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戦評:対FC刈谷戦@栃木SC通信

2008年12月 1日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

310.JPG栃木SCで指揮を執った1年半を振り返り、柱谷幸一監督は「1年目が凄く思い出される」と語った。高橋高前監督の後任として昨年7月、現場を預かることになった。当時、栃木SCはプロとアマが混在したチームだった。午前のトレーニングに参加できたのは、プロ契約を結んでいた選手に仕事の都合がつく選手を加えても20人に満たなかった。時間との戦いの中で戦力の見極めを行い、コンセプトを浸透させるために、日中に仕事を持った選手が集まれる夜のトレーニングにも顔を出した。申し訳程度の照明に土のグラウンドと粗悪な環境に戸惑ったことだろう。それでも、引き受けた以上はプロとして結果を残さなければならない。

積極的に動いた。改革を次々と実行する。人工芝(鹿沼市)のグラウンドを優先的に使えるよう交渉し、練習参加が困難だったアマ選手を複数人プロ契約させ、良質なトレーニングを入れた。しかし、プロチームにより近いカタチに体制作りを敢行するも、プロ意識を植え付けることは容易ではなかった。サッカーで飯を食うという矜持は芽生えず、重要な要素が決定的に欠けたことで頭を悩まされ続けた。最後まで意識は改善されることはなく、当然ながら結果は伴わなかった。J2昇格を逃す。

「2年目にオファーをもらった時にやるしかないと思った」

昇格条件のひとつである「4位以内」の目標を達するために、勝てるチームを作るために選手を大幅に入れ替える断を下す。「辛い決断だった」(柱谷監督)が、完全プロ化は紆余曲折を経て実を結んだ。当初掲げた「優勝」、「勝点83獲得」、「ホーム全勝」は成しえなかったが、最低限のノルマである「4位以内」は確定させた。さらに最終戦こそドローに終わったものの、クラブ史上最高となる「年間2位」でフィニッシュできた。

今季、無我夢中で開幕から突っ走ってこられたのは、昨季の苦労があったからこそだと柱谷監督は考える。苦しんだ経験は無駄ではなかった。辛苦を味わった昨季と同様に今季も事はスムーズに運ばなかった。口に出せないような我慢を強いられたことも多々あっただろう。だが、「それも高崎に勝ったことで4位以内に入り全て吹っ飛んだ」と晴れやかな表情で話し、「いい1年でした」と結んだ。

来季、J2へと舞台を移す栃木SCを率いることは、交渉が決裂したことにより叶わなくなった。が、試合前にサポーターが高らかに歌い上げる「県民の歌」に瞼の裏を湿らせ、「栃木が好きです」と公言する指揮官は、再び戻ってくることを固く誓った。

「柱さんのサッカーが栃木をJへ上げたことを忘れないでください」(石館靖樹)

ピッチ内のみならず、ピッチ外で残した功績は計り知れない。餞の言葉として贈られた「幸一栃木」に、感謝の思いはたっぷり詰まっていた。


開門前の入場ゲートには長蛇の列が出来上がっていた。JFLでの最後の試合に足を運んだ観衆の数は1万人を上回り、リーグ新記録となる13821人に達した。1万人超えは一昨年の開幕戦以来2度目となる快挙だった。JFLラストマッチに選抜された11人は以下の通り。GK小針清允、4バックは左から斎藤雅也、鷲田雅一、赤井秀行、岡田佑樹、中盤はボランチに鴨志田誉と落合正幸、左に佐藤悠介、右に小林成光、2トップは上野優作と横山聡。事前に契約満了を通達された鷲田、小林、上野、横山にとっては、栃木SCラストマッチでもあった。

最終戦の相手は前期、最も手を焼いたFC刈谷。引退を宣言したベテランFW伊藤智弘が3トップの一角を占めた。布陣は4―3―3。

序盤からアグレッシブに両サイドから攻め立てた栃木SCは、開始4分に絶好機を迎える。サイドをえぐった岡田が入れたクロスは一旦クリアされるも、落合がシュートを放つ。歓声はすぐに溜息に変わる。シュートは惜しくもクロスバーに弾かれた。

好機を逸した栃木SCは、時間の経過と共に動きに硬さが見られるようになる。殊に2トップ。「ボク、聡、マサミツとガチガチだった」と上野が言うように精彩を欠いた。原因は気持ちの空転だった。最終戦に懸ける思いがマイナスに働いた。パスが繋がらなくなり、呼吸も合わなくなる。事態は悪化の一途を辿った。救いだったのは特長であるロングボールの雨をFC刈谷が降らせることなく、慎重に試合を運んでくれたこと。前期のようなキックアンドラッシュで向かってこられていたら、とても跳ね返せるような力はなかった。「様子を見過ぎた」(浮氣哲郎監督)FC刈谷に助けられた45分間だった。

電光石火の一撃が炸裂する。岡田のロングパスを受けた佐藤がゴール正面からループシュート。GK石川扶の指先とクロスバーに当たったボールは、ゴールへと吸い込まれた。イマジネーション溢れたシュートが均衡を破る。後半開始21秒に先制した栃木SCであるが、すぐさまPKを献上。窮地に陥るもキッカーの伊藤は重圧に屈し、シュートは大きく枠を外れた。

難を逃れ、横山のクロスバー直撃のヘディングシュートを皮切りに、セットプレーから立て続けにゴールに迫った栃木SCだが上野、赤井、鷲田のシュートから追加点は生まれなかった。決定機を決め切れず、カウンターを浴びるシーンが多々見られ、同点とされてしまう。手薄になったゴール前に走り込んだ平林輝良寛に背後からのボールを左足で蹴り込まれる。後半21分、痛恨の被弾。

「決めてくれビームが出ていたが決められなかった」

唇を噛んだのは上野。現役を退くことを決めていたチーム最年長にボールを集めるが、繰り出したヘディングシュートは終ぞゴールネットを揺らせなかった。花道を飾れず、松田正俊と交代。その松田がPボックス内で粘り、ロスタイムに岡田が渾身のシュートを打つも枠外へ。2点目を奪えずに痛み分け。勝点差1の3位カターレ富山もドローに終わったことで、前節からの2位は変わらず。勝ち切れなかったものの、クラブ史上最高位で2008年を締め括った。

試合後に催されたセレモニーは昇格条件をクリアしたチームにおよそ似つかわしくない、しんみりしたものとなった。柱谷監督をはじめ挨拶をする選手の大半が言葉を詰まらせ、涙を流した。「JFL卒業式」は沈んだ空気に包まれた。その重苦しい雰囲気を「おかしい部分がある」と述べた上野だが、一方でこうも言うのである。

「サポーター、県民の皆さんに分かって欲しいのは、チームが成長するためにはこういうこともある」

プロクラブとして歩むことを決めた以上、毎年去る者が出てくるのは避けては通れない道。強くなるためには痛みを伴うこともある。その痛みに耐えること、覚悟を持つことも、今後は支える側に求められる。

「サポーターの応援なしに選手は動けません。サポーターが応援してくれるから一歩二歩と前に進める。これから栃木が強くなるためには皆さんの力が必要です。凄いパワーで栃木を応援してください」

栃木を一線から退く場に選び、これからも携わり盛り上げるために尽力すると明言した上野。サポーターの存在の大きさと有難味を知るからこそ、厚い支持を呼び掛けた。選手と体制が変わろうとも。

JFL後期第17節 栃木SC1―1FC刈谷 観衆13821人 @栃木県グリーンスタジアム

〈栃木SC〉交代:横山(→稲葉久人)、小林(向慎一)、上野(→松田)

〈FC刈谷〉GK石川扶、DF松田勉、田上裕、石川高大、諸江健太、MF日下大資(→宮田知洋)、平林輝良寛、西原拓巳(→酒井康平)、FW原賀啓輔、伊藤智弘、高橋良太  

戦評:対ファジアーノ岡山戦@栃木SC通信

2008年11月24日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

fo2.JPG
数的優位にもかかわらず試合を動かせなかった。スコアレスドローの試合結果と内容に、「出来れば1、2点を取れればよかった。崩し切れなかったのは残念。皆が考えてプレーしなければならない」と、険しい表情で語ったGK小針清允だったが、前半19分ファジアーノ岡山(以下、岡山)に与えられたPKをストップしたシーンに関して話題が及ぶと、幾分か表情は和らいだ。

キッカーの喜山康平は小針のタイミングを外そうと、ゴール中央へ絶妙なチップキックを放つ。重圧の圧し掛かるシーンでも、大胆不敵な行動に打って出た。二十歳とは思えないハートの強さには恐れ入る。しかし、小針の方が一枚、上手だった。

「タイミングをずらされたが、読みを入れてボクが変に動かなかった」

体は左側へ傾いていたが「足を残せた」(小針)ことで、トリッキーなキックにも対応できた。伸ばした右足一本、足先でボールを蹴り出した。

「小針さんがPKを止めてくれたことが大きかった」

そう語るのは3バックの左ストッパーを務めた田村仁崇。岡山に持っていかれそうになった流れを、ビックセーブにより寸前のところで堰き止められたことを感謝した。PKが決まっていれば、ホームの岡山が勢い付いた確率は低くない。それだけ小針の好守は大きなウェイトを占めていた。果たした仕事は小さくなかった。

が、小針本人は渾身のクリアにも驕ることはない。日頃と不変の謙虚な姿勢を貫く。

「当てるのが精一杯だった。(クリアボールが枠を)外れるか、(前に)こぼれるかは、紙一重。結果的に外れただけ」

「たまたまです。入れられてもおかしくはなかった」

ここまで33試合フルタイム出場と、チームで唯一の皆勤賞。安定感は群を抜き、チームの背骨として指名されただけあり、柱谷幸一監督の期待に違わぬ活躍を披露している。パフォーマンスに大きな波がないのは勝敗に関係なく、的確な試合分析が行える沈着冷静な思考と無縁ではないだろう。失点をすれば、悔しさのあまりポストに八つ当たりすることもある。だが、気持ちの切り替えが非常に滑らかであり、かつ浮き沈みの幅が狭いからこそ、後々まで尾を引くことはない。オンとオフの使い分けが適切であることこそが、小針の最大の強みである。

自己を、客観的な視点を失わない守護神が最後尾に控える。その存在感は味方に多大なる安心感をもたらしている。影響力は計り知れない。

小針、さまさま。

本人はそんな言葉を嫌うだろうが、今季どれだけ俊敏な反応に助けられてきただろうか。栃木SCのゴールマウスに小針が立たない絵は想像し難い。


4位以内を確定させた前節の対アルテ高崎戦後、次節へ向けて佐藤悠介はこんなことを言っていた。

「昇格争いをしている岡山に対してもいいゲームをしなければいけない。昇格ギリギリの(ガイナーレ)鳥取に失礼のないゲームを、全力で栃木のサッカーをする」

「ベストメンバーで向こうへ行く」と話した柱谷監督。メンバーを落とすことなく敵地に乗り込み、「J2準加盟ダービー」に臨んだ。3―6―1のスターティングメンバーは以下の通り。GK小針、DF田村、山崎透、赤井秀行、守備的MFに落合正幸と鴨志田誉、左ワイドに入江利和、右ワイドに稲葉久人、2シャドーに佐藤と小林成光、1トップは松田正俊。

昇格条件のひとつである「4位以内」を目前に連敗を喫し、足踏みをした岡山だが、前節の勝利により勝てば自力での確定を手にすることができるまでに漕ぎ着けた。ただいま得点ランキング2位、19ゴールの小林康剛を出場停止で欠くものの、こちらも上位に顔を出す、前期はボランチに配された喜山(18ゴール)が鴨川奨と2トップを組んだ。布陣は4―4―2。

「Jへの扉が開く時――この瞬間を、見逃すな」と銘打たれたホーム最終戦、桃太郎スタジアム(収容人数20000人)には11053人の観衆が詰めかけた。エンジに染まったスタンドからの声援を受けた岡山は序盤から前に出た。昇格のプレッシャーで硬くなることはなかった。圧倒的なアウェーの雰囲気に晒されながら、栃木SCも両サイドを利し、小林や松田がシュートを打つなど対抗する。

栃木SC陣内に入れば、全てが好機に繋がるような空気を醸成させた岡山サポーター。鴨志田のプレゼントパスから喜山が強烈なロングシュートを飛ばすと拍車が掛かる。18分には川原周剛もミドルを打ち込んだ。これはGK小針が弾くも、ルーズボールに食いついた関隆倫を稲葉が倒したとしてPKの判定が下される。失点機を小針が足一本で阻止した栃木SCであるが、球際の攻防で接触すればファウルを取られるなど、主審が平静を欠いたことによりセットプレーを奪われ苦しむ。鴨川に浴びたシュートにも冷や汗をかかされる。

左サイドの川原が対面の稲葉との綱引きを制したことで起点を設け、優位に立っていた岡山だが、鴨川が立て続けにカードを頂戴し、32分に追い出される。数的優位に立った栃木SCは、ポゼッションで凌駕するも、がっちりと8人でブロックを作られたことで拙攻を重ねる。サイドに蓋をされ、入江と稲葉を活かしきれず、Pボックスに供給したクロスは尽く跳ね返された。

アタッキングサードでの大胆な仕掛けをハーフタイムに訴えた柱谷監督。だが、皮肉にも思い切りのよさは、ひとり退場者を出し、堅守速攻のプランに切り替えた岡山にあった。栃木SCは前掛かりになったにしても、セットプレー後にカウンターを食らい過ぎた。辛うじて耐え凌ぐも、鋭い攻撃に肝を冷やされるシーンが散見された。ゴールへの渇望を感じる一方で、リスク管理が出来ていたとは言い難かった。

ゲームを支配するが決定機を作り出せない栃木SCは、前線のテコ入れを図る。横山聡、向慎一(小林、稲葉アウト)を投入し、3―5―2へシフト。圧を掛けようとするが、揺さぶり切れない。30分、入江のクロスを中央で松田が完璧に捕えるも、ヘディングシュートはGK李彰剛の正面を突いてしまう。厄介だった喜山、関がピッチを去り、脅威が薄れたかに思われたが、交代出場の妹尾隆佑がPボックス内で落合をかわして決定的なシュートを繰り出すなど、岡山の戦意は殺がれなかった。向の右クロスを横山がボレーで合わせるが、再びGK李がキャッチ。粘り強い守備を打破することは叶わなかった。大観衆の後押しを受けた岡山は、終盤に得たセットプレーからゴールを脅かしたが、GK小針と栃木SC守備陣の集中力も途切れることなく、終ぞゴールを割ることはできなかった。

緊迫感が漂う、濃密な90分間。試合開始からスコアは動かず、終戦を迎えた。

勝利を飾れなかった岡山の条件クリアは持ち越された。月曜日開催の5位・鳥取が勝利を掴めなければ他力で、もしくは栃木SCに続き4位以内を決めたカターレ富山との最終節で勝ち切れば自力での悲願が達せられる。鳥取と岡山のラスト1枠を懸けた争いから目が離せない。

さて、ドロー決着によりお預けになったものが、もうひとつある。栃木SCの年間順位2位決定である。優勝を逃したものの最低限のノルマである4位以内を手中に収めた今、残り試合は消化試合の様相も薄くない。てっぺんを獲れなければ、その他の順位に差異はさほどないとの考えもある。しかし、JFLでの最高位は2005年の4位。今季、卒業するリーグを首席ではなくとも次席で終えたいとの思いは、栃木SCに関わってきた者の中には少なからずある。敗戦をドローに変換したGK小針は言う。「昇格争いをしているチームの中で一番いい順位で終わりたい」。つまりそれは、クラブ史上最高の2位で最後を締め括ることと同義である。最終節の対FC刈谷戦も気を抜くことなくベストの状態で挑み、確かな足跡を刻んで次のカテゴリーへと進みたい。

JFL後期第16節 ファジアーノ岡山0―0栃木SC 観衆11053人 @桃太郎スタジアム

〈ファジアーノ岡山〉GK李彰剛、DF重光貴葵、木村允彦、伊藤琢矢、尾崎雄二、MF川原周剛(→小林優希)、小野雄平、玉林睦実、関隆倫(妹尾隆佑)、FW喜山康平(→朝比奈祐作)、鴨川奨

〈栃木SC〉交代:小林(→横山)、稲葉(→向)、入江(→坂本勇一)

戦評:対アルテ高崎戦@栃木SC通信

2008年11月17日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

at1.JPG90分で勝ちゲームを作る。今季、栃木SCが掲げてきたテーマのひとつである。佐藤悠介は常々、口にする。「90分通してスコアが多い方が勝ち」。前後半を上手くマネジメントし、最終的に勝ち切る。小差でも構わない。兎に角、終了のホイッスルが鳴り響いた時点で、1点でも上回っていればいい。

しかし、勝てば「年間順位4位以内確定」が懸った大事な試合では、出来る限り早い時間帯でのゴールが望まれた。どうしたって硬くなる試合、早々に均衡を破ることで平静を取り戻し、優位に試合を運びたいと考える。

戦前に山崎透は、こんなことを思っていた。「こういう状態(4位以内が決まる試合)だから、0―0でいけば焦りが出る」。経験豊富な選手がピッチに立っていることの心強さを感じる一方で、山崎自身は「今までに感じたことがないほどのプレッシャー」に晒され、「個人的には力が入っていた」という。だからこそ、前半6分に佐藤が先制点を奪ってくれたことで、「気持ちの上で楽になった」と話す。

最後尾から戦況を見詰めていたGK小針清允も、「早い時間帯に取れたことはよかった」と、先制点の重みを口にした。それは強い思いが空回りした選手が少なからず存在した、と感じ取っていたからである。

チームメイトをリラックスさせ、主導権を握ることになる一撃を叩き込んだ佐藤は言う。

「何かを勝ち取るのは大変だと改めて感じた」

昨季、東京ヴェルディでも苛烈な昇格争いに身を置いた。カテゴリーは違っても、周囲からの期待など背負うものの大きさはそれほど変わらない。当然ながら重圧も同等に掛かる。だが、開幕戦の先制弾にはじまり、前期首位ターンを決めた決勝弾、加えて4位以内を決定付ける試合での2発(1点目と6点目)、と節目では必ず結果を残してきた。

「悠介の存在は大きかった。左足は図抜けている」

柱谷幸一監督は賛辞を惜しまない。困難な事態に直面しても、いや厳しい局面だからこそ左足は強烈なまでの存在感を示し、閃光を放った。


前日、4位争いを繰り広げる5位・ガイナーレ鳥取、6位・横河武蔵野FCが揃って敗戦を喫した。これにより栃木SCは勝点3を得ることで自力での4位確保が達せられる環境を整えてもらった。この機を逸するわけにはいかない。現状を認識させた後、柱谷監督は選手に伝えた。「チャンスを持ってきたのは自分達の力。ただし、チャンスは手を出して掴まなければいけない」と。対戦相手の布陣を考慮し、前節の3―6―1から4―2―3―1へフォーメーションをいじる。スタメンはGK小針、4バックは左から田村仁崇、山崎、照井篤、赤井秀行、守備的な中盤に鴨志田誉と落合正幸、松田正俊の1トップ下に入江利和、佐藤、小林成光の3人が並んだ。

8連敗中のアルテ高崎(以下、高崎)は4―3―3を選択。16位と低空飛行を続けるも、前期は栃木SCを苦しめただけに(3―2)、侮るわけにはいかない。

雨は止むも、薄いもやのかかったスタジアム。ピッチは水を含み、スリッピーだった。

序盤から前傾姿勢をとったのは栃木SC。入りはいつも以上に滑らかで、佐藤のスルーパスから松田がGKと1対1のシーンを迎える。ここは阻止されるも、驚くほどあっさりとゴールを割る。松田がボールをキープし、落合を経由したボールは中央で待ち構えていた佐藤の元へと届けられる。ゴール正面からFKと同じような動作で左足を振った佐藤のシュートは綺麗にネットに収まった。

先手を取った栃木SC。前線で際立った松田が追加点を奪う。自陣から少し出たところから田村が供給した対角線のクロスを走り込みながら頭で合わせた。「ボールを持ったら俺を見ろ」(松田)。松田の動き出しにピタリと合わせた田村のキックの精度。呼吸は抜群だった。

浅いラインを敷き、Pボックス内へボールを盛んに入れてきた高崎だが、相手のロングボール対策として起用された照井と山崎の高さが勝る。高崎の攻撃を封じ、好機を生み出しながら決め切れなかった栃木SCは27分、ゴール前の混戦を田中靖大に制され、詰め寄られる。1点を失ってから大きな展開が減ったものの、極端に高いラインの裏を突く当初の狙い通り、鴨志田が落合のパスに飛び出す。GK斯波薫の空振りというアシストもあり、鴨志田は嬉しいプロ初ゴールをマークする。その後、佐藤と松田がゴールに襲いかかるも、前半は3点止まりだった。

エンドが変わっても栃木SCは優勢に試合を運び、佐藤が立て続けにゴールに迫る。高崎も失点で戦意が殺がれることはなく、イケイケのサッカーは継続された。玉砕覚悟の戦術にはまりこまないために加点したい栃木SCは、落合と鴨志田がセカンドボールを拾いまくり、素早い攻守の切り替えから広大なスペースを活かし、立て続けにゴールを挙げた。

入江がドリブルで突っかけて放ったシュートのこぼれ球を松田がプッシュ。5分と経たずに入江のクロスからまたしても松田がハットトリックを完成させる。点差を広げるも攻撃の手を緩めない栃木SCは、交代出場の高安亮介がサイドを猛然と駆け上がり、スタンドを湧かせる。照井の緩慢なプレーから冷やりとさせられるものの、ゴールショーを閉めたのは佐藤。途中出場の石舘靖樹が獲得したPKを冷静に沈める。

ロスタイム3分が過ぎ去り、ついに「歴史的瞬間」は訪れた。勝利を手中に収め、「J2昇格」条件のひとつである、4位以内をクリアしてみせた。生まれ育った地元での歓喜の時を、「こういう瞬間は一生に一度しかない。立ち会えて嬉しい」と入江は述懐した。

試合後のセレモニーで「お待たせしました」と発した新井賢太郎社長は、3年間の苦しみから脱した喜びと共に、教員チームからスタートしたクラブの歴史に触れた。キャプテン佐藤はクラブ存続の危機に瀕しながらも乗り越えてきた関係者に感謝の意を述べた。アマチュア時代、プロとアマチュア混在の時代、そして完全プロ化の時代を知る選手会長の山崎は、「これまで共に闘ってきた仲間達のぶんまで頑張ろうと思った。会えば『頑張れ』と声をかけてくれる。なんとか試合に出て昇格に貢献したいと。最後に出られてよかった」と、栃木SCの歴史を背負って戦えたことを誇らしげに語った。

劣悪な環境下でプロを擁する、或いはプロと同等に優遇されてサッカーに取り組めるチームに対抗心を抱き、挑みかかってきた栃木SC。時を経て優勝を公言できるまでになり、挑戦を受ける側に立場を変え、来季はいよいよ日本最高峰のリーグへ参入するまでに至った。1年でJFLを通過したチームにすれば、歩みは遅く見えるかもしれない。だが、「J」など非現実的だった時代を考えれば、長足の進歩を遂げたといえる。このクラブはもっと大きくなれるし、強くもなれるポテンシャルを多分に秘めている。

数年前、誰が「Jクラブ」と名乗れるようになることを想像できただろうか。栃木SCは今後も成長曲線を描き続ける。

JFL後期第15節 栃木SC6―1アルテ高崎 観衆4490人 @栃木県グリーンスタジアム

〈栃木SC〉交代:小林(→高安)、松田(→石舘)、入江(→稲葉)

〈アルテ高崎〉GK斯波薫、DF杉山琢也(→田中翔太)、今井雅貴、阿久澤剛、床井伸太郎、MF里見仁義、工藤光俊(→山田裕也)、大谷昌司、秋葉勇志、白山貴俊(→神谷恭平)、FW田中靖大  

戦評:対三菱水島FC戦@栃木SC通信

2008年11月10日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

mm1.JPG野球でいえばワンポイントリリーフのような起用法だった。

後半30分、MF小林成光の代わりにピッチに立ったのはDFの照井篤だった。この交代から数分間、栃木SCの選手は照井の収まる場所が見出せずに混乱した。照井がボランチの位置、アンカーとして構えかと思えば、DFラインにも参加するなど、中途半端なポジションを取ったからである。慌ててベンチに近かった赤井秀行が指示を仰ぐ。交代の意図をピッチの選手に伝えたことで事態は収束した。

「ゲーム前にテル(照井)には190センチのやつが出てくるから、競った時には『マーク役につけるからな』と伝えていた」

どうやら柱谷幸一監督と照井の間では、密かに約束が交わされていたようである。それが選手全員に行き届いていなかったことで、一時的にあたふたしたのである。

さて、照井に課された仕事は、ひとつだった。後半20分に登場、三菱水島FC(以下、三菱水島)のFW森前健を密着マークすること。三菱水島は地上戦ではなく空中戦に早々と切り替えた。それに対して栃木SCは残り15分を2点のアドバンテージを有しながら、失点が相手を勢いづかせることを、勝利に見放され続けた4ヶ月間で痛感したことで守りを強固にした。照井に張り付かれた森前は、思うように仕事をさせてもらなかった。三菱水島が打った手は水泡に帰し、栃木SCが講じた策は奏功した。

「テルが競ることで攻撃の勢いを潰せた」

采配が見事に的中した、柱谷監督は誇らしげに語った。一方で、同じ轍は踏めない。そんな思いがあったのも確かだろう。

後期第11節の対ニューウェーブ北九州戦。点差こそ異なるが1―0とリードした状況で、パワープレーを敢行してくる相手の策略に対応しきれず。高さに屈した。勝点3を土壇場で取り逃した。

「あの時はなんとか守り切れると思っていたが、結果的にやられてしまった」

当時を振り返った柱谷監督の言葉からは悔恨の念が感じ取れる。失敗を次に活かさなければ成長が望めないのは、選手も指揮官も一緒である。だからこそ、動いた。中盤を削り、DFを投入するという“一人一殺”の大胆な選手起用は、勝利を強く手元に引き寄せた。

形振りなど構っていられない。昇格レースも佳境に入り、いよいよ柱谷監督のスイッチも入ってきたようである。腹が据わったことは小さくない。


残り4試合、4位以内を確保するために熾烈な争いが繰り広げられている。2位に位置する栃木SCと5位ガイナーレ鳥取の勝点差は僅かに4、さらに6位横河武蔵野FCとの差は5と、シビアな事態に変わりはない。生きるか死ぬかのサバイバルレースへ向けて、柱谷監督は選手に伝えた。「今日からトーナメントのつもりで戦おう」。1回戦の相手は最下位の三菱水島。スタメンはGK小針清允、DF3人は赤井、山崎透、田村仁崇、中盤の構成は底に落合正幸と鴨志田誉、左に入江利和、右に小林、松田正俊の1トップ下に佐藤悠介と向慎一が並んだ。主力の上野優作、横山聡、鷲田雅一は怪我により遠征メンバーからも外れた。

順位表で一番下の三菱水島だが前節は横河と1―1のドローを演じ、優勝を成し遂げることになるHondaFCにも善戦(1―2の敗戦)するなど侮れない存在である。

負けが許されない試合、佐藤はこんな思いを抱いたという。

「チーム全員、残っている選手も『俺達のぶんまで(戦ってほしい)』と思っている。それがベテランで、中心となってやってきた優作さん、聡、ワシ。本当に出られなく悔しいと思う。その分までボクが思いを背負ってやる」

並々ならぬ決意で臨んだ佐藤がカウンターから飛び出してゴールを脅かすなど、栃木SCは前線の松田をターゲットに、ロングボールを当ててから左を軸に組み立てる。ボールを回せるシーンでも前に蹴ってしまう、些か前に急ぐ嫌いが窺えたのは、芳しくないグラウンドコンディションを考慮してのことだった。「ボクのところに当てていいカタチができていた。続けていこう」(松田)。ことに田村から松田に供給される良質なボールは効果的だった。

縦にすっぽりとボールが収まり、田平謙に冷やりとするバウンドシュートを浴びる。奪ってから縦関係の2トップに早めにボールを集めた三菱水島は意欲的にシュートを打ち込んできた。FKから落合のクイックリスタートに佐藤が鋭く反応。GK折見健治との1対1を決め切れなくなったあたりから風向きが徐々に変わり始める。絶好機を逸し、切り替えの部分でのパスが雑になり、右の小林の機能性が低かったことが原因に挙がる。ペースを掴んだ三菱水島はバイタルエリアに潜り込み、果敢にゴールへのチャレンジを続けた。栃木SCは一時的に劣勢に回るも、「守備ができたことでリズムが持って来られた」(柱谷監督)。苦しい時間帯を耐え凌いだことは小さくなかった。前半43分、先制点を奪う。入江の左クロスをニアサイドで向が競り、ルーズになったボールを小林がお辞儀をするように頭で叩き込んだ。

突如として最後尾から走り込んできた赤井。鴨志田とのワンツーでゴールに迫るもシュートは力なくGKへ。追加点とはいかず、45分を折り返す。ゴールは割れなかったものの、赤井が1試合に1度は挑むオーバーラップはスカッと爽快。今後も怯むことなく向かっていって欲しいものである。

2点目を得たのは後半早々の4分だった。入江のスローインを起点に佐藤がゴールライン際から上げた浮き球は待ち構えていた松田の元へ。「押し込むだけでした」と松田。謙遜ではなく、まさしくその通りのゴールだった。

4位を確保するために、最後の最後で得失点差も重要なファクターとなる可能性もある。少しでもゴールを積み上げておきたい。波に乗りゴールに襲いかかる栃木SCは、FKから落合が技ありのバックヘッド、裏を突いた佐藤が左足一閃。だが、GKの好守とポストに阻止された。逆にPボックス内で田村が山下聡也に振り切られシュートを放たれるも、上に外れて命拾い。相手のミスにより窮地を脱してから程なく、3点目が生まれる。左から入江がドリブル突破で嬉しい初ゴールをマーク。疲労が見えた三菱水島に対し、ゴールに気を良くした入江の仕掛けは、厄介極りないものだったに違いない。

試合を決定づけた栃木SCは続々と好機を作り出す。加点を狙いつつ、戦列を離れていた石舘靖樹と高安亮介を実戦復帰させるなどの試運転も試みる。高安は感触を確かめるようにプレーしながらも2対1の局面では縦に突っかけ、ロスタイムに石舘は松田に絶好のお膳立てをしてもらってからシュートを繰り出すが枠を捕えきれなかった。ゴールを加えることは叶わなかったが、残り3戦に向けて石舘と高安が使える目処が立ったことは収穫だった。

「引き分けや(試合を)落としていたら正直、どうしようかなと思った。それだけ後がない状況での勝ちだった」

9戦未勝利と逼迫した状況下、最下位相手に必勝の重圧に苛まれながら、それでも零封で勝ち切った。「久々に美味しいビールを飲んでもらえれば。小さい子供は駄目ですけど」。溜飲が下がる久方ぶりの勝利に、佐藤の口からは冗談も飛び出し、笑顔も見られた。しかし、次なる戦いに話が及ぶと、一転して顔は引き締まり、こう続けた。「順位が下の相手(アルテ高崎)だが難しいゲームになる。でも一人一人が役割を全うすれば結果は付いてくる。栃木に関わる全ての人の力を借りたい」。

改めて共闘を訴えかけた。なぜなら三菱水島戦の最大の勝因が選手、スタッフ、サポーターが一枚岩となり、勝点3を強く欲したからに他ならないからである。

トーナメント1回戦を勝ち上がった。2回戦はホームにアルテ高崎を迎える。鳥取と横河の結果次第では、次節にも4位以内が確定するが、選手の頭には全勝しかない。優勝はHondaFCにさらわれてしまったが、次に高い頂、2位でのフィニッシュを果たすべく、油断せずに次戦へ備える。

JFL後期第14節 三菱水島FC0―3栃木SC 観衆334人 @福山市竹ヶ端運動公園陸上競技場

〈三菱水島FC〉GK折見健治、DF川口正人、坂口遥、萩生田真也、三宅一徳、MF山下聡也、田丸誠(→徐暁飛)、田平謙、曽根祐一、FW中川心平(→森前健)、奥山卓廊(→尾後貫淳)

〈栃木SC〉交代:向(→石舘)、小林(→照井)、佐藤(→高安)
  

短評:対三菱水島FC戦@栃木SC通信

2008年11月10日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

一戦必勝。残り四試合をトーナメントのつもりで臨んだ栃木SC。「初戦」の三菱水島FC戦で、順当に3―0の勝利を収めた。しかし、相手が下位に沈んでいるからこその難しさが、勝ち点3が絶対に求められる一戦の重圧は尋常ではなかったに違いない。

前半の序盤と中盤に佐藤が背後をとる決定機をゴールに結びつけられない。すると流れは三菱水島に傾き、シュートを浴びるシーンが目につく。優勢に試合を運べなくなった栃木SCであるが、悪い流れの中で先手を取る。入江の左クロスを向がニアで競り、こぼれたボールを右から内に入り込んでいた小林がダイビングヘッド。ネットに突き刺した。

リードして迎えた後半の立ち上がり、佐藤のふわりとしたクロスを松田が頭でプッシュして二点目を奪う。再三、裏を窺っていた佐藤は絶好機を逸するも、ほぼ同じようなカタチが巡ってきた好機から入江は確実にネットを揺らした。終盤、高さに活路を見いだそうとした三菱水島に対し、柱谷監督は照井を投入。長身FWをマンマークさせる。ターゲットを潰された三菱水島は打つ手なく、栃木SCは逃げ切りに成功。遠路はるばる駆け付けたサポーターと、久方ぶりの勝利に酔いしれた。

「痺れるゲームを勝つことで、いい経験が積める。次にホームでやれることは大きい。何よりも勝利は気分を上向かせる」と話した柱谷監督の表情からは、安堵の色が滲んだ。絶対に勝ち点3が必要な状況で取りきれたことは、次のアルテ高崎に繋がる。

※お疲れ様でした。レポート&コラムは明日にします。疲労困憊なので。ごめんなさい。HondaFCの皆さん、優勝おめでとうございます。

前半:0-1。

後半:0-2。

ファイナルスコア:0-3。

得点者:小林成光、松田正俊、入江利和(栃木SC)

順位:2位(勝点58)◆優勝:HondaFC(勝点69)

勝利の味は何度、味わっても飽きない。

戦評:第88回天皇杯全日本サッカー選手権大会4回戦 対ジュビロ磐田戦@栃木SC通信

2008年11月 3日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

jb1.JPG悔しさを押し殺し、敗因として柱谷幸一監督が挙げたのは、サッカーにおける不変の真理だった。

「勝つためには点を取り、点を取られないようにする。両ゴール前で厳しくやらなければならない」

「内容は100%の出来」と、きっぱり言い切った柱谷監督。確かな感触を得たゲームだった。3失点を喫するが3バックは踏ん張り、ダブルボランチは中盤で伍して渡り合った。「今日のピッチに立った22人の中で一番輝いていた」と、躍動した佐藤悠介には賛辞を惜しまなかった。相手がJ1のジュビロ磐田(以下、ジュビロ)であっても、自分達のサッカーを遂行できれば、十分に戦うことが出来る。ただし、いくら内容に優れていても、結果に繋がらないケースが多々あるのが勝負事である。

