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『一線を退く』

2008年12月 1日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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295.JPG最終節を控えた11月28日、クラブ側から来季の契約を結ばないことが上野優作(真岡高校出身)と小林成光(佐野日大出身)に通達された。

「今年1年、栃木をJへ上げるために頑張った。上げてからもプレーしたいとの思いでやってきたが、思いは伝わないもの。今年のパフォーマンスでは足りなかったということ。プロの世界はそういうものだと思う。来年も必要とされれば残れた」

プロの世界の厳しさを説いた上野。再びJの舞台に戻り、栃木SCのユニホームを着て戦うことは叶わぬ夢となった。

それは、小林も一緒だった。体はボロボロだった。「辞めようかな」と思っていたところに、高橋高前監督から「Jを目指しているので栃木へ来ないか」と誘われ、2年前に加入した。その思いに応えるために、懸命にピッチを駆け回った。全盛期に比べて怪我の影響もあり、プレーの質が落ちていたことは自認していた。それでも、クラブが必要としてくれるならば、来季も現役を続けるつもりでいた。しかし、提示された額は0円。つまり、来季の構想からは外れた。

請われて自分を育んでくれた地元、栃木へ帰ってきた上野と小林。その時から2人は決めていたという。「栃木に戻ってきた時点で、栃木で『要らない』と言われたら辞めよう」と。栃木以外でプレーすることは頭になかった。最終戦後のセレモニーで上野と小林は、今季限りで一線から退くことを告げた。覚悟はしていたが、いざその時を迎えると涙は止まらなかった。目は真っ赤に腫れていた。

サッカーを通じての出会い、忘れ難い思い出、突っ走ってきたプロ生活を「充実していた」「サッカーをやっていてよかった」と振り返った小林。ピリオドを地元、それも1万人を超えるサポーターが見守るスタジアムで打てたことに、この上ない「幸せを感じた」。「今日のゲームは楽しかった」。泣き顔から一転して柔和な笑みを浮かべて、上野も今季最終戦を思い出深い一戦に挙げた。ボールは自然と上野の元へと集められた。幕引きを自らのゴールで飾れる機会を、チームメイトは作ってくれた。CKから佐藤悠介はピンポイントのボールを、岡田佑樹も良質なクロスを供給してくれた。決めたかったが、無情にも放ったヘディングシュートはいずれもクロスバーに嫌われた。ゴールを奪えなかったことに悔しさが滲んだが、上野は晴れ晴れとした表情で「栃木で引退できたことを誇りに思う」と話した。

ピッチを去っても栃木のために貢献したい。恩返しをする意向を上野と小林は表明した。「これからが本当の始まりだと思う」。栃木県における栃木SCの存在感はJチームとなることで大きくなる。より一層県民に愛され、支持されるクラブとなるためには下部組織の環境整備を行い、「生え抜きの選手」の育成が必要であり、ピラミッドの頂点にあるトップチームの充実も訴えた小林。目は後進の育成に向けられている。具体的なプランを明かさなかった上野だが、栃木には「サッカーが根付く土壌がある」と感じ取っており、選手がいいプレーをすることが更なる盛り上がり、新たなファン獲得に繋がると、こちらも蓄積した経験を伝える仕事に進んでいく方向性を示した。

ゴール数こそ二桁に満たなかったが攻守に献身的だった上野のプレーは尊く、「キング・オブ・トチギ」の名に恥じない姿勢を貫き通しもした。独特のリズムから緩急をつけた、小林独特のドリブルは局面打開には効果的で、精度の高いクロスはゴールを導き出した。

栃木のために、栃木SCのために骨惜しみないプレーをしてくれた上野と小林には感謝してもしきれない。

ありがとう。そして、お疲れ様でした。  

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