、そのサポート役を2枚に増やした。キーポイントとなったのは、2シャドーの位置に配された佐藤悠介と小林成光。起用の意図を柱谷監督は、「ラストパス、点を取る。決定的な仕事をするように指示した」と話す。前節の対TDK SC戦はスコアレスドロー。前線のパワー不足を痛感した指揮官は、前に厚みを持たせることで攻撃的に試合を運ぼうと目論んだ。
片や鳥取は守備に軸足を置いてきた。メンバー表では3―4―3の布陣だが、実際には5―4―1と超守備的だった。前期の対戦では栃木SCが土壇場のゴールで勝利を得るも、サイドと中央から攻めまくった鳥取が内容では圧倒的に凌駕した。それだけに、極端な守備陣形に面食らったものだが、ひとつの敗戦が順位を大きく下げる事態ならば納得のいく方策だった。リスクを極力軽減し、最低でも勝点1を拾って帰る。あわよくば、勝点3を奪い去ろう。そんな思いが透けて見えた。昇格レース終盤では形振りなど構っていられないのである。
両者の思惑が交錯した決戦は、共に狙い通りに進む。栃木SCが試合を支配し、鳥取は堅牢な守備組織で対抗した。1点ずつを取り合うも、次の1点、雌雄を決するゴールをどちらも掴めなかった。痛み分けに終わる。
「アウェーで(勝点)1は満足ではない。前期は1―0。89分で(ゴールを奪われて)負けている。アウェーで勝つ気持ちが欲しかった」とヴィタヤ・ラオハクル監督は悔しがった反面、「1点を返せた。ドローに終わり、選手一人ひとりに自信がついた」と、勝点1にまんざらでもない様子だった。気質なのかもしれないが、会見では笑みを浮かべてもいた。
9戦未勝利となった柱谷監督は勝点3を取りに行って取れなかっただけに、当然ながら「前を向いていくしかない。振り返る暇はない」と表情は厳しく、「相手の脅威として足りなかった」と2戦続けて攻撃陣の力不足を嘆いた。
内容を度外視し、「負けないこと」にこだわった鳥取には悪くない結果であり、栃木SCはまたしても勝点2を取り逃したと考えれば、策略にはまったといえる。とどめを刺しきれなかった。
激しく追い上げる鳥取との直接対決を制し、勝点3が絶対に欲しい栃木SCは、短い準備期間で陣形を大胆にもいじった。3―6―1のスタメンはGK小針清允、3枚のDFは赤井秀行、山崎透、鷲田雅一、中盤は落合正幸と鴨志田誉のダブルボランチ、左に斎藤雅也、右に岡田佑樹、松田正俊の1トップ下に佐藤と小林が据えられた。
驚異的な突破力を有するハメドを欠いた鳥取だが、3バックのセンターには戦線復帰した元日本代表の小村徳男が入った。インパクトは小さくない。
前半5分、9分と栃木SCゴールを立て続けに脅かした鳥取だが、その後は5―4―1のカタチを崩さず、スペースを消去し、引きこもっては守りを固める。試合前から果敢にシュートを打つことをテーマに掲げた栃木SCは斎藤、落合がミドルレンジからシュートするなど高いゴールへの意識を見せる。18分、佐藤の強烈なミドルが飛び、GK井上敦史が間一髪で凌ぐも、これで完全に流れを引き寄せる。
ポゼッションで勝り、ボールも人も動いたが、劣勢に回ることを想定済みの鳥取から好機を生み出せない。殊に両ワイドの斎藤と岡田は進路を塞がれた。綱の引き合いで優位に立てなかった。佐藤は右に流れて起点を構築するも、Pボックス内に君臨した小村にクロスを跳ね返され、シュートに至れない。
しかし、鋭利なボールを供給し続けていた佐藤のキックが均衡を破る。CKを相手GKがパンチングで処理するも、ルーズボールに反応した松田が渾身のボレーを叩き込む。押しに押した栃木SCが先取する。
リードして迎えた後半戦。焦れて前に出た相手の背後を取り、カウンターで追加点を挙げる算段は、脆くも早々の失点で台無しとなる。鳥取のクイックリスターに対応が遅れ、小井出翔太の左クロスをニアサイドで田村祐基に頭で合される。ニューウェーブ北九州戦のロスタイム、タチコに浴びたヘディングシュートをなぞるような同点弾だった。
「もっとはっきりやればよかった。リズムが整うまで背後を突くなど……」
そう振り返るのは田村のマークを外した山崎。相手が前掛かりに来ることは分かっていたが、防ぎ切れなかったことに悔しさが滲む。
振り出しに戻っても栃木SCが攻め、鳥取が守る構図に変化はなかった。「狙っていた」と柱谷監督が明かした、切り札・入江利和の投入により、左サイドからの良質なクロスで突き放すプランも、鳥取の粘り強いDFの前に頓挫する。強固な守備ブロックを打破することは困難を極めた。終盤に鴨志田が豊富な運動量を活かしてショートカウンターのスイッチとなるが、肝心のシュートが決まらない。右からカットインして放った佐藤のシュートは正確性を欠く。逆に鈴木健児にクロスバー直撃の弾丸ミドルで肝を冷やされた。
鳥取を蹴落としきれず、勝点1を積み上げただけだった。
流れは悪くない。チーム状態も上向いてきてはいる。だが、勝ち切れない。勝利が遠く感じる。
「サポーターには歯がゆい思いをさせてしまっている」
沈痛な面持ちで心境を述懐するのは落合正幸。「周囲と自分達から生じるプレッシャーはあるが、選手、フロント、サポーターが一丸となってやるしかない。最後に『苦しかったね』と言えるようにしないと何も残らない。今の状態を笑って振り返れるように、残り4試合を大切に戦いたい」と決意を語った。
絶望感に打ちひしがれるのは、もうご免だ。あんな思いは、痛みは昨年の一度きりで十分である。今年は笑顔で締めくくれるように。ここまできたらネガティブな思考は捨て去り、ポジティブにひたすら前に突き進むしかない。
「今はドローが続いている。でも、ポジティブに考えればドローにまで持って来られている」(松田)
JFL後期第13節 栃木SC1―1ガイナーレ鳥取 観衆2704人 @栃木県グリーンスタジアム
〈栃木SC〉交代:斎藤(→入江)、小林(→横山聡)、松田(→上野優作)
〈ガイナーレ鳥取〉GK井上敦史、DF加藤秀典、小村徳男、小原一展、MF冨山達行、吉野智行、鈴木健児、尾崎瑛一郎(→小沢竜己)、FW小井出翔太(→実信憲明)、田村祐其、鶴見聡貴(→吉瀬広志)
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