「状況的に1―1で追い付かれ、相手の士気が凄く高まっていた。『ここからいくぞ』という雰囲気を感じた。それを長時間続けると相手のペースになりかねない。(失点した)直後に返したいと思っていた」

少し甲高い、独特の声で中山雅史は自身のゴールを振り返った。「フィジカル的には死にかけていた」(ジュビロ、ハンス・オフト監督)が、試合の流れを読み切る力は、不惑を超えても衰えを知らない。同点とされてから程なく、「ゴンゴール」は生まれた。波に乗りかけた栃木SCだが、このゴールにより乗り切れず、勢いを殺がれる。

流れを掴む暇を相手に与えない。それどころか一気に畳み掛け、雌雄を決する3点目を鮮やかに奪い去った。立て続けにゴールを取り切れる。覇権を争い、手にしてきたチームは、例え今季は振るわなくとも、勝ち方を熟知している。ことに中山のゴールからはゲーム運びの妙を見せつけられた。

か細い声で落合正幸は言った。

「勝負強さを痛感させられた」

攻撃陣がきっちりと取るべきところでゴールを取り、守備陣は傷口を最小限に抑え込み、勝ちゲームに持っていく。ただ今、大混戦の昇格レースで鎬を削っている栃木SC。接戦を制する術をジュビロに教えられた。


PK戦までもつれた、天皇杯3回戦のJ2ロアッソ熊本戦をモノにした栃木SCは、4回戦に駒を進める。ジュビロが根城とするヤマハスタジアムに乗り込んだ。3―6―1の布陣は以下の通り。GK小針清允、DFは左から鷲田雅一、山崎透、赤井秀行、中盤は底に落合、鴨志田誉、左に入江利和、右に岡田佑樹、2シャドーに佐藤と向慎一、1トップは上野優作が務めた。木曜日の対ガイナーレ鳥取戦から斎藤雅也、小林成光、松田正俊が外れた。

これまでの順位表を引っ繰り返したような信じ難い順位。つまり下位から2番目と自動降格圏から抜け出せないジュビロは、前節からごっそりとメンバーを入れ替えた。その数、10人。残留を懸けた残り4試合のサバイバルに備え、天皇杯のスタメンはサブ組を中心に編まれた。

「前半は守備から上手く入れた」とは向の弁である。前線から激しくチェイスし、ジュビロの出鼻を挫いた。赤井のオーバーラップからのシュートを皮切りに、連続して佐藤がゴールを脅かした。憧憬の対象である名波浩と同じピッチに立てる喜びを早速プレーで表現した。

トップへロングボールを蹴らせることに成功。3バックが制空権を譲らなかったことで栃木SCが試合を優勢に進める。サイドへと流れてきた中山とカレン・ロバートに対する赤井の対応は完璧だった。1対1の強みを発揮する。落合と鴨志田のポジショニングとプレスを掛けるタイミングも絶妙で、ジュビロに中盤を支配させなかった。だが、トップの上野へのボールの収まりが悪く、左の入江も機能していたとは言い難く、相手守備の巧さもあり、フィニッシュまで至れなかった。39分に得たCKではニアサイドで上野が潰れ、ファーに抜けたボールを鷲田が頭で合わせる。ふわりとしたボールは枠内に飛ぶが、間一髪で成岡翔にクリアされる。好機を逸する。

一方、ジュビロの43分の先制弾は美しかった。FKから名波のロブを鷲田に競り勝った中山が頭で落とし、走り込んだ河村崇大が頭で流し込んだ。黄金期を彷彿とさせる、華麗な連携を活かしたトリックプレーだった。

前から圧を掛け、奪ったボールを間で受けて攻撃に転じる。栃木SCのやり方は、ビハインドを背負った後半も変わることはなかった。10分、向が繰り出したミドルシュートは枠内を捕え、GK松井謙弥はボールをこぼす。が、セカンドボールに入江は反応できない。詰め切れない甘さが窺えた。

パスとドリブルのスピードが上がったジュビロ。カレンがゴールに迫り、名波はオシャレなループシュートを放った。旗色が徐々に悪くなった栃木SCであるが、山崎の勇猛果敢なインターセプトが局面を打開した。中央をドリブルで駆け上がり、「少しダイアゴナルに走ればラインは崩れる」と読んでいた佐藤に絶好のパスを供給。前に出てきたGK松井を嘲笑うかのように佐藤が冷静に沈める。

栃木SCサポーターのボルテージは最高潮に達するも、ジュビロの連続ゴールによりすぐさまダウンさせられる。カレンのポストプレーから中山に2点目、カウンターを発動させてドリブルで持ち上がったカレンのスルーパスを受けた途中出場の太田吉彰に流し込まれて3点目を献上した。リーグ戦から中2日の疲労は隠しきれず、スピードに翻弄された。

前を松田正俊と横山聡の2トップに変更、後ろは2バックに。リスクを冒して栃木SCは攻めるも、2度目の歓喜が訪れることはなかった。執拗にジュビロのウイークポイントである、セットプレーから好機をこしらえたものの、鷲田が決め切れなかったことは痛恨。都合3本あった好機を1本でも押し込めていれば……。弱みにつけこめなかった。

J1の壁は打破できなかった。「内容は五分五分だったが3―1。結果は完敗だった」(佐藤)。しかし、手に入れたものは小さくなかったようだ。落合は、こんな変化をチームから感じ取ったという。

「こういう舞台でプレーしたいという気持ちが強くなった」

――具体的にはJ2?

「そうですね。昨日の大分(トリニータ)みたいにビッグタイトルを獲れるチームにしたい。その第一歩がJ2だと思う。J2からどんどん上に上がっていきたい」

前日、ファジアーノ岡山の敗戦により、暫定3位だった栃木SCが得失点差で2位となった。天皇杯でのチャレンジは幕を閉じたが、過酷なリーグ戦は最終局面に突入する。これからである。叩きのめされたことで実感した己の不甲斐なさ、内容で劣らなかったことで通用すると思えた自信。ポジティブな要素もネガティブな要素も糧として今後のリーグ戦に活かし、昇格に結び付けたい。

第88回 天皇杯全日本サッカー選手権大会4回戦 ジュビロ磐田3―1栃木SC 観衆4088人 @ヤマハスタジアム

〈ジュビロ磐田〉GK松井謙弥、DF大井健太郎、鈴木秀人、加賀健一、MF西紀寛、河村崇大、成岡翔、岡田隆、名波浩(→太田吉彰)、FW中山雅史(萬代宏樹)、カレン・ロバート

〈栃木SC〉交代:岡田佑樹(→小林)、上野(→松田)、向(→横山)
 

戦評:対ガイナーレ鳥取戦@栃木SC通信

2008年10月31日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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首位を独走するHondaFC(勝点63※後期第12節終了時)の優勝は、下位との対戦を残し、格下相手に取りこぼしの多い嫌いがあるにしても、ほぼ間違いないだろう。

となると、昇格条件である4位以内を懸けた残り3枠を「J2準加盟クラブ」である2位ファジアーノ岡山(勝点55)、3位栃木SC(勝点54)、4位カターレ富山(勝点51)、5位ガイナーレ鳥取(勝点50)が争うことになる。後期12節終了時点で、2位と5位との勝点差は僅かに5。眼下には横河武蔵野FC、流通経済大学、FC刈谷が付けており、1試合の結果次第でめまぐるしく順位が入れ替わる、混沌とした状態が続いている。傍から見れば面白みのある、当事者としては胃の痛む大混戦を引き起こしたのは、他でもない栃木SCの急激な失速なわけであるが。

「昇格レースで勝点3を取るためには、内容よりも結果が最優先される」(柱谷幸一監督)

勝点3を取るために、どんな方法を見出せばいいのか。

昇格のライバルであるガイナーレ鳥取(鳥取)との一戦で、栃木SCは前節の3―5―2から3―6―1へとシフトした。トップを1枚削る代わりに、そのサポート役を2枚に増やした。キーポイントとなったのは、2シャドーの位置に配された佐藤悠介と小林成光。起用の意図を柱谷監督は、「ラストパス、点を取る。決定的な仕事をするように指示した」と話す。前節の対TDK SC戦はスコアレスドロー。前線のパワー不足を痛感した指揮官は、前に厚みを持たせることで攻撃的に試合を運ぼうと目論んだ。

片や鳥取は守備に軸足を置いてきた。メンバー表では3―4―3の布陣だが、実際には5―4―1と超守備的だった。前期の対戦では栃木SCが土壇場のゴールで勝利を得るも、サイドと中央から攻めまくった鳥取が内容では圧倒的に凌駕した。それだけに、極端な守備陣形に面食らったものだが、ひとつの敗戦が順位を大きく下げる事態ならば納得のいく方策だった。リスクを極力軽減し、最低でも勝点1を拾って帰る。あわよくば、勝点3を奪い去ろう。そんな思いが透けて見えた。昇格レース終盤では形振りなど構っていられないのである。

両者の思惑が交錯した決戦は、共に
狙い通りに進む。栃木SCが試合を支配し、鳥取は堅牢な守備組織で対抗した。1点ずつを取り合うも、次の1点、雌雄を決するゴールをどちらも掴めなかった。痛み分けに終わる。

「アウェーで(勝点)1は満足ではない。前期は1―0。89分で(ゴールを奪われて)負けている。アウェーで勝つ気持ちが欲しかった」とヴィタヤ・ラオハクル監督は悔しがった反面、「1点を返せた。ドローに終わり、選手一人ひとりに自信がついた」と、勝点1にまんざらでもない様子だった。気質なのかもしれないが、会見では笑みを浮かべてもいた。

9戦未勝利となった柱谷監督は勝点3を取りに行って取れなかっただけに、当然ながら「前を向いていくしかない。振り返る暇はない」と表情は厳しく、「相手の脅威として足りなかった」と2戦続けて攻撃陣の力不足を嘆いた。

内容を度外視し、「負けないこと」にこだわった鳥取には悪くない結果であり、栃木SCはまたしても勝点2を取り逃したと考えれば、策略にはまったといえる。とどめを刺しきれなかった。


激しく追い上げる鳥取との直接対決を制し、勝点3が絶対に欲しい栃木SCは、短い準備期間で陣形を大胆にもいじった。3―6―1のスタメンはGK小針清允、3枚のDFは赤井秀行、山崎透、鷲田雅一、中盤は落合正幸と鴨志田誉のダブルボランチ、左に斎藤雅也、右に岡田佑樹、松田正俊の1トップ下に佐藤と小林が据えられた。

驚異的な突破力を有するハメドを欠いた鳥取だが、3バックのセンターには戦線復帰した元日本代表の小村徳男が入った。インパクトは小さくない。

前半5分、9分と栃木SCゴールを立て続けに脅かした鳥取だが、その後は5―4―1のカタチを崩さず、スペースを消去し、引きこもっては守りを固める。試合前から果敢にシュートを打つことをテーマに掲げた栃木SCは斎藤、落合がミドルレンジからシュートするなど高いゴールへの意識を見せる。18分、佐藤の強烈なミドルが飛び、GK井上敦史が間一髪で凌ぐも、これで完全に流れを引き寄せる。

ポゼッションで勝り、ボールも人も動いたが、劣勢に回ることを想定済みの鳥取から好機を生み出せない。殊に両ワイドの斎藤と岡田は進路を塞がれた。綱の引き合いで優位に立てなかった。佐藤は右に流れて起点を構築するも、Pボックス内に君臨した小村にクロスを跳ね返され、シュートに至れない。

しかし、鋭利なボールを供給し続けていた佐藤のキックが均衡を破る。CKを相手GKがパンチングで処理するも、ルーズボールに反応した松田が渾身のボレーを叩き込む。押しに押した栃木SCが先取する。

リードして迎えた後半戦。焦れて前に出た相手の背後を取り、カウンターで追加点を挙げる算段は、脆くも早々の失点で台無しとなる。鳥取のクイックリスターに対応が遅れ、小井出翔太の左クロスをニアサイドで田村祐基に頭で合される。ニューウェーブ北九州戦のロスタイム、タチコに浴びたヘディングシュートをなぞるような同点弾だった。

「もっとはっきりやればよかった。リズムが整うまで背後を突くなど……」

そう振り返るのは田村のマークを外した山崎。相手が前掛かりに来ることは分かっていたが、防ぎ切れなかったことに悔しさが滲む。

振り出しに戻っても栃木SCが攻め、鳥取が守る構図に変化はなかった。「狙っていた」と柱谷監督が明かした、切り札・入江利和の投入により、左サイドからの良質なクロスで突き放すプランも、鳥取の粘り強いDFの前に頓挫する。強固な守備ブロックを打破することは困難を極めた。終盤に鴨志田が豊富な運動量を活かしてショートカウンターのスイッチとなるが、肝心のシュートが決まらない。右からカットインして放った佐藤のシュートは正確性を欠く。逆に鈴木健児にクロスバー直撃の弾丸ミドルで肝を冷やされた。

鳥取を蹴落としきれず、勝点1を積み上げただけだった。 

流れは悪くない。チーム状態も上向いてきてはいる。だが、勝ち切れない。勝利が遠く感じる。

「サポーターには歯がゆい思いをさせてしまっている」

沈痛な面持ちで心境を述懐するのは落合正幸。「周囲と自分達から生じるプレッシャーはあるが、選手、フロント、サポーターが一丸となってやるしかない。最後に『苦しかったね』と言えるようにしないと何も残らない。今の状態を笑って振り返れるように、残り4試合を大切に戦いたい」と決意を語った。

絶望感に打ちひしがれるのは、もうご免だ。あんな思いは、痛みは昨年の一度きりで十分である。今年は笑顔で締めくくれるように。ここまできたらネガティブな思考は捨て去り、ポジティブにひたすら前に突き進むしかない。

「今はドローが続いている。でも、ポジティブに考えればドローにまで持って来られている」(松田)

JFL後期第13節 栃木SC1―1ガイナーレ鳥取 観衆2704人 @栃木県グリーンスタジアム

〈栃木SC〉交代:斎藤(→入江)、小林(→横山聡)、松田(→上野優作)

〈ガイナーレ鳥取〉GK井上敦史、DF加藤秀典、小村徳男、小原一展、MF冨山達行、吉野智行、鈴木健児、尾崎瑛一郎(→小沢竜己)、FW小井出翔太(→実信憲明)、田村祐其、鶴見聡貴(→吉瀬広志)
 

戦評:対TDK SC戦@栃木SC通信

2008年10月27日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

tdk1.JPG 勝点1は即効性のある、特効薬とは成らなかった。

前節の対ニューウェーブ北九州戦。ロスタイムの被弾により勝点2を逃したものの、リーグ戦の連敗は4で止まり、ポイントも僅か1ではあるが加算できた。ポジティブに考えられる要素を幾つか見出せた。勝点3に繋げなければならない勝点1を、しかし栃木SCは自らフイにしてしまう。数試合ぶりに手に入れた1の価値は下落した。

前の試合で勝点2を取り逃した最大の要因は、リードしながらも精神的に受けに回ったことだった。守り切ろうとする消極的な姿勢と意識が結果的に失点を呼び込んだ。敵地、仁賀保での対TDK SC(以下、TDK)戦でも、ネガティブな要素がポジティブな要素を凌駕してしまった。

「ひたむきにやっているが、思い切りのよさがなかった」(上野優作)

攻守において覇気に乏しかった。勝利への飢えは感じるものの、それがプレーに反映されていなかった。好機は数えるほど。対照的に相手が記録した二桁のシュートは、その大半が好機となっていた。つまり、辛うじて勝点1を拾ったに過ぎない。

なるほど、無失点に抑えられたことは収穫である。だが、現状で最重要なのは失点を喫しないことではなく、内容度外視で勝点3を獲得することである(零封も必要条件には含まれるが)。ドローで状況が好転しないのならば、勝利を掴む他に手はない。前半序盤こそ旺盛に動き回ったが、前節と同様に20分を境にして次第に勢いは萎み、形勢を逆転できないまま時間だけが経過した。結局、同じことが繰り返され、反省が活かされていたとは言い難かった。

3―5―2への手応えを感じ、自信も芽生えてきただけに、どうしても勝点3が欲しかったのだが、リスクを背負う覚悟でゴールを目指す気持ちに欠けた。

勝点1を3に結び付けられなかった事実は重い。


前の試合から栃木SCはスタメン、ベンチ入りメンバーをいじらなかった。布陣はGKに小針清允、3バックには赤井秀行、山崎透、鷲田雅一が入り、中盤は鴨志田誉がワンボランチを務め、右ワイドに岡田佑樹、左ワイドに入江利和、上野優作と横山聡の2トップ下に向慎一と佐藤悠介が収まった。

前期の対戦時には怪我で不在だった主力が復帰したTDKは、4―4―2を敷いた。

試合前の所謂“ゲリラ豪雨”の影響で水を含んだピッチに、両チームとも暫し苦慮する。Pボックス内は水浸し。慎重さが要求された。

互いにミスが続出した一戦。先ず仕掛けたのはホームのTDKだった。池田昌広がサイドをえぐってからシュート。枠を反れるも、冷や汗をかかされる。難を逃れた栃木SCは佐藤悠介のクイックリスタートに向が鋭く反応したまではよかったが、ミートできずに逸機する。その後、向と佐藤悠介が中長距離からシュートを放つものの、ゴールネットは揺らせなかった。

サイドバックは攻撃参加を控え、入江と岡田の両ワイドに目を光らせたTDK。サイドに蓋をする。スペースを埋められた栃木SCは手詰まりに陥った。また、ボール回しがゴールを得るための手段から目的にすり替わり、綺麗に崩そうとする嫌いも見受けられた。難しいプレーの選択が自らの首を絞める。

佐藤悠介の展開力とサイドの優位性を発揮できず、縦へとボールを運んだTDKが徐々に攻勢に立つ。ドリブル突破とアーリークロスは効果的で、ラインを押し下げられた栃木SCは自陣ゴール前に釘づけにされる。得点ランキング上位に顔を出す富樫豪のドリブルシュートを皮切りに、立て続けにゴールに迫られた。GK小針の好守で危機を回避するも、怒涛の攻めに対処は困難を極め、向曰く「どんと構えていれば跳ね返せていたのにバタバタした」。ちょっとの動揺が波紋のように広がり、パフォーマンスを著しく低下させる。芳しくないチーム状態を端的に表している。

エンドが変わっても軽快な動きのTDKがイニシアチブを握ったままだった。リズムを掌握できない栃木SCは佐藤悠介が得意の位置からFKで直接ゴールを狙うも、クロスバーに嫌われる。向はサイドに出て起点を構築しようとするが、劇的に状況を変えるには至らなかった。2トップには力強さが不足した。

ワイドにピッチを利したTDKは左の池田と右の松ヶ枝泰介を利してサイドから圧を掛けた。栃木SCの3バックを5バックにすることに成功。すかすかの中盤を支配し、良質なクロスと背後への飛び出しからゴールを窺った。窮地が続くも相手のミスに救われたこともあり耐え凌いだ栃木SC。ロスタイムに好機を生み出す。途中出場の小林成光を介して届けられたパスを佐藤悠介が右からシュート。これをGK小野聡人がこぼし、途中交代の稲葉久人が滑り込んでプッシュするが、オフサイドの判定により終ぞゴールは割れなかった。

ファイナルスコア0―0。

栃木SCは勝点1を積み上げるも、3位に付けていたファジアーノ岡山が勝ったことで順位は逆転した。首位のHondaFCを抜き去ることは難儀な作業となり、目標を4位以内確保に軌道修正しなければならなくなった。

中3日、木曜日には勝点差を4に縮めた5位ガイナーレ鳥取との決戦が控える。

「ここで勝たないとJへ上がる資格はない。開き直り鳥取を蹴落とし、自分達が生き残る」(柱谷幸一監督)

直接対決が残っている鳥取と岡山の挑戦を受けるのではなく、“挑戦者”として臨む立場になった(鳥取は順位では下回るが、勢いでは勝る)。立ち向かっていく際に本来の力が引き出される栃木SCにとっては、悪くない条件が整ったのではないだろうか。今後に向けた数少ないプラス材料だろう。

JFL後期第12節 TDK SC0―0栃木SC 観衆638人 @仁賀保運動公園多目的広場

〈TDK SC〉GK小野聡人、DF高橋臣徳、岩瀬浩介、朝比奈伸、加賀潤、MF池田昌広、成田卓也、松田英樹、松ヶ枝泰介(→佐藤和旗)、FW木下真吾、富樫豪

〈栃木SC〉交代:上野(→松田正俊)、横山(→稲葉)、向(→小林)
  

戦評:対ニューウェーブ北九州戦@栃木SC通信

2008年10月20日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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人目をはばからず入江利和は落涙した。タオルを頭から被り、顔を覆い隠した横山聡はベンチから立ち上がれなかった。南省吾GKコーチが手を貸さなければ歩けないほど憔悴しきっていた。

後半32分、ニューウェーブ北九州(以下、ニューウェーブ)はDF登録、193センチのタチコを浦和レッズの闘莉王よろしくFWとして前線に据える。投入の意図は単純明快。パワープレーからビハインドを帳消しにすることだった。

イニシアチブを握られながらも、決定機は作らせなかった栃木SCだったが、最後の最後に警戒していたタチコに高さで競り負けた。ロスタイムに踏ん張り切れず、勝点2は掌からするりとこぼれ落ちた。

沈痛な面持ちの入江は言葉を絞り出した。

「負けている相手がパワープレーを仕掛けてくるのは分かっていたが、失点してしまった。今日のゲームは、その一点に尽きる」

相手の選択肢は限られており、繰り出してくる攻撃も想定できた。それだけに、防ぎ切れずに勝利を取り逃したダメージは小さくなかった。

「ベンチからの声を聞くのではなく、全員がピッチで何が起こっているのかを考えなければならない」(佐藤悠介)

結局、足りなかったのは「対応力」だった。

地上戦ではなく、空中戦を挑んでくることは明白だった。高さを封じるためには、出来るだけゴールから遠ざけるのが鉄則である。また、引いてブロックを構築し、守り通すならばセカンドボールは死に物狂いで拾わなければならない。しかし、「大きいFWが入り、引いてしまった」(赤井秀行)ことで、Pボックス内への侵入を許し、バイタルエリアでも後手を踏むことになる。結果的に守備網を突き破られてしまった。

「あの時間帯は技術や戦術よりも、『どれだけ勝ちたいか』。気持ちの問題だと思う」

試合終了間際の最終局面で重要性が増すのはメンタル面でのタフさである、と向慎一は口にする一方で、戦術面の指摘も忘れなかった。

「コーナー付近や自分の位置でもボールをキープできた。時間を使えればよかった」

刻一刻と変化する事態に対応するには、どうしたらいいのか。頭をフル回転させ、最良の答えを導き出さなければならない。個人としての優れた判断力、そしてチーム全体の意思統一が求められる。


先週の天皇杯3回戦、対ロアッソ熊本戦に勝利(PK決着。5―3)したことで、忘れかけていた味を思い出した栃木SC。公式戦未勝利は6試合で止まるも、肝心なのはリーグ戦での勝利である。ニューウェーブをホームに迎えた「J2準加盟ダービー」は、栃木銀行がマッチスポンサーとなり、「一万人で創ろうビッグウェーブ」と銘打たれた。ロアッソ戦で機能した3―5―2の布陣は、GK小針清允、DFは鷲田雅一、山崎透、赤井、MFは底に鴨志田誉、左に入江、右に岡田佑樹、トップ下に向と佐藤悠介が並び、2トップには上野優作と横山聡が指名された。

××△××と勝ち星に見放されたニューウェーブだが、前節ジェフリザーブズから勝利を挙げ、負のスパイラルから一足先に抜け出した。4―3―3を採用し、3トップの一角には新戦力のアランが入った。

「前半の立ち上がりから物凄い勢いで来られたことで戸惑った」

ニューウェーブ・与那城ジョージ監督が舌を巻くほど、栃木SCの立ち上がりは完璧だった。トップにボールが収まり、サイドを起点に波状攻撃を仕掛け、あっさりと先制点を奪う。岡田の鋭利な切り返しからの右クロスに横山が飛び込む。堪らずDFがファウルを犯してPKを獲得。これを佐藤が冷静にゴール右に沈める。

勢いは止まらない。鴨志田、向、岡田と繋がり、再び向へ。豪快なヘディングシュートが枠内を捕えるも、GK水原大樹の好守に阻まれる。絶好機を逸するも、前線から圧を掛け、中央とサイドを臨機応変に使い分けた栃木SCの攻勢は続いた。岡田の左足からのミドルはゴールを脅かした。3バックは時に4枚になるなど柔軟性を発揮。ゴロクロスを宮川大輔に合されたシーン以外、危機を招くことはなかった。

ビルドアップはスムーズで、ポゼッションでも勝った栃木SC。が、15分を過ぎたあたりからスローダウンしてしまう。縦パスが減少し、横パスやバックパスが急激に増えたことが一因だった。アグレッシブさは次第に損なわれる。カウンターから佐藤悠介がドリブルで持ち上がるも、フィニッシュには至らなかった。

守備には一定の評価を与えるも、攻撃には不満を抱いた柱谷幸一監督。「0―0のつもりでもう1点取りに行こう」と選手を送り出すが、後半の立ち上がりもエンジンは上手くかからなかった。カウンターから入江が駆け上がり、中央の向が打ったミドルは、またしてもGK水原にセーブされてしまう。都合3本のシュートを記録し、内2本が決定的なものだったが、この日の向は運に見放されていた。

追加点を得られないまま時間が経過すると、焦りからかパスが粗雑になる。圧倒的優位だったポゼッションを手放し、パス回しは滞った。CKから冨士祐樹にダイビングヘッドを浴びるもGK小針のセーブで難を逃れる。思うに任せない展開に陥った栃木SCは、ズルズルとラインを下げ、5バック気味になったことで受けに回る。一人一人の距離感が遠くなり、2トップは完全に孤立し、攻撃は単発に終わる。選手交代に望みを託すも、活性化は図れなかった。

前傾姿勢をとってきたニューウェーブに対抗するには、早めに精彩を欠いた上野を下げて稲葉久人を送り出すことで、恐怖感を植え付けておく手もあった。フレッシュな稲葉が前線からチェイスすれば、安易にロングボールを蹴り込まれる回数を減らすこともできたはずである。「相手のDFラインにプレッシャーに行けず、ロングボールが入ってきた」と赤井は振り返る。稲葉が登場したのは44分。柱谷監督の動きはあまりにも遅すぎた。

形勢を逆転できずに迎えたロスタイム。クリアボールを拾った中央の宮川が左の冨士にはたき、供給されたクロスをタチコが頭で叩き込む。この人、FC琉球時代にもグリーンスタジアムでゴールを決めている。相性抜群なだけに、マークを外してはいけなかったのだが……。競り合いに屈した鷲田は、その場に突っ伏した。個の脆弱さを露呈した。

山崎は言う。

「あのまま行くとは思えなかった。チームとして2点目を取らなければいけなかった」

チーム状態が上げ潮であったならば1点でも十分に守り切れたかもしれないが、今の栃木SCは悪循環を脱し切れていない。最少リードで勝ち切れるほどの強さは戻っていない。だからこそ、2点目が欲しかったのだが、眼前の勝利に目が眩み、消極的に振る舞ったことで、みすみす7試合ぶりの勝点3を失った。首位のHonda FCが勝利を収めたことで差は絶望的な7にまで開いた。

「結果は変えられない。勝点1を取ったことを前向きに考えるしかない」(柱谷監督)

連敗が止まったことにささやかな喜びを見出すしかない現状は寂しく、酷く悲しいが、憂いている暇はなくなった。とにかく前を向き、天皇杯のように一戦必勝のトーナメントが今後6試合控えていると考え、戦い抜くしかない。

JFL後期第11節 栃木SC1―1ニューウェーブ北九州 観衆6533人 @栃木県グリーンスタジアム

〈栃木SC〉交代:入江(→斎藤雅也)、上野(→松田正俊)、横山(→稲葉)

〈ニューウェーブ北九州〉GK水原大樹、DFドグラス、岩倉一弥、佐藤真也、市川瞬(→タチコ)、冨士祐樹、MF桑原裕義、佐野裕哉、FW藤吉信次(→日高智樹)、アラン(→森本惟人)、宮川大輔
  

第88回天皇杯全日本サッカー選手権大会3回戦 戦評:対ロアッソ熊本戦@栃木SC通信

2008年10月13日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

192.JPG2―3と敗れはしたものの、前節の対SAGAWA SHIGA FC戦の後半開始30分間に好感触を得た柱谷幸一監督。戦前、選手達に伝えた。

「自分達がいいゲームをスタートから、途中からではなく、スタートからやろう。1対1では絶対に勝つ。それを90分間、やり通そう」

ぼんやりとした試合の入り方は、開幕から改善されない栃木SCの悪癖のひとつである。連勝街道をひた走っていた頃は、不安定な立ち上がりを試合中に修正し、勝利を手にすることが出来ていた。だが、勢いに陰りが見え始め、6戦未勝利と絶不調に陥った途端、先取される展開を逆転することは容易ではなくなった。追いすがるのが精一杯で、追い越せない。次第に自信は失われ、消極的なプレーが目を引くようになる。勝ち運に見放された。

「リーグ戦では結果が出ていなかったが、天皇杯ということで開き直って戦えた」横山聡は、骨惜しみなくボールを追い、体を張った。3バックのセンターを任された山崎透は、ロアッソ熊本(以下、ロアッソ)のエース高橋泰とのファーストコンタクトを難なく制した。トップ下を務めた向慎一は、カウンターが発動すると真っ先にスペースへと飛び出した。岡田佑樹と斎藤雅也の両ワイドは激しい上下動を繰り返した。

カテゴリーが上の相手に自然とモチベーションは高まった。積極的に試合を運んだことで、手綱をロアッソに渡さなかった。立ち向かっていく姿勢が、欠落していた自信を取り戻させた。やる気に満ち満ちていた。球際で、1対1で引けを取ることはなかった。

4―4―2に対する3―5―2の優位性を発揮できたなど、勝因は幾つか挙がるが、この日の明暗を分けたのは、メンタルだった。2年連続してホームで完膚なきまでに叩きのめされたのは、ロアッソの方が勝ちたい気持ちが勝っていたからだった。次のラウンドに進めること、つまり勝利と同等に、低空飛行を続けていた栃木SCにとっての収穫はピッチに立った全員がファイトできたことだろう。

JFLでは順位が下の相手との対戦が控えている。残り7試合、優勝と昇格に向けて、挑みかかって行く気持ちを持続できるか、がキーになる。

「今日のキックオフ前の気持ちに持っていく」(柱谷監督)

最高位が4位の栃木SCは、まだ何も手にしていない。JFLの覇権を争う1チームに過ぎない。常に挑戦者として試合に臨むことが求められ、それが可能ならば易々と勝点を手放すことはなくなるはずである。


4―2―3―1と新機軸を打ち出したばかりの栃木SC。未完のフォーメーションは混乱を招き、勝点3を取り逃した。新システムを熟成させるには時間を要するのだが、柱谷監督は思い切った策を採った。さらに手を加えたのである。頑なに固執してきた4バックを捨て、3―5―2を敷いた。そこからは、なんとか悪しき流れを断ち切りたい、との切実な思いが透けて見えてくる。3バックは機能するのか、それとも下策に終わるのか。

前期を首位ターンしたことでJFLシード枠での天皇杯出場権を得る。栃木SCは3回戦から登場。相手は仇敵のロアッソだった。布陣はGK小針清允、DFは左から鷲田雅一、山崎、赤井秀行、中盤は底に落合正幸と佐藤悠介、左に斎藤、右に岡田、トップ下に向を並べ、上野優作と横山が2トップを組んだ。

2年でJFLを通過したロアッソは、ただいまJ2で15チーム中14位。チームが苦戦を強いられているからこそ、際立つのがJ2得点ランキング2位の17ゴールをマークしている高橋。過去4戦して栃木SCは1勝3敗と分が悪く、昨年の対戦時には高橋に痛い目にあっている。

相手のセンターバック2枚が屈強だったことで、上野へのボールの収まり具合は悪かったが、4―4―2に対する3―5―2の優位性を栃木SCは活かした。サイドに張り出した左の斎藤と右の岡田を効果的に使いこなす。落合と佐藤がボールを散らし、高位置の岡田と斎藤が果敢に仕掛けた。好機はこしらえられなかったが、伍して試合を進められたのは、サイドでイニシアチブを握れたからだった。

「栃木のやりたいサッカーにはまった」(ロアッソ・池谷友良監督)

引いてブロックを構築し、引っ掛けてからカウンターを打ち込む。組織的に守り、素早い攻守の切り替えからゴールを狙う展開も思惑通りだった。浅いラインを保った3バックは、ロアッソの危険な2トップに上手く対応した。要注意人物の高橋のポストプレーから飛び出した市村篤司に、ポストをなめるシュートを浴びたシーン以外、決定機を作らせなかった。栃木SCもゴールの匂いがしたのは一度だけ。岡田のスルーパスに佐藤が抜け出すも、利き足とは逆の右で放ったシュートは枠を反れる。押し込められることもなかったことから、急造の3バックは思いの外、機能したといえる。

斎藤の鋭いドリブル突破からのシュートで幕を開けた後半。栃木SCは徹底して自分達のサッカーを貫く。コンセプトがぶれることはなかった。6分、CKを上野が頭で合わせるがクロスバーに嫌われてしまう。先制機を逸すると、アンラッキーなカタチで失点を喫する。一旦はCKを跳ね返すが、セカンドボールを拾った宮崎大志郎のクロスはゴールへと向かう。GK小針が慌てて反応するも、ポストが邪魔したことで弾き切れず。ルーズボールを小森田友明にプッシュされてしまう。

芳しくないリーグ戦と同じく先手を奪われるも、山崎と鷲田が連続してCKからゴールを脅かし、追撃の狼煙を上げる。セットプレーで流れを掴んだ栃木SCは、斎藤に代わり入江利和を投入。この交代が奏功する。良質なクロスが左から間断なく供給された。圧を掛けられたロアッソはファウルで止めざるを得ない局面が増え、ついには宮崎が2枚目のイエローカードでピッチから追い出される。それからほどなく、栃木SCは試合を振り出しに戻した。FKのクリアボールをPボックス内で岡田が右足一閃。低空シュートがゴールに突き刺さった。

同点後、栃木SCは向の右クロスから横山がヘディングシュートも、ここはGK吉田智志が立ちはだかる。カードと思うに任せない試合運びに苛立ちを募らせ、平常心を欠いたロアッソは、山崎のミスから河野健一、小林陽介が立て続けにシュートを打つが、GK小針が阻止。数的優位の栃木SCは90分でロアッソを仕留め切れなかった。

試合は前後半15分ハーフの延長戦に突入。8人で2ラインを形成したロアッソに、栃木SCはストロングポイントとなった入江が好クロスを入れるが
、中央の守りを固められたことで崩しきれない。パワープレー要員として送り込まれた松田正俊に、岡田から絶好のクロスが届けられる絶好機も、フリーの松田のシュートはクロスバーをかすめ、枠内を捕えきれなかった。

雌雄が委ねられたPK戦。「自分の思った蹴り方で蹴ってこい。俺が責任を取るから」と指揮官に背を押された、先行の栃木SCは1番手の佐藤から横山、松田、岡田、落合が順当に決めたのに対し、ロアッソは3番手の小林が重圧に押し潰され、吹かしてしまい勝負あり。

