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『好材料』@栃木SC通信

2008年11月10日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

mm2.JPG小林成光は勝利をじっくりと噛み締め、その味を語った。

「やっぱり最高ですね。苦しかったですから……」

短い感想に思いはギュッと凝縮された。

苦い経験が蘇る。昇格レースの過酷さを、今季も小林は感じ取っていた。「甘くはない」と。昨季、昇格を逃し、苦汁を舐めた。勝ち切れない時期がしばらく続いた。落とした勝点の半分でも手にしていれば、今頃ステージはひとつ上がっていたはずである。

スタートダッシュに成功した今季も同様に、勝利に恵まれない時期が訪れた。リーグ戦には好不調の波がつきものであるが、それにしても長かった。先が見えないトンネルを抜けるのに4ヶ月、9試合も要した。その間、前期に負った怪我から復帰した小林は戦列に復帰するも、コンディションが万全でなかったこともあり、思うような結果を残せずにいた。歯痒さと焦燥が日増しに募ったことは想像に難くない。

星大輔の負傷に始まり、小林、高安亮介、そして岡田佑樹と右サイドは一人が復帰すれば一人が怪我で離脱と、何かに祟られたかのように故障者が相次いだ。システム変更に伴い居場所を失った小林だが、岡田が傷を負ったことで先発の御鉢が回ってきた。

「守備が7、攻撃が3」とやり慣れていない3―5―2の右ウイングバックへの戸惑いは隠せなかった。対三菱水島FC(以下、三菱水島)戦の前半、小林曰く「攻め込まれるとアタフタした」。右サイドは相手の脅威と成り得なかった。チームにフィットできず、もがいていた時だった。逆サイドからのクロスが流れてきたのは。バウンドしたボールを小林は倒れ込みながら頭で押し込んだ。

このゴールには、ある助言が活かされていたと小林は話す。

これまでは左からのクロスに対して内側へ絞ることはしなかった。バランスを考え、相手選手のマークを優先させていたからである。が、阪倉裕二ヘッドコーチと話し合う中で、「詰めていけ」とアドバイスを受ける。それが実ったのが、前半43分の先制弾だった。「トレーニングの成果が出ましたね」。小林ははにかみながら続けた。「怪我をしてからチームに入っていけないと感じていた。それだけに点を取れたことは嬉しかった」。

苦境を脱する一撃を放ったのは、筆舌に尽くし難い昨季の痛みを知る男だった。

勝機を手繰った小林の先制点の足掛かりは、入江利和が供給したクロスだった。先の天皇杯4回戦、対ジュビロ磐田戦では守備に手応えを感じつつも、期待された攻撃面では存在感を示せなかった。前の試合の反省を活かす格好の機会と臨んだ三菱水島戦。入江は3ゴール全てに絡む大活躍をみせた。雌雄を決する3点目は入江自身が決めたものだった。

松田正俊からパスを受けた入江。ドリブルで対面の選手に勝負を挑み、1対1を制した。左サイドを突破した時点でクロスやパスは頭になかったという。選択肢はシュートのみ。振り抜いた左足はゴールネットを揺さぶった。小林のゴールと同じく、入江のゴールにも助言が活かされていたという。

「南(省吾GKコーチ)さんからシュート意識を持てと言われた。それで(アドバイスを活かして)得点ができた」

4バックよりも現行の3バックで特性を発揮できるのが入江。柱谷幸一監督の評価は低くない。しかし、自己採点は厳しい。口を衝いて出るのは課題ばかりである。良質なクロスを上げた前半を「リズムを壊し、ミスが多かった」と振り返り、ゴールに関しても「たまたまです。目に見えるカタチでの結果は嬉しいが、前半が良くなかった。1試合を通していいパフォーマンスがしたい」と辛口だ。

巡ってきた僅かな出場時間でのアピールを定位置確保に繋げた。だが、控えに甘んじていた時期が短くなかっただけに、ワンプレーを疎かにすれば斎藤雅也にすぐさま取って代わられるとの思いが強いのだろう。入江が自分に及第点を与えないのは、満たされることで招くパフォーマンスの低下を防ぐ手段なのかもしれない。

3―6―1におけるストロングポイントである1トップの松田に加え、左右のサイドの入江と小林も結果を出した。チームが乗って行くにはまたとない好材料である。 

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