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戦評:第88回天皇杯全日本サッカー選手権大会4回戦 対ジュビロ磐田戦@栃木SC通信

2008年11月 3日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

jb1.JPG悔しさを押し殺し、敗因として柱谷幸一監督が挙げたのは、サッカーにおける不変の真理だった。

「勝つためには点を取り、点を取られないようにする。両ゴール前で厳しくやらなければならない」

「内容は100%の出来」と、きっぱり言い切った柱谷監督。確かな感触を得たゲームだった。3失点を喫するが3バックは踏ん張り、ダブルボランチは中盤で伍して渡り合った。「今日のピッチに立った22人の中で一番輝いていた」と、躍動した佐藤悠介には賛辞を惜しまなかった。相手がJ1のジュビロ磐田(以下、ジュビロ)であっても、自分達のサッカーを遂行できれば、十分に戦うことが出来る。ただし、いくら内容に優れていても、結果に繋がらないケースが多々あるのが勝負事である。

「状況的に1―1で追い付かれ、相手の士気が凄く高まっていた。『ここからいくぞ』という雰囲気を感じた。それを長時間続けると相手のペースになりかねない。(失点した)直後に返したいと思っていた」

少し甲高い、独特の声で中山雅史は自身のゴールを振り返った。「フィジカル的には死にかけていた」(ジュビロ、ハンス・オフト監督)が、試合の流れを読み切る力は、不惑を超えても衰えを知らない。同点とされてから程なく、「ゴンゴール」は生まれた。波に乗りかけた栃木SCだが、このゴールにより乗り切れず、勢いを殺がれる。

流れを掴む暇を相手に与えない。それどころか一気に畳み掛け、雌雄を決する3点目を鮮やかに奪い去った。立て続けにゴールを取り切れる。覇権を争い、手にしてきたチームは、例え今季は振るわなくとも、勝ち方を熟知している。ことに中山のゴールからはゲーム運びの妙を見せつけられた。

か細い声で落合正幸は言った。

「勝負強さを痛感させられた」

攻撃陣がきっちりと取るべきところでゴールを取り、守備陣は傷口を最小限に抑え込み、勝ちゲームに持っていく。ただ今、大混戦の昇格レースで鎬を削っている栃木SC。接戦を制する術をジュビロに教えられた。


PK戦までもつれた、天皇杯3回戦のJ2ロアッソ熊本戦をモノにした栃木SCは、4回戦に駒を進める。ジュビロが根城とするヤマハスタジアムに乗り込んだ。3―6―1の布陣は以下の通り。GK小針清允、DFは左から鷲田雅一、山崎透、赤井秀行、中盤は底に落合、鴨志田誉、左に入江利和、右に岡田佑樹、2シャドーに佐藤と向慎一、1トップは上野優作が務めた。木曜日の対ガイナーレ鳥取戦から斎藤雅也、小林成光、松田正俊が外れた。

これまでの順位表を引っ繰り返したような信じ難い順位。つまり下位から2番目と自動降格圏から抜け出せないジュビロは、前節からごっそりとメンバーを入れ替えた。その数、10人。残留を懸けた残り4試合のサバイバルに備え、天皇杯のスタメンはサブ組を中心に編まれた。

「前半は守備から上手く入れた」とは向の弁である。前線から激しくチェイスし、ジュビロの出鼻を挫いた。赤井のオーバーラップからのシュートを皮切りに、連続して佐藤がゴールを脅かした。憧憬の対象である名波浩と同じピッチに立てる喜びを早速プレーで表現した。

トップへロングボールを蹴らせることに成功。3バックが制空権を譲らなかったことで栃木SCが試合を優勢に進める。サイドへと流れてきた中山とカレン・ロバートに対する赤井の対応は完璧だった。1対1の強みを発揮する。落合と鴨志田のポジショニングとプレスを掛けるタイミングも絶妙で、ジュビロに中盤を支配させなかった。だが、トップの上野へのボールの収まりが悪く、左の入江も機能していたとは言い難く、相手守備の巧さもあり、フィニッシュまで至れなかった。39分に得たCKではニアサイドで上野が潰れ、ファーに抜けたボールを鷲田が頭で合わせる。ふわりとしたボールは枠内に飛ぶが、間一髪で成岡翔にクリアされる。好機を逸する。

一方、ジュビロの43分の先制弾は美しかった。FKから名波のロブを鷲田に競り勝った中山が頭で落とし、走り込んだ河村崇大が頭で流し込んだ。黄金期を彷彿とさせる、華麗な連携を活かしたトリックプレーだった。

前から圧を掛け、奪ったボールを間で受けて攻撃に転じる。栃木SCのやり方は、ビハインドを背負った後半も変わることはなかった。10分、向が繰り出したミドルシュートは枠内を捕え、GK松井謙弥はボールをこぼす。が、セカンドボールに入江は反応できない。詰め切れない甘さが窺えた。

パスとドリブルのスピードが上がったジュビロ。カレンがゴールに迫り、名波はオシャレなループシュートを放った。旗色が徐々に悪くなった栃木SCであるが、山崎の勇猛果敢なインターセプトが局面を打開した。中央をドリブルで駆け上がり、「少しダイアゴナルに走ればラインは崩れる」と読んでいた佐藤に絶好のパスを供給。前に出てきたGK松井を嘲笑うかのように佐藤が冷静に沈める。

栃木SCサポーターのボルテージは最高潮に達するも、ジュビロの連続ゴールによりすぐさまダウンさせられる。カレンのポストプレーから中山に2点目、カウンターを発動させてドリブルで持ち上がったカレンのスルーパスを受けた途中出場の太田吉彰に流し込まれて3点目を献上した。リーグ戦から中2日の疲労は隠しきれず、スピードに翻弄された。

前を松田正俊と横山聡の2トップに変更、後ろは2バックに。リスクを冒して栃木SCは攻めるも、2度目の歓喜が訪れることはなかった。執拗にジュビロのウイークポイントである、セットプレーから好機をこしらえたものの、鷲田が決め切れなかったことは痛恨。都合3本あった好機を1本でも押し込めていれば……。弱みにつけこめなかった。

J1の壁は打破できなかった。「内容は五分五分だったが3―1。結果は完敗だった」(佐藤)。しかし、手に入れたものは小さくなかったようだ。落合は、こんな変化をチームから感じ取ったという。

「こういう舞台でプレーしたいという気持ちが強くなった」

――具体的にはJ2?

「そうですね。昨日の大分(トリニータ)みたいにビッグタイトルを獲れるチームにしたい。その第一歩がJ2だと思う。J2からどんどん上に上がっていきたい」

前日、ファジアーノ岡山の敗戦により、暫定3位だった栃木SCが得失点差で2位となった。天皇杯でのチャレンジは幕を閉じたが、過酷なリーグ戦は最終局面に突入する。これからである。叩きのめされたことで実感した己の不甲斐なさ、内容で劣らなかったことで通用すると思えた自信。ポジティブな要素もネガティブな要素も糧として今後のリーグ戦に活かし、昇格に結び付けたい。

第88回 天皇杯全日本サッカー選手権大会4回戦 ジュビロ磐田3―1栃木SC 観衆4088人 @ヤマハスタジアム

〈ジュビロ磐田〉GK松井謙弥、DF大井健太郎、鈴木秀人、加賀健一、MF西紀寛、河村崇大、成岡翔、岡田隆、名波浩(→太田吉彰)、FW中山雅史(萬代宏樹)、カレン・ロバート

〈栃木SC〉交代:岡田佑樹(→小林)、上野(→松田)、向(→横山)
 

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