7月19日の対流通経済大学戦以来、約3カ月ぶりの公式戦勝利を飾った瞬間、トリを務めた落合はGK小針の元へと駆け出した。そこには何時しか歓喜の黄色い輪が出来上がっていた。一昨年、東京ヴェルディ(当時東京ヴェルディ1969)を屠ってからクラブ史上2度目となるJ撃破を果たした。

「今日は勝つと思っていました」。会見場で笑いを誘うなど、久方ぶりの勝利に柱谷監督の口は滑らかだった。「久々の勝利は格別です」とは3バックの一角を担い、1対1での強みを発揮した赤井。満面の笑みを浮かべた同点弾の岡田は「久々に楽しく、嬉しく、笑顔になれました」と爽やかに話した。「ナーバスになっていたので、勝てたことで肩の荷が下りたと思う」。昨季、ヴェルディで7連敗を経験しながら結果的に昇格を成した佐藤は、リーグ戦4連敗にも動じることはなかったそうだが、試合を振り返る口ぶりからは、長らく遠ざかっていた勝利の味を噛み締め、安堵していることが窺えた。そして、4回戦の相手であるジュビロ磐田、憧憬の対象である名波浩との対戦に胸を高鳴らせていた。

第88回天皇杯全日本サッカー選手権大会3回戦 栃木SC1(PK5―3)1ロアッソ熊本 観衆3011人 @栃木県グリーンスタジアム

〈栃木SC〉交代:斎藤(→入江)、上野(→稲葉久人)、向(→松田)

〈ロアッソ熊本〉GK吉田智志、DF市村篤司、河端和哉、矢野大輔、車智鎬、MF宮崎大志郎、斎藤紀由(→河野健一)、山本翔平、小森田友明(→小林陽介)、FW木島良輔(→福王忠世)、高橋泰

戦評:対SAGAWA SHIGA FC戦@栃木SC通信

2008年10月 5日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

164.JPGハーフタイム、柱谷幸一監督は選手に問い掛けた。

「サッカーをやっていて楽しいのか?」

無難な立ち上がりだった。アウェー、しかもチームは3連敗中と、中断期間を挟んだものの状態は芳しくない。リスクを冒して前からボール狩りを行う必要はない。ゆったりとしたリズムは、置かれた状況を考慮すれば悪くはなかった。ただし、よくもなかった。スコアが動き易い、開始10分を過ぎても、変調しなかったからである。出力は一向に上がらない。淡々と同じリズムを刻むだけ。攻守に彩が全くなかった。まっさらな画用紙に延々、鉛筆で直線を描いているようだった。

「前半は面白くなかった。仕掛けようとしない。パスを受けない」

柱谷監督は45分を振り返り、バッサリと切り捨てた。自分達からアクションを起こさないのだから、事態を改善し、面白くできるはずがない。受け身のサッカーに終始したことで、イニシアチブはSAGAWA SHIGA FC(以下、佐川滋賀)に移り、先制まで許してしまった。

叱咤されて臨んだ後半戦。早々に追い付く。ゴールでついた勢いを維持して攻勢に転じるも、押し切ることは、試合を引っ繰り返すまでには至らなかった。バイタルエリアから小林成光がシュートを放つのが精一杯だった。流れは来ているのにもかかわらず、積極性に欠けることで、波に乗り切れない。手綱を握っただけに過ぎず、手繰り寄せることはできなかった。またしても、形勢は佐川滋賀に傾き、敗北を喫した。

「たかがサッカー。何かを失うわけじゃない。思い切りプレーしなければ面白くないのに・・・」

受動的に振る舞い、能動性に乏しい選手に対し、指揮官は首を傾げるしかなかった。

最善を尽くし、それでも力が及ばなければ諦めもつくだろう。が、力を出し切れずにプロとしての資格を剥奪され、ハイレベルなステージで己を磨く機会を失うとしたら、それほど悲しく、後々まで悔いが残ることはないのではないか。

「純粋に点を取れば勝つ。取れなければ負ける。もう一度、原点に戻りサッカーを楽しむ」

苦境に立たされた今、最も必要なもの。上野優作は、伸び伸びとプレーすることを挙げた。新たな試みと泥沼の連敗に起因する重圧。選手達から感じるのは、痛々しいほどの窮屈さである。ボールに初めて触れた頃、無我夢中でボールを追っ掛けた頃の初々しい感情を思い出し、失敗を恐れることなく、溌剌とプレーするべきである。積極的なミスに罵声は飛ばない。咎められることもないのだから。

サッカーで飯が食える。ほんの一握りの選手にしか与えられない権利を手放すのは、あまりにも勿体ない。


2位に陥落した栃木SCは約1か月のブレーク期間中、御殿場でミニキャンプを張り、佐藤悠介をボランチに据える4―2―3―1を取り入れ、トレーニングマッチを組むなど、リーグ戦再開に向けた準備を行った。再開後の初戦である対佐川滋賀戦を、「キャンプが有意義だったと思える試合にしたい」と意気込みを語った柱谷監督。連敗を3で食い止め、天皇杯を含む怒涛の9連戦(3回戦に勝利すれば試合数は膨らむ)の入り口を、味を忘れた勝利で飾るべく、選抜した11人は以下の通り。GK小針清允、4バックは左から斎藤雅也、鷲田雅一、照井篤、岡田佑樹、中盤は落合正幸と佐藤のダブルボランチ、上野の1トップ下に稲葉久人、横山聡、小林が並んだ。

リーグ戦連敗で14位に沈み、天皇杯も1回戦で敗退した昨季の覇者・佐川滋賀。こちらも4―4―2の変則である4―2―3―1を選択した。

上野がピッチの横幅を上手く使い、落合が潰して得たボールを佐藤が散らす。ある程度は狙い通りに試合を運んだが、スローインから中村元にトラップであっさりと体を入れ替わられ、フリーでのシュートを打たれたあたりから引き気味になる。全体が下がることでボールを奪う位置が低くなり、相手が帰陣してしまい、カウンターを繰り出すも、望んだほどの成果は得られなかった。タッチ数の少ないパスが散見されるも、フィニッシュには結びつかない。

次第にポゼッションを高め、左サイドを軸に攻め入った佐川滋賀。31分にPボックス内でフリーとなった竹谷英之のゴールで先手を取る。空中戦に長ける竹谷に頭ではなく、左足で豪快に決められた。個のスキルで劣るも、モビリティと運動量でカバーした佐川滋賀の攻撃に栃木SCは手を焼く。ショートカウンターから小林の右クロスを稲葉が合わせるもヘディングは力なく、佐藤の直接FKもGK森田耕一郎に弾き出されてしまう。攻撃を仕掛けるも、シャープさが欠落し、ゴールを脅かせなかった。攻守両面でかかる両サイドへの負担、佐藤にボールを集中させ過ぎたことによるスピードダウンが原因だろう。

「もっと怖がらずに行こう」(柱谷監督)

指示を仰いでから覚醒するのは、指揮官の本望ではないが、後半開始1分にFKの混戦を横山が制する。試合を振り出しに戻し、ボールを取る位置が高くなったことで、形勢を逆転するも、ゴールを脅かせなかった。

「いい時間帯に1点を返せた。その流れで2点目を取れなかったことで、自分達を苦しめた」

先制され、同点とするも、勝ち越せない。横山は、「自分達の足りない部分」を、歯を噛みながら語った。

栃木SCの活気は徐々に失われ、逆に劣勢にあった佐川滋賀が奪ったボールを縦に早く流し込み、ゴールに迫った。25分、FKから山根伸泉にマークを剥がされ被弾。

交代出場の向慎一からのスルーパスに、前線に残っていた佐藤が左足を振るも僅かに枠を反れた。機を逸するも同点としたい栃木SCは、4―3―3と前に厚みをもたらす。人数を揃えるが、中盤を薄くしたことが裏目に出る。バイタルエリアを巧みに利用された。致命的となった3点目は竹谷と中村がゴール前で起点を構築し、裏を突いた米倉将文に奪い去れた。

「広いスペースでの1対1は、うちのセンターバックでは厳しい」(柱谷監督)

ならば、もっと警戒すべきだったのではないか。前掛かりになっていたとはいえ1対1で負けてはいけないことを前提に、安易に背後へボールを入れられないようにする、など。失点は個の責任であるが、対戦相手から脆弱と読まれている中央から崩されたのだから組織力が不足していたともいえる。

ロスタイムに横山が競り合いで獲得したPKを佐藤が蹴り込み、1点差とするも焼け石に水だった。点差は最少であるが、内容にはかなりの開きがあった。

連敗はとうとう4にまで伸びてしまった。順位は逆転されず2位のままだが、日曜開催の3位ファジアーノ岡山、4位横河、5位カターレ富山との勝点差が縮まる可能性は高く、つい最近まで独走していた栃木SCが後続の集団に飲み込まれるのは時間の問題となった。

事態は更に深刻度を増している。病巣は容易に摘出できない。しかし、「ここを乗り切らないとJFL優勝は難しい」とは横山。続けて「(厳しい)局面を打開するのはピッチの選手。選手達で打開するしかない」。サポーター、コーチ陣も共闘するが、結局は選手自身がやるしかない。誰も助けてはくれない。だからこそ、佐藤は強いプロ意識を求める。

「選手一人一人がプロとして、色んなものをボクだったら家族を背負っている。若い選手はそれが何なのか、問いかけて欲しい。(昇格レースは)そんなに甘いものではない」

JFL後期第10節 SAGAWA SHIGA FC3―2栃木SC 観衆1181人 @佐川急便守山陸上競技場

〈SAGAWA SHIGA FC〉GK森田耕一郎、DF旗手真也、谷奥優作、影山貴志、大杉誠人、MF大沢朋也(→吉村修平)、加納慎二郎、山根伸泉(→岡村雅幸)、田谷高浩(→米倉将文)、FW中村元、竹谷英之

〈栃木SC〉交代:小林(→向)、稲葉(→深澤幸次)、上野(→松田正俊)
  

戦評:TM 対ジェフリザーブズ戦@栃木SC通信

2008年9月27日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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栃木SCがキャンプから試みているのが佐藤悠介のボランチ起用と、4-2-3-1(攻撃時には4-3-3)である。先の対大宮アルディージャとのトレーニングマッチ(TM)では、失点を喫したもののコンパクトな守備に確かな手応えを得た。一方で攻撃面に関しては課題が残った。リーグ戦再開を翌週に控えた大事な時期に、既に対戦を終えているジェフリザーブズ(以下、ジェフ)とのTMにて、新機軸の2度目のテストを行った。

スタメンと交代は下記の通り。

GK小針清允、DF斎藤雅也、鷲田雅一、照井篤、岡田佑樹、MF落合正幸、佐藤悠介、稲葉久人、小林成光、FW上野優作、横山聡(表記が4-4-2なのは、上野と横山が交互に入れ替わるため)

交代:横山→坂本勇一(前半4分)、坂本→深澤幸次(→前半33分)、深澤→(後半22分)

開始早々に横山が相手選手との接触により流血。担架でピッチ外へと運ばれ、ほどなく救急車が到着し、病院に運ばれた。スタンドは一時、騒然となった。口を切り、脳震盪を起こしたようだ。大事に至らないことを願う。横山の代わりに坂本がイン。

「ボールを奪う位置が低く、ゴールが遠かった。何本かいい攻撃が出来たが、決定的なシーンがなかった」

右サイドから攻略を図り、ショートカウンターを繰り出すも、アタッキングサードでの精度に乏しく、上野が振り返った通りフィニッシュに至った回数は数えるほどだった。16分、落合がコースを限定し、上野が奪ったボールを右の小林に叩いたカタチはスピーディで、理想的だったが、クロスは味方に合わなかった。

予想外といっては失礼だが鼻息の荒かったジェフに、CKから2度も好機を作られる。照井と斎藤が足に当てて事なきを得るも、セットプレー時にマークがズレル場面が多々あり、冷や汗をどっぷりとかかされた。前半終了間際にもCKから危機を招いている。先にゴールを許すことで勝率が下がることを中断期間前に痛感しているだけに、競り負けない、マークを外さないなど基本的な部分の徹底が求められる。

辛うじて難を逃れた栃木SCは、90分を通じて唯一の好機を掴む。斎藤のスルーパスに坂本が鋭く反応。抜け出してシュートを放つが、力なくGKの正面を突いてしまう。得点機を逸した。Pボックスに入る人数は、攻撃時に4-3-3となることで、これまでよりも増えるが、ゴールに繋がるような良質なボールが届けられなかったことで拙攻を重ねた。

後半も立ち上がりにCKから肝を冷やされるが、ジェフのシュートが弱かったことで命拾いした。繰り返しになるがセットプレーの対応力を高めなければならない。佐藤のボールタッチ数が増え、サイドチェンジを利して敵陣に侵入するも、そこから先がなかった。右の小林が立て続けにクロスを上げるが、飛び込んだ深澤は一歩遅く、稲葉のヘディングシュートは枠を反れた。

ワイドにボールを動かし、中央をこじ開けようとしたジェフ。際どいシュートが枠を捕らえるも、GK小針の好守で持ちこたえた。背後から追い越しをかけられ、相手にPボックスへと攻め入られるなど劣勢に回った原因として守備力の低下が挙げられる。

「ボールのない時の読み、スクリーンする意識は高い。カモ(鴨志田誉)、シン(向慎一)と変わらない」

柱谷幸一監督の佐藤の守備面に関する見解である。確かに佐藤の攻撃の芽を摘み取る、例えば上手くファウルで進撃を食い止めるなどのプレーは秀逸である。危機察知能力は低くはない。だが、寄せが甘く、戻りが遅いためにバイタルエリアを埋めきれず、ジェフにミドルレンジからシュートを浴びもした。ボランチ2試合目であることから、パートナーである落合とのコンビネーション、周囲との連係がまだ浅いことが露呈された。攻撃を跳ね返しきれなくなった際、柱谷監督は佐藤を一列前に上げ、落合と鴨志田を組ませることで守備力を向上させるオプションを用意している。そのあたりにぬかりはない。

互いにゴールを奪えずに試合は0-0でクローズ。「前にターゲットを増やし、悠介の展開力、イナのスピードを活かす」4-2-3-1の2度目のトライを終えた柱谷監督は、「いい展開とポゼッションが出来ていた。前回よりもいいカタチが作れている」と総括した。一方で、「攻撃のアベレージを上げていきたい」とも話した。つまり、極端に少ない攻撃回数を増やさなければならないと感じている。そのためには、対大宮戦でも課題だった、ボールを奪ってからのファーストパスを丁寧に扱わなければならない。ジェフのプレッシャーは強くなかった。しかし、怖がってしまった栃木SCの選手は、易々と相手にボールを差し出してしまうなどの軽率なミスを犯し続けた。自ら首を絞めているのである。こんなシーンがあった。照井が前に出てインターセプトに成功。左前方にフリーの稲葉がいたが、パスは稲葉にではなく、相手に供給されてしまった(照井は高さ以外にも、組み立ての部分で無難なプレーをしていただけに勿体なかった)。思わずベンチで頭を抱えた柱谷監督。せっかく手にしたボールを譲り渡してしまっては、コンセプトのひとつである素早い攻守の切り替えが出来るはずがない。安易なミスを減らさない限り、好守からのダイナミックな展開は望めない。

結果が残せなかった以上に、内容に欠けたことが気掛かりである。

トレーニングマッチ 栃木SC0-0ジェフリザーブズ @河内総合運動公園陸上競技場

戦評:対大宮アルディージャ戦@栃木SC通信

2008年9月21日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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9月17日から行われた秋季キャンプ(@御殿場)の総仕上げとして栃木SCは、サテライト中心の大宮アルディージャ(以下、大宮)とトレーニングマッチ(TM)を行った。主力が出場した1本目、メンバーを総入れ替えした2本目と、いずれも0-1(合計0-2)で敗れた。

1本目の布陣と交代は以下の通り。

GK小針清允、DF斎藤雅也、鷲田雅一、照井篤、岡田佑樹、MF稲葉久人、佐藤悠介、落合正幸、小林成光、FW上野優作、横山聡。

交代:小針→柴崎邦博(前半32分)。

栃木SCは配置転換を行った。左が主戦場だった佐藤を中盤の底へと下げ、佐藤の位置に稲葉を配した。狙いは一目瞭然である。佐藤をボランチに据えることで抜群のキープ力、精度の高いキックを利した展開力、そしてリーダーシップを発揮させ、その特異なキャラクターを活かしきる。TMということもあり、新機軸を打ち出した。

全体を圧縮した栃木SCの守備には安定感があった。最終ラインとFWの距離が程良く保たれたことで、左を軸に攻め立てようとした大宮に自由を与えなかった。サイドをえぐられ、際どいミドルを打たれもしたが大きな破綻はなく、FWと中盤、中盤とDFラインがサンドするなど連動した守備で進撃を阻んだ。

相手の攻撃を跳ね返し、勢いそのままに素早い攻守の切り替えを図りたかったのだが、「奪ってから最初のパスでミスが出てしまい、攻撃の回数が少なくなった」(柱谷幸一監督)。ボールを取るところまではよかったのだが、敵陣に入る手前、入ってからのプレーが雑だったことでフィニッシュに至れず、好機を生み出せなかった。佐藤が散らしたボールから小林が内側へカットイン、左の稲葉にあてて落としたボールを佐藤がミドル。上野のポストプレーからオーバーラップした岡田がシュートを放つが決め手を欠いた。佐藤が全体を引き締めたことでボールの循環は改善され、小林と岡田の右のユニットは効果的であったが、ボールを取ってから最初のパスと最後の部分の精度が不足した。カウンターへの反応も鈍かったことで、迫力にも乏しかった。

喫した失点はサイドから入ったグラウンダーのボールを潰しきれず、ソフトタッチで叩かれたパスを走り込んできた土岐田洸平にミドルを突き刺されたものだった。

総入れ替えした2本目の陣容と交代は下記の通り。

GK柴崎、DF田村仁崇、山崎透、川鍋良祐、赤井秀行、MF鴨志田誉、久保田勲、向慎一、深澤幸次、FW坂本勇一、松田正俊

交代:柴崎→武田博行(後半17分)、川鍋→入江利和(→同38分)

スタメンを虎視眈々と窺う深澤、久保田、向は前線から懸命にボールを追った。1本目に比べると2本目のメンバーからはアピールの意識が強く感じられ、組織として守ることは前提としてありつつも、個々がストロングポイントを出し切ることに重きを置いているようだった。先のカターレ富山戦で精彩を欠いた深澤は身上であるアグレッシブさを取り戻し、ドリブルで仕掛けるシーンが多々見られた。アプローチの速さに定評のある久保田は後ろを鴨志田に任せ、何度もボールに噛み付いた。攻守において最も精力的だった。坂本が粘って確保したボールから唯一の好機となったシュートを記録したのも久保田だった(絶好機だっただけに決めておきたかったところだろう)。左サイドバックの田村は機を見た攻撃参加から良質なクロスやフィードを供給した。対HondaFC戦でその実力は証明されているだけに、照井が好調を維持しているものの、スタートから見てみたいと思わせた。

10分に献上した追加点は自陣でのバックパスが切っ掛けだった。立ち上がりの失点は中断前からの課題だった。安易なミスが絡んでいることもあり、チーム全体に影響を及ぼさなければいいのだが。例えTMであっても締めるべきところは、しっかりと締めなければならない。

攻撃面ではボールの動かし方、守備面ではポジショニング、それに関連したプレスを掛ける場所のイメージの共有が出来ていたことを、柱谷監督は大宮とのTMでの収穫に挙げた。口にした課題はラスト3分の1での質と攻守の切り替えの部分。相手のプレッシャーをいかに掻い潜り、ゴールに繋がるような崩しのパス、クロス、スルーパスを出すことが出来るか。早急には解決されない問題ではあるが、意欲的に取り組む姿勢を保持することは不可能ではない。向上心を持ち、個々人のスキルを磨いていくべきである。

雨の影響により天然芝でトレーニングを積む機会が半減したものの、予定通りのメニューを全てキャンプでは消化できたようだ。同じ釜の飯を食い、風呂に入るなど裸の付き合いもしたことでコミュニケーションを深められた。有意義な時間を過ごせた、と上野は言う。攻撃に関しては物足りなさを感じるものの、一方で信頼関係が密になったことが幸いしたのか、不安定だった守備は持ち直しの兆しが見て取れた。ただし、栃木SCは格上、Jクラブが相手だと守りの面で綻びが露わにならないだけに楽観視はできない。そのへんのことは指揮官も十分に認識している。

「佐川(滋賀)のゲームで結果を残す。キャンプが、ブレーク期間がよかったというゲームをしてこそ、実りのあるキャンプだったと思える」

中断期間を無為に過ごしたと言わせないためにも、リーグ再開後のSAGAWA(SHIGA FC)戦は不得手なアウェーであろうと落とすわけにはいかない。

トレーニングマッチ 栃木SC(0-1、0-1)大宮アルディージャ @NTT東日本志木総合グラウンド

戦評:対カターレ富山戦@栃木SC通信

2008年9月 8日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

203.JPG些細なことかもしれない。結果論と言われれば、それまでである。もしかすると、大勢に影響はなかったのかもしれない。しかし、容易に見逃すことはできなかった。

前半終了後、驟雨と雷雨により、後半開始時刻は45分もずれ込んだ。再開がアナウンスされた後、先ずピッチに顔を出したのは、前半を1―0とリードして折り返したカターレ富山(以下、富山)だった。ホームの栃木SCはギリギリまで“待機”していた。

「中断の可能性もあると考えていた」敵将・楚輪博監督は、中断期間中の様子を語る。

「うちはサブトラックで動いていた。栃木さんは座っていた。だから、『しっかりやる姿勢を見せようぜ』と話した」

栃木SCの前半45分は芳しいものではなかった。頭を整理する時間、修正点を話し合う時間は必要不可欠だった。元来、ハーフタイムにはたっぷりと時間を使う。しばしば審判に促され、ようやくロッカールームから出てくる、「遅刻」の常習犯である。そのような嫌いがあるにしても、富山戦では相手より先にピッチへ足を踏み入れ、水を含んだ芝の状態を確かめるなど、先手を取るべきだった。

「速く動いてピッチコンディションを確認し、チャレンジャーとして臨む」(楚輪監督)

ビハインドを背負った栃木SCに必要だったのは、後半に向けて富山が入念に行った下準備と、気持ちだったのではないだろうか。後半の序盤に押し込めたとはいえ、総じて気概に乏しかった。対戦前には順位で上回っていたが、試合では劣勢に立たされていた。ならば、雨を見方につけるために、恵みの雨とするために、折り返し地点を過ぎた時に少しでも前に出ることで、精神的に揺さぶりをかけなければならなかった。

「雰囲気的にも選手同士で声を掛け合うなど、富山の方が勝ちたい気持ちが勝っていた」(稲葉久人)

消極的に振る舞ったことは小さくなかったといえる。仮にロッカールームを先に飛び出す勢いが栃木SCにあったならば、結果は異なっていたかもしれない。勝ち運に見放されたチームは、勝機を手繰るために必須の積極性を欠き、受け身に回ってしまった。それでは、「トーナメントが一戦一戦続く」「このゲームに勝たないと4位以内が見えない」、と一戦必勝の思いで挑んできた昇格レースの好敵手に勝てるはずがない。

悪しき流れを断ち切れる機会を得ながら、自ら逸した栃木SCの敗戦は決して偶然ではなかった。


4試合未勝利も栃木SCは首位を維持。前半戦に稼いだ貯金が物を言っているものの、前節にHondaFCに屈したことで、差は僅かに1に縮まり、懐はかなり寂しくなった。蓄えが底を突く前に、陥った負のスパイラルから抜け出さなければならない。栃木SCの陣容は、先週の対水戸ホーリーホックとのトレーニングマッチとほぼ変わらなかった。GK小針清允、4バックは左から斎藤雅也、鷲田雅一、照井篤、岡田佑樹、中盤は底に落合正幸と向慎一、左ワイドに深澤幸次、右ワイドに小林成光が入り、上野優作と横山聡の2トップ。変更点は川鍋良祐が外れ、故障明けの鷲田が復帰。今季初出場の照井とセンターバックのコンビを組んだ。

5連勝後に2連敗。栃木SC同様に失速気味の5位・富山は、中盤をボックスにした4―4―2を選択した。「ボールも人も動く」サッカーをコンセプトに掲げている。

「やってきたことへの強い意志が足りなかった」

柱谷幸一監督が嘆いたのは、トレーニングの成果が全く発揮できなかったからである。タッチ数の少ないパス回しで相手を翻弄し、2トップを利しながらサイドに振る攻撃が展開できなかった。

立ち上がりこそポゼッションを意識したプレーが散見されたが、時を経るに連れて鳴りを潜める。原因を向は、こう語る。

「(ボールを)大事にしようとし過ぎた」

慎重に、ミスをしないようにプレーしたことで、アグレッシブさは殺がれていった。前へボールは入らず、サポートに行かず、攻守の切り替えでも後手を踏んだ。大胆さは損なわれ、無難なプレーに終始した。

FKからのトリックプレーで石田英之にゴールを脅かされると、自陣でプレッシャーを受けていないにもかかわらず、単純なクリアが目立ち始める。濱野勇気という有能なDFがラインを束ねる富山に単調なロングボールが通じるはずもなく、トップへのボールの収まりはさらに悪くなった。

対照的に富山は前線の長谷川満と石田がボールをしっかりと預かり、セカンドボールの確保率も高まったことで優位に立つ。自陣、敵陣でのセカンドボールへの反応を繰り返し確認してきた富山。尽くボールを拾った。トレーニングを実践で生かす。先制点のシーンもトレーニングが実を結んだ、と楚輪監督は話す。32分、渡辺誠がリフティングしながらドリブルを仕掛け、追い越しをかけた朝日大輔がスルーパスに反応。右から豪快にゴールネットを揺らす。背後から追い越しをかける。狙ったカタチから先取に成功。ゴールで波に乗った富山は立て続けにゴールに襲いかかる。

綻びは早急に修繕しなければならない。失点を喫したサイド、つまり栃木SCの左サイドは機能不全だった。仕事が明確でなかった深澤はサポートに乏しかったこともあるが、フリーで上げたクロスがGK中川雄二の正面に飛び、ポジショニングも曖昧だった。精彩を欠き、前半42分に引っ込められた。代わりに稲葉が投入される。

バケツを引っ繰り返したような突然の豪雨と雷による45分の中断を挟んで開始された後半戦。クリアボールに食いつかれそうになる危機を脱すると、次第に栃木SCにリズムが生じる。左右のサイドから圧をかけられるようになり、稲葉はサイドでの突破に加えて、Pボックスでも存在感を際立たせた。だが、アタッキングサードにまでボールを運ぶが、パスやクロスが引っかかってしまい好機を生み出せない、じりじりした時間帯が続く。

拙攻を重ね、前掛かりになった背後を取られ、カウンターを浴びると、形勢はまたしても富山のものとなった。後半に記録したシュート数は同数でも、際どいシュートを枠内へ飛ばした富山と、空砲に終わった栃木SCとでは雲泥の差があった。渡辺に石田と相手の決定機をGK小針が渾身のセーブで凌ぐが、24分にFKから鷲田が長谷川に制空権を譲ったことで再びゴールを割られる。

2点を追う栃木SCは、33分にCKから照井が折り返したボールを横山が頭で捻じ込む。反撃の狼煙は上がり、小林の右クロスから横山がファーで再度ヘディングシュートを打つが、ポストに嫌われた。これで栃木SCの攻撃は打ち止め。坂本勇一、松田正俊を次ぎ込みパワープレーを敢行するも、富山も高さに長けるDF金明輝を送り出し、対策を練ったことで攻撃は滞った。都合3度、相手の絶好機を防いだGK小針の奮闘に攻撃陣は報いることが出来ず、3連敗と泥沼からの脱出は叶わなかった。前日、横河武蔵野との決戦を制したHondaに首位を明け渡しもした。

「同じ過ちを繰り返している」

そう話すのは横山。不安定な立ち上がりを引きずることで相手に先行を許し、試合を難しくしている。その「染み」は容易く取れない。だが、危機的な状況を跳ね除けなければ次へは進めない。勝ち切れた前半戦のような流れを掴むためには、自信を取り戻すには、やはり勝点3を取るしかない。言い飽きてしまったが、絶対条件は先に失点しないこと、である。これをクリアしない限り現状では暗闇から這い上がれない。

JFL後期第9節 栃木SC1―2カターレ富山 観衆3321人 @足利市総合運動公園陸上競技場

〈栃木SC〉交代:深澤(→稲葉)、上野(→坂本)、向(→坂本)

〈カターレ富山〉GK中川雄二、DF中田洋平、堤健吾、濱野勇気、西野誠、MF渡辺誠、景山健司(→金明輝)、上園和明、朝日大輔(→姜鉉守)、FW長谷川満、石田英之(→木本敬介)
  

戦評:TM 対水戸ホーリーホック戦@栃木SC通信

2008年8月31日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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3週間のブレークが明ける次週、カターレ富山との「J2準加盟ダービー」を控える栃木SC。そのための「完全なシミュレーション」、「大学生相手では厳しいゲームができない」(柱谷幸一監督)との理由から、格上の水戸ホーリーホック(以下、水戸)とトレーニングマッチ(以下、TM)を組んだ。

スタメンと交代は下記の通り。

GK小針清允、DF斎藤雅也、照井篤、川鍋良祐、岡田佑樹、MF深澤幸次、落合正幸、向慎一、小林成光、FW上野優作、横山聡

<交代>小針→武田博行(→後半0分)、上野→松田正俊(後半13分)、落合→鴨志田誉、小林→稲葉久人(→後半18分)、横山→坂本勇一(後半21分)、岡田→赤井秀行(後半23分)

試合開始早々の1分、被弾。右サイドからPボックスに入れられたボールをクリアしきれず、背後から走りこんできた菊岡拓朗にネットを揺らされる(前期の対MIOびわこ草津戦、アランのゴールに似たカタチ)。「失点は連係ミス。入りはボケていた」と序盤を向が振り返るように、失点を喫した後も照井が満生充との1対1を止めきれずにシュートまで持ち込まれる。クロスバーに救われたことで連続失点を免れるも、ピリッとしない。小刻みなパス交換からトップにボールを当て、リターンパスをスペースへと供給し、中盤が追い越しをかける水戸の攻撃に手を焼いた。HondaFCほどの強いプレスに晒されたわけではないが、腰が引けた栃木SCは前線の上野と横山へのボールの収まりも悪く、攻め手を見い出すことも容易ではなかった。

しかし、サイドの攻防で優位に立ち始めるとボールの循環もよくなり、リズムが生じ始め、16分に試合を振り出しに戻す。スペースで横山がボールをキープし、小林がサポートに入り、Pボックス内の上野へパス。これはDFに阻止されるもルーズボールを向が右足一閃。振り切ったことでコースを切りにきたDFの伸ばした足に当たるが、勢いは衰えることなくネットに吸い込まれた。急激に失速した水戸とは対照的に、横山のボール確保率が上昇すると栃木SCは右サイドを軸に攻め立てる。岡田と小林にボランチの落合も加勢し、抜群のコンビネーションで何度も右サイドを攻略。36分の逆転弾は崩し続けた右サイドから生まれたものだった。跳ね返されたクサビのルーズボールをDFのスライディングタックルをかわしつつ拾った小林がドリブルで敵陣の深部まで侵入。上げたクロスをニアサイドで横山が頭で合わせてゴールを奪った。不安定な立ち上がりに暗雲が垂れこめるも、なんとか持ち直し、引っくり返して45分を終える。

2本目の頭から登場した遠藤敬祐のシャープな動きに戸惑うシーンが散見された栃木SC。遠藤に決定的なふわりとしたシュートを放たれるが、前半と同様にクロスバーに助けられる。水戸にイニシアチブを握られるかに思われたが、両チームともメンバーを入れ替えたことで試合は落ち着かなかった。水戸は意思疎通が図れずに拙攻を重ね、栃木SCも中盤でのミスが頻発し、ゴール前の攻防は数えるほどだった。坂本のポストプレーから鴨志田が稲葉にスルーパスを通して絶好機を演出するも、力んだ稲葉はシュートをふかしてしまい逸機する。結局、スコアは動くことなくタイムアップを迎えた。

「狙い通りのゲームだった」

柱谷監督の総括である。リーグ戦の中断期間に攻撃ではポゼッション、3人目の動き、2トップのコンビネーションに比重を置き、守備では攻守の切り替え、ボールを奪う位置の確認作業に時間を割いてトレーニングを積んだ。改善される気配が窺えない早い時間帯の失点と「球際の弱さ」に渋い表情を浮かべながらも、取り組んできたテーマの成果が攻守両面で発揮されたことに柱谷監督は手応えを感じていた。「自信を持ち、出来ると感じたと思う。ボールを動かせた実感があるのではないか」。勝点3を得るために、高まりつつあるボールポゼッションに今週1週間でさらに磨きをかける。

「しっかり逆転して、2-1で勝ちきれたことは大きい」

トップチームではなかったとはいえ、カテゴリーが上の相手に対して勝利を得たことは小さくないと上野は話す。4試合も勝ち星から遠ざかっている栃木SCには勝ち方、勝利の味を思い出すことが殊の外、重要だったからである。

「ダービー」を前に充実したリハーサルが行えたのではないだろうか。

トレーニングマッチ 栃木SC2-1水戸ホーリーホック @栃木県グリーンスタジアム 

<水戸ホーリーホック>GK首藤慎一(→原田欽庸)、DF小澤雄希(→石川直人)、星野圭祐(→塩沢勝吾)、秋葉陽一、倉本崇史、MF菊岡拓朗、弦巻健人(→大橋直矢)、森賢一(→大和田真史)、金澤大将、FW満生充、西野晃平(→遠藤敬祐)

戦評:対HondaFC戦@栃木SC通信

2008年8月17日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

h1.JPGのサムネール画像思い描いていた堅守速攻のゲームプランは脆くも崩れ去れる。立ち上がりに喫した失点は小さくなかった。しかし、それ以上にセカンドボールを全く拾えなかったことが、「好守からの素早い攻撃」という当初の目論みを頓挫させた。

栃木SCは2トップに次々とロングボールを放り込むが、あまりにも単調すぎた。DFラインから縦一本の、素直なパスが通用する相手ではない。HondaFC(以下、ホンダ)のCBは強靭であり、かつボランチの糸数昌太が効果的だった。バイタルエリアに君臨。常に味方が弾いたボールに目を光らせた。献身的にセカンドボールを拾いまくる。尽くボールはホンダのものとなった。走っても競っても、ボールは相手に取られてばかり。前線の石舘靖樹は明らかに苛立ちを募らせていた。

「相手のCBにしっかり跳ね返され、セカンドボールを拾われてしまった」

拙攻の原因を石舘のパートナーである稲葉久人は、そう分析した。前半はシュート0本に終わる。流れの中ではゴールに近付くことすら許されなかった。

「前期はカモ(鴨志田誉)を中心にセカンドボールを拾えていた。サイドから起点を作り、攻めることができていた」(稲葉)

