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交渉決裂@栃木SC通信

2008年11月29日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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栃木SC・柱谷幸一監督はクラブ側との条件が一致しなかったために辞任を申し入れた。

後任は未定で、1週間以内を目処に早急に対応にあたる。

 

会見の冒頭、胸に手を置き呼吸を整えた。嗚咽をこらえながら、しかし柱谷幸一監督は感情を覆い隠すことができなかった。

「先週までは色々と(来季の)準備をしてやろうとした。結果的にやることができなくて残念で、悔しい気持ちです」

眼には零れ落ちそうなほどの涙が溜まっていた。「悔しい気持ちで一杯です」。来季も栃木SCで指揮を執ることができなくなったことへの無念の思いが滲む。

クラブ側との交渉が決裂したのは昨日の27日。「金銭面」と「チーム編成」の2点で折り合いがつかなかったことが、辞任というカタチで栃木に別れを告げることに繋がった。

交渉の席で提示された年俸は今季から25%ダウン、契約期間も柱谷監督が望んでいたものと大きな隔たりがあった。

「自分の評価は高くない」

優勝は逃したものの、J2昇格条件のひとつである「4位以内確定」は達した。最終戦で勝利を飾ればクラブ史上最高位の2位でシーズンを終えられる。現時点で「年間2位」は決まっていないが、プロとして結果はしっかり残したとの自負はあったはず。当然、年俸もアップするものだと思っていたが、まさかの減額だった。

新井賢太郎社長は「色々な事情を含めて減額した」と話す。企業を母体としたチームではない、「県民のサポートにより成り立つ」市民クラブの悲哀が現実問題として浮上する。

J側からのクラブに対する評価は、他の「準加盟クラブ」と比しても低くはない。一定の条件を満たしている一方で、資金面では常に課題を課せられ、例えば先の増資の件が顕著なように脆弱な財政基盤の安定、「身の丈にあった経営」が求められた。

債務超過は絶対に避けなければならない。健全な体力に見合った運営を心掛けなければならなかったものの、昨季はJ2へ辿り着けなかったことで、今季は「不退転の決意、後がない」状態で臨まなければ、「これ以上(クラブ運営を)続けるのは無理」(新井社長)というところまで事態は切迫していた。轍を踏まないためにも「破格の報酬」(同社長)で昨季途中から招聘にした柱谷監督の続投に至ったのだろうが、「身の丈」と「破格」の間のギャップは埋め難かった。「現状維持では難しかった」(新井社長)。また、完全プロ化に踏み切ったことで人件費はファジアーノ岡山の数倍にまで膨れ上がり、指摘を受けもした。クラブ側は長期的な視点に立ち、一時的に年俸は下がるが成績次第では入場料収入が増えるなど財務の安定と「徐々にJ2、J1トップクラスの報酬になる」との展望を伝え、契約にインセンティブを付け加えもしたが、「納得できない」(柱谷監督)と双方物別れに終わった。25%ダウンでも引き受けてくれると新井社長は信じ、一緒にJ1へ上がる絵を描いていたことから困惑、悲しみ、驚きを覚えずにいられなかったという。

これからもクラブに携わることにやぶさかではなかった柱谷監督であるが、クラブとサポーターが満足する成績を、カテゴリーが上がる来季も残せる保障はない。任期途中に首を切られる可能性もある。ならば、今季の結果に見合った報酬を要求する気持ちが分からないではない。長い付き合いをクラブ側が望むのであれば、少しくらい成績が伴わなくともベースを築くために複数年契約も約束して欲しかったと考えるのもまた無理はない。

しかし、柱谷監督はこうも言うのである。

「お金だけではない」

一番大事なもの、として挙げたのは気持ちの部分だった。話し合いの中で、「柱谷が必要。柱谷にやって欲しい」という思いが感じ取れなかったという。欲していたのは信頼だった。具体的には「編成における権限と決定権」ということになる。つまり、編成に関する全権委任である。補強箇所やチームに必要な選手のイメージは頭にあった。構想は得点力のある外国人選手を数名加え、移籍金のかからない日本人でチームを固める。それが、柱谷監督の言葉を借りれば、「サポーターに喜んでもらえる勝つためのチーム作り」。勝敗の責任を負わなければならないのは監督。自らが選手の元へと足を運び口説き落とすなど、自分が厳選した選手でチーム構成をしたいとの思いが捨てきれなかった。昨季のシーズンオフ、秋田で松田正俊を、山形で鷲田雅一を、渋谷で佐藤悠介と仮契約を結び、今季をスタートさせたように、である。

ここにクラブとの相違点があり、「色々な制限が多かった」という発言に繋がる。先ずクラブから栃木出身の選手を出来る限り獲得して欲しいとの要望があった。県内出身の選手がスタメンの大半を占める。プロビンチャ(小さな町のチーム)を理想に掲げることから、将来のビジョンに柱谷監督は賛同しつつも、現状では各カテゴリーの栃木出身者では限られた枠の中で「勝てるチームを作る」ことは困難と判断した。次に前線に不可欠な外国人に関して。今のクラブの体力では支えきれないとの回答から断念した。「笑われたが1年でJ1のチームを作りたい」「純粋に勝ちたいチームを作りたい」との思いは、一足飛びにJ1へ駆け上がるのでなく段階を踏んで歩を進めたいクラブの方針と食い違った。そして、「全てを任せてもられば勝つチームを作る自信があった」と言い切ったことへの確信が持てなくなった。クラブ側は編成に関する一任を認めることができず、監督は信念を曲げることができなかった。意見交換するも妥協点は見い出せなかった。

互いの主張をぶつけ合うことから交渉事は纏まることもあれば、決裂することもある。どちらがいい悪いという議論はナンセンス。クラブは続投を前提に話を進め、柱谷監督もそのつもりだった。ただ、折り合いがつかなかった。残念だが今回はクラブと柱谷監督の両者が条件を呑めず、合意には至らなかった。

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