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戦評:対ファジアーノ岡山戦@栃木SC通信

2008年11月24日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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数的優位にもかかわらず試合を動かせなかった。スコアレスドローの試合結果と内容に、「出来れば1、2点を取れればよかった。崩し切れなかったのは残念。皆が考えてプレーしなければならない」と、険しい表情で語ったGK小針清允だったが、前半19分ファジアーノ岡山(以下、岡山)に与えられたPKをストップしたシーンに関して話題が及ぶと、幾分か表情は和らいだ。

キッカーの喜山康平は小針のタイミングを外そうと、ゴール中央へ絶妙なチップキックを放つ。重圧の圧し掛かるシーンでも、大胆不敵な行動に打って出た。二十歳とは思えないハートの強さには恐れ入る。しかし、小針の方が一枚、上手だった。

「タイミングをずらされたが、読みを入れてボクが変に動かなかった」

体は左側へ傾いていたが「足を残せた」(小針)ことで、トリッキーなキックにも対応できた。伸ばした右足一本、足先でボールを蹴り出した。

「小針さんがPKを止めてくれたことが大きかった」

そう語るのは3バックの左ストッパーを務めた田村仁崇。岡山に持っていかれそうになった流れを、ビックセーブにより寸前のところで堰き止められたことを感謝した。PKが決まっていれば、ホームの岡山が勢い付いた確率は低くない。それだけ小針の好守は大きなウェイトを占めていた。果たした仕事は小さくなかった。

が、小針本人は渾身のクリアにも驕ることはない。日頃と不変の謙虚な姿勢を貫く。

「当てるのが精一杯だった。(クリアボールが枠を)外れるか、(前に)こぼれるかは、紙一重。結果的に外れただけ」

「たまたまです。入れられてもおかしくはなかった」

ここまで33試合フルタイム出場と、チームで唯一の皆勤賞。安定感は群を抜き、チームの背骨として指名されただけあり、柱谷幸一監督の期待に違わぬ活躍を披露している。パフォーマンスに大きな波がないのは勝敗に関係なく、的確な試合分析が行える沈着冷静な思考と無縁ではないだろう。失点をすれば、悔しさのあまりポストに八つ当たりすることもある。だが、気持ちの切り替えが非常に滑らかであり、かつ浮き沈みの幅が狭いからこそ、後々まで尾を引くことはない。オンとオフの使い分けが適切であることこそが、小針の最大の強みである。

自己を、客観的な視点を失わない守護神が最後尾に控える。その存在感は味方に多大なる安心感をもたらしている。影響力は計り知れない。

小針、さまさま。

本人はそんな言葉を嫌うだろうが、今季どれだけ俊敏な反応に助けられてきただろうか。栃木SCのゴールマウスに小針が立たない絵は想像し難い。


4位以内を確定させた前節の対アルテ高崎戦後、次節へ向けて佐藤悠介はこんなことを言っていた。

「昇格争いをしている岡山に対してもいいゲームをしなければいけない。昇格ギリギリの(ガイナーレ)鳥取に失礼のないゲームを、全力で栃木のサッカーをする」

「ベストメンバーで向こうへ行く」と話した柱谷監督。メンバーを落とすことなく敵地に乗り込み、「J2準加盟ダービー」に臨んだ。3―6―1のスターティングメンバーは以下の通り。GK小針、DF田村、山崎透、赤井秀行、守備的MFに落合正幸と鴨志田誉、左ワイドに入江利和、右ワイドに稲葉久人、2シャドーに佐藤と小林成光、1トップは松田正俊。

昇格条件のひとつである「4位以内」を目前に連敗を喫し、足踏みをした岡山だが、前節の勝利により勝てば自力での確定を手にすることができるまでに漕ぎ着けた。ただいま得点ランキング2位、19ゴールの小林康剛を出場停止で欠くものの、こちらも上位に顔を出す、前期はボランチに配された喜山(18ゴール)が鴨川奨と2トップを組んだ。布陣は4―4―2。

「Jへの扉が開く時――この瞬間を、見逃すな」と銘打たれたホーム最終戦、桃太郎スタジアム(収容人数20000人)には11053人の観衆が詰めかけた。エンジに染まったスタンドからの声援を受けた岡山は序盤から前に出た。昇格のプレッシャーで硬くなることはなかった。圧倒的なアウェーの雰囲気に晒されながら、栃木SCも両サイドを利し、小林や松田がシュートを打つなど対抗する。