守備ブロックを築き上げ、隙を突いて蜂の一刺し、カウンターに活路を見出した前期。作戦は見事にはまり、勝機を手繰った(1―0)。後期も戦略に大きな変化はなかった。ボールポゼッションに長けるホンダをおびき出し、その背後を徹底して突く。そのためには、こぼれ球を意地でも拾い、2トップへなるべく早く預け、サイドにも散らす必要があった。が、セカンドボール争奪戦で後手を踏み続けたことで機能不全に陥る。

糸数と田阪祐治のダブルボランチが主導でゲームを押し進めたホンダ。トップ、サイドへと効率的にボールが配られた。栃木SCがやりたかったカタチ、前期には術中にはめこんだカタチを、逆にやられてしまった。

食いつかせてから裏を取る。或いはサイドを軸に攻め立てる。結局のところ練りこんだ策は結実しなかった。


都田。「みやこだ」と読む。ホンダの根城である場所への思い入れは、もしかすると栃木SCの方が勝っているのかもしれない。長年、チームと苦楽を共にしてきたサポーターの思いは尋常ではない。アウェーでホンダを撃破しての優勝、そして昇格を果たさなければ意味がない。そこまで言い切る。例年以上に気合が入るのも無理はない。今シーズンは“JFL卒業”が懸かっており、都田ではJFL昇格以来ドローが精一杯だからである。これまで未勝利の地で勝利を飾る機会は、今回が最後かもしれない。モチベーションが高まらないはずがない。スタートの11人はGK小針清允、DFは左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋良祐、赤井秀行、中盤は左に佐藤悠介、右に岡田佑樹、落合正幸と久保田勲がダブルボランチを務め、初先発の稲葉と石舘が2トップに指名された。上野優作と鴨志田は負傷のため遠征メンバーからも外れた。

アマチュア最強の看板は錆び付かない。前節、ジェフリザーブに屈するまで11戦無敗。その底力は計り知れない。ホンダはピタリと栃木SCの尻に付着し、離れようとしない。ひたひたと背中を追う。

アプローチは恐ろしく速かった、というわけではない。ただし、ホンダのプレスには無駄がなく、その分だけ効果は抜群だった。当然これをいなそうと栃木SCは試みるが、相手の鋭い出足に腰が引けたのか、ミスが重なる。落合と久保田はボールをさばき切れず、佐藤は対面の桶田龍に行く手を阻まれた。岡田にはボールが渡らなかった。中盤の攻防で苦戦を強いられ、開始5分にはFKから失点してしまう。早坂良太がファーサイドで折り返したボールを新田純也が頭でプッシュ。競り合うことすら出来ず、あっさりとゴールを割られた。

ショートパスを主体にポゼッションサッカーを展開したホンダに対して、栃木SCは組み立てが図れずに成す術がなかった。延々と闇雲にボールを蹴り込むだけだった。

「足元やスペースなど、相手の狙っていないところへボールを流し込む。まともに入れては厳しい」(柱谷幸一監督)

スピード系の2人を前線に配するも、その特長を発揮させるだけの余裕が中盤以降になかった。ホンダに細かなライン設定とバイタルエリアをしっかり閉められたことで、状況はさらに悪化した。栃木SC対策は滞りなく遂行された。4―3―3から4―4―2へシフトしたホンダは、前期の対戦時よりも流動性は増していた。新田、早坂の2人に加えてワイドの深谷泰介、鈴木弘大の4人が出入りを繰り返しては起点構築に勤め、そこへ両サイドバックが絡むことで多彩な色を攻撃につけた。

21分、フラストレーションが溜まっていたにしても、佐藤のスパイク裏を見せるファウルは危険極まりなかった。警告だけで収まったが、一発退場でも文句は言えない悪質なものだった。このプレーを境に些か試合は荒れた。空中戦で落合が肘打ちを浴びせられる。明らかな報復行為だった。激しさを互いに履き違えてしまったことは猛省すべきだろう。

翻弄され続けた栃木SCは鈴木に中央を破られ、決定的なシュートを打たれるも、GK小針が辛うじて凌ぐ。防戦一方だった前半から後半に望みを繋いだ。

ホンダのモビリティは落ちなかったが、栃木SCも活動量が増したことで盛り返す。後半の序盤は五分に渡り合うも、石舘が立て続けにカードを貰い、13分にピッチから追い出された。贔屓目なしに2枚とも判定は不可解だった。前半に何度もレフリーから注意を受けていたにしても、カードの対象には値せず、厳しい判定を下されたといえる。

リードを許し、数的不利にもなった。状況は閉塞したまま。打つ手はなし。しかし、「2人分、動くことを心掛けた」ワントップの稲葉のアグレッシブさに、その他の選手が触発され、プレー精度とメンタル面が徐々に充実し始める。ようやく、手綱を握る。32分、FKから稲葉のヘディングシュートはGK中村元に阻止されるも、稲葉とのコンビでPボックスに侵入した岡田が倒されてPKを獲得した。じっくりと時間を掛けて、キッカーの佐藤は右隅へと突き刺した。試合を振り出しに戻す。

追い付いた余勢を駆って栃木SCは前に出た。ホンダも殴り合いに応じる。終盤はカウンターの応酬となった。形勢は栃木SCに傾き、ロスタイム4分は逆転のシナリオを描くには十分だったが、決勝点を奪ったのはホンダだった。ゴール付近でパス交換。最後は途中交代の牧野泰直がカノン砲を撃ち込んだ。執念、粘り強さには唸るしかない。昨季同様、ロスタイムに苦杯を舐めさせられた。ホンダというハードルを超えることは叶わなかった。

栃木SCとしては劣勢を挽回したことで1―1でも御の字だった。守り切る態勢は出来上がっていたという。だが、岡田は言う。「はっきりしていなかった」。勝点1でも良かったのか、はたまた勝点3をあくまでも取りに行くのか。ベンチとピッチ、選手間で意思統一は出来ていなかった。耐え切れれば勝点差は試合前の4のまま。逆転すれば7と大きく拡がる。ゴールにより勢いが付き、少し欲が出たことは責められない。可能性は低くても捨ててはいけないからである。それでも、「最低でもドローで終われた試合だった」(稲葉)、方向性が定まっていればとの思いもまた消えない。

次節のカターレ富山戦(9月7日@足利)まで国体や天皇杯県予選と、3週間の中断期間が設けられている。天皇杯JFLシード枠の栃木SCは、この間試合がない。4戦、勝ち星から見放されている現状を考えれば、ありがたいというのが本音だろう。ホンダに詰め寄られても首位を譲ったわけではないことから、「慌てない。ジタバタしない」と柱谷監督。チーム立ち上げ時からのベースを大幅に変更することはないと明言し、「攻守のおさらいをしたい」と付け加えた。

「3週間、空いているのは悪い流れを断ち切るにはいいチャンス。じっくり勝てる流れを作りたい」(岡田)

JFL後期第8節 HondaFC2―1栃木SC 観衆1219人 @Honda都田サッカー場

〈HondaFC〉GK中村元、DF桶田龍、村松大輔、石井雅之、小栗巧(→牧野泰直)、MF鈴木弘大、糸数昌太、田阪祐治、深谷泰介(→吉村和紘)、FW新田純也(→川島大樹)、早坂良太

〈栃木SC〉交代なし
  

戦評:対横河武蔵野FC戦@栃木SC通信

2008年8月10日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

176.JPGのサムネール画像のサムネール画像リーグ最多の49ゴールを誇る栃木SCの「矛」か、それともリーグ最小失点20と堅守を轟かす横河武蔵野FC(以下、横河)の「盾」か。試合の構図は鮮明だった。

果たして、「矛」が「盾」を突き破ることは叶わなかった。スコアは2度目の対戦でも0―1。同じ相手に、またしても苦杯を舐めた。

「点を取れなかったことだけが、今日のゲームでは出来なかった」

この日の柱谷幸一監督の言葉は、負け惜しみに聞こえなかった。前期と同様に完封されはしたものの、中身が大きく異なったからである。

アウェーの武蔵野に乗り込んだ際、拙攻が繰り返され、好機は全く作れなかった。のらりくらりとした相手の術中にはまり込み、サッカーをさせてもらえなかった。

敗北を喫するが、一転してホームでの栃木SCは数多の好機を生み出した。前半10分、斎藤雅也のロングシュートを皮切りにゴールを脅かす。その回数は二桁近くに迫った。公式記録によるシュート数は17本。約半数がゴールに繋がる可能性があったといえる。

しかし、ゴールは遠かった。足りなかったのは、雌雄を決したのは、決定機を決め切る力だった。それが横河にはあり、栃木SCにはなかった。

「守備はオーガナイズされている。粘り強い相手」(柱谷監督)に対し、戦前の予想に反する数のシュートを浴びせた。内容も前節より格段に向上した。それでも、勝ち切れなかった。

「ゴールに嫌われたかな」

指揮官は運に見放されたことで、そう漏らした。好機が結果に結び付かない。34試合の長丁場では必ず数試合、そんな展開に陥る。リベンジを果たすことで悪しき流れを絶ち切り、再び波に乗るには横河は絶好の相手だったが、ゴールを取りきるという点での巡り合せが悪かった。

3試合も勝ち星から遠ざかっている。今季、初めて味わう痛みと屈辱。フラストレーションは溜まる一方であるが、勝利に縁がなかった。そう割り切った方が得策である。負の感情を引きずらないためには。

「気持ちを切り替える。若い選手も多いので出来ると思う」

今はGK小針清允の言葉を信じようではないか。 


アウェー2連戦で2つのドロー。勝点を4つも落としてきた栃木SCは、無類の強さを発揮するホームに戻ってきた。「全勝を継続しよう」。試合前、選手たちは誓い合った。スタメンは以下の通り。GK小針、DFは左から斎藤、鷲田雅一、川鍋良祐、赤井秀行、中盤は底に落合正幸と鴨志田誉、左に佐藤悠介、右に岡田佑樹、2トップには横山聡と出場停止の上野優作に代わり松田正俊がパートナーに指名された。

前期終盤に失速。首位争いから転落した横河であるが、後期は○△△△○○と再建に成功。再度、上位に顔を出してきた。2失点以上した試合がひとつもない。堅実な守備が特徴であることは、開幕から不変の強みである。

「(栃木の)中盤は強い。イニシアチブを握るために、そこの(裏の)スペースを突くことを考えた」とは横河・依田博樹監督。中盤を省略し、金子剛と岡正道の2トップを走らせた。執拗に。3分、金子剛に裏を取られはしたが、プレスが強まるとロングボールの精度も落ち、栃木SCが攻勢に回る。ボランチラインで引っ掛けてから前に出た。11分には落合がインターセプトから持ち上がり、左の佐藤へ叩いて左足を一閃。強シュートは枠内を捕らえるも、GK金子芳裕に阻止される。

金子剛と岡のコンビから危機を招くも回避すると、栃木SCは左サイドを軸に攻め立てる。FKから横山が、CKからは松田がゴールを脅かしもした。「ボールが回ってこなかった」。右サイドバックの赤井が話す通り、左偏重であり、アンバランスが目に付くも、優勢に試合を運んでいたことで、さほど気にはならなかった。むしろ、気掛かりだったのは、ゴール前での応対に躊躇いが見られたことである。39分、カウンターから岡に決定的なシュートを放たれる。GK小針が腕一本で叩き落としたが、赤井が1対1でかわされていなければ冷や汗はかかなかった。

前半ロスタイム、栃木SCはネットを揺らされる窮地も、相手オフサイドで逃れる。持ち直して先手を取りたかった後半。5分に失点を、1点勝負の試合で喫してしまう。左サイド、ゴールライン際で鷲田と岡がマッチアップ。あまりにもあっさりと鷲田は振り切られ、供給されたクロスを加藤正樹に頭で突き刺された。「自分のマークの意識をはっきりさせないと。サイドからのクロスに対応できない」。加藤に前へ入り込まれた赤井は下を向いた。局面での弱さが浮き彫りとなる。

リードを得たことで堅守速攻の色合いを濃くした横河。対する栃木SCは石舘靖樹、稲葉久人、初出場の坂本勇一と次々にアタッカーを注ぎ込み、同点に追い付く態勢を整える。流れを完全に掌握し、佐藤は直接FKを、岡田は切り込んでからミドルを、坂本はダイビングヘッドから同点弾を狙うが、1点を奪うことは容易い作業ではなかった。

ホーム全勝を途絶えさえるわけにはいかない。逸機しても諦めることなくゴールを窺う。最終手段であるパワープレーを敢行し、強固な守備組織を崩しに掛かる。が、ゴール前に人数を割いた横河の壁は厚く、タイムアップまで崩れることはなかった。

「先に失点せずに点を取れれば、勝つ可能性はある」

結果的に依田監督の思惑通りに事は運び、栃木SCは12試合目で開幕からのホーム連勝記録をストップされた。

次節は今節、共に足踏みをした2位・HondaFCとの天王山である。ドロー2つに、敗戦が塗り重ねられた現状に「気持ちを切り替えるのは難しい」と横山は言う。弱音を吐く一方で、「サポーター、ファンの信頼を取り戻すために勝点3を取る」と固い決意を口にした。続ける。「内容よりも勝点3を死に物狂いで取りに行く。アウェーで勝点3を取れれば、かなりの自信になる」。

昨季、横山は涙を呑んだ選手の一人である。「同じ過ちを繰り返すと昇格を逃す」と連敗することに危機感を募らせており、だからこそ「アウェー、相手がHondaだが勝点3を」と勝利を貪欲に求める。そのためには、「形振り構わない」とも付け加えた。

「Jでやるためにここにいる」(横山)

現況は芳しくないものの、首位に立っていることに自負を抱き、俯くことなく「強い気持ちで向かっていく」重要性を説いた。

JFL後期第7節 栃木SC0―1横河武蔵野FC 観衆4307人 @栃木県グリーンスタジアム

〈栃木SC〉交代:松田(→石舘)、横山(→稲葉)、鴨志田(→坂本)

〈横河武蔵野FC〉GK金子芳裕、DF大澤雄樹、瀬田達弘、小山大樹、金守貴紀、MF加藤正樹(→池上寿之)、安藤利典、太田康介、野木健司、FW岡正道(→高橋周大)、金子剛(→石川清司)
 

戦評:対MIOびわこ草津戦@栃木SC通信

2008年8月 4日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

mio1.JPGメモを取る手が追い付かない。柱谷幸一監督が機関銃のようにまくし立てたからである。次々と言葉は吐き出され、怒気を帯びた表情を隠そうとはしなかった。

前半43分に横山聡が、後半2分に上野優作がゴールを奪う。2点のビハインドを帳消しにした。スタミナが切れたことでMIOびわこ草津(以下、ミーオ)は足が止まり、後半22分には退場者を出した。逆襲の機運は醸成される。残り20分あまり、栃木SCは一方的に攻め立てた。が、終ぞゴールを、勝ち越しの3点目を手中に収めることは叶わなかった。

指揮官の怒りの矛先は守備陣に向けられた。

「何回も同じことを言っている。そこがうちの、DFラインの弱いところ」

ワンサイドゲームではあったが、危機を招いたシーンもいくつかあった。象徴的だったのは後半35分。FKのこぼれ球からカウンターを浴びた。局面は3対4。相手のオフサイドに救われるも、警戒心が希薄だったと言わざるを得ない。ミーオは前線にひとりを残し、他の8人は自陣に引いていた。守りを固めて機を窺い前に出る。カウンターが効き易い状況ではあった。それでも、2対1、あるいは3対1の状況を保ち、マークを外さずにいれば窮地に陥ることはなく、いったん跳ね返されたボールから再び攻撃の再構築が滑らかに行えたはずである。イニシアチブを握ってはいたが、畳み掛けるような攻撃が見られなかったのは、守から攻の切り替えの悪さが挙がる。

「利点が活かせなかった」とは川鍋良祐。易々とボールを渡してしまったことで、預けられてしまったことで、攻撃の芽が開いたり萎んだりしてしまった。「守備からボールを奪えていれば厚みのある攻撃ができた」と臍を噛んだ。

こしらえた好機をゴールとして結実させられなかった攻撃陣にも責任はあるが、むしろ前傾姿勢を取り続けることを阻んだ守備陣の対応の拙さ、「体力をロスさせた」ことの方にこそ問題があった。

「ずっとやれていない」

柱谷監督は、そう糾弾した。所謂、アラートな状態にないことは、前期の対戦時にも指摘されていたことである。課題は克服されず先送りにされたままだったといえる。リーグ戦が中盤から終盤に差し掛かる大事な時期に指摘されるようでは心許ない。

選手に伝える。浸透しない。口を酸っぱくして訴えても身に付かないようでは、自ずと言葉も刺々しくなる。

「やろうと思わないと。大事なことを自分でやろうと思わなければ出来ない。皆で話し合いたい」

事態は想像以上に深刻さを極めている。チーム状態は下降線を辿り、今はどん底にある。危機感を募らせ、持ち越された課題を消化しない限り、今後も苦戦は避けられないだろう。綻びは早急に修繕しなければ拡がるばかりである。


敵地での敗戦、ドローと勝点の取りこぼしを、次戦のホームゲームで穴埋めしてきた栃木SC。ジェフリザーブズと1―1に終わり、次なる戦地は滋賀の湖南とホームには戻れず、アウェー2連戦となった。守備の立て直しの兆しが千葉では見られたものの、継続性に欠ける。序盤から波乱の様相を呈した。陣容はGK小針清允、DFは左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋、赤井秀行、中盤は落合正幸と鴨志田誉のダブルボランチ、左ワイドに佐藤悠介、右ワイドに岡田佑樹が入り、上野優作と横山聡が2トップに起用された。肉離れの高安亮介に代わり岡田が一列前にポジションを上げ、右サイドバックに赤井が収まった。

4連敗後にドローを挟んで3連敗。一時の勢いに翳りが出始めたミーオは、補強によりてこ入れを図る。JからFW村瀬和隆、DF李成浩を加えた。

「最近、こういう展開ばっかりですよね」

先行を許し、追っ掛ける状況を上野は嘆いた。開始僅か12分で2度の被弾。セットプレーから虚を突かれた千葉での教訓、「集中力の欠如」が活かされなかった。

9分、スペースに出たボールを鷲田が競り負け、安部雄二郎にドリブルからシュートを決められる。11分に栃木SCはゴールほぼ正面、絶好の位置から佐藤が左足を振るもクロスバーに嫌われ、詰めた鴨志田のシュートも枠外へ。同点の機会を逸するとCKの流れで鴨志田が佐藤に叩いたボールを強奪され、ミーオのカウンターが発動。冨田晋矢のスルーパスに飛び出した大江勇詞が追加点を挙げる。序盤から旺盛だったミーオは中盤でのパス回し、運動量で勝り、攻勢であり続ける。

栃木SCもサイドでの攻防では引けを取っていなかった。ことに右ワイドへ今季初めて配された岡田は縦横無尽にピッチを駆け回った。ストロングポイントであった一方で、岡田と赤井の間に大江が潜り込み、時間帯によってはウイークポイントになりもした。18分、赤井のフィードに抜けた上野のシュートは阻止されるも、前線へのボールの収まりがよくなると好機が増え始める。岡田と佐藤はPボックス内でシュートを放った。38分に岡田の右クロスがファーサイドへ抜け、佐藤が狙ったシュートはブロックされるが、43分にクイックリスターから再び岡田が送ったグラウンダーのクロスはゴールに結び付く。押し込んだのは横山だった。

前半終盤に1点を返せたことは小さくなかった。「聡のゴールは大きかった」と話した上野。後半早々に試合を振り出しに戻す。オーバーラップした赤井の右からのクロスを直接蹴り込んだ。俄然、反撃ムードは高まる。両サイドからスピードに乗った攻撃は躍動感に溢れていた。勝負を決める3点目を奪うために横山と上野を立て続けに下げて、石舘靖樹と松田正俊を投入。フレッシュな2人は果敢にラインへと圧を掛けた。流れを引き込んだことでプレスも機能し始め、石舘はDFの前に入り込み決定的なシュートを打ち込んだ。GK田中剛の好守にあうも、石舘はドリブルで突っかけ石澤典明を退場へ追い込んだ。

劣勢を挽回し、数的有利と逆転への条件は整い、気配は濃厚となる。しかし、ロスタイムを含めて約25分間で栃木SCはゴールを割れなかった。佐藤の左クロスから途中交代の稲葉久人がシュートしただけと、作り出した好機は数えるほど。試合を支配した割にはゴールに迫れなかった。

ファイナルスコア2―2。

またしても栃木SCは勝利をもぎ取れなかった。

「3点目を取れなかったことが悔しい」

横山は勝点3が目の前にありながら逃したことで「力不足」と付け加えたが、「負けたわけではない。いい方向に考えていきたい」と現状をポジティブに捉えてもいた。

欲を言えば切りが無い。引っ繰り返す芽はあったのだから。だが、極暑の中で2点を取り返せたことを、勝点1を拾えたことを、プラスに考えるしかない。

独特の表現で柱谷監督は言う。

「テープを巻き戻してやり直せない」

前を向き、準備を怠らずに戦っていくしか他に手は無い。

ホームでリーグ最小失点の横河武蔵野FCを迎え撃つ一戦に勝利することで、アウェーで受けた傷を少しでも癒したい。

喪失した自信を回復させる特効薬などない。ただし、1―0で勝ちきれれば事態は緩やかに上向くかもしれない。ゴールラッシュと完封。今、渇望して止まないのは後者ではないだろうか。

JFL後期第6節 MIOびわこ草津2―2栃木SC 観衆746人 @湖南市市民グラウンド陸上競技場

〈MIOびわこ草津〉GK田中剛、DF李成浩、石澤典明、田尾知己(→金東秀)、桝田雄太郎、MF若林令緒、田中大輔、大江勇詞、冨田晋矢、FW安部雄二郎(→アラン)、村瀬和隆(→壽健志)

〈栃木SC〉横山(→石舘)、上野(→松田)、岡田(稲葉)

短評:対MIOびわこ草津@栃木SC通信

2008年8月 3日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

前半:2-1。立て続けに失点。終盤に聡が一点返す。

後半:0-1。早々に上野がゴールもドロー。数的優位を活かせない。

ファイナルスコア:2-2。

ゴール:横山聡、上野優作(栃木SC)、安部雄二郎、大江勇詞(MIOびわこ草津)

順位:首位(勝点52)◆2位:HondaFC(勝点48)

 

右SBで先発した赤井秀行のクロスから上野優作がボレー。栃木SCは先制パンチを打ち込むが、ものともしないMIOびわこ草津(以下、ミーオ)は左サイドから果敢に攻め立てる。9、12分にはカウンターが炸裂。2度の好機をゴールとして結実させた。中盤の攻防では後手を踏むも、サイドでは岡田佑樹を中心に攻勢であり、アタッキングサードまで至るが、栃木SCは決め手に欠いた。苦しい展開も43分、岡田の右クロスを横山聡がプッシュ。

反撃の狼煙をあげ、後半早々には赤井のクロスから上野がボレーを叩き込む。試合を振り出しに戻し、ミーオのスタミナが落ち、さらに退場者を出した事も重なり栃木SCの時間帯がしばらく続く。しかし、攻守の噛み合わせが悪く、逆転とはならなかった。

「2点を追い掛ける状況は容易ではない」

柱谷幸一監督と選手は、そう口を揃えた。沖縄を想起させる暑さに、2点ビハインドを序盤に背負っては、どうしたって勝率は高くはならない。2戦続けて勝ち点2を喪失した。

 ※諸事情により詳細レポート&コラム更新は遅れそうです。申し訳ありません。お疲れ様でした。

戦評:対ジェフリザーブズ戦@栃木SC通信

2008年7月28日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

016.JPG虚を衝かれた、わけではない。スカウティングの段階で頭の中にはインプットされていた。相手がセットプレーを早く行ってくることを。つまり、全く予期せぬ攻撃だったわけではない。だからこそ、歯がゆく、もどかしさは募る。

「セットプレーを早く蹴ってくる情報は入っていた。情報が入っているのにピッチで表現できないのは、選手のミスだと思う」

落合正幸は歯を噛んだ。

後半34分、FKからのクイックリスタートに戸惑う。対応しきれず、ゴールネットは揺らされる。警戒心は僅かに薄れ、それは大きな痛手となった。

2試合で計6失点。修正するべき課題は明確だった。当然ながら今週のトレーニングは守備に重点が置かれた。マークのズレを確認し、改めて1対1の勝負では絶対に負けないことも肝に銘じた。必然的に決壊している守備陣だけではなく、チーム全体の守備意識は高まった。

「組織としては破られなかった」(柱谷幸一監督)

流れの中から崩されたシーンは皆無だった。前半29分、後半1分と好機を作られはしたものの、それ以外はほぼ磐石だった。築き上げたブロックは強度を保ち、攻撃をしっかりと跳ね返せていた。

しかし、ゴールを2度も脅かされたのはセットプレーとその流れからだった。リスタートに対する守備は覚束なかった。フリーでダイビングヘッドを許し、競り合いで後手を踏んでは、どうしたって屈強なイメージは湧いてこない。右サイドバックの岡田佑樹はこんな風に感じている。

「CK、FKに怖さを感じる。完全に弾き返せているわけではないから」

好印象を抱けないセットプレーからの失点に岡田は絡んでしまう。「あそこはオカの判断ミスだった」。失点シーンを振り返りながら指揮官はあえて岡田の名を挙げた。個人に責任を押し付けるには、あまりにも酷な状況だった。「マークのズレは自分の責任だった」と右サイドでコンビを組んだ小林成光が話す通り、周囲の準備は整っておらず、集中力の欠如が失点の要因だったからである。非は岡田ひとりにはない。

ボールが蹴り込まれた瞬間、状況は1対2と数的不利だった。走り込んできた選手に、ボールに釣られてしまうのは致し方がないことである。ゴールを決めた選手のマークを外してまで競りに行った岡田の選択は、大きな間違いだったとは言い切れない。それでも、柱谷監督は「一発でクリアできないならば、中途半端なポジションをとるべきだった」と注文を付けた。相手選手2人の間に位置していれば味方のサポートを待つ時間を稼ぐ、或いはトラップした時にチャレンジに行けたかもしれない。そう考えているからである。困難な状況でも対処可能な能力を兼備しており、カバーリングに優れている岡田であれば防げたはず。そう思い至ったからこそ厳しい発言に繋がったに違いない。無理な選手に高い要求はしない。

辛辣な言葉をぶつけられた岡田は言う。

「ロングボールを跳ね返す力は(相手と自分で)五分五分。自分が強くなることで安定感のある守備をしたい」

常に進歩を遂げるための向上心が絶えることはない。零封できない守備の
特効薬はない。結局のところ最終ラインの不安定さは個を伸ばすことでしか解決できない。一人ひとりの心身両面での逞しさがユニットとしての機能を高める。


好対照なチーム同士の対戦となった。ホーム全勝の栃木SCと、未だホーム未勝利のジェフリザーブズ(以下、ジェフ)。

瓦解している守備陣の立て直しを図り、勝利も持ち帰りたい栃木SCの布陣は、GK小針清允、DF斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田、MFは底に落合正幸、鴨志田誉、左に佐藤悠介、右に高安亮介、FWは上野優作と横山聡が並んだ。向慎一に代わり鴨志田が先発に復帰した。

18人の平均年齢が20.7歳のジェフは、4―4―2の変則4―5―1だった。

鴨志田が中盤の底から果敢に前に出る。トップ下のようなポジションを取った。前線へのサポート意識は強く、慎重ながらもリスクを冒すことも忘れなかった。ボランチラインでボールを引っ掛けては、サイドチェンジで高安をスペースへと走らせた。

「ジェフの守備は強かった。CB2人には強さと高さがあった」と柱谷監督。ショートパス主体の攻撃は序盤だけ。その後はリトリート(帰陣して陣形を整える)してスペースを埋めたジェフ。守備に比重を置く。2トップにべったりと張り付き、起点を設けさせなかった。中央を固め、ボールが集められた高安のドリブル突破も阻んだ。栃木SCは攻めあぐんだ。

栃木SCも同様の試合運びをする。守備組織はジェフの攻撃を寸断し続けた。互いに失点しないことを心掛けたことで試合は膠着する。共に好機は一度ずつだった。

些か退屈な試合を動かしたのは、個の力だった。2トップが確保したボールが左へと叩かれ、佐藤が1対1を楽々と制し、振り抜いた左足からのシュートは逆サイドネットへ突き刺さった。間合いを計り、躊躇いなく一太刀で仕留める。鋭さはまさに剣豪のようだった。再三、味方から供給されるボールを追っ掛けた高安がモモを痛めて退場(小林が交代出場)。アクシデントに見舞われるも、前半35分の先制点を保持したまま45分を折り返す。

後半開始早々にFKから窮地を招くも、GK小針がヘディングシュートを弾き出す。難を逃れた栃木SCは人もボールも走るようになり、佐藤が試合をコントロールしたことでイニシアチブを握る。ショートカウンターを効率的に繰り出した。だが、アタッキングサードにまで持ち込むも肝心のフィニッシュに至らない。左からの良質なクロスから上野が追加点を狙うも、ジェフDFも粘ったことで決定機とはならず。逆に一瞬、生じた隙を衝かれて同点とされる。素早いFKから山中誠晃が潰れ、こぼれ球をPボックス内でフリーの堀川恭平が流し込んだ。

振り出しに戻されるも、気持ちが萎えることはなかった。岡田は無尽蔵のスタミナで何度も右サイドを駆け上がり、佐藤は左から危険なクロスを届け、鴨志田はボール奪取から前に飛び出す。が、残念ながらシュートには結び付かなかった。カタチは出来るもシュートを打ち切れない展開が繰り返され、ロスタイムの3分が過ぎ去った。ドローという結果が残り、勝点2を取り損なった。

「今のチーム状態を物語っていると思う」

総括を求められた佐藤は、そう述懐する。栃木SCの今とは。「1―0では勝ち切れない」「踏ん張りきれない」、すなわち「力のあるチームではない」ということになる。オブラートに包むことなく佐藤は言い切った。

「胸を張ってJへいけるチームではない」

佐藤は成長を感じ取ってはいるが、一方で首位のチームが有する風格が伴っていないとも思っている。足りないものを手のするために再度、「監督から何を求められているのかを確認する」必要性を説いた。そして、それがぶれているようでは、求められていることが理解できないようでは本物の強さは身に付かない、と付け加えた。

上に行くためには、まだまだ多くの苦難が待ち受けているようだ。

JFL後期第5節 ジェフリザーブズ1―1栃木SC 観衆1017人 @市原臨海競技場

〈ジェフリザーブズ〉GK大河原弘樹、DF安川洋介、宇野勇気、田中淳也、李智星、MF蓮沼剛、中原浩介(→山中誠晃)、金正旭、鳥養祐矢(→平田直也)、FW乾達朗(→加藤韻)、堀川恭介

〈栃木SC〉交代:高安(→小林)、横山(→石舘靖樹)、上野(→稲葉久人)
  

戦評:対流通経済大学戦@栃木SC通信

2008年7月20日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

ryu1.JPGのサムネール画像1―2のビハインドで迎えた後半頭、横山聡はベンチに下げられた。前期第17節、対アルテ高崎戦。残りの45分間、背番号10はピッチに立つことを許されなかった。

とり立ててパフォーマンスが悪かったわけではない。ボールを引き出す動きは巧みだった。その証拠にGKとの1対1のシーンを作り出し、シュートこそ外しはしたものの、高安亮介の同点弾に繋がるプレーに関与した。しかし、無常にも交代は告げられる。代わりに入った石舘靖樹は流れを生み出し、逆転勝利に一役買った。勝点3、前期首位ターンを喜びはしたが、消化しきれない思いが残る。

「高崎戦、前半で代えられた。悔しかった」

横山はそう述懐する。

挽回の機会を窺うも、足首の怪我により戦線離脱を余儀なくされる。横山不在の穴を埋めるように新鋭・稲葉久人が台頭。決定機を逃さない勝負強さを発揮し、ゴールを積み上げ、ポジション争いに名乗りを上げる。開幕から好調を維持する上野優作と石舘靖樹は前線で確たる地位を築き上げた。

焦燥感が募らなかったといえば嘘になる。だが、横山はさほどライバルたちの動向に関心を持たなかった。

「イナ(稲葉)が取っていたからではなく、自分には常に危機感がある」

試合に出ていても消えない切迫感。結果を残さなければならない。サバイバルに身を置くことの重圧に押し潰されることも少なくない。現に前期は3ゴールしか挙げられなかった。他人を意識するよりも、己に打ち克つ。普段から横山が心掛けていることである。

傷が癒えスタメンに抜擢されたことを意気に感じ、前期最終戦で味わった屈辱をぶつけた結果が、ハットトリックに結び付いた。21試合目にしてようやくハットトリック達成者がチームに現れた。それがエースの横山であることに意義がある、と柱谷幸一監督は考える。

「3点を取って取られたことで(印象が)薄くなったが、聡が活躍したことでイナ、ダテ(石舘)、マツ(松田正俊)が『やらなければ』という気持ちになる」

シーズン前、FWの核に指名された横山の大爆発は、前線の活性化を促すに違いない。

「悔しさはピッチで晴らさないと」

わだかまりと訣別できたことで、覚醒したエースの顔にはほっこりとした柔和な笑みが戻った。


不得手な撃ち合いに持ち込んでしまった前節のソニー仙台戦を落とし、ホームに帰ってきた栃木SC。必勝を期し、『宇都宮夏の陣 リベンジナイト PartⅠ』に臨んだ。陣容はGK小針清允、4バックは左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田佑樹が入り、中盤はボランチに落合正幸と向慎一、左に佐藤悠介、右に高安が並び、上野と横山が2トップに配された。斎藤、向、横山が先発に復帰した。

北京五輪予備登録選手の林彰洋がゴールマウスに君臨する流通経済大学(以下、流通経済)は、関東大学リーグ前期を首位で折り返したメンバーをずらりと揃えた。「他のJFLのチームとは違う。一人一人が強い。教育されている」(上野)流通経済は、主力が名を連ねた時にはJFLの上位を食すほどの実力を有する。果たして、栃木SCも餌食となりかけた。プロ予備軍のポテンシャルは空恐ろしい。

前節の反省が活かされなかった。時間もピッタリ開始4分。先手を取られる。Pボックス内へ侵入されたフランク・ベロカルに左足を振られる。喫してはいけない失点を許し、1週間前の悪夢が甦るも、すぐさま振り出しに戻す。CKを横山が中央から頭で流し込んだ。5月のホーム2連戦以来(計3ゴールをマーク)、つまり2ヶ月ぶりのゴールとなった。お約束。ゴリダンスにペヤングポーズもきっちり決めた。

FKから佐藤が直接ゴールを狙い、右サイドは高安が制圧し、ゴール前は上野と横山のコンビが冴え渡る。波に乗った横山はバイシクルシュートを繰り出すなど、果敢にゴールに迫った。16分、背後を取るもGK林彰洋に防がれる。24分、FKを再び頭で合わせるも枠外へ。守備でも横山は貢献。セカンドボールを確保するために尽力した。

確かなスキルを軸に、頻繁なポジションチェンジ、例えばCBの1枚を攻撃参加させるなどして試合を優勢に進めた流通経済であるが、決め手に欠ける。2トップにボールが入ると脅威であったが、綺麗に崩すことに執着した嫌いがあったことでフィニッシュに至る回数は限られた。

対照的に栃木SCは効率的かつ効果的な攻撃を行い、43分、44分と横山が連続ゴールでハットトリックを完成させた。逆転弾はカウンター、リードを拡げる一発はFKからのクイックリスタート。いずれもお膳立ては上野と佐藤だった。最高潮の雰囲気に水をさす。川鍋が掴み倒してPKを与える。これを田村洋平がブーイングを浴びながら冷静に沈める。ロスタイムに不要な1点を献上。後味の悪さが残った。

お口直しに高安が放ったミドルを契機に後半序盤からゴールに襲い掛かる。佐藤はループシュート、鷲田は超ロングシュート、横山は相手クリアボールに足を伸ばした。ところが好機を逸し、ラインが後退したことで緩くなったバイタルエリアを突かれ、流通経済に反撃の糸口を提供してしまう。押し込められる時間帯が続き、ついに後半24分に決壊する。池田圭のクサビから途中出場の西弘則に反転シュートを叩き込まれる。アドバンテージは消え去った。

「ブロックが作れていれば守りきれた。相手が来る前の準備、コミュニケーションが足りなかった」(柱谷監督)

所謂、アラート(機敏な。注意深い)な状態を保持できなかった。失点の原因は明らかだった。

「鬱陶しい、と思われるのが持ち味」

そう語るのは途中交代の石舘。懸命に同じくフレッシュな稲葉と前線から激しくボールを追い回した。アグレッシブなフォアチェックは地味ながら効力を働かせ、手綱を手繰った。前からプレスをかけたことでコースは限定され、落合と向がボールを掻っ攫いカウンターのスイッチとなる。35分に佐藤の左クロスから稲葉のヘディングシュートはバーを越えるも、40分に途中から送り出された小林成光のマイナスのクロスを石舘が頭で突き刺した。気迫がゴールとして結実した瞬間だった。

「10分あればFWにはワンチャンス来る。それをものにするか、しないか。ものに出来るのがFWの実力だと思っている」(石舘)

不機嫌だった先週とは打って変わり、決勝弾に満面の笑みを浮かべていた。

流通経済はパワープレーを敢行するも、栃木SCは上手くやり過ごし、勝点3を手中に収めた。

「連敗すると流れがズルズルと悪くなる。勝てたことは大きい」と斎藤。上野は「前回の対戦で負けているのが大きかった。昨年までだったら勝てなかったが、今年は勝ち切れる強さがある」と勝因と今季の強みを語り、「首位が負けるとカッコ悪いでしょ?」と最後に笑いを誘った。

内容には乏しかったが、同じ相手に2度負けず、連敗を回避。ホームでの連勝も途絶えさせることなく、最低限のノルマを果たした。リベンジは成った。

JFL後期第4節 栃木SC4―3流通経済大学 観衆3928人 @栃木県グリーンスタジアム

〈栃木SC〉交代:高安(→小林)、上野(→稲葉)、横山(→石舘)

〈流通経済大学〉GK林彰洋、DF石川大徳(→比嘉祐介)、山村和也、加藤広樹、宮崎智彦、MF宇佐美潤(→西弘則)、千明聖典、フランク・ベロカル(→林相協)、船山貴之、FW池田圭、田村洋平
  

戦評:対ソニー仙台FC戦@栃木SC通信

2008年7月13日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

sony.JPG夏場は先手必勝。

後期一発目の試合、アウェーは北谷でのFC琉球との耐久戦を制したことで暑さを味方につけ、勝ち切る方策と自信を手に入れられた。それは前節の対佐川印刷SC戦でも遺憾なく発揮され、望外の4ゴールを奪う圧勝に結び付く。体力の消費が激しいこの時期、とにもかくにも先にゴールを挙げ、相手には許さない。この鉄則さえ遵守できていれば、フィジカルで勝る栃木SCの勝率が下がることはない。

それだけに肝心なのは前半、それも不安定さが付き纏う立ち上がり。

経験則から上野優作は説く。

「前半は体が温まるまで動かない。その時間帯で失点をしないことが大切」

暑さをうまくやり過ごすには序盤からハイプレッシャーを掛けるよりも、ブロックを下げて守備からリズムを作ることが得策である。後期に入り栃木SCは相手に攻めさせ、スタミナを十分に吸い取ってから叩きのめす、“横綱相撲”を身に付けたはずだった。が、対ソニー仙台FC(以下、ソニー)戦では、前半4分の失点が全てを狂わせた。必勝パターンは崩れ去る。

追われるのではなく追いかける立場の難しさは、対戦相手の疲労困憊ぶりから熟知していたはずである。だからこそ、2度も振り出しに戻してからの試合運びに、慎重さが求められたのだが困難を極めた。ソニー戦では常に背中を追っ掛ける展開が続き、いつしか選手の運動量は削り取られていった。2―2まで持ち込みはしたものの、引っ繰り返すだけの余力は残されていなかった。

「先に点を取られると夏の試合はきつくなる。(1点返したことで)『いける』という雰囲気になったが、もう1点取られてしまい難しくなった。勢いがでればよかったが・・・厳しかった」(上野)

引き込むはずのアリ地獄に引き込まれたのは、栃木SCだった。


後期2連勝と最高のスタートを切った栃木SCは、前期からの連勝を7に伸ばすべく杜の都・仙台に乗り込んだ。スタメンは前節から不動。2トップは上野と石舘靖樹、中盤は左に佐藤悠介、右に高安亮介、底に落合正幸と鴨志田誉、4バックは右から岡田佑樹、川鍋良祐、鷲田雅一、赤井秀行の並び。赤井は3試合連続の先発、サブには左足の傷が癒えた小林成光が入った。

アウェー3連戦を2勝1分けと無敗で潜り抜け、首位を迎え撃つには万全の態勢を整えたソニー。元栃木SCの谷池洋平が4―4―2の最終ラインを束ねた。

真夏日の仙台。先取したのはソニーだった。前田和之の横パスから大瀧義史が左足一閃。中長距離からのシュートに絶対の自信を有するGK小針がゴールを割られたのだから、打った大瀧を褒めるしかないだろう。

リードしたソニーは守備に神経を割いた。スペースを消去され、対面の元木数馬のマークを剥がせなかったことも加わり、高安の突破は封じられた。DFラインからしっかりビルドアップを行い、食いついてきたところで背後を突く。ソニーは自分達のやりたいことを貫く。

FKから鷲田の折り返しを落合がボレーで合わせ、GK金子進を脅かした直後の20分。同点弾は生まれた。左サイドで上野がボールをキープし、佐藤に叩く。佐藤は敵陣の深くまで侵入し、ロークロスを送り、ファーに走り込んだ高安が抑えの効いたシュートを叩き込む。完璧に左サイドを崩した。ニアサイドで潰れた石舘の隠れたアシストも見逃せない。

ゴールにより球際での激しさが増した栃木SC。ようやくのお目覚めによりイニシアチブを握るかに思われたが、CKから谷池にヘディングシュートを浴びる。これでもかとガッツポーズを連発した谷池。この一戦に懸ける思いが表れていた。解雇、そして前期の流血騒動の鬱憤を晴らされる。流れを掴み損なった栃木SCは、その後も肝を冷やされるが、辛くも事なきを得る。

後半開始早々、村田純平のシュートがGK小針を襲う。至近距離のシュートを弾き出すも、集中力の欠如からか立て続けにゴールに迫られる。ハーフタイムを挟んでも栃木SCは精彩を欠く。時折、繰り出すカウンターもフィニッシュには繋がらなかった。

しかし、高安が佐藤のサイドチェンジから突破を図れるようになるとリズムが生じる。後半17分に岡田が供給したロブがPボックス内を混沌とさせ、最後は体を倒しながら上野が左足ボレーでネットを揺らす。形勢を逆転させられると呼んだ柱谷幸一監督。2枚替えを敢行する。鴨志田と石舘を下げ、小林と稲葉久人を同時に送り出す。陣形もいじった。小林をトップ下に配し、中盤をダイヤモンド型に移行した。小林が拾えていなかったセカンドボールを拾い、起点を設け、上野が制空権を取り戻す。逆転の機運は徐々に醸成されるも、守備陣が耐え切れず、ぶち壊した。途中交代、185cmの金子央朋にハイボールを落とされ、寄せが甘かったことで村田にミドルを決められてしまう。

「ボクのところで跳ね返せていれば問題なかった。情けない」

金子央朋のマークに付いていた川鍋は唇を噛んだ。

ソニーに守備ブロックを構築されるも、途中交代の斎藤雅也は強引に仕掛け、ラストワンプレーのCKを鷲田がジャンプ一番、頭で合わせるも枠を捕らえきれなかった。最後の悪足掻きも水泡に帰す。

ファイナルスコア2―3。

リスクを冒して攻めに打って出るが届かなかった。敗戦により連勝は6で途絶えた。

「3点も取られたら勝つのは難しい」

柱谷監督は嘆いた。

ハーフタイムにシュート数、ポゼッシンが勝敗を左右するのではなく、重要なのは「ゴール前で決定機を決めきれるか否か」と話をしたそうだが、90分を終えて「両ゴール前での甘さが結果として表れた」。

「何もないです」

石舘は一言いい残し、バスへ消えた。

今季3敗は、これまで喫した2敗以上に選手達を滅入らせた。一様に口は重く、落ち込みの度合いは濃かった。

今季の強さの秘訣は挽回力にある。気持ちを切り替え、月曜日からのトレーニングで反省点を修正して欲しい。

落合は言う。

「下を向いていられない」

JFL後期第3節 ソニー仙台FC3―2栃木SC 観衆1469人 @ユアテックスタジアム仙台

〈ソニー仙台FC〉GK金子進、DF橋本尚樹、谷池洋平(→木村孝次)、亀ヶ渕幹、元木数馬、MF瀬田貴仁、今田傑、大瀧義史、高野和隆(→桐田英樹)、FW前田和之(→金子央朋)、村田純平

〈栃木SC〉交代:鴨志田(→小林)、石舘(→稲葉)、岡田(→斎藤)
  

戦評:対佐川印刷SC戦@栃木SC通信

2008年7月 6日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

print1.JPG左サイドのスペースへとボールが出る。追い付いたのは稲葉久人。背後からサポートに入ったのは向慎一だった。向の左足から放たれたクロスはGK大石和夫の伸ばした手先を通過。ファーサイドへと抜けるもDFの体に当たり、ふわりと浮いたボールは上野優作の頭上に。上野は窮屈そうに体を折り曲げ、バイシクルシュートでネットを揺らす。4点目をもたらした。

「短い時間の中でゴールに絡めたことは自信になる」

プレーに粗さが目立った鴨志田誉に代わり、後半22分からピッチに立った向は、「ゴールに繋がるパスが出せた」ことに好感触を得ていた。

ここ数試合は試合を締める、クローザーとして右ワイドでの途中出場が多かった。対佐川印刷SC(以下、佐川印刷)戦では、開幕から定位置としていたボランチに配される。「守備から、シンプルにプレー」することを心掛けるも、「チャンスがあればどんどん前に出て行け」との指示を実行に移し、結果を残す。持ち味である攻撃性がゴールラッシュを締め括る、パスを供給するに至った。ゴールに直結する仕事を果たすが、向本人は喜びも半分といった表情。

「守備面では課題がある」

「向はゲームをコントロールし、安定させてくれた」。柱谷幸一監督はパフォーマンスに一定の評価を与えた。が、納得がいかない。前傾姿勢の相手に対し、食いつきに行かず、我慢して守れていれば、「見ている人も最後は安心できる」試合運びが可能だったと考えているからである。

「悪癖」

リードしたゲームで相手をいなしきれないことを向は常々そう形容する。佐藤悠介が下がったことでボールの収まりどころが見出せなかった。自分がボールを受けられれば展開はもっと楽になったはず。口惜しさは消えない。ゲーム終盤、相手を操作できるくらいの試合巧者になることを目指し、「自分がその役割を担えたらいい」と語る向。

チームに欠けている部分を補い、オーガナイザーとなることで、失ったポジションを再び取り戻す気構えでいる。


猛暑の沖縄に相応しい、体力の損失を避ける効率的な戦い方で、後期開幕戦を白星で飾った栃木SC。後期ホーム開幕戦となるナイトゲームに臨む陣容は以下の通り。GK小針清允、DF赤井秀行、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田佑樹、MF落合正幸、鴨志田、佐藤、高安亮介、FW上野、石舘靖樹。前節のFC琉球戦からメンバー変更はなく、赤井は左サイドで2度目の先発となった。

「おそらく栃木と近い将来、戦う機会はない。栃木との最後のゲームだぞ」。中森大介監督が選手に檄を飛ばした佐川印刷も4―4―2。

岡田のクサビを上野が処理。高安が縦に突っかけ、ニアサイドのクロスに石舘が合わせるも枠外へ。その後も石舘が上野とのワンツーからシュートに持ち込むなど、栃木SCは高い連動性でゴールに迫った。「点を取ること」(中森監督)をコンセプトにした佐川印刷は、サイドにボールを預けてからドリブルで局面打開を図った。横幅を使った果敢な攻撃に気圧された栃木SCであるが、好機は作らせなかった。依然として前線にボールが入るとゴールの匂いが漂う。14分にオーバーラップした赤井、19分に佐藤とのワンツーから石舘のミドルがGKを強襲する。

守備陣の踏ん張りで乱れつつあったリズムを整え、37分にスローインから虚を突く。Pボックス内へと落合が侵入し、たまらず足立高俊がファールを犯す。得たPKを「心の準備は前日の夜から出来ていた」上野が左隅へと冷静に決める。「PKは昨年、外しているので決められてよかった」。上野は胸を撫で下ろした。ロスタイムにロングフィードから裏を取られ、フリーでスライディングシュートを浴びるも力なく、
危機を脱する。

前後半の立ち上がりに失点するケースが多々ある佐川印刷。早い時間帯での失点を後期の修正すべきテーマに掲げ、警戒はしていたが、開始3分にFKから稲葉に右足でプッシュされ追加点を許してしまう。負傷した石舘に代わり後半頭から登場した稲葉は旺盛にゴールを狙い、落合と鴨志田がセカンドボールを拾う回数が増すと、流れは栃木SCへと一気に傾いた。23分に再び稲葉が鷲田のパスに鋭く反応し、小刻みなフェイントでマーカーを困惑させてから右足を一振り。決定的な3点目を手にした。手綱を緩めない栃木SCは更に上野が、アルビレックス新潟在籍時以来2度目となる、驚愕のバイシクルシュートでゴールを積み重ねた。

後ろを削り、3―4―3にシフトした佐川印刷。CKを松岡真吾、FKを片野寛理が合わせるも枠を捕らえきれず。「力不足。素直に完敗でした」と中森監督。一矢報いることすらできなかった零封に落胆の色は濃かった。

前期の対戦時、ロスタイムに悪夢の同点弾。その後のアウェー戦にケチを付けた佐川印刷に借りを返す。試合前には稲光が走り、空が大泣きするなど不穏な空気は醸成されたものの、負の要素をものともせずに快勝。連勝を6に、ホーム不敗記録を10に伸ばした。

先発2試合目の赤井は安定したプレーを披露し、稲葉は2試合連続ゴール。これまで控えに甘んじた選手や途中交代選手が結果を出すことによる波及効果の大きさを述べた柱谷監督。「非常にいいカタチでチームが回っている」と話し、好循環の要因に粘り強く闘えていること、90分の中でゲームマネジメントができていることを付け加えた。

ナイターゲーム3試合は全て前期のリベンジマッチ。その初戦を完勝で終えられたことは小さくない。対流通経済大学、横河武蔵野FC戦へ向けて弾みがついた。

JFL後期第2節 栃木SC4―0佐川印刷SC 観衆3250人 @栃木県グリーンスタジアム

〈栃木SC〉交代:石舘(→稲葉)、鴨志田(→向)、佐藤(→深澤幸次)

〈佐川印刷SC〉GK大石和夫、DF瀧原直彬、松岡真吾、高橋弘章(→片野寛理)、遊佐仁(→平井晋太郎)、MF野澤健一、村尾雅人、足立高俊(→吉木健一)、奈良崎千喜、FW大坪博和、猪狩佑貴

戦評:対FC琉球戦@栃木SC通信

2008年6月30日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

okinawa2.JPG交代後、間もなくのことだった。右サイドから中へと切り込みシュートを放つ。アグレッシブなプレーも、シュート精度には乏しかった。

「スキル、両足のキックの精度が足りない」

以前、柱谷幸一監督は稲葉久人の短所を、そう口にした。一方で、高安亮介に匹敵するスピードと高さを長所に挙げていた。

後半18分に登場した稲葉は、僅か10分足らずで大仕事をやってのける。左サイドの佐藤悠介から供給されたクロスをニアサイドに走り込み頭で合わせた。プロ初ゴールに続き、2ゴール目も足ではなく頭から生み出された。

「ヘディングは得意ではないが、ゴール前での入り方は意識している」

自らの特長を「ゴール前での嗅覚」と言い切る稲葉。この日もストライカーという人種にしか察知できない匂いを敏感に嗅ぎ取った。GKとDFの間にボールが蹴り込まれると読み切る。「当てるだけでした。悠介さんに感謝です」と謙遜しながらも、「上手く間を突けた。狙い通り」。湧き上がってくる感情を抑えきれず、頬は緩んだままだった。

ファジアーノ岡山戦で決勝弾を叩き出し、喝采を浴びた。続くアウェーのアルテ高崎戦でも活躍が期待され、出場時間も増えたが存在感は薄かった。持ち味を発揮できなかった。そのことを本人も自覚していた。

「ホームでは点を取ったが、次のアウェーでの動きは悪かった。アウェーでも結果を出したかった」

出場6試合目でようやく本職のFWで起用され、結果を残した。「試合に出られるならば、どちらでも(右ワイドとFW)構わない」とは言うものの、水を得た魚のように溌剌とプレーできているのは本来の位置、ゴールに近い場所である。

初ゴールによりこれまで遠慮がちだったプレーと訣別。間隔を空けることなく次のゴールを手に出来たことで自信は一層深まった。

殊勲を立てた稲葉は饒舌だった。

「ボクは暑さ、夏に強い。暑くても結構、走れます。暑さは好きですね」

ピッチ外でも猛烈にアピールを行った。

チームは完全プロ化し、トレーニングは夜間から昼間に移行された。例年のような夏場に失速する事態は、おそらく回避できるだろう。が、ベテランが中核を成していることから、パフォーマンスが落ちる可能性は低くない。それだけに、“夏男”を公言して憚らない稲葉の調子が上向いてきたことは頼もしい。2枚看板の横山聡と松田正俊が鳴りを潜めているという点でも。


前期首位ターン、天皇杯のJFLシード権を獲得しても、柱谷監督の表情は硬かった。何も成していない。前後期の区切りをつけることで、気持ちが弛緩することを極端に嫌った。緊張感は選手にも伝わり、後期を白星でスタートさせる一因となった。4―4―2のスタメンは以下の通り。GK小針清允、DFは左から赤井秀行、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田佑樹、MFはボランチに落合正幸と鴨志田誉、左ワイドに佐藤、右ワイドに高安亮介、FWは上野優作と石舘靖樹。負傷した斎藤雅也に代わり急遽、赤井が左サイドで起用された。

前期の残り2試合を連勝で飾ったFC琉球(以下、琉球)は、トゥルシエ総監督もベンチ入り。山下芳輝(元栃木SC)をワントップに据えた変則的な3―3―3―1で臨んだ。

いかに無駄な動きを減らし、長い距離を走ることを避けるか。

肌に刺さるような日差しは気温を32度まで上昇させ、湿気をはらんだ海風により湿度は70%を超えた。酷暑に対抗するために、栃木SCは省エネサッカーを貫徹した。前線からボールを追わず、ラインを深くし、自陣で引っ掛けてから前に出る策を採った。

受身の姿勢を取ったことで我慢の時間帯が続く。山下がサイドに流れ起点を構築。Pボックス内にパスを入れられるシーンが目に付くが、DF陣は慌てることなく弾き返す。納谷伊織、國仲厚助、鎌田安啓のトリプルボランチに中盤を支配され、ポゼッションで凌駕されても動じなかった。ゲームをコントロールされても、最後の部分で跳ね返せれば問題ない。山下への寄せの甘さは頂けなかったが、意思統一が図られていたことは小さくなかった。浮き足立つことなくゲームプランを粛々と遂行する。

守備に軸足を置いたことで栃木SCの攻撃回数は数えるほどだった。CKから上野の際どいヘディングシュートと、石舘のGKライス・エンボリの正面を突くミドルシュートの計2本に終わる。それでも、琉球を無失点に封じ込め、体力の消耗を最小限に抑えられたことが、後半に繋がる。

前半の終盤に鎌田と山下に連続してゴールに迫られ肝を冷やすも、GK小針の好守と正確性を欠いたシュートに救われた栃木SC。錆び付かない、豊富な選択肢を有する山下のポストプレーに手を焼くが、次第に運動量で琉球を圧倒し、反撃に打って出る。デュド・ミヌングの投入、4バックへの移行が裏目に出た琉球とは対照的だった。

立ち上がりから先のことなど考えず、上下動を盛んに繰り返した石舘と高安が立て続けにゴールに襲い掛かる。「セーブするつもりはなかった。突破できるところは突破する」と高安。ドリブル勝負を仕掛けたことで、対面のDFのスタミナを奪い、ピッチから追い出す逞しさを見せた。手綱を引き寄せたところで、「相手のCBがへばっていた」と見て取った柱谷監督。フレッシュな稲葉をピッチに送り出す。

意図的に使用頻度を高めたサイドチェンジは効果的であり、ゴールを呼び込んだ。右から左へ滑らかにボールは運ばれ、佐藤が上げたクロスを稲葉が頭で突き刺した。後半26分、先制点にして決勝点が生まれる。

サイドに張り気味だったデュドが内側に入り、背後を狙うようになると2度も窮地を招く。しかし、GK小針の好判断と気持ちを切らさなかった守備陣の奮闘がゴールを許さない。サッカーをするには過酷な状況下でも萎えることなく最後まで戦い抜き、柱谷監督就任1周年を勝利で飾った。

「今日は悠介と稲葉だけではなく、全員で勝ち切った。後期初戦ということでモチベーションを上げにくかったが、集中力を切らさずにプレーしてくれた」

相手に付き合うことなく、自分達の思惑通りにゲームを押し進められたことで、柱谷監督は選手の労をねぎらった。

「これで波に乗れる。中断期間前の後期8節まで突っ走る」(柱谷監督)

連勝を5から更に伸ばし、勝点を積み上げてから一呼吸入れる腹積もりでいる。それまで小休止するつもりは毛頭ない。

JFL後期第1節 FC琉球0―1栃木SC 観衆3104人 @北谷公園陸上競技場

〈FC琉球〉GKライス・エンボリ、三好拓児、久保篤史(→秦賢二)、MF納谷伊織、國仲厚助、鎌田安啓(→森戸壮介)、澤口雅彦、林田光佑(→デュド・ミヌング)、FW山下芳輝

〈栃木SC〉交代:石舘(→稲葉)、上野(→松田)、高安(向慎一)

短評:対FC琉球戦@栃木SC通信

2008年6月30日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

気温32度では望むべきサッカーなど展開できない。栃木SCはリアリズムに徹する。つまり、スタミナを削がれるような動きを避けたのである。フォアチェックは行わず、ラインを後退させ、FC琉球の攻撃に備えた。傍目には劣勢に映り、現に山下芳輝のポストプレーからフィニッシュに繋げられる。だが、混乱するには至らなかった。シュートを打たれ過ぎはしたが、それも織り込み済みだったからである。さすがに終盤に枠内シュートを浴びた際には肝を冷やしたが、ゴールマウスにはGK小針清允がいた。いつもながらの俊敏な反応で弾き出す。

CKから上野優作の惜しいヘディングに、石舘靖樹の果敢なミドル2本に終わった前半から一転、栃木SCは圧力を強め、琉球を押し込める。後半から意識的に使い始めたサイドチェンジがゴールの呼び水となった。右から中央の落合を経由したボールは左の佐藤まで届く。ニアを狙った高精度のクロスに頭で合わせたのは、途中投入の稲葉久人だった。値千金の決勝弾を、際どいシーンを作られはしたが、維持された高い集中力で耐え凌ぐ。

ポゼッションに未練を残しつつも、柱谷幸一監督は「この暑さの中では、内容は責められない。攻守によくやってくれた」と、全員で勝ち取った勝利を称えた。

※お疲れ様でした。先程、帰宅しました。疲労と肌のかゆさが半端ない。今日はレポート&コラムは無理ですので明日、順次アップします。勝ってよかった。

戦評:対アルテ高崎戦@栃木SC通信

2008年6月23日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

arute.JPG

栃木SCサポーターはアウェー側のメインスタンドを黄色に染め上げた。収まりきれないものはホーム側に回り、スタンド最上段で立ち見するなど人で溢れかえった。公式入場者数は854人。そのおよそ8割を黄色が占めた。ただいま9戦全勝。無類の強さを誇るホームと同じ空気を、高崎は浜川競技場でも醸成させた。

「雨でもアウェーでも声援を送ってくれる。ホームのような感覚でやれた」(川鍋良祐)

45分を終えて1―2とビハインドを背負った。それを残り45分で3―2と引っ繰り返す。クロスゲームを勝ち切り、勝点3を手中に収め、前期を首位で折り返すことに成功する。「錯覚」はプラスに作用したといえる。

楽な試合などひとつもなかった前期を象徴するような一戦。

「粘り強く戦った結果」

落合正幸は日々のハードなトレーニングと実戦を通じて培われた、メンタル面の成長を勝因に挙げた。そして、粘着力はサポーターの存在なしには育まれなかったと信じて疑わない。

「サポーターからは『上がりたい』、『上がるんだ』という気持ちを強く感じる。それに対して失礼のないように選手はプレーしている」

次第に芽生え始めた勝利への義務感。それは選手のメンタルを程よく刺激し、勝利を届けなければならないとの思いを日増しに強くした。声を嗄らし、諦めることなく終了の笛が鳴るまで背中を押し続けてくれる。投げ掛けられる熱に報いなければ、応えなければならない。

「声援を受けることで『勝たなければならない』と、少しずつプロ意識が出てきた」

柱谷幸一監督は選手の心境の変化を、そう語る。

チームを強化するのは、なにも監督やコーチだけではない。厳しくも温かい眼差しでチームを見守り、共に戦うサポーターもその一端を担っている。指揮官はその力の偉大さを知り尽くしている。だからこそ、常に口にする。「サポーターの力が大きい」と。そこにはリスペクトと感謝が含まれてもいる。

 

クラブ史上初となる前期首位ターンが達せられたのは、今から3年前の2005シーズンである。原動力となった若林学(愛媛FC)のゴール量産は、遠い過去の記憶ではないだろう。あれから月日は流れ、再びJFL前期1位に授与される天皇杯シード権を他力ではなく(当時はHondaFCが躓いたことによるタナボタだった)、自力で掴み取る機会を作り出した。スタメンは2トップに上野優作と横山聡、中盤は左ワイドに佐藤悠介、右ワイドに高安亮介、ボランチは落合と鴨志田誉、4バックは左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋、岡田佑樹が配され、ゴールマウスには小針清允が立った。

アルテ高崎(以下、アルテ)の頻繁な監督交代は欧州のクラブ並み。前期途中で渡辺克之監督から攻撃サッカーを掲げる幸谷秀巳氏にスイッチした。4―4―2から4―3―3への布陣変更が奏功。連勝を飾るなどちょっとしたサプライズを起こしている。定位置だった最下位から脱しもした。

栃木SCの中盤を無力化するためにアルテが選択したのは、浅いラインを敷き、全体を圧縮することだった。スペースを潰され、試合前から降り続いた雨によりピッチ状態は万全ではなかったが、ものともしない。横山が巧みにボールを誘引。両サイドからの攻撃を滑らかにする。攻め入ることが出来ていたサイドから先制点は生まれた。佐藤の左クロスを横山がトラップからシュート。GK斯波薫に1対1を制されるも、ルーズボールをゴールへパスするように高安が流し込んだ。前半15分の出来事だった。

先手を取った。しかし、試合を落ち着けられない。ここ数試合の課題が顔を出す。直接FKでゴールを脅かされ、その流れの中で与えたCKから今井雅貴に泥臭くゴールを割られる。5分と経たない内に同点とされる。

試合は振り出しに戻ったに過ぎないが、ショックを引き摺った。出足が遅れたことで、容易に危険な香りのするクロスを供給される。28分の決定的な窮地を潜り抜けるも、32分にまたしてもCKを跳ね返しきれず、阿久澤剛に強烈な一発を浴びせられる。「集中力はあったが、相手の人数が多く、マークが足りなかった。ズレもあった」と落合。「セットプレーからやられるのは勿体ない。うちはセットプレーを武器にしているのだから」と続けた。

アグレッシブに3列目から飛び出しを図った鴨志田の動きも実らず、ゴールを取り返せなかった。

「負けていたが0―0のつもりで。1点を取ったら流れはこっちに来る。もう一度、やり直そう」

ハーフタイムにそう伝えた柱谷監督は、横山を下げて石舘靖樹を投入する。開始1分のCKから川鍋が放ったシュートはクロスバーに嫌われる。だが、背後を突き、空中戦でも引けを取らなかった石舘のプレーに触発されるように、運動量が上がった栃木SCは攻勢に転じる。ショートカウンターが決まり始めた矢先だった。佐藤が右サイドの高安へ通そうとしたスルーパスを阻もうとしたアルテDF。伸ばした足に当たったボールは、予期せぬ、自陣ゴール方向へと向かう。栃木SCは相手の絶妙なループシュートからのオウンゴールで追い付く。

「一人ひとりのボールに対するアグレッシブさ、スピード、タックルの激しさなど」(上野)パワーを発揮した栃木SCは、3点目を手に入れる。右サイドの岡田からサイドチェンジのボールを受けた佐藤が左足を一振り。豪快な一発がネットを激しく揺さぶる。逆転弾は後半24分に突き刺さった。

勢いに乗った栃木SCはセットプレーから、GK斯波の肘打ち一発退場でPKを獲得。これを佐藤が左へ蹴り込む。ややコースが甘かったこともあるが、ここは交代したばかりのGK岡田大の読みが勝った。セーブされ、逸機する。絶好機を逃したものの、前半の反省を生かし、セットプレーを与えても危機を招くことはなく、3―2で逆転勝利を飾った。

「内容はともかく、結果的に首位は評価して欲しい」

そう語るのは上野。天皇杯のシード権を手にしたことで、今年は栃木県から2チームが全国を舞台に戦うことが許される。アマチュアに枠をひとつ増やした功績は小さくない。最高の地域貢献である。

積み上げた勝点は41。昨季、首位ターンした佐川急便SC(SAGAWA SHIGA FC)の39を上回り、2位を勝点で5つも離す単独首位、ご褒美にシード権を頂戴するに至るも、喜びが湧き上がってこなかったのは、「攻撃と守備で5割もやれていない」試合内容に不満を抱いたからだろう。柱谷監督の表情は何時になく険しかった。

「一区切りではなく対FC琉球戦への準備を行わなければならない。今日出来なかったことの修正を今週1週間で行うことが大事」

中断期間の設けられていないJFLの困難さを説き、既に今月29日に幕を開ける後期へ目を向けていた。

JFL前期第17節 アルテ高崎2―3栃木SC 観衆854人 @高崎市浜川競技場

〈アルテ高崎〉GK斯波薫、DF杉山琢也、阿久澤剛(→神谷恭平)、西村陽毅、床井伸太郎(→小川裕史)、MF里見仁義、工藤光俊、今井雅貴、FW久保田圭一、田中靖大(→GK岡田大)、白山貴俊

〈栃木SC〉交代:横山(→石舘)、高安(→稲葉久人)

戦評:対ファジアーノ岡山戦@栃木SC通信

2008年6月16日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

321.JPG1月のファーストミーティングで柱谷幸一監督が今季の理念として掲げたのは3つ。結果、内容、フェアプレーである。

とりわけ強調したのが結果。所属選手全員がプロ契約を結んだことで、「プロである以上、当たり前」と話し、突きつけた要求が「ホーム全勝」だった。勝負に徹するシーズンに相応しい、退転の決意が如実に表れている目標である。勝ち続ければクラブの財政基盤を安定させるのに不可欠な観客動員にも結び付く。だからこそ、スタジアムへ再び足を運んでもらうために、栃木のサッカー熱を上げるために、カタルシスを得られるゲーム内容と同等に勝利が必要とされることを声高に訴えた。

前期に組まれたホームゲーム9試合を、栃木SCは見事に全勝で終える。傷ひとつない、綺麗な白星が並んだ。指揮官の過酷なノルマを半分クリアした。

整えられた環境、熱狂的なサポーターの応援など、枚挙にいとまがないほどのプラス要素が集中力を高め、試合への入り方を滑らかにする。対照的にアウェーでは比較的リーグの中で恵まれた状況がマイナスに作用し、勝点が伸び悩む一因となっているのだが。

「負けたり引き分けたりした後に今季は必ず勝つからね。それが大きいよ」

コールリーダーのシゲルさんは、昨季との違いをそう語る。

選手達の中には芽生えつつある。敗戦を喫する、或いはドローで勝点を取り逃しても、ホームに戻れば立て直しが図れるという強い思いが。キャプテンの佐藤悠介は、現況をこんな風に感じ取っている。

「ホームで負けていないことで自信が出てきている」

いつかは途切れるかもしれない連勝に怯え、プレッシャーに押し潰されることなどない。根城に帰れば自分達は負けないという心理。その働きは思考をポジティブにし、気持ちの切り替えを促進している。ホームゲームでの勝利に対する強い意識が「ホーム力」を培い、優勝争いを繰り広げられている好循環を生んでいる。


久方ぶりのアウェーでの勝利と引き換えに、中盤のオーガナイザー落合正幸と右サイドで職人芸を披露していた岡田佑樹が揃って出場停止と、代えの効かない選手を2人も欠く事態を招く。佐藤の3試合出場停止に匹敵すると言っても過言ではない。前節、奪取した首位のまま折り返すには、乗り越えなければならない難しい試合に直面した。栃木SCの布陣はGK小針清允、DFは左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋良祐、赤井秀行、中盤は底に向慎一と鴨志田誉、左ワイドに佐藤、右ワイドに高安亮介が据えられ、上野優作と横山聡が2トップを組んだ。5人もの大卒新人が先発起用され、最終ラインには鷲田を除き“北京五輪世代”が3人も名を連ねた。

さて、6月15日は栃木県民の日であり、クラブが株式会社化して1周年のメモリアルデーでもある。「県民の歌を1万人で大合唱」と大々的な告知を刊行。そのかいもあり1万人には達しなかったが、開幕戦の6338人を超える7253人が集う。恥ずかしい試合はできない。

異例の地域リーグ所属時代に「J2準加盟」の権利を得たのが、ファジアーノ岡山(以下、ファジアーノ)である。中国リーグ、全国地域リーグ決勝をトップ通過した実力に偽りなし。HondaFCを開幕で食すとカターレ富山、SAGAWA SHIGA FCも撃破した。一時は首位に立つほどの快進撃も、昨季の下位チーム相手に苦戦を強いられ、ズルズルと順位を下げた。どうやらチームの体質として強敵には高いモチベーションで挑めるが、その反面ちからが劣ると自己判断した相手には手を焼くようだ。

対戦前の順位では栃木SCが勝る。つまり、ファジアーノが闘志を剝き出しにする材料は整っていた。スタートダッシュに成功。左サイドを軸に攻撃を仕掛け、持ち味のひとつであるセットプレーの流れから、中盤に下がった喜山康平がヘディングシュートを放つ。ゴールを脅かされ、拙い立ち上がりの栃木SCも、特長であるセットプレーから上野が競り勝つなど応戦した。序盤はセットプレーの攻防が続いたが、徐々に互いの2トップを2CBが抑え込んだことで、試合は拮抗した展開となる。

サイドに上手く蓋をされ、手詰まりに陥っていた栃木SCであるが、開眼した高安が果敢にシュートを打つと活気が生じる。縦だけではなく内側へルートを開拓したことが奏功。圧を掛け、DF陣を揺さぶる。全体の動きも軽快になる。前線から骨惜しみない横山聡のフォアチェックが守備組織を強固にし、ファジアーノは打つ手がなくなる。

手綱を握ったはずだったが、41分に朝比奈祐作に至近距離から決定的なシュートを浴びる。ここはGK小針が腕一本で叩き落とすビックセーブで凌ぐも、44分にFKとカウンターから冷や汗をかかされるなど、相手に盛り返される後味の悪さを残した。

後半の立ち上がりもファジアーノのリズムで試合は進んだ。前を向いてのプレーを許してしまう。しかし、前傾姿勢になった相手の逆手を取り、スペースを利するボールと動きが目を引くようになると栃木SCは攻勢に出る。12分、鷲田から高安へと良質なロングフィードが届けられる。高安は迷わない。1対1を制し、PKを勝ち取る。これをGK李彰剛の間合いを外し、佐藤が左隅にきっちり沈める。

先制後も前半はミスの目立った向と鴨志田のダブルボランチがゴールに迫るなど、追加点を狙いに行く。畳み掛けてリードを拡げようとするも、単純なミスが重なったことでファジアーノに息を吹き返されてしまう。怒涛の反撃を守備陣が身を挺して脱するが、持ちこたえられなかった。29分に喜山の左クロスから小林康剛にヘディングをぶち込まれて同点とされる。失点直前、栃木SCは5人で攻め込んでいた。カウンターを打ち込むも、防がれると戻りが遅れる。鴨志田がディレイさせるも、味方は帰陣してこない。人数は足りていたが、バランスが崩れていたのも事実。一瞬、切れた集中力が仇となる。

後半の頭には既に疲労の色が濃かったという高安を下げて稲葉久人を投入。松田正俊を送り出してパワープレーの選択肢も用意されていたが、柱谷監督は稲葉に賭けた。この交代は吉と出た。

ドリブルで中へカットイン。左の佐藤にボールを預け、自身はゴール前へ。絶妙のタイミングでマーカーを振り切った佐藤のクロスを頭で叩いたのは稲葉だった。県民の日に地元、小山市出身のルーキーがゴールを決めたことでスタンドは爆発。手拍子は足が止まり始めていた選手を叱咤し、陣形を久保田勲と深澤幸次を入れて中盤に厚みをもたせる4―1―4―1(4―5―1)へシフトさせたことでセカンドボールが拾えるようになり、2次攻撃を阻んだ。ニューウェーブ北九州戦では5バックで逃げ切ったが、今回は中盤を肉厚にしたことで準加盟ダービーを勝ち切った。大観衆に勝利をプレゼントできたことに加え、ホームでの不敗が継続されたことに選手と柱谷監督は安堵の表情を浮かべた。

頬を緩めたのも束の間、引き締め直した柱谷監督は言った。

「得ているものはひとつない。しっかり勝って前期を締め括りたい」

まさにその通りである。16試合を消化した時点で首位に居るだけに過ぎない。次節、対アルテ高崎戦に勝利することで初めて天皇杯のシード権が得られる(ドローなどケチな考えは持っていないだろう)。栃木県のサッカー界のためにも首位ターンを叶え、枠をひとつ増やしたい。

JFL前期第16節 栃木SC2―1ファジアーノ岡山 観衆7253人 @栃木県グリーンスタジアム

〈栃木SC〉交代:高安(→稲葉)、向(→久保田)、横山聡(→深澤)

〈ファジアーノ岡山〉GK李彰剛、DF尾崎雄二(→大島翼)、伊藤琢矢、木村允彦、野本安啓、MF妹尾隆佑(→小林優希)、小野雄平、喜山康平、FW朝比奈祐作(→玉林睦実)、小林康剛
  

戦評:対ニューウェーブ北九州@栃木SC通信

2008年6月 9日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

143.JPG高安亮介の自己分析結果は、こうだ。

「調子に乗るタイプではない」

だからだろうか。2戦連続してゴールを決めても、こう言うのである。

「まぐれの1点も1点ですからね」

悦に入ることはない。しきりに謙遜するのは、大学時代(国際武道)の監督の教えが染み込んでいるからだ。「点を取っても喜んでいる場合ではない」と。感情を露にしない高安であるが、充足感と確かな手応えを得ていたことが窺えた。質問に応える顔は精悍さを一段と増し、サッカーで飯を食っていく覚悟が色濃くなったからである。

「あれだけで終わってはいけない」

前節のゴールに匹敵、あるいは相当するプレーを次の試合でも持続させることの必要性を説いていた高安。きっちりと結果を残した。

「ゴールというカタチでしたが、積み重ねができたのはいいこと」

これまではサイドに張り付く嫌いがあり、必然と縦方向への動きが多かった。が、自らシュートを打ち切る、という新境地を切り開いたことは小さくなかった。サイドチェンジのボールが入る。「相手が縦を切り過ぎている。中に入って、相手の出方を見よう」。内側へ働いた意識が結局はDFを弾き飛ばし、勢いそのままに「ゴールが視界に入ったから思いっ切りシュート」に繋がり、ゴールネットを揺らすことになったのだから。

「打たなければいけない」、「次にチャンスが来たら打つ」。芽生えたゴールへの意欲が、どこか燻っていた高安を完全に覚醒させた。

硬かった高安の表情はほぐれ、控え目だった言葉が熱を帯びる。

「コースを狙っても難しいですよ。気持ちと思い切りの良さが大切です」

躊躇うことなく右足を振り抜けた。そのことにこそ価値がある。

アグレッシブなプレースタイルに比べ、ゴール後のパフォーマンスは控え目である。同僚でありライバルの深澤幸次は、ゴールを陥れるやいなや、一目散にヤクルトの置物に飛びついた。その話題を振ると高安の闘志に火が付いた。

「ホームで目の前にヤクルトがあったら行きますよ」

笑いを誘った。アマチュア感覚が抜けきれていなかったと痛感したパフォーマンスでも、今後は魅せることを約束。手にした自信は一層、深まった。


柱谷幸一監督はミーティングで選手達に伝えた。「アウェーで勝たないと連勝できない。波に乗れない。(勝てないという)悪い雰囲気を払拭しよう」。ホーム8戦全勝の輝きが、アウェーで2勝2敗2分けと分の悪さを際立たせる。内弁慶と揶揄されないうちに是が非でも勝利し、勝ち越したい。ピッチに散った11人はGK小針清允、DFは左から斎藤雅也、鷲田雅一、田村仁崇、岡田佑樹、中盤はボランチに落合正幸と鴨志田、左ワイドに佐藤悠介、右ワイドに高安の構成、上野優作と石舘靖樹が2トップに配された。累積警告によりCBの川鍋良祐が出場停止。代役に指名されたのは、チーム最年少20歳の「末っ子」田村だった。山崎透、照井篤の起用も考えたが、HondaFC戦で45分ながら鷲田とコンビを組んだことが、先発起用の決定打となった。

与那城ジョージ監督と藤吉信次をセットで獲得し、昨季ニューウェーブ北九州(以下、ニューウェーブ)は激戦の九州リーグで初優勝。駒を進めた全国地域リーグ決勝では土壇場でJFL昇格を果たした。「J2準加盟」申請も通り、福岡第2のJクラブ誕生へ向けて躍進を続けている。初参戦ながら高位置につけている一因は、△○○△△○とホーム無敗が挙げられる。「J2準加盟」ダービー、ユニフォームの基調が黄色であることからイエローダービーと銘打つより、「内弁慶」決戦と括った方がどこか収まりがいい。

栃木SCは今週、取り組んできたトレーニングの成果、ボールを繋いでビルドアップを図ることが出来なかった。荒れたピッチ、とりわけピッチ中央の痛みは激しく、ボールを回せばリスクを背負うことは明白。必然的にボールをトップに預けるサッカーを選ばざるを得なかった。それはニューウェーブも同様であり、互いにトップへロングボールを蹴り合うシーンが目に付いた。

序盤から奪ったボールを前線に供給し、セカンドボールを拾い2次、3次攻撃を滑らかに繰り返したのは、ニューウェーブだった。宮川大輔と中嶋雄大の2トップに佐野裕哉が絡んだ流動的な前3枚の動きが、多少強引さはあったものの推進力を生み出す。イニシアチブを握り、栃木SC陣内で試合を押し進める。

立ち上がりに躓いた栃木SC。23分にGK小針が目測を誤り佐野にかわされる。留守になったゴールへシュートを打たれそうになるも、斎藤のカバーリングで難を逃れる。するとその流れから蹴り込んだボールを石舘が必死にチェイス。「相手のバックパスを読んでいた」。DFがGK水原大樹に戻したボールを掻っ攫う。一旦シュートは阻まれるも、冷静にルーズボールをコントロールし、スライディングで流し込む。一度の好機をゴールに結んだ。

形勢を逆転させるには格好の材料であるゴールを奪うも、ピリッとしない。4分後に試合を振り出しに戻される。Pボックス内で粘られ、最後は宮川に左足でゴールを許してしまう。石舘と上野の2トップにボールが収まらなかった栃木SCは攻め手を欠くが、比較的芝の状態が良好だったサイドから侵略し、逆転弾を叩き出す。鴨志田からのサイドチェンジのボールを受けた高安はマーカーを揺さぶり、応対に戸惑う相手を尻目に右足を一閃。30分、豪快なシュートが突き刺さる。スタンドで観戦、数チームを渡り歩く流浪のストライカー藤吉も、「凄い」と唸ったほど強烈な一撃だった。

今度こそ悪しき流れを断ち、自分達のリズムで試合を運びたかったが、ニューウェーブのホーム力に飲み込まれた。前半終了間際に宮川ともつれながら倒れた岡田が決定機阻止の判定でPKを宣告される。これで岡田は次節出場停止。佐野が左へ沈めるも、蹴る前にPボックス内に味方が入ったとして蹴り直し。しかし、冷静さを失わなかった佐野は右を突いて同点に。

「得点後に失点。ゲームを作れる強いチームは、ああいうカタチで失点しない」

リードを保ちきれなかったことに柱谷監督は嘆き節。

予想外の点の取り合い、シーソーゲームとなった試合は、後半開始直後に帰趨が決する。右サイドからのスローインを上野がゴールに背を向けた状態で背後へ送る。ニアサイドに詰めていた石舘が左足を伸ばして押し込んだ。「後半、立ち上がりの失点が響いた。痛かった」とは与那城監督。

殊勲のゴールを挙げた石舘だが接触したことで左膝を痛める。負傷退場。横山聡が急遽投入される。アクシデントが重なる。ゴールの足掛かりとなるスローインを勝ち取った高安の鼻血が止まらない。すぐさま向慎一がピッチに送り出された。予想外の事態による選手交代など慌しさはあったが、ハーフタイムに守備の修正を施したことが奏功。ようやく望むような展開に持ち込んだことで、ニューウェーブを黙らせた。

ビハインドの状況。打つ手は限られていた。20分を残した時点で早々とパワープレーを敢行。193cmの大型DFドグラス等、空中戦に長ける選手を次ぎ込んだ。だが、栃木SCも田村、鷲田、落合が競り合いを尽く制したことで、窮地を招くことはなかった。相手のやり方が明確になったことで、守り易くなったことは間違いない。ニューウェーブは力勝負に出る時間が些か早く、采配が裏目に出た。前に人数を割いたことで攻撃力が殺がれ、脅威は薄まった。

ロスタイムに山崎を守備固めで入れ、念には念を入れた栃木SCが3―2で苦しい試合をものにする。ニューウェーブのホーム不敗記録を止めると同時に、リーグ通算100勝を達し、アウェーでは3月末のガイナーレ鳥取戦以来の勝利を飾った。

首位のHondaFCが引き分けたことで順位が引っ繰り返る。2位だった栃木SCが首位に躍り出た。

「この試合の前では他力だった。他会場の結果を気にせず、あと2試合は集中できる。首位で折り返したい」

今季初めて順位を意識するコメントを口にした柱谷監督。残り2試合を連勝すれば首位を譲ることなく、自力で天皇杯シード権を取得できる。勝点を3つずつ着実に積み重ね、首位でのターンとそのご褒美を狙う。

JFL前期第15節 ニューウェーブ北九州2―3栃木SC 観衆956人 @北九州市立本城陸上競技場

〈ニューウェーブ北九州〉GK水原大樹、DF永野諒(→岩倉一弥)、ドグラス(→加藤雅裕)、冨士祐樹、佐藤真也、MF桑原裕義、日高智樹、森本惟人(→古賀宗樹)、佐野裕哉、FW宮川大輔、中嶋雄大

〈栃木SC〉交代:石舘(→横山聡)、高安(向)、佐藤(→山崎) 

戦評:対SAGAWA SHIGA FC戦@栃木SC通信

2008年6月 2日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)


yusaku2.JPG照れ隠しに違いない。

「意識はしていない」
 
刺激的な言葉は時としてマイナスに作用する。自己制御を欠き、審判に侮辱的な言葉を吐く。愚行が招いた3試合出場停止のペナルティ。明けた復帰初戦も普段と変わらぬ気構えで臨んだ、と佐藤悠介は言うが、実際には相当いれこんでいた。ウォーミングアップの段階から溢れんばかりに気迫は漲り、近寄り難い雰囲気を醸し出す。ひとり黙々と短いダッシュを繰り返した。自己証明の場でもあった開幕戦に負けず劣らず、自らを奮い立たせる。

犯した罪は消えない。背徳行為によりチームとサポーターへ多大なる迷惑をかけた。報いるには謝罪の言葉を並べることも大切であるが、フットボーラーである以上、やるべきことは、ただひとつ。ピッチで勝利に直結する仕事を果たす。失地回復にはボールを介し、思いの丈を語る方法が最も得策である。

佐藤は理解していた。そして、やってのける。先制点と決勝点は佐藤の左足から演出された。伸し掛かる重圧をものの見事に撥ね退け、蓋を開けてみれば主役の座に身を置いていた。目に見えるカタチで深謝をすませ、地に堕ちかけた信頼を取り戻した。

「ボクは、約束は破らない」

そう豪語する佐藤。勝点3、ホーム8連勝を引き寄せるパフォーマンスは圧巻であり、償いには十分すぎるほどだった。逆境で発揮される底力には感服するしかない。

「左足の精度の高さは点に繋がる可能性が高い、と改めて感じた」

柱谷幸一監督の佐藤評である。ダイレクトに影響力の大きさを口にしないことが、逆に指揮官とキャプテンの絆の深さを感じさせた。

 

アウェーでの連敗を2で止めるも、同じ「J2準加盟クラブ」のカターレ富山からは勝利を獲得できず。拾ったに等しい勝点1の価値を高めるには、昨季の覇者であるSAGAWA SHIGA FC(以下、佐川滋賀)に勝ち切ることが求められた。スタメンはGK小針清允、4バックは左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田佑樹が並び、ダブルボランチは落合正幸と鴨志田誉が組み、左ワイドに佐藤、右ワイドに高安亮介を据え、松田正俊と石舘靖樹が2トップに指名された。

王者は中位に甘んじる。原因は明白である。個人昇格した御給匠(横浜FC)、堀健人(水戸ホーリーホック)、嶋田正吾(FC岐阜)の穴を埋めきれないからである。トリオが叩き出したゴール数は57。決め手を欠き、勝点を伸ばせないのも致し方ない。

開始早々に鴨志田が失ったボールからカウンターを食らう。事なきを得るも、出鼻を挫かれ、佐川滋賀が手綱を握る。ポゼッションで優位に立たれ、4バックの両端のスペースを執拗に突かれる。大沢朋也、榎本周平、中村元が形成する左サイドのトライアングルは、栃木SCを大いに苦しめた。大沢の浮かせたパスから放った榎本のシュートはゴール前を横断。肝を冷やされる。

個の力量不足を連動性で補った佐川滋賀に押し込められたことで、栃木SCはトップにロングボールを蹴り込むしか手立てがなかった。「FWにつけるパスを増やしたかった」(鴨志田)が、思うに任せない。ボールが前に収まらないから中盤はサポートへ入れず、セカンドボール争奪戦でも後手に回った。

しかし、先にゴールを割ったのは栃木SCだった。GK小針からのキックを石舘が懸命に確保。左の佐藤へ叩き、サイドチェンジのボールを右へ送る。受け取った高安は胸でトラップしてからマーカーを振り切り、ゴールへ流し込んだ。高安の今季初ゴールを契機に畳み掛けたかったが、中盤の支配力で劣り、リズムを掌握できない。オーバーラップから斎藤、直接FKから佐藤、斎藤のクロスから高安がゴールに迫るなど好機をこしらえるも、形勢は逆転できなかった。

悪しき流れを断ち切るために後半の頭に上野優作を投入。起点の構築を図り、攻勢に転じる策を打つも、競り合いで負傷した落合が退場したことでバランスを崩す。急遽、ピッチに送り出された久保田勲と鴨志田の噛み合わせが悪く、安易なミスからフィニッシュへと持ち込まれる。バイタルエリアの緩さに乗じて1トップの竹谷英之が存在感を増すと、失点の気配は濃厚となり、ついに振り出しに戻される。34分、竹谷のポストプレーを利し、中村が供給したチップキックからのパスを交代出場の米倉将文がボレーシュート。あっさりと中央から失点を喫する。

佐川滋賀の勢いは止まず。クロスの処理にあたった岡田があわやオウンゴールの危機を迎える。辛うじて難を逃れ、ロスタイムにCKを獲得。「前半からいいボールを蹴っていた。絶対に来ると信じていた。どんぴしゃり」。佐藤の正確なキックを頭で合わせたのは上野だった。劇的な決勝弾が突き刺さり、王者を葬り去った。「うちの失点パターン」と敵将・田中信孝監督。2戦続けてセットプレーから被弾しての敗北に肩を落とした。

「結果的に点を取ったがJのチームならば1―1、或いは逆転されていたかもしれない」

値千金のゴールを決めても上野の表情は険しかった。例えば1―0で逃げ切れるような、「しっかりしたゲームをして勝ちたい」との思いは強く、劣勢に回った後半の時間帯を課題に挙げた。「(久保田)勲も頑張っていたが、アンカーの位置で跳ね返す力が足りなかった」と、落合が退いた後の進め方に佐藤も修正の余地があると話した。「真ん中でのポゼッション力が不足した」とは柱谷監督。久保田と鴨志田が落合にはない特長を生かして中盤を構成していれば、安定した試合運びが出来たと考えている。

佐藤は言う。

「強いチームではない」

そう感じるのは苦境に立たされた際、相手をいなす老獪さ、すなわちゲームマネジメント能力が備わっていない等々、物足りない要素があるからだろう。優勝に値するチームになるためには、数多の壁を打破しなければならない。

JFL後期第14節 栃木SC2―1SAGAWA SHIGA FC 観衆3453人 @栃木県グリーンスタジアム

〈栃木SC〉交代:松田(→上野)、落合(→久保田)、石舘(→横山聡)

〈SAGAWA SHIGA FC〉GK真子秀徳、DF榎本周平、冨山卓也、影山貴志、高橋延仁、MF中払伸吾(→吉村修平)、小幡正、大沢朋也(→根本知治)、中村元、田谷高浩(→米倉将文)、FW竹谷英之  

戦評:対カターレ富山戦@栃木SC通信

2008年5月26日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

126.JPG記憶を辿ってみる。プロ生活を振り返ってみても出場停止、警告を受けた回数は数えるほどだという上野優作。

後半17分、イエローカードを提示される。

「僕自身、気を付ける。(カードを)もらわないように注意したい」

自省しながらも一方で、JFL2年目でも容易には拭い去れない審判の笛に対する違和感。「気を付けていても、もらってしまう」。パートナーを組む松田正俊も同様に戸惑いを隠せないという。昨年からカテゴリーをJFLに移すが、体に染み込んだJでの感覚は抜け切れていないそうだ。

大学リーグとの差異を感じたのは、ルーキーの斎藤雅也である。プレシーズンマッチで退場を宣告された。早々と「JFLの笛」の洗礼を受けた。今季、チーム全体として、基準の定まらないにジャッジに悩まされ、苛立っている感は否めない。これまで当然のように流されてきたプレーでファウルを取られ、自らのリズムを狂わされ、挙句の果てにカードまで頂戴してしまう。フラストレーションが溜まり、食い下がってしまうのも無理はないが、不要な抗議などで出場機会を失ってしまっては元も子もない。闘志は対戦相手に向けるべきである。

対カターレ富山(以下、カターレ)戦でも出場停止にリーチがかかっていた深澤幸次が、Pボックス内でドリブルを仕掛けたまではいいが、明らかに審判を欺く行為でシミュレーションを取られた。次節の出場が不可能となる。その他にも累積警告3枚で黄色信号が岡田佑樹、川鍋良祐、落合正幸と欠くことの出来ない選手に点滅している。向慎一の謹慎が今節解け、次戦は佐藤悠介と石舘靖樹が戻ってくるが、交代で主力がピッチ外へと追い遣られる事態は回避しなければならない。

「結局、最後に積もり積もって自分達の首を絞めることになる。注意しないと。チーム全体として意識していかなければならない」

上野は警鐘を鳴らす。

佐藤の3試合出場停止中に副産物として鴨志田誉の台頭、石舘が左ワイドで使える目処が立つなど底上げが図れた。1勝1敗1分けの五分と成績もまずまずである。しかし、タラレバになるが、例えば佐藤が継続的に出場していたならば勝点を4ではなく5もしくは6に伸ばせ、更に言えば9獲得できていたかもしれない。そう考えると今後の栃木SCにとって、怪我以上にファウルトラブルが順位の浮沈を左右する要素となるかもしれない。再度、フェアプレー精神の徹底を監督と選手には求めたい。

虎の子の1点を守り切りHonndaFCを退けた栃木SC。富山に乗り込み対ガイナーレ鳥取戦に続き、カターレとの「J2準加盟ダービー」に臨んだ。陣容はGK小針清允、DFは左から斎藤、鷲田雅一、川鍋、岡田、中盤はダブルボランチを落合と鴨志田が組み、左ワイドに向、右ワイドに高安亮介が配され、上野と松田が2トップに据えられた。

富山に拠点を置くアローズ北陸とYKK APの統合が発表されたのは、昨年9月のことだった。青天の霹靂とは、まさにこのことだろう。県サッカー協会主導で成された合併。スムーズに準加盟の権利を勝ち取り、初代監督にはYKKを率いていた楚輪博氏が就いた。昨季、優勝をさらった佐川急便東京と大阪の連合チーム(旧・佐川急便SC)に匹敵する戦力を有し優勝候補に挙がるも、ここまで12戦して5勝4敗3分けと中位に甘んじているのが現状である。メンバーを固定したのは栃木SC戦が今季初といったところに、「融合」を掲げるチームの模索と苦悩が透けて見える。

基本的な戦術に大差はなかった。2トップを軸にサイドから攻撃を繰り出す。前半の序盤、栃木SCは右の高安にボールを集める。カターレは長谷川満をターゲットにしながら松下和磨を背後に走らせた。拮抗した展開ながら幾分か優位に立っていた栃木SCであるが、左ワイドで初先発の向が機能不全に陥り、上野と松田へのボールの収まりが次第に悪くなるとペースが乱れる。長谷川がミドルを飛ばした30分あたりからカターレが流れを掴んだ。ボールを繋ぐ、または蹴る。使い分けの巧さで勝り、立て続けにゴールを脅かした。渡辺誠はCKのリバウンドから、松下は西野誠のロークロスからのヒールシュートに加えて、ロスタイムに朝日大輔のスルーパスから裏を突いた。シュートミスに救われ、ゴールライン上での上野のクリアにGK小針の捨て身のブロック。窮地を脱した栃木SCは、鴨志田のシュート1本に抑え込まれる。

0―0で迎えた後半。蓋をされていたサイドでの攻防で高安がイニシアチブを握れるようになる。次々と敵陣でFKを得るが、好機に結び付けられない。逆にハイボールから長谷川がフリックし、途中交代の石田英之に決定的なシュートを浴びた。が、GK小針が横っ飛びで弾き出す。難を逃れると深澤と横山聡を送り出して形勢を逆転しにかかる。だが、「流れは悪くなかった」と言うものの、「ポゼッションしていれば、落ち着いてゲームを運べたかもしれない。前へ急いでしまった」と高安。縦方向へばかりボールを動かしたことで、変化に乏しかった。尽く前線へ供給したボールを跳ね返される。29分には石田のバックヘッドから肝を冷やされる。驚異的な反応でGK小針がかき出すも、スタンドの大歓声に背中を押されたカターレの攻勢は続く。ゴール前で石田は危険な香りを漂わせた。

終盤に差し掛かると互いに中盤が間延びし、撃ち合いの様相が色濃くなる。圧を強めてきた相手の反動を利用してカウンターを打ち込みたかったが、しかし機会が巡ってくるも栃木SCは連携を欠いたことで自ら潰してしまう。勝点3を狙って送り込まれた稲葉久人は勝負所を見誤った。ゴールネットは揺れず。スコアレスでタイムアップとなった。

「アウェーの成績が悪いので流れを変えようと。立ち上がりは悪くなかったが、その勢いのまま点を取って攻め切る力強さが足りなかった」(上野)

アウェーでの連敗は2で止まるも、記録したシュート数はたったの3本。勝点1を分け合ったというより、辛くも手に入れたと表現する方が適切だろう。守備陣は奮闘するも、攻撃陣は沈黙したままだった。組し易い相手ではなかったが、お粗末なゲーム。それでも、柱谷幸一監督は前向きだ。

「失点0は大きい。悠介が戻ってくるので守備が安定していれば、攻撃面でパワーが出せる」

次節の相手は昨季の王者・SAGAWA SHIGA FCである。勝利をもぎ取り、拾った勝点1の価値を高めたい。 そして、勝ち切れなかった鬱憤を晴らすように果敢な、高揚感を得られるようなサッカーを披露して欲しい。

戦評:対HonndaFC戦@栃木SC通信

2008年5月19日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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柱谷幸一監督の指示は至ってシンプルだった。

「動け」

出場停止が解けない佐藤悠介に代わり、左ワイドに配されたのは石舘靖樹。元々はワイドでプレーさせることを考えていたが、佐藤の獲得に成功、シーズン前に負った怪我による出遅れが重なり、開幕から負担の少ないFWでの起用が続いた。2ゴールの結果を残すが、ここ数試合は鳴りを潜めていた。佐藤を欠き、松田正俊のコンディションが上向いたことで、「ここはひとつ使ってみるチャンス」と先発のお鉢が回ってきた。

感覚を重んじる石舘には、一言で事足りた。小難しい説明など不要。

「サイドに張ってばかりいないで中央、右、ボランチの位置まで下がる。とにかく動こう、と」

指揮官の言葉を石舘は、そう解釈した。上下左右に、骨惜しみなく動き回った。持ち場に囚われず、状況に応じた適切なポジションを取る。そのことが結果的に貴重な決勝弾として実を結んだ。カウンターが発動する際、石舘はゴールを狙える位置に構えていた。

「周りが読めないプレー。あいつの良さが出た。あいつらしいゴールだった」

愛弟子のアグレッシブで予測不能なプレーに、柱谷監督は珍しく相好を崩し、手放しで褒めちぎった。

「主導権を握られた。石舘選手に居られたことで運動量を強いられた」

HondaFC(以下、ホンダ)石橋眞和監督は、ストロングポイントのひとつである右サイドバックの堀切良輔を途中で下げた一因に、石舘の存在を挙げた。球際に加えて、空中戦でも絶対的な強さを発揮。サイドでの綱引きを制したことで、少しずつ堀切のスタミナを削り取り、ピッチ外へと追い遣った。昨季の対戦時、1ゴール1アシストと煮え湯を飲まされた相手を封じ込める。ゴールと同等、或いはそれ以上の価値を有する仕事を果たした。スタートからの起用に応え、勝率をグンと上げた。


前節、横河武蔵野FCとの決戦に敗れた栃木SC。連敗を回避するために若干メンバーを入れ替え、強豪のホンダ戦に挑んだ。スタメンはGK小針清允、4バックは左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田佑樹、中盤はダブルボランチに落合正幸と初先発の鴨志田誉、左ワイドに石舘、右ワイドに高安亮介、上野優作と松田が2トップを組んだ。

開幕戦の躓きなどに動じない。じわじわと勝点を積み重ね、当然のように上位へ顔を出してきたホンダ。4―3―3の布陣をしいた。

右から入ったボールを鈴木弘大がシュート。枠を反れるが開始1分と満たない時間に肝を冷やされる。5分にも再び鈴木にシュートを浴びる。この窮地を抜群の反射神経でGK小針が凌ぐと、サイドチェンジを利し、栃木SCは次第にサイドから圧力を強める。7分、石舘の左クロスから上野が右足を伸ばしてダイレクトで合わせた。

対するホンダは序盤から多用したショートパスでの打開を繰り返す。そこへドリブルからのシュートも織り交ぜ、果敢にゴールへと襲い掛かった。カットインから牧野泰直、CKのセカンドボールから増田勝文、ドリブル突破から堀切に鈴木と、数多の好機をこしらえる。枠内にきっちり飛ばすも、GK小針が立ちはだかった。尽く弾き出されてしまう。

ホンダのアタッキングサッカーに困惑するも、後手を踏んでいたわけではない栃木SCは、好守を連発したGK小針を起点にゴールに迫る。16分、自陣ゴール前からのFKを石舘が頭ですらし、反応した上野がスライディングシュート。GK中村元の伸ばした手先を通過し、ゴールへ吸い込まれるも判定はノーゴール(オフサイドか)。38分にGK小針から鴨志田と渡り、石舘が胸トラップから反転シュートも吹かしてしまう。逸機するものの攻守の切り替えは速く、ゴールへの道筋は明確に描かれていた。

後半頭に川鍋アウト。田村仁崇がDFラインに入る。「ボールへのアプローチ後、しっかり選手に付こう」とハーフタイムに確認した栃木SC。些かルーズだった人への寄せが強まる。素早いプレスで細かなパスを寸断。トップへのボールも遮断した。落合と鴨志田がバイタルエリアをしっかり閉め、「最初は焦った」という田村も落ち着き払ったプレーで攻撃を跳ね返した。

「ポゼッションしてくるが前に人数がかかっているぶん、全体のバランスがよくない」と読んでいた柱谷監督。ホンダの弱点をえぐった。カウンターから攻め入られ新田純也に絶好のクロスが供給される。しかし、新田が空振りすると逆にカウンターを打ち返す。前線に残っていた石舘はボールを受けると、そのままドリブルで持ち込み左足を一振り。豪快に突き刺した。「前半、外していたので、相当嬉しかった」と満面の笑みを浮かべた。後半14分、先手を得る。

流動性を失ったホンダは、栃木SCが構築した守備ブロックを前に手詰まりに陥る。攻め手が見出せない。それでも、粘っこさが身上だけあり、ロスタイムに右クロスから途中交代の早坂良太がヘディングシュートを放つ。が、ボールをとらえきれなかった。

スコアは動かず。1―0で逃げ切り、連敗は免れた。上に位置したホンダを一蹴し、ファジアーノ岡山が足踏みしたことで、4位から2位に浮上した。

佐藤不在で勝点3を獲得できたことは殊の外、大きかった。

「出られない選手が普段出ている選手以上のパフォーマンスをした。次に繋がる」

柱谷監督は鴨志田、石舘の他に高安と田村が期待に違わぬプレーをしてくれたことでボトムアップが図れた、と手応えを感じていた。主力が抜けたことでチームが揺らぐようでは、ゲームのクオリティが落ちるようでは、リーグ制覇は望めない。

求められるのはチーム戦術を理解し、遂行できる力の他に、個人として何をもたらすことができるのか、ということである。ホンダ戦で言えば、石舘は佐藤では難しい状況からゴールを決め、鴨志田は向慎一以上の活動量を見せ付けた。単に穴を埋めるという発想ではなく、他人が持っていない要素、特性でどれだけ勝負できるのかが重要である。個々の特長がチームに付け加えられれば、自ずと厚みは増していく。

JFL前期第12節 栃木SC1―0HonndaFC 観衆4786人 @栃木県グリーンスタジアム

〈栃木SC〉交代:川鍋(→田村)、高安(深澤幸次)、石舘(→久保田勲)

〈HonndaFC〉GK中村元、DF堀切良輔(→桶田龍)、安部裕之、石井雅之、牧野泰直、MF糸数昌太、柴田潤一郎、増田勝文(→吉村和鉱)、FW鵜飼宏長(→早坂良太)、新田純也、鈴木弘大
  

戦評:対横河武蔵野FC戦@栃木SC通信

2008年5月11日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

takayasu.JPG

敗軍の将は言葉を並べるも悲しいかな、虚勢を張っているようにしか映らなかった。

「ゲーム内容は全く問題ない。決定機は数多くあった。そこを決めきれず、ワンチャンスを決められてしまい負けた。悲観する内容ではない」

攻守において「悪いところは何もない」とも言い切った。果たして、真意なのだろうか。懐疑的にならざるを得ない。

前半、サイドから攻め入り、Pボックス付近までボールを運べていたのは事実である。思い描いていた攻撃のカタチが作れていた。ただし、そこからのクロス、ラストパス、シュートの精度は低かった。相手にとって脅威でなければ、上手く対応されていたならば、例え崩す回数が多かったとしても意味はない。

サイド攻撃の軸となった高安亮介は言う。

「クロスを上げるも決定機になっていない。何もしていないと同じこと」

冷や汗をかかせることができなかったのだから、好機をこしらえられたとは言い難い。ゴールの気配が漂うプレーは皆無に等しかった。やはり、柱谷幸一監督のコメントは、強がりとしか受け取れない。

「後半の(残り)15分、20分はやりづらい印象を受けました。時間が少なくなるに連れて高さ、スピードにてこずった。それまで怖さはなかったです」

横河武蔵野FC(以下、横河)・依田博樹監督の総括である。こちらの方が的を射ており、正確に試合を分析している。つまり、ビハインドを背負い、スクランブル態勢に入るまでの時間帯、栃木SCの攻撃は迫力に乏しかったのである。「チャンスらしいチャンスはなかった」。横山聡も認めている。

千載一遇の好機を決めきれたか、否か。雌雄を決した一因ではあるが、要因ではないことは確かである。敗因はそれほど単純なものではなかった。

上位決戦を前に暗雲が垂れ込める。チーム最多の7ゴールをマーク、精神的支柱でもある佐藤悠介が3試合の出場停止を科される。審判への度重なる侮辱的行為が自らの首を絞めた。フェアプレーを重んじるチームにあり、許され難い大罪を犯してしまう。開幕から定位置を確保していた向慎一も欠いた栃木SCは、核となる選手不在の状況をどう乗り切るか。試練の時を迎えた。陣容はGK小針清允、4バックは左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田佑樹、ダブルボランチに落合正幸と久保田勲、左ワイドに深澤幸次、右ワイドには故障明けの高安、2トップには上野優作と横山聡と好調な二人が据えられた。

10試合を消化して失点は僅かに7とリーグ最小を誇る横河は、無敗でリーグ2位に付ける。勝点差1で追う3位の栃木SCは直接対決を制し、当面のライバルを上回り引き離す機会を逃すわけにはいかない。

奪ったボールを素早くトップへ入れる。試合開始前から落ちていた雨。スリッピーなコンディションを考慮した、互いの試合の進め方に差異はなかった。栃木SCは上野と横山聡へのボールの収まりが幾分か勝ったことで優位に立つ。ポゼッションを徐々に高め、右ワイドの高安を生かして圧を掛けた。これに対し横河はブロックを構築して跳ね返しては、セカンドボールを拾ってから鋭利なカウンターを繰り出した。高安と岡田の右からの攻略は効果的だったものの、クロスの質に乏しく26分に横山聡が放ったヘディングシュートは枠を外れた。

「シンプルにPボックスの横を突いていこう」

依田監督の策がはまった。39分、カウンターから左サイドに起点を設け、折り返したボールを中央から林俊介が豪快に叩き込んだ。帰陣するもゴール側に寄ってしまった栃木SCは、走り込んできた林を捕まえきれなかった。枚数が足りていただけに、サイドのポケットに侵入され、警戒していたカタチから失点を喫したことを川鍋は悔いた。

「長いボールを蹴る時間が早かった。前半のようにしっかり繋いでサイドからチャンスメイクする。失点したことでバタついた。長いボール、長いボールと単調になった」

後半をそう振り返ったのは落合。高安も同調し、ボールが頭を越えることが多々あったことで、スピードと突破力を生かせなかった。サイドからの侵略が困難となる。パスを回しながら、ロングボールを織り交ぜる発想を失う。

拙攻を重ね、活路を見出せない栃木SCは、横山聡と深澤に代えて石舘靖樹と松田正俊を投入。てこ入れを図る。早速、FKから松田が競り落としたボールを川鍋がボレーシュート、石舘が左からカットインして右足でシュートを打つ。立て続けにゴールに迫るも、勢いは持続しなかった。パタリと止む。逆に林にあわやのループシュートを浴びてしまう。クロスバーに救われ難を逃れると、稲葉久人を送り込む。前に攻撃的な選手を揃えるが、戻りの早い横河にカウンターの芽を摘まれ、中央を固められたことで手詰まりに陥った。35分、稲葉がGK金子芳裕に詰め寄る。慌ててクリアしたボールから松田がゴールを狙うも、GK正面に飛んでしまう。同点機を逸する。万事休す。

その後、リスクを負ってパワープレーに移行するも、サイドに叩いたボールが供給されるまでに時間を要し、横河もDFを4枚から5枚に増やしたことで水泡に帰す。依田監督は高さ対策を十分に練っていたことに加えて、2年間も勝てなかったことが高いモチベーションに繋がり一体感が生じ、例年はゴールデンウイーク中も通常通り夜に行われるトレーニングを昼に変更したことが奏功したと話した。

アウェー2連敗。連続ゴールは10試合でストップ。縮めるはずの勝点は4に拡がってしまった。「脱・佐藤」は成し得なかった。

「自分自身を見詰め直す。誰かに『こうして欲しい』と思うよりも、何が出来るのかをしっかり自分で考える」(落合)

次戦は門番・ホンダFCとの大一番が控えている。個々が強い危機感を持って臨まなければ、再び涙を呑むことは必至。佐藤と向が抜けたことに動じるのではなく、ポジションを奪う絶好機と捉えるポジティブで野心に満ちた思いをピッチで表現しなければらならない。

気持ちで負けることは栃木SCに在籍している以上、免除されない。

JFL前期第11節 横河武蔵野FC0―1栃木SC 観衆883人 @武蔵野市立武蔵野陸上競技場

〈横河武蔵野FC〉GK金子芳裕、DF金守貴紀、小山大樹、石川清司、MF林俊介、太田康介、安藤利典、池上寿之(→岡正道)、FW高橋周大(→立花由貴)、金子剛(→加藤正樹)

〈栃木SC〉横山聡(→松田)、深澤(→石舘)、高安(→稲葉)
  

戦評:対MIOびわこ草津戦@栃木SC通信

2008年5月 7日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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2試合続けての4ゴール。意識的に取り組み始めた攻撃的なスタイルが、前傾姿勢が結果として実を結んでいる。「前節から前掛かりに行こうと。その効果が出ている」。柱谷幸一監督は攻撃面に関して手応えを口にする一方で、満ち足りない思いをストレートに表現した。

「4点を取ったことは評価してもいいが、ルーズなゲームは好きではない」

苦言を呈したのはゲーム展開だった。先制パンチを食らうも4発を打ち返し、相手に致命傷を負わせる。雌雄は大方、決したかに思われたが、1点を返されると途端に浮き足立つ。退場者を出すと更に錯乱し、もう1点を献上してしまう。リードはみるみる縮まる。4―3で逃げ切ることは出来たが、安定感を欠いた「粗雑なゲーム」となってしまった。

沈着冷静に試合を押し進められなかった要素はふんだんにあった。刺すような強い日差し、過密日程、大勝した後のゲーム、など。しかし、柱谷監督が感じ取った不甲斐なさの原因は、先に挙げたことに起因する気の緩みではなく、「研ぎ澄まされた神経」、つまりアラートな(機敏な。警戒心の強い)状態を保持できなかったことにある。

「(相手が)ボールを持っている時に足が揃っている。いつでも動ける状態にない。足が速い、遅いではなく、メンタル的な部分の問題」

喫した3失点、全てに該当するのが準備不足である。危機感、張り詰めた緊張感を身に纏いプレーしていれば、対応は困難ではなかった、と考えている。「難しいが」と前置きし、上野優作も「90分、戦い続ける」ことの重要性を説き、それが欠如していると指摘した。レベルが上がれば一瞬、集中力が途切れた所を付け狙われる。判断力以前に状況把握能力を養わなければ、強靭な精神力を身に付けなれば、チーム力はアップせず、次のステージへと進めない。勝者になるためには、様々な要素が求められる。

栃木SCは連敗を逃れ、4―0とジェフリザーブズを退けた。余勢を駆ってホームで2連勝を飾りたいところ。2トップに上野と横山聡、左ワイドに佐藤悠介、右ワイドに深澤幸次、中盤の底に落合正幸と向慎一、4バックは左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田佑樹、GK小針清允の布陣。

JFL初参戦のMIOびわこ草津(以下、ミーオ)。昇格の立役者である戸塚哲也前監督(現・FC町田ゼルビア)に代わり平岡直起氏が就任。「人とボールが動くサッカー」を標榜し、中位に位置している。フォーメーションは4―4―2。

「最初の15分はロングボール主体に」(平岡監督)。ミーオの思惑にはまる。右サイド裏のスペースへ抜け出た幸山聡太がグラウンダーのクロスを供給。これを川鍋がクリアに戸惑う間に背後からアランに突っつかれ、ゴールを許す。前半1分の出来事だった。

「試合に入り込む前の失点。リセットできる」

先手を奪われるも佐藤の言葉通り、4分にGK田中剛の正面を突くも深澤が放ったダイビングヘッドを口火に反撃開始。右サイドの岡田を軸に攻め立てる。その岡田が獲得したCKから同点弾が生まれる。倒れ込みながら上野が頭で合わせてネットを揺らす。ミスをした川鍋のニアサイドにDFを釣る動きは効果的だった。失いかけた自信を隠れた好プレーで取り戻し、タイトなマークで尽く2トップを潰した。

両チームともコンパクトに、スペースを付き合うも、試合を振り出しに戻した栃木SCに流れは傾く。トップに引っ張られるように、2列目、3列目の選手が次々とゴール前に顔を出す。リスクを冒したことが奏功し、逆転弾が生まれる。佐藤のスルーパスに向が飛び出しシュート。GKの好守に阻止されるも、弾かれたボールは横山聡の元へと転がり、左足で冷静に沈める。ゴール後のお約束、進化したゴリダンスの余韻が冷めやらぬ内に、3点目が決まる。FKから鷲田がゴール前に放り込んだボールを上野が頭に当てると、ボールは目測を誤ったGKを越えて無人のゴールへと吸い込まれた。

前半終了間際、冨田晋矢にクロスバー直撃のFKでゴールを脅かされたものの、お返しとばかりに後半8分、佐藤が左足一閃。Pボックス外、やや右よりの位置からFKを直接突き刺した。怒涛の4連続ゴールで勝点3は確約されたはずだったが、FKからゴール前の混戦を浦島貴大に制されると雲行きが怪しくなる。向が“不可解な”一発レッドで追い出された5分後、今度はCKを完璧に石澤典明に叩き込まれる。差は僅かに1点。

「自分達で(ゲームを)難しくした」

落合正幸は堅守速攻のゲームプランが積極性を殺ぎ、それゆえにゴールへの推進力が失われ手綱を明け渡した、と話した。数的不利に陥るも中盤とDFラインが綺麗な2ラインを形成し、守り切る策は崩壊した。途中交代の石舘靖樹がスピードに突進力と前線で奮闘するも、攻撃的なカードを切ったミーオの圧は退場者を出しても弱まらない。ポゼッションで凌駕され、押し込められる。タイムアップまでに3度も決定機を作られた。だが、絶体絶命の危機をGK小針の俊敏な反応と、内林広高のシュート精度の低さに救われる。辛うじて勝利を手にした幕切れに後味の悪さだけが残った。

「勝ててよかった。それだけ。JFLで優勝するなど口に出来ない」

口を衝いて出るのは反省の弁ばかりだった。柱谷監督は横川武蔵野FCとの上位決戦を前に、「反省し、『強いチームとはどういうチームか』を考えたい」と、限られた時間の中で選手と膝を突き合わせて話し合う必要性を訴えた。

「手堅く守り少ないチャンスを決める。もう一度、自分達の形を取り戻す」

横山聡は原点を見詰め直すべきだと、既にひとつの答えを提示している。

3日後、どのような解答が出されるのだろうか。

JFL前期第10節 栃木SC4―3MIOびわこ草津 @栃木県グリーンスタジアム 観衆4317人

〈栃木SC〉交代:上野(→石舘)、横山聡(→久保田勲)、佐藤(→田村仁崇)

〈MIOびわこ草津〉GK田中剛、DF浦島貴大(→木島徹也)、田尾知己、石沢典明、大瀧直也、MF金東秀、若林令緒、冨田晋矢、壽建志(→内林広高)、幸山聡太(→山本正男)、アラン
 
  

戦評:対ジェフリザーブズ戦@栃木SC通信

2008年5月 3日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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試合序盤、悪質なファールにより小林成光は左膝を痛める。ピッチに戻ることは困難なほどの状態だった。柱谷幸一監督の頭の中には選択肢が2つ用意されていた。ひとつはボランチの向慎一を右ワイドに回し、代わりに久保田勲を投入する。もうひとつは小林のポジションへ、そのまま深澤幸次を入れる。指揮官が選んだのは後者だった。中盤の守備が安定したいたことが、攻撃的な深澤を送り出す決め手となった。結果として、この交代が奏功する。

「深澤選手が交代で入ってから嫌だな、と。中盤とDFラインの間でセカンドボールを拾われ、流れを持っていかれてしまった。両チームを通じて一番のストロングポイントになっていた」

ジェフリザーブズ・越後和男監督は賛辞を惜しまなかった。敵将から最大級の褒め言葉をもらった深澤。突然のアクシデントにより巡ってきた機会にも動じる様子はなく、すんなりと試合に溶け込めた。交代の時間帯がアップからそれほど経っておらず体が温まっていたこと、「もしかしたら行くかも」と心の準備が出来ていたことが小さくなかった。

「中でプレーしろ。守備の時だけ右に戻ればいいから」と柱谷監督から指示を受けた深澤は、ボールに噛み付いた。果敢な姿勢が推進力を働かせることに拍車を掛ける。「FWの近くでプレーすればゴールを取れる。それを意識しました」。緻密なスカウティングが実を結んだ。追加点となるゴールを叩き込む。「狙い通り?そうですね」。深澤は照れ笑いを浮かべた。

怪我の功名。傷を負った小林には気の毒だが、深澤は相手にとって厄介な存在となり、勝利に一役買う。この日のテーマであった「アグレッシブさ」を見事に体現した。

敗戦の傷跡は残った。週明け、重い空気が漂ったという。しかし、日が経つに連れて、徐々にモチベーションは回復し、集中したトレーニングを積むことができ、気持ちの切り替えが図れた。攻撃面では連動性、決めきる力。守備面ではセットプレーへの対応。浮き彫りになった課題が明確だったからこそ、次のゲームへ向けて整理ができ、万全の準備が行えた。連敗は避けたい栃木SCの布陣は、GK小針清允、DFは左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田佑樹、ダブルボランチに向と落合正幸、左ワイドに佐藤悠介、右ワイドに小林の中盤、2トップは上野優作と横山聡でスタートした。

苦杯を舐めた流通経済大学に負けず劣らず、ジェフのスタメンも平均年齢が低かった。10代の選手が4人も名を連ね、控えの金井涼太に至っては15歳。2戦続けて若さに押し切られるわけにはいかない。

開始3分、ジェフのFKを跳ね返すとカウンターが発動する。向から横山聡へとスムーズにボールが渡った。これを足掛かりに、栃木SCは前傾姿勢をとる。2トップは背後から上手くボールを誘引し、向は積極的な攻撃参加を繰り返す。クロスに対するPボックス内の人数も揃っていた。リスクを背負うことを覚悟して前に出た。

小林が足を痛めて早々に退場するも大勢に影響はなく、14分に岡田の右クロスから横山聡がダイビングヘッドを突き刺す。ついに、待望のゴリダンスを披露する時がやってきた。陽気な一面を見せた一方で、横山聡は焦りやプレッシャーを感じたことを吐露した。「ラストチャンスという思いがあった」。悲壮感が今季初ゴールを引き寄せた。

前節、不足していたゴールへの意識が先制点を呼び込んだ。守備陣も反省を生かす。ラインを高めに保ち、全体を圧縮する。「クサビを潰せた。足元のボールを跳ね返せたことで、自分達のリズムに持っていけた」とは川鍋。ショートパスを軸にしたジェフに思うような攻撃をさせなかった。窮地はカットインから朴宗眞にシュートを打たれたシーンのみ。

先手を取り、一息ついた栃木SCだが、上野と横山聡がゴールに襲い掛かり、40分に追加点を奪う。佐藤のクサビを受けた上野がスルーパスを通す。反応したのは深澤。GK瀧本雄太を交わし、無人のゴールへ流し込んだ。その後、向のロングシュートが枠を捕らえるも、GKとクロスバーに阻まれる。決定的な3点目を得られなかったが、イニシアチブを握り続けたまま45分を折り返す。

後半頭から圧を強めるジェフに対し、耐え凌ぐ時間帯が続く。高田健吾のロングシュート、乾達朗の至近距離からのシュートに肝を冷やされるも、GK小針が決死のセーブで難を逃れた。

「決めるべきところで決めきれなかった」

越後監督は2つの絶好機を逸したことに触れ、決まっていれば状況は変わっていたかもしれない、と嘆いた。

打ち止めのジェフと交代するように、今度は栃木SCが攻勢に回る。佐藤のシュートをお膳立てし、自らはジャンピングボレーを放つなど向の機動力は落ちなかった。対流通経済戦、不本意な途中交代がプラスに作用した。リードを保持していても守りに入らなかった栃木SCは、39分に再び岡田と横山聡のコンビでゴールネットを揺らし、CKを川鍋が頭でねじ込みゴールショーを締め括った。個々に芽生えた危機感が望外の4ゴールを生み出し、勝点3を掴み取った。

「1敗した後の1勝は大きいが、34分の1に過ぎない。何も達成していない。次が大事」

結果に内容が初めて伴った今季のベストゲームにも、落合は安堵することはなかった。むしろ、経験則から快勝後の次のゲームは「だらける」可能性があることを指摘し、気を引き締めて臨むべきだと説いた。

慢心や驕りが入り込む余地はない。

JFL前期第9節 栃木SC4―0ジェフリザーブズ 観衆4102人 @栃木県総合運動公園陸上競技場

〈栃木SC〉小林(→深澤)、上野(→松田正俊)佐藤(→久保田勲)

〈ジェフリザーブズ〉GK瀧本雄太、DF山中誠晃、田中淳也、川上典洋、鳥養祐矢、MF宇野勇気、高田健吾、蓮沼剛、乾達朗、FW朴宗眞、熊谷智哉

戦評:対流通経済大学戦@栃木SC通信

2008年4月28日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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勝負の分水嶺は、後半の立ち上がり10分間だった。

「かなりチャンスを作れていた。あそこの時間帯で決め切れていれば・・・・・・。今日(のポイント)はあそこでしょうね」(柱谷幸一監督)

厳しいマークに晒されていた佐藤悠介だが、一時的にプレスが緩むと、起点となり好機を演出した。後半2分、小林成光にラストパスを通したのを契機に、スペースへ飛び出した石舘靖樹へ立て続けに良質なパスを供給する。サイドチェンジのボールを受けた9分、スルーパスに反応した10分、石舘はゴールへ迫る。しかし、2度の決定機をゴールに結び付けることは叶わなかった。右サイドから切れ込んで放ったシュートはクロスバーに嫌われ、フリーで打ったシュートは僅かに枠を反れる。

絶好機を逸してから間もなく、あっさりとゴールを割られた。先手を取られたのは今季初。策を講じるも、困惑した状態では明確な解答を導き出せるはずがない。傷口を広げ、敗北を味わうことに。1点が重く圧し掛かった。

辛勝も勝点を取りこぼした次の試合を、きっちり勝利で飾った栃木SC。コンディション不良の斎藤雅也、足首を捻挫している落合正幸が外れたスタメンには、若干の変更があった。GK小針清允、4バックは左から入江利和、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田佑樹、ダブルボランチに久保田勲と向慎一、左ワイドに佐藤、右ワイドに小林を配し、上野優作と石舘が2トップを形成した。

華奢な選手が並ぶ。11人の平均年齢は18.9歳。流通経済大学は入学したての1年生を主体にメンバーを組んできた。

素早く人とボールにアプローチを掛けたのは流通経済。前線から骨惜しみせず、追っ掛け回した。学生特有の若さを前面に押し出す。これを個人技で栃木SCはいなし、パスを繋ぎながら攻撃を組み立てるも、徐々に失速する。徹底的に佐藤を潰されたことが響いた。2トップに入れたボールをサポートに回った向が拾い、岡田と小林は右サイドを活性化させるも、決定打を繰り出せない。それどころかボールの循環は滞り、トップにボールを預けるだけの単調な攻撃に陥ってしまう。拙攻を重ねる。

流通経済は向と久保田、更にはDFラインとのギクシャクした関係性を見抜く。バイタルエリアを利し、ゴールが視野に入れば積極的にシュートを打ち込んだ。冷やりとさせられるシーンが幾つかあったが、入江のカバーリングなどで難を逃れる。攻め手に乏しい栃木SCは小林がドリブルからフィニュシュに至るも、GK増田卓也に簡単に弾かれてしまう。極端に悪い内容ではなかったが、局面における争いで優位に立てなかったことで、流れを掴みきれなかった。

消化不良の45分を終えて迎えた後半。鳴り潜めていた佐藤を軸に攻め立てる。小林、向、石舘がゴールを脅かすも、巡ってきた得点機を生かせなかった。すると11分、ロングスローが抜けてきたところを沢口泉がボレーシュート。ゴールはあまりにも呆気なく決まる。「勿体ない失点の仕方をするとゲームの流れが掴めなくなる」と柱谷監督。横山聡、深澤幸次を投入。中盤をダイヤモンド型にシフトし、反撃態勢を整えるも、メッセージは上手く伝わらなかった。意思統一が図れない間に、追加点を奪われる。FKをダイレクトで山村和也に合わされる。「1、2点とも先に相手に触られてしまった。足が動いていなかった。最初の段階で跳ね返せていない」と川鍋は失点を振り返り、唇を噛んだ。

2点のビハインドを負った栃木SCは松田正俊を送り込み、3トップにしてパワープレーに切り替える。狙ったとおり松田が競り、上野が丁寧に落としたボールを岡田が蹴り込むが、至近距離にもかかわらずシュートは大きく枠を越えていった。ロスタイムにカウンターから岡田のパスに抜け出した横山がシュート。一旦はGKに防がれるも詰めていた小林が押し込んで1点を返すも、焼け石に水だった。流通経済は1点を失うが、鋭利なカウンターとポゼッションでしたたかに試合を運び、逃げ切った。実績と経験値で勝る選手を擁する栃木SCは手玉に取られた。土をつけられ、勝点1すら拾えず、首位から転がり落ちた。

リスクを背負って戦った残り15分。「1点を返せたことは次に繋がる」と柱谷監督は話す一方で、アンバランスだったにしてもカウンターを浴び過ぎた試合の進め方に対して不満を漏らした。

「大観衆ならば指示は届かない。自分達で判断しなければならない」

再び同様の展開になった時、拙さが露見しないよう猛省し、修正を施す必要性を強く訴えた。指示を仰ぐのではなく、個々人が状況に応じて適切な判断をする。欠落している能力を身に付けなければならない。指揮官は、そう考えている。

JFL前期第8節 流通経済大学2―1栃木SC 観衆1073人 @カシマサッカースタジアム

〈流通経済大学〉GK増田卓也、DF増田智宏、吉渓亘、山村和也、比嘉祐介、MF細貝竜太、関戸健二(→小島聖矢)、中里崇宏、村瀬勇太、FW沢口泉(→名雪遼平)、木内将智

〈栃木SC〉石舘(→横山聡)、向(→深澤)、佐藤(→松田)
  

戦評:対ソニー仙台戦@栃木SC通信

2008年4月21日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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アウェーで勝点1を得る。最善ではなくとも次善の結果。考えようによっては悪くない。ただし、問題なのは、勝点1の中身である。リードを許した状態で追い付いたならば、ドローに持ち込めたならば、連勝が断たれたとしても、流れが極端に変わることはない。他方、逆の展開。つまり、追い付かれる、しかも土壇場、ラストワンプレーだったとしたら、精神的なダメージは少なからず残る。捉え方もまた、違ったものとなる。

前期第6節、対佐川印刷SC戦、栃木SCは試合終了寸前の時間帯に勝点2を取り逃した。試合後、柱谷幸一監督をはじめ、選手達が口をそろえたのが「次のゲームの重要性」である。勝利を掴めなかった次のゲームを如何に戦うか。焦点はその一点に絞られた。

状況は恐ろしいほどに酷似する。1点のリード、数的有利、図らずも前節と全く同じ舞台が整えられた。試練はいきなり、襲ってきた。守り切れるか、或いは再び同点とされてしまうのか。意識はマイナス方向に作用し、悪夢が脳裏を駆け巡ってもおかしくはない場面でも、川鍋良祐は「やられるイメージはなかった」と言う。パニックになることはなかった。猶予として与えられた今週1週間、眼前の試合だけに集中したトレーニングを積めた手応えが自信となり、支えとなったからだ。気合を入れてトレーニングに臨んだ選手の姿勢が勝点3として結実した、と柱谷監督も述べていた。

連勝が5で途切れ、首位を明け渡した栃木SCだが、継続中であるホームでの連勝を途絶えさせるわけにはいかない。今季初開催となった足利市で狙うは、勝点3のみ。スタメンは2トップに上野優作と石舘靖樹、中盤は左ワイドに佐藤悠介、右ワイドに小林成光、落合正幸と向慎一がダブルボランチを組み、4バックは左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋、岡田佑樹、ゴールマウスを守るのは小針清允。

JFLトップスコアラー、9ゴールを叩き出している大久保剛志を累積警告により欠いたソニー仙台FCも、4―4―2を採用した。

立ち上がり、川鍋とGK小針の連携ミスに冷や汗をかくも、前半4分にGK小針→小林→落合→小林とボールが滑らかに繋がり、カウンターが炸裂。エンジンが掛かり始めた矢先だった。中盤の底からゴール前に顔を出し、好機に絡んだ落合がアクシデントに見舞われる。右足首を痛め、負傷退場。代わりに久保田勲が入る。慎重さが要求される序盤に攻守の要を失い、更にピッチコンディションも芳しくない。落合の代役である久保田は、違和感なく試合に溶け込むが、リスクを背負わないことにプライオリティを置いた。

攻撃面ではポゼッションを放棄し、前にボールを預けるカタチを選択した。落合が抜けたことでバランスが保たれていない、と読んだ向は周囲と話し合い、「できるだけ失点しないように」気を配った。本音では前からアグレッシブにプレスを掛けたかったが、ラインが付いて来なかったことで、無理をして潰しに行くことは避けた。徐々に安定感を取り戻した守備陣。トップがサイドに流れる間に、2列目がフォローに回る仙台の攻撃に対処する。窮地は21分、大瀧義史のアーリークロスを前田和之に頭で合わされたシーンだけだった。押し気味に試合を運ぶ栃木SCだが、こちらも決定機は1度きり。岡田と小林で破った右サイドからのロークロスを上野がボレーシュート。DFに触れたことで枠を反れるも、良質なサイドアタックからフィニッシュに持ち込めた。

後半の頭、高野和隆、前田にゴールを脅かされる。拙い入りも、上野のポストプレーから向がミドルを放ち、松田正俊が投入されると、ターゲットが増え、流れを引き戻す。仙台が3トップにシフトしてから程無く、栃木SCはゴールをこじ開けた。右から岡田がゴール前に供給したロブをGK金子進と松田が競り、ルーズになったボールに反応したのは上野。前半に逸機したことで、「今日も(シュートが)入らないのかな」と思ったそうだが、泥臭くねじ込んだ。待望の今季初ゴールをマーク。その後、松田も斎藤の絶妙なクロスからゴールを窺うものの、ヘディングシュートはGK正面に飛んでしまった。

自陣での不要なファールで相手に譲ったFKから立て続けに危機を招く。だが、GK小針、斎藤の身を挺した守備とサイドネットに救われる。前節同様の嫌な雰囲気に陥りそうなところでガラリと時局を好転させたのが、今季初めてピッチに立った深澤幸次だった。ガツガツと攻守でボールに絡んでは、短時間で存在感を示し、仙台の勢いを殺ぐことに成功した。

先例を繰り返さない。試合を振り出しに戻され、勝点2を引かれることはなかった。

「もし、内容が悪く試合を落とすと、流れが悪くなる。勝点3を取れたことは非常によかった」と柱谷監督は勝利の味を噛み締め、続けて「ゲームコントロールができて勝てたことは大きい。嫌な思いを吹っ切れた。勝ち切れたことで同じような展開になっても自信をもってやれる」と話した。

「真価が問われる」と銘打ち、自らにプレッシャーを掛けた一戦。内容は乏しかったかもしれないが、とにかく勝利できたことは、今後を考えれば小さくない。前回の反省を踏まえ、僅差のゲームをものにしたことで、チーム力は養われ、一回り成長することができた。勝点マイナス2という「高い授業料」を払ったことは、無駄骨とならなかった。

勝点3を獲得したことで、再び首位に立った。 

JFL前期第7節 栃木SC1―0ソニー仙台FC 観衆4073人 @足利市総合運動公園陸上競技場

〈栃木SC〉交代:落合(→久保田)、石舘(→松田)、佐藤(→深澤)

〈ソニー仙台FC〉GK金子進、DF元木数馬、谷池洋平、木村孝次、天羽良輔、MF今田傑、千葉雅人、花渕修平(→石原慎也)、大瀧義史(→大谷哲也)、FW前田和之(→麻生耕平)、高野和隆  

戦評:対佐川印刷SC戦@栃木SC通信

2008年4月14日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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悔恨の情に駆られないはずはない。ひとつのゲームの終わりが、次の戦いのスタートを意味するにしても。気持ちを切り替える作業が他人と比べて早くとも。どうしたって、連勝が5で止まり、勝点を2つ喪失したダメージは残る。それも勝利に手を掛けていた試合終了目前に失ったのだから、ショックは小さくない。

采配に関する柱谷幸一監督のニュアンスは、言葉を吐き出す毎に変化した。「全部勝ったら面白くない」。そうは言うものの、未練が透けて見えた。

後半ロスタイム直前、自陣Pボックス内における競り合いで左サイドバックの斎藤雅也が倒れる。今週、斎藤は打撲により別メニューで調整をしていた。足に不安を抱えながらピッチに立っていたことになる。残されたカードは1枚。痛んだ斎藤を下げ、赤井秀行を投入する。時間帯、戦況を考えても理に適ったカードの切り方だった。が、無常にも赤井が入ったサイドから同点弾を浴びてしまう。突破を許したのはフレッシュな赤井ではなく、疲労が見て取れた佐藤悠介だった。

実は斎藤のコンディションと同様に気掛かりだったのが佐藤の状態だった。久保田勲を左ワイドに。選択肢として頭にはあったが、佐藤は全12ゴール中9ゴールに絡んでいる。また、状況は2―1とリードしており、相手は1人少なかった。有利な条件が判断を躊躇わせたのかもしれない。途中で引っ込める決断は容易ではなかった。だが、代えるタイミングを逸したことが追い付かれる一因となってしまう。

「悠介のところに勲を入れる。それ以外に選択肢はなかった」

佐藤のポジションに赤井を据えることで守備的になることを恐れた。一方で、こうも言っている。

「振り切られたことを考えると、勲で対応していれば・・・・・・、赤井でもよかったのかもしれない」

選択肢を狭めることなく、柔軟な発想を持っていれば、失点は防げたかもしれない。その思いは強い。

難局を守備陣が耐え凌ぎ、数少ない好機を尽くゴールへ結び付け、アウェー2戦2勝。勝点3を得てきた必勝パターンは崩壊した。

昨季、4位以内。つまり、成績面におけるJ2昇格の条件が消滅したのが、後期第15節の佐川印刷SC戦の敗戦(1―2)だった。過去3年間の対戦成績も1勝3敗2分けと分が悪い。メンバーを大幅に入れ替えたことで苦手意識も払拭したかったのだが、思うに任せない。栃木SCの布陣はGK小針清允、4バックは左から斎藤、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田佑樹、落合正幸と向慎一がダブルボランチを組み、左ワイドに佐藤、右ワイドに小林成光、上野優作と石舘靖樹の2トップで臨んだ。

前節、初勝利を挙げた佐川印刷。昨季まで栃木SCに在籍していた片野寛理が4―4―2の右サイドバックで先発した。

全体をコンパクトにすることを心掛ける。中盤とDFラインの乖離を是正した栃木SC。前の試合の反省を生かす。やや蹴り合いに応じてしまった嫌いはあるものの、アウェーならばリスクを軽減すべきであり、戦い方としては間違っていなかった。背後に2トップを走らせてきた佐川印刷の攻撃にも動じない。ただし、守備に安定感はあったが、引き気味に構えたことで攻撃を犠牲にした。陣形を崩せず。互いに決め手を欠き、拮抗した展開が続く。

小林、石舘がPボックス内に侵入するなど、時折、期待感を抱かせるが決定機は演出できなかった。閉塞感が漂う中、石舘が倒されPKを獲得。これを佐藤が冷静に突き刺し、先制する。前節の対TDK SC戦と符合するゴールシーンだった。

「前半は慌てていた。ボールを回せるから高い位置で勝負できる」(片野)

ハーフタイムに微調整を施した佐川印刷。後半3分、試合を振り出しに戻す。野澤健一の右クロスをGK小針が弾くも、詰めていた町中大輔が押し込んだ。岡田の決死のカバーリングは実らなかった。

立ち上がり早々に失点を喫するも、すぐに突き放した。小林と向で右サイドを攻略。ファーサイドで上がってきたクロスを待ち構えていたのは佐藤だった。左足のダイレクトボレーはネットを激しく揺らした。佐藤がボレーを放ったのは2度目だった。後半1分、石舘のクロスを叩いていた。惜しくも枠を反れたが、感覚は掴んでいた。「逆サイドがフリーになる場面が多く、見えていた」とはアシストした向。綻びを突いた。

2点を取られても萎えない佐川印刷はバランスを度外視し、前傾姿勢を貫く。圧を強める。その攻撃を弾き返し、カウンターからリードを広げる。青写真は出来上がっていた。GK小針が好守を連発。クロスバーの助けを借りて危機を脱する。栃木SCには運も味方した。

ところが、である。前に厚みをもたらし、闘志を露にした佐川印刷の勢いは衰えを知らなかった。町中が2枚目のイエローカードで退場しても。じわりじわりと押し込められ劣性に回る。自陣に釘付けにされ、ロスタイムに被弾した。猪狩佑貴がゴールラインぎりぎりから上げた右クロスを、途中出場の大坪博和がダイビングヘッド。ラストワンプレーで勝点3は1に成り下がる。堪えきれなかった。

「2―1で攻め手が見つからない。守り切れたらいいな」(上野)

防戦一方でも攻撃的な姿勢を保持し続けていれば、反撃の機を伺う素振りでも見せてさえいれば、結果はまた違っていたかもしれない。粘りが持ち味のチームが精神的に守りに入ってしまっては、その強味が滲み出ないのは道理。闘争心で凌駕されるようでは、勝機は手繰れない。

連勝の重圧を問われるときっぱり否定した柱谷監督。しかし、「硬くなって勝ちたい気持ちが強過ぎた。それがゲーム内容に影響していた」と認め、自身もリーグ戦で必須の守備力を磨くためにとはいえ、「守備に対するトレーニング、指示が多かった」と反省の弁。

「もう少し伸び伸びと。攻撃的に。前向きに。攻撃力を発揮できるようにしたい」

勝点2の遺失を「攻撃的なサッカーをやれるいい機会」とポジティブに捉え、転機にしようと目論んでいる。逃がした魚は大きいが、転んでもただで起きるつもりは毛頭ない。

JFL前期第6節 佐川印刷SC2―2栃木SC 観衆359人 @京都府山城総合運動公園太陽が丘陸上競技場

〈佐川印刷SC〉GK川本良二、DF遊佐仁、松岡真吾、金井龍生、片野寛理、MF野澤健一、村尾雅人、東純一郎(→大坪博和)、猪狩佑貴、FW中井義樹(→奈良崎千喜)、町中大輔

〈栃木SC〉交代:小林(→高安亮介)、石舘(→横山聡)、斎藤(→赤井)
 

レポート:対TDK SC戦@栃木SC通信

2008年4月 6日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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リーグ戦5試合目、スコアをタイに戻されたのは初めての経験だった。これまでの4試合で喫した失点は僅かに1。それも、3―0と勝敗が決した状況と時間帯で与えたものであり、大勢に影響を及ぼすことはなかった。

後半15分、オウンゴールにより1点を失う。石舘靖樹の脳裏には、こんなことが浮かんだという。

「やばいな。ついに、この時が来たか」

連勝が4で止まる。勝点2を喪失するかもしれない。負の感情が芽生えたものの、佐藤悠介の一言が萎えそうな気持ちを奮い立たせた。

「点を取るチャンスは必ずある」

我に返った石舘。労を厭わずにボールを追っ掛け回した。点を取ること以外でFWに求められる仕事を律儀なまでにこなす。「前からガンガン行かないと。プレスは掛からない」。その姿勢と思いは結実する。同点とされてから3分後、PKを誘った。懸命のフォアチェックが勝機を手繰る。シュート数は数えるほどだったが、諦めず、愚直に、試合開始から行っていたフォアチェックを怠らなかったことで、勝点3に貢献できた。

連勝が途切れることはなく、首位から陥落することもなかった。

栃木SCはガイナーレ鳥取との「J2準加盟」クラブ同士による雨中決戦を辛くも制す。勝利を得るも始終ストレスの溜まる展開だっただけに、ホームではアグレッシブにゴールを狙いたいところ。布陣はGK小針清允、4バックは左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田佑樹、中盤は落合正幸と向慎一のダブルボランチ、左ワイドに佐藤、右ワイドに小林成光が配され、2トップに起用されたのは出場停止明けの上野優作と石舘。

松田正俊(現・栃木SC)、小林宏之(現・大分トリニータ)と攻守の核が抜けたTDKも、フォーメーションは4―4―2。

出足が鈍い。ホーム、アウェーにかかわらず開幕から改善されていない点である。相手の出方を窺っているのか。佐藤に問うた。

「様子見で前掛かりに来た相手に対して守れていれば問題ないが、うちにはそんな余裕はない」

「ホームで最初の5分、10分。相手に圧力を掛ける」。チーム内での約束事である。遵守されていなかった。旺盛に、前線からボールにアプローチすることは出来ていたが、DFラインが追随してこなかった。ギャップが生じる。相手の2トップ、ワイドにバイタルエリアへと容易に侵入される。左ワイドの池田昌広には危険な香りのするボールを供給された。

不安定な立ち上がりも、先手を取ったのは栃木SCだった。向がドリブルで持ち上がり、上野とのワンツーから裏に抜けようとしたところを倒される。獲得したFK、もちろんキッカーは佐藤。自信のある位置、Pボックスのすぐ外側から左足を振り抜き、ネットを揺らした。「止まっているボールを蹴るから簡単でしょ、とは言い辛いが・・・・・・」。笑いを誘った。

先制するが、しかしスローインから隙を突かれて池田に良質なクロスを上げられ、クサビをさばかれては背後を取られ、FKからニアサイドに飛び込まれるなど、ゴールを脅かされる。斎藤、岡田の両サイドバックが内に絞り、カバーしたことで事なきを得るも、準備不足が不必要な汗をかかせた。佐藤は言う。「1点を取ってから変に落ち着いてしまった。1、2点取る。畳み掛ける気持ちが必要」。栃木SCは向が中・長距離からシュートを放つが、クロスバーとGK小野聡人の好守に阻まれる。追加点とはいかなかった。

「ブロックを作り、連動した守備をしよう」

ハーフタイムに柱谷幸一監督が指示を出すも、後半早々に危機を招く。左サイドをあっさりと崩され、木下真吾にゴールを割られそうになる。ここは間一髪で鷲田がスライディングで難を逃れた。

拙い入り方だったが、4―4―2の綺麗なラインを構築したことで、幾分か落ち着きを取り戻す。高い位置でボールを奪えるようになり、ショートカウンターが効果的に決まり始める。ようやく、攻撃のカタチが見出せるようになったところで自滅した。左クロスを川鍋が滑りながらクリアに入ったボールは自陣ゴールへと吸い込まれる。試合を振り出しに戻された。

不用意な失点に流れが傾くかに思われた。だが、すぐさま取り返す。右の小林からふわりとしたボールがPボックス内へ送り込まれる。ゴールラインを割りそうなボールに食らいついたのは石舘。必死のチェイスが奏功する。相手ともつれるように倒れ込む。些かシミュレーション気味だったが、主審はPKを宣告した。これをきっちり佐藤が沈め、TDKを突き放した。

その後は効率のいいカウンターと、途中交代した高安亮介のサイドアタックを軸に攻め立て、終盤にGK小針が処理の難しいボールを弾き出し、2―1で逃げ切りに成功した。

「個人の能力が高く、力のあるチーム。一番、警戒していたセットプレー2本でやられた」と、TDK・佐々木寿生監督は振り返った。対する柱谷監督は「悠介のFK、セットプレーはうちの大きな武器。優作の高さとキープ力、ダテのスピード、悠介の左足と攻撃面で武器があるので、苦しいゲームでも辛抱すれば必ず点を取れるカタチが作れる」と、接戦をものにできた要因を述べた。

僅差のゲーム、雌雄を決したのは強烈な個の力を有しているか否か、だった。

 

「ゲーム内容を上げて、点を取れるようにしたい」

会見に臨んだ柱谷監督。5連勝にも歯切れは悪かった。結果に内容が伴わない事態に焦燥感がうっすらと滲んだ。

JFL前期第5節 栃木SC2―1TDK SC 観衆4865人 @栃木県グリーンスタジアム

〈栃木SC〉交代:小林(→高安亮介)、石舘(→横山聡)、佐藤(→久保田勲)

〈TDK SC〉GK小野聡人、DF高橋臣徳、岩瀬浩介、千野俊樹、朝比奈伸、MF池田昌広(→藤原昭)、高林佑樹、成田卓也、佐藤和旗(→加賀潤)、FW松田英樹、木下真吾(→三浦俊輔)

戦評:対ガイナーレ鳥取戦@栃木SC通信

2008年3月30日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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連勝がマイナス要素、つまり重圧とはならず、プラスに作用した。ここまで勝点を取りこぼすことなく、着実に3つずつ重ねてきた甲斐があった。

「0―0で進んでもチャンスはある。(気持ちを)切らさないで、失点をしないようにしよう」

落合正幸が明かしてくれたのは、スコアレスで迎えたハーフタイムに選手達が確認したことだった。一度、苦しみを、FC刈谷戦(1―0)で味わっているからこそ、辛抱強く、ゴールを割られなければ、勝機は必ず巡ってくると思えてくる。勝ち続けていなければ浮かんでこない発想である。消耗戦を勝ち切った経験が、ポジティブな思考を保持したまま残りの45分間を戦い抜き、勝点3を得る材料となった。

「アウェーは相手がどこであれ厳しい。コンディションを整えて臨んでくる。厳しいゲームの中でもバランスをとり、チャンスを掴み取っていく」(柱谷幸一監督)

そのためには、準備してきた戦術、独自のスタイル、方向性を信じて90分間ゲームを運ぶこともまた、重要である。内容はともかく結果が付いてきていることは小さくなかった。芽生えた自信は勝利と無関係ではないからである。

1週間で3試合の強行日程。その3つをものにした栃木SCは、ガイナーレ鳥取との「J2準加盟」クラブ同士の潰し合いに挑んだ。布陣はGK小針清允、DFは左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田佑樹と並び、ボランチに落合と向慎一、左ワイドに佐藤悠介、右ワイドに小林成光と4人が中盤を形成し、石舘靖樹と松田正俊が2トップを組んだ。

「J2準加盟」のブランドを手にするも、昨季は14位に甘んじた鳥取。元日本代表の小村徳男をはじめ、栃木SCに負けず劣らずメンバーを大量補強した。その数、15人。率いるのは昨季途中にコーチから監督へと昇格したヴィタヤ・ラオハクル監督。目玉補強の小村は怪我のため欠場した。

株式会社SC鳥取、塚野真樹社長の願いも空しく、鳥取は雨、それも日増しに強くなる。ホーム開幕戦から本拠地で3試合続けて雨にたたられる。その影響もあり3066、2156と観客動員数は減少傾向にあり、ついには1363人にまで落ち込んだ。J昇格を懸けた決戦にしては些か寂しい人の入りとなってしまった。とりぎんバードスタジアムはサッカー専用の立派なスタジアムであるものの、栃木県グリーンスタジアムと同様にメインスタンドには申し訳程度にしか屋根がくっ付いていない。客足を鈍らせた一因であることは想像に難くない。雨風を凌げる場所の確保は、プロビンチャにとって急務であることを身につまされた。

佐藤、石舘がミドルレンジからシュートを放つ。立ち上がりとしては悪くなかったが、徐々に鳥取が圧を強める。DFがスリッピーなピッチに足を取られた間に、掻っ攫った小澤竜己からのパスを秋田英義がシュート。間一髪でGK小針が横っ飛びで阻止するも、リズムを持っていかれる。中盤の構成力で勝った鳥取は、底からアドゥール(タイ出身)と吉野智行がゲームをコントロール。ピッチを幅広く利し、トップからバイタルエリアに下りて来た秋田も上手くボールを引き出しては起点となった。安易なミスは圧倒的に鳥取の方が多かったが、セカンドボールを懸命に拾ったことで攻勢に立つ。推進力は衰えなかった。

石舘、小林、岡田で右サイドを崩し、マイナスのクロスから向がミドルを打つが枠外へ。好機はこの一本だけだった栃木SC。松田と石舘にボールが収まらなかったこと、ゴール前でパスを受けてもシュートを狙わなかったこと。柱谷監督は拙攻の原因として、その2点を挙げた。トップがボールを持てないから中盤が攻撃に加われない。射程圏内に入ってもゴールへの意識が乏しいから脅威と成り得ない。カウンターを繰り出してもフィニッシュで終われなかった。このチームのひとつの脆さが顔を覗かせた。

前半終了間際、秋田のポストプレーから小澤が右足を振り抜く。またしてもGK小針の好守で難を逃れる。失点こそ喫しなかったが、守ってはコンパクトに、攻撃に打って出るとワイドに。使い分けができていた鳥取に終始、圧倒された前半戦だった。

後半も劣勢の時間帯が続く。4分に小井手翔太のミドルをGK小針が弾いたところに小澤が詰める。至近距離を小針が再三のセーブで耐える。絶好機を防ぎ味方の反撃を待つが、好機すら作り出せない。逆に21分。秋田がDFを引き付け、小澤が際どいシュートを飛ばした(枠を反れる)。前半の終盤をなぞるような危険なシーンだった。

栃木SCがプレスを掛ける。逃げるように蹴ったボールがトップに入ってしまい、シュートにまで至る。

「意図的ではないにしても(放り込んだ)ボールが収まるので、ワシ(鷲田)、ナベ(川鍋)がフリック(ボールを少しかすらせて後ろに送る技術)を狙う。ボランチが挟み、スクリーンしてやれば攻め手はなかった」(柱谷監督)

鳥取の対処法は明確だった。しかし、頭で理解していても実行に移せるかは、また別の話である。単純だがセカンドボールを取り切れなかったことが、流れを失った要因だった。

刻々と時計の針は動きを止めず、終焉へと向かう。ドロー、勝点1でも御の字の状況を、しかし交代選手が変える。川鍋のクリアボールを途中出場の横山聡が右サイドでキープし、スイッチするようにドリブルで途中交代の高安亮介が突っかけ、FKを獲得。キッカー佐藤が供給した低いボールに両軍が群がり大混戦に。ごちゃごちゃしたPボックス内の攻防を制したのは落合の右足だった。3戦連発弾は、いずれもFKの流れの中からの泥臭いゴール。

「値千金じゃないです。オウンゴール。触っただけです。混戦に強い?運があるだけです。次は他の人の前にこぼれてきますよ」

殊勲者は照れ臭そうに話す。「全部、自然に入っているから押し込むな」。チームメイトに茶化された。

耐え抜いた末にもぎ取った貴重なゴール。これをこの日、大忙しのGK小針が鳥取の猛攻を受けながらも、終ぞゴールを与えることなく守り切った。開幕からの連勝を4に伸ばした。

「こっちの意図したことを交代した選手がやってくれると、もう一度バランスを取り直せ、リズムを作れる」と柱谷監督。高安はカードを1枚もらっていた岡田の守備面の負担を軽減させながらも、ワンプレーで持ち味を発揮して間接的にゴールに絡んだ。横山と稲葉久人はFWとしての結果は出せなかったが、勝機を手繰るため必死にボールを追っ掛け回した。

薄氷を踏む勝利ながら力のある鳥取から勝点3を手中に収められたことは大きかった、と柱谷監督は振り返る。キャンプから取り組んできたことが間違いではなかったと再認識でき、戦術の理解度が上がり、ベースを崩さすに済むからだ。もちろん、修正すべき点は攻守に多々あるのだが。

 

JFL後期第4節 ガイナーレ鳥取0―1栃木SC 観衆1363人 @とりぎんバードスタジアム

〈ガイナーレ鳥取〉GK井上敦史、尾崎瑛一郎、戸田賢良、小原一展、吉瀬広志、MF小井手翔太(→ハメド)、吉野智行、アドゥール(→釜田桂吾)、実信憲明、FW秋田英義、小澤竜己(→大多和卓)

〈栃木SC〉交代:松田(→横山聡)、小林(→高安)、石舘(→稲葉)
  

レポート:対三菱水島FC戦@栃木SC通信

2008年3月23日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

058.JPG開幕からの3試合を3連勝と上々のスターとを切った栃木SC。勝点9を獲得した連戦を終え、柱谷幸一監督が振り返る。

「負けていてもおかしくはないゲームだっただけに、第2戦を取れたことは大きかった」

ポイントに挙げたのは、蹴り合いに個々が戸惑ったFC刈谷とのアウェーゲーム。度重なる窮地を守備陣が耐え忍び、勝点2の喪失を覚悟したロスタイム目前、間接FKからゴールをこじ開け勝利を手繰った。些か幸運にも恵まれるが今季のテーマである勝点1を勝点3に転換できたことは小さくなかった。小林成光は言う。「(連勝することで)勝ち方が分かってくる。踏ん張れば点を取れる、と思える。ネガティブな考えは浮かんでこない。いい流れができる」。敗戦、或いはドローをも覚悟したタフなゲームを制した自信と浴びたJFLの洗礼。それらがゴールショーの要因となったことは言うまでもない。

試合前、栃木SCは思い通りに事が運ばなかった前節の反省を生かすために、主導権を握り、自分達のサッカーを前面に押し出すことを確認した。スタメンは上野優作と石舘靖樹が2トップを組み、中盤は左ワイドに佐藤悠介、右ワイドに小林、落合正幸と向慎一がダブルボランチに配され、左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田佑樹がDFラインを形成し、GKは小針清允が務めた。

2戦2分け。三菱水島FCの陣容も4―4―2だった。

不安定な立ち上がりも、上野が連続してゴールに迫るとリズムが生じ、6分に先手を取る。Pボックスへ侵入されるも事なきを得るとカウンターが炸裂。佐藤が右へサイドチェンジし、小林が背後へパスを送り、上野が落としたボールを石舘が冷静に流し込んだ。あっさりとゴールネットを揺らし、「後ろからのボールに強い」上野と石舘が良好な関係性を築いたことで優勢に試合を進める。13分、再び佐藤が起点となり、上野のポストプレーから今度は走り込んできた小林が強烈なミドルシュートを突き刺した。「放り込むだけでチャンスになった。バランスを崩さずに攻撃できた」とは、引き立て役を担った上野。奪ったボールはすぐさま前線の2人へ。三菱水島の守備陣形が整わないうちに、鋭く速い縦へのシンプルな攻撃を仕掛けたことが見事にはまった。

長身の松永一慶をリザーブに回し、「動ける選手を選んだ」(熊代正志監督)三菱水島。小柄な菅康介、中川心平が、こちらもカウンターからゴールに襲い掛かる。GK小針の俊敏な反応がシュートを防ぐも、フィニッシュにまで持ち込まれることは頂けない。アドバンテージを有していても、常にアラートな状態を保持しなければならない。集中力の欠如が失点を招くことは、開幕戦で経験済みのはず。GK小針への依存度を減らしていかなければならない。

難を逃れた栃木SCはFKから鷲田が競り落としたボールを、ゴールライン際で小林が残し、最後は落合がプッシュ。プロ初ゴールを記録した刈谷戦をなぞるような、泥臭いゴールを決めた。「皆が繋いでくれて押し込むだけだった。でも、3点目は重要。次は流れの中で絡んで取りたいですね」。

最初の45分で3ゴールを叩き出すも、反撃を許した時間帯に関して注文をつけた柱谷監督。「あと3点は取ろう」とハーフタイムに指示し、選手を送り出す。

後半4分、小林の右クロスをニアサイドで石舘がダイビングヘッド。柏レイソルでは左ワイド、サイドバックが主戦場だったが、元来は前の選手である。自分の色を出せるFWのポジションでの先発起用に発奮。「ボックス内で力を発揮できる」(柱谷監督)ことを証明した。「サポーターに魅せるプレーを好む」石舘は、前半44分に続き、後半9分にもオーバーヘッドを繰り出し、さらに14分には胸トラップからスキルフルな反転シュートを放つ。「調子に乗り過ぎましたね」とは言うものの、悪びれる素振りなど全く見せず、「決まっていたらヒーローでしたね」と、むしろ悔しさの方が勝っていたようだった。

前線で体を張り、ボールを収めていた上野だが、「早く結果が欲しくて気負っていた部分があったかもしれない」と、ボックス内でルーズボールに飛び込んだ際、足裏を見せたとして本日2枚目のカードを提示される。ピッチから追い出された。数的不利に陥るも栃木SCは動じない。中盤とDFラインが綺麗なラインを引き、アプローチを掛ける位置を明確に定めたことで、要所をしっかりと抑える。好機を作らせなかった。

守備を固めてリズムを整えたことが実を結ぶ。素早い攻守の切り替えから途中交代の横山聡が粘り、左サイドを駆け上がってきたこちらも途中出場の久保田勲に叩く。その久保田はDFを振り切ると左足一閃。持ち味のひとつである、どこか懐かしい匂いのするミドルシュートでゴール右上段を射抜いた。あのプロセス、弾道は、現広報・吉見康之が現役時代に対ホンダFC戦で描いたものと酷似していた。

昨季ゴール数0だった久保田の最高のアピールが幕引きとなり、栃木SCは開幕3連勝を望外の5ゴールで飾った。

「一人少ない中でゲームを作れた。流れをよく見て、自分たちのやらなければならない仕事をやってくれたのは大きい。長いリーグ戦を考えればサブの選手が入り、結果を残せたことはよかった」(柱谷監督)

退場者を出してしまいプランが崩壊したことに落胆する一方で、10人でベンチの意図したプレーが体現できたことをポジティブに捉えてもいた。

1週間後には準加盟クラブ同士の対戦、対ガイナーレ鳥取戦を控える。ひとつの山場へ向けて、柱谷監督は現在の胸中を吐露した。

「自分達のスタイル、サッカーをする。相手によってやり方を変えるのではなく、自分達のスタイルで戦い、勝つことが今は大切」

スカウティングを怠ることはないが、練りに練りこんだ方策を用いることもなさそうだ。過去3戦で蓄積したものを全てぶつける。真っ向勝負を挑む気構えでいるのではないだろうか。それで敗れるようならば、力不足を認め、再スタートを切ればいい。再構築も可能な時期だけに当然ながら逼迫した様子は伺えない。

JFL前期第3節 栃木SC5―0三菱水島FC戦 @栃木県グリーンスタジアム 観衆4275人

〈栃木SC〉交代:石舘(→横山)、小林(→高安)、佐藤(→久保田)

〈三菱水島FC〉GK永冨裕尚、DF松岡宏晃、坂口遥、萩生田真也、三宅一徳、MF山下聡也、丸山拓志(→松永一慶)、川口正人、田丸誠(→日笠山優)、FW菅康介(→上田隆央)、中川心平

レポート:対FC刈谷戦@栃木SC通信

2008年3月21日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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不快感を包み隠さない。

「全然、駄目でしょう。つまらない。面白くないゲームだった」

収穫は「勝っただけ。でも、それが大きい」と付け加えたが、キャプテン佐藤悠介は思うに任せないゲーム展開と自身のパフォーマンスに誰よりも苛立っていた。

柱谷幸一監督曰く、「悪条件が重なる」。アウェー、しかも18時キックオフのナイターゲーム。スタジアムには弱くはない風が舞い、降り続いた強い雨は止んだがピッチコンディションは芳しいとはいえず、ホーム開幕戦のFC刈谷は鼻息が荒かった。

冗談を交えて佐藤は言う。「風がなく、打ち合ってくれればいいゲームが出来る」。正面から堂々と組み組み合えれば魅力的なサッカーを披露でき、なおかつ勝利も高い確率で約束できる自信があるのだろう。しかし、リーグで圧倒的な戦力を有する今季の栃木SCに真っ向勝負を挑んでくるチームは数えるほどだろう。先ずストロングポイントを消す手を打つのが定石。結果的に勝点3を得ることになるが、刈谷が練り上げた戦術を徹底したことでJFLの醍醐味、一筋縄ではいかないことを思い知らされた。

開幕戦を3―1でものにした栃木SC。ローテーションを用いることをほのめかしたものの、大幅なメンバー変更はなかった。陣容はGK小針清允、DFラインは左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田佑樹、ボランチを落合正幸と向慎一が組み、左ワイドに佐藤、右ワイドに初先発の高安亮介が入り、2トップに起用されたのは松田正俊と横山聡。FC琉球戦から上野優作と小林成光が外れ、ベンチに控えた。

3―0。刈谷も開幕を飾った。その3ゴール全てに絡んだ和多田充寿はリザーブに回った。故障でもしたのだろうか。フォーメーションは攻撃的な4―3―3。

開始1分と経たずに先制パンチを浴びる。ラインを上げ損なったところにスルーパスを通される。伊藤智弘のシュートはGK正面を突くも、不穏な空気が漂う。9分にも背後をあっさりと取られ、フリーで平林輝良寛にシュートを打たれてしまう。

「意図的ではないが前に前にボールを入れてきて、セカンドボールを拾う。予想はしていたが、うちがセカンドボールを拾えずに、相手に拾われて攻撃されてしまった」(柱谷監督)

風上の刈谷はラッシュをかけた。変則的な3トップに供給されるアバウトなロングボールに苦しめられる。センターバックが弾き返しても、セカンドボール争奪戦で後手を踏み、攻守交替が図れない。平林の力強いドリブル突破に、アンカー酒井康平の巧みなボールさばきが加わり、劣勢の時間帯は延々と続く。

「セカンドボールを拾えていた部分もあるが、引いてしまったので前で自由にやらせ過ぎてしまった」と向。中盤を省略されたことで、プレスを掛けてボール奪取からカウンターを繰り出すことができなかった。全体が間延びしてしまい、食い付けない。

 

FKからの伊藤のヘディングシュートはGK小針が辛うじて防ぎ。石川高大の右クロスにファーで平林がダイレクトで合わせるも僅かに枠を反れる。 難を逃れるも、攻撃は右のアタッカー高安、一辺倒。左から組み立てるケースは皆無に等しかった。2トップが前に張り付いてしまいボールが収まらず、ビルドアップも拙かったことでカタチすら作れない。縦に攻め急ぎ過ぎた感は否めなかった。高安は消されてしまう。

フラストレーションを溜める一方の栃木SCに対して刈谷は、自分達のゲームプランを着実に遂行し、立て続けに好機をこしらえた。エース和多田の不在が響き、ゴールこそ割れなかったが45分間を完全に掌握した。滅多に対戦相手を褒めない柱谷監督も脱帽するほどの出来だった。

低調な前半を終えて迎えた後半。数多の危機を無失点で切り抜けられたことは小さくなかったようだ。落合は言う。

「リセットして、押し込んで行ければチャンスができる、というイメージは出来上がっていた」

前半同様、後半もいきなりどっぷりと冷や汗をかかされるものの、シュートミスに助けられた。ドリブルに対する守備がまだ覚束ない。改善点として挙げられるだろう。これはトレーニングマッチから持ち越されている課題である。

 

命拾いした栃木SCはFKから松田正俊がジャンプ一番。頭ひとつ抜けるも、叩き切れずに枠を越えた。再び松田正俊。今度はカウンターからGK石川扶と1対1になり、ループシュートを放つがゴールネットに収められなかった。逸機したものの、連続して得たセットプレーから流れを手繰り、上野優作の投入で起点が設けられると、高安も躍動し始める。だいぶ右から崩せるようになったが、無常にも高安は下がられ、小林がピッチに入る。高安を引っ込めたことで推進力が削がれるかに思われたが、独特のリズムを有する小林のドリブルは効果的であり、キープ力も兼備していることから右サイドバック岡田が駆け上がれるタメを構築できた。その岡田がゴール前まで顔を出し、左足を振り抜くもGKの正面に飛んでしまう。

残り15分を切ったところで石舘靖樹イン。トップ下に配し、中盤をボックス型から、落合をアンカーにしたダイヤモンド型に切り換えた。Pボックス周辺に人数を割き、パワープレーを敢行。クロスの雨を降らせることでプレッシャーを与え、刈谷を押し込めることに成功。

ロスタイムに片足を突っ込んだ土壇場の44分、バックパスをGKが手で処理したことで間接FKを手にする。Pボックス内、ゴールライン際の難しい角度。プレースキッカー小林からボールを引き出したのは、ひとりゴールから遠ざかった佐藤。「ヒットせずにボテボテ」のシュートはゴールへ向かう。両軍入り乱れての混戦、肩を脱臼させながら体ごと突っ込み、左足でゴールネットを揺らしたのは落合だった。ゲームをイメージしながら取り組んだセットプレーの成果が表れた。

「完全にオレっす。別にマツ君(松田正俊)のゴールでもいいですけども・・・・・・。体ごと飛び込んだ?突っ込んでないと入ってないです」

ゴールの感触を問われると、そう笑いを誘った落合。表情を一変させて語る。

「勝ち続けることで勝ちのリズム、勝ち癖がつく。今日のような勝ち方をすると、前半の内容が悪くても勝てるのではないか、と思えてくる」

苦境に立たされても守備陣が粘りに粘り、千載一遇の好機を確実にゴールに結び付けることが、勝点3を取ることが重要であると話した。

「今日は勝点を取れなくてもおかしくなかった。1の可能性も十分にあった。(内容が)悪い時に1点を取って勝ち切ることで勝点を積み上げられる」

柱谷監督は安堵の表情を浮かべながらも、「選手は納得していない。勝っても喜んでいないことが表情から読み取れた。内容も上げていかなければならない」と、中2日でのホームゲームではアグレッシブに戦い、観衆を満足させることを誓った。

JFL前期第2節 FC刈谷0―1栃木SC @ウェーブスタジアム刈谷 観衆592人

〈FC刈谷〉GK石川扶、DF田上裕、松田勉、西原拓巳、石川高大、MF平林輝良寛、酒井康平、日下大資、FW社本将成(→森山大地)、伊藤智弘、原賀啓輔

〈栃木SC〉交代:横山(→上野)、高安(→小林)、向(→石舘)

短評:対FC刈谷戦@栃木SC通信

2008年3月21日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

滑らかな立上がりをみせたのは風上、ホームのFC刈谷だった。開始早々にシュートを放つと、前線に配した3枚目掛けてボールを蹴り込み攻勢に立つ。平林輝良寛、伊藤智弘がゴールを脅かす。GK小針清允を中心に守備陣が踏ん張り難を逃れるも3、4点失っていてもおかしくはなかった。単調な攻撃に終始した風下の栃木SCは向慎一のシュート一本のみ。それも前半の42分に記録したもの。いかに苦しみ、カタチが作れなかったかが理解できる。

いきなり肝を冷やされた後半。セットプレーから流れを幾分か引き寄せ、交代出場の上野優作が起点を構築。敵陣に攻め入ることが可能となる。しかし、決定打を欠いた。残り15分。前に厚みを持たせてパワープレーに打って出る。圧力を掛け続け、刈谷GKがバックパスを手で処理したことでFKを得る。サインプレーが見事にはまった。一人ゴールから逃げるようにしてボールを受けたのは佐藤悠介。シュートはミートできなかったが、枠を捕らえていたことが奏功した。ゴール前の混戦を落合が制す。ロスタイム目前に決勝ゴールを手にした栃木SC。辛うじて勝ち点3を積み重ねた。

「うちのサッカーが2、3割しかできていなかった」と柱谷幸一監督。それでも、「内容が悪くても粘って、結果を出したことは評価してあげないといけない」と選手を労った。

※今日はは自宅に戻れないのでこれくらいで。申し訳ない。誤字・脱字・乱文失礼。明日しっかりレポートします。

JFL前期第2節 FC刈谷0-1栃木SC @ウェーブスタジアム刈谷 観衆592人

開幕戦レポート:対FC琉球戦@栃木SC通信

2008年3月17日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

197.JPG腹の底から野太い声で『県民の歌』を高らかに歌い上げる。ゴール裏に陣取ったサポーターを中心にした声がスタジアムに響き渡れば、それは少なくない栃木県民にとってサッカーの幕開けを意味する。

3月16日。第10回日本フットボールリーグ(JFL)開幕。栃木SCと柱谷幸一監督のJFL初制覇、その先にある「J2昇格」へ向けた再チャレンジも同時に始まった。

「今年はタダ券を配ってないからねえ。最低でも5000人は入ってくれれば……」

新井賢太郎社長の表情は渋い。開門前、入場ゲートに長蛇の列は出来ていなかった。昨季の開幕戦は1万人以上を動員したが、その時の勢いと活気に乏しい。客足の鈍さが耳に届いていたのかもしれない。 あるいは、目の当たりにしたのかも。

11時10分、開門。滑らかに入場が行われる。淡かったメインスタンドの黄色は徐々に濃度を増すも、津波のように人が押し寄せた昨季を体験したものからすれば、物足りなく、寂しくもあった。

最終的に6338人が足を運んだことになる開幕戦。昨季と比べると半減したことになる。配布された無料チケット5万枚が有する破壊力を思い知る。一方で、リピーターを増やし、アップダウンが少なくなることこそ、安定した収入に繋がると、新井社長と柱谷監督は観客動員に対して同じ見解を示している。昨季を上回る入場者数を記録できなかったことへの悔しさがないといったら嘘になるが、負け惜しみを言っているわけでもない。瞬間的に大人数を集めるよりも、継続的な動員を。今季の、先を見据えたクラブとしてのスタンスが感じ取れる。

コンスタントにスタジアムに足を向けてもらうためには、魅力的で強いチームであることが、諸条件の中で優先される項目であることは言をまたない。

「勝ちたい。勝って勢いに乗りたい」

オフシーズンから入念な下準備を行ってきた柱谷監督が幸先のよいスタートを切るために、白星を強く欲する気持ちが滲む。

栃木SCの陣容はGK小針清允、4バックは左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田佑樹、中盤は底に落合正幸と向慎一、左に佐藤悠介、右に小林成光が配され、上野優作と松田正俊が2トップを組んだ。

元日本代表フィリップ・トゥルシエ氏が総監督に就任し、カズこと三浦和良の親類も入団するなどニュースバリューが一気に高まったFC琉球とは、3季連続して開幕戦で顔を合わせることとなった。身内の不幸によりトゥルシエ氏は緊急帰国するも、昨季までグリーンスタジアムで喝采を浴びていた山下芳輝がスタメンに名を連ねる。敵役として戻ってきた。フォーメーションはトゥルシエ仕込の3―5―2。

「10分、15分、地に足が着いていないプレーが多かった」(柱谷監督)

心地よくブーイングを浴びる山下に起点を設けられてしまう。オープニングシュートは山下のポストプレーから白尾秀人が放ったもの。その後もあっさりと背後を取られる、サイドを攻略されるなど、連続してシュートを打たれてしまう。バイタルエリアを利した琉球の攻撃に躊躇いや迷いはなかった。

足に鉛を付けたように栃木SCの動きは重かった。「今日は硬くなるから。自分自身にプレッシャーをかけた部分があるかもしれない」と上野は低調なパフォーマンスを分析した。アップから立ち上がりの拙さが予想される兆しはあったものの、修正を施すまでに多大な時間を要するとは思いもしなかった。佐藤が下がり気味にポジションを取りながら、試合を落ち着けようとするも思うに任せなかった。 叫びながらプレスの掛け方に関して「メリハリをつけるように」と指示を出すも、調整が図れない。

19分、山下のスルーパスから白尾に決定的なシュートを、そのリバウンドを出し手の山下が再びシュート。絶体絶命の窮地をGK小針が救うも、「先に1点を取られたら、どっちに転ぶか分からないゲーム内容だった」と佐藤が振り返る通り、このゲームの大きな山場だった。凌ぎ切ったことは小さくなかった。

ピッチを幅広く使い、ポゼッションしながら緩急をつけて攻め入るのもひとつの手だったが、栃木SCは自分達の優位性を生かした。それは上野と松田の高さである。敢えてロングボールを多用した。そこには、パスを繋いで食い付かれ、カウンターを浴びるリスクを回避したいとの思惑、トップにボールをあててからセカンドボールを拾う方が選手個々の特性を生かせるとの公算があったからだ。目論み通り、
先制点を得る。小林のアーリークロスを上野が胸で落とし、佐藤が間髪入れずに左足一閃。ゴールネットを揺さぶったのは26分のことだった。

向は言う。

「先制点が大きかった。いいカタチで取れたし、取ったのが精神的支柱である悠介さんだったので盛り上がった。スタンドも僕等も。いくぞ、という感じになれた」

ゴールにより栃木SCはようやく覚醒する。ボランチを横並びから縦関係に変えたことで守備を安定させ、プレスの掛かりが格段に向上し、球際での激しさが見られるようになる。カウンターも効率よく打てるようになり、松田がボレーシュート(GKライス・エンポリに弾かれる)、鷲田がCKからクロスバー直撃のヘディングシュートでゴールを脅かした。

前半の終盤に持ち直した栃木SCたったが、ハーフタイムを挟むと、またしても消極的になってしまう。受けるに回るシーンが目に付いた。相手のシュート精度が低かったから助かったものの、フィニッシュで攻撃を終わらせてしまったことは反省すべき点だろう。

「ゲームがイーブンな内容の時は決定力のある選手がいたチームが有利だな、勝ちを持って来られる、とつくづく感じました」

イニシアチブを掴みきれないゲームを決定付けたのは、補強により手に入れた松田と佐藤だった。決定力とは個の力と置換できるだろう。不足していたものを補った甲斐があったと柱谷監督は再認識させられた。

一旦、CKは弾き返されるも佐藤が左から供給したクロスを松田が頭で沈めて2点目を獲得。さらに途中投入の横山聡がドリブル突破からもぎ取ったFKを佐藤が直接、蹴り込んで勝負あり。佐藤は豪語した。「あの距離(Pボックスのすぐ外)から僕に蹴らせたら、だいたい入る」。

リードを広げ、相手のセンターバックのエメ・ラヴィが退場したことで数的優位に立った栃木SCだが、ピリッとしない。GK小針の好守、斎藤の懸命のカバーリングで難を逃れるも、41分に不要な失点を喫した。ドリブルを仕掛けてきた澤口雅彦を止めきれず。突っかけられて最後は高松健太郎にプッシュされてしまう。3―1で開幕戦を勝利で飾るも、後味は悪かった。

琉球に退場者を出してからゴールを重ねられなかったこと、無駄な失点を許したことを反省材料に挙げながらも、柱谷監督は「開幕戦を勝てたことでチームとして目指している方向が間違っていないと思えるのが大きい」と、勝点3の意義を語り、内容が伴ってくれば自信を深めていける1勝、と付け加えた。

木曜日にはFC刈谷戦、中2日で三菱水島FC戦を控える栃木SC。週明けのコンディションにもよるが、「今日出ていない選手もいいパフォーマンスをしている。フレッシュな選手を使ってみてもいい」