栃木SC陣内に入れば、全てが好機に繋がるような空気を醸成させた岡山サポーター。鴨志田のプレゼントパスから喜山が強烈なロングシュートを飛ばすと拍車が掛かる。18分には川原周剛もミドルを打ち込んだ。これはGK小針が弾くも、ルーズボールに食いついた関隆倫を稲葉が倒したとしてPKの判定が下される。失点機を小針が足一本で阻止した栃木SCであるが、球際の攻防で接触すればファウルを取られるなど、主審が平静を欠いたことによりセットプレーを奪われ苦しむ。鴨川に浴びたシュートにも冷や汗をかかされる。

左サイドの川原が対面の稲葉との綱引きを制したことで起点を設け、優位に立っていた岡山だが、鴨川が立て続けにカードを頂戴し、32分に追い出される。数的優位に立った栃木SCは、ポゼッションで凌駕するも、がっちりと8人でブロックを作られたことで拙攻を重ねる。サイドに蓋をされ、入江と稲葉を活かしきれず、Pボックスに供給したクロスは尽く跳ね返された。

アタッキングサードでの大胆な仕掛けをハーフタイムに訴えた柱谷監督。だが、皮肉にも思い切りのよさは、ひとり退場者を出し、堅守速攻のプランに切り替えた岡山にあった。栃木SCは前掛かりになったにしても、セットプレー後にカウンターを食らい過ぎた。辛うじて耐え凌ぐも、鋭い攻撃に肝を冷やされるシーンが散見された。ゴールへの渇望を感じる一方で、リスク管理が出来ていたとは言い難かった。

ゲームを支配するが決定機を作り出せない栃木SCは、前線のテコ入れを図る。横山聡、向慎一(小林、稲葉アウト)を投入し、3―5―2へシフト。圧を掛けようとするが、揺さぶり切れない。30分、入江のクロスを中央で松田が完璧に捕えるも、ヘディングシュートはGK李彰剛の正面を突いてしまう。厄介だった喜山、関がピッチを去り、脅威が薄れたかに思われたが、交代出場の妹尾隆佑がPボックス内で落合をかわして決定的なシュートを繰り出すなど、岡山の戦意は殺がれなかった。向の右クロスを横山がボレーで合わせるが、再びGK李がキャッチ。粘り強い守備を打破することは叶わなかった。大観衆の後押しを受けた岡山は、終盤に得たセットプレーからゴールを脅かしたが、GK小針と栃木SC守備陣の集中力も途切れることなく、終ぞゴールを割ることはできなかった。

緊迫感が漂う、濃密な90分間。試合開始からスコアは動かず、終戦を迎えた。

勝利を飾れなかった岡山の条件クリアは持ち越された。月曜日開催の5位・鳥取が勝利を掴めなければ他力で、もしくは栃木SCに続き4位以内を決めたカターレ富山との最終節で勝ち切れば自力での悲願が達せられる。鳥取と岡山のラスト1枠を懸けた争いから目が離せない。

さて、ドロー決着によりお預けになったものが、もうひとつある。栃木SCの年間順位2位決定である。優勝を逃したものの最低限のノルマである4位以内を手中に収めた今、残り試合は消化試合の様相も薄くない。てっぺんを獲れなければ、その他の順位に差異はさほどないとの考えもある。しかし、JFLでの最高位は2005年の4位。今季、卒業するリーグを首席ではなくとも次席で終えたいとの思いは、栃木SCに関わってきた者の中には少なからずある。敗戦をドローに変換したGK小針は言う。「昇格争いをしているチームの中で一番いい順位で終わりたい」。つまりそれは、クラブ史上最高の2位で最後を締め括ることと同義である。最終節の対FC刈谷戦も気を抜くことなくベストの状態で挑み、確かな足跡を刻んで次のカテゴリーへと進みたい。

JFL後期第16節 ファジアーノ岡山0―0栃木SC 観衆11053人 @桃太郎スタジアム

〈ファジアーノ岡山〉GK李彰剛、DF重光貴葵、木村允彦、伊藤琢矢、尾崎雄二、MF川原周剛(→小林優希)、小野雄平、玉林睦実、関隆倫(妹尾隆佑)、FW喜山康平(→朝比奈祐作)、鴨川奨

〈栃木SC〉交代:小林(→横山)、稲葉(→向)、入江(→坂本勇一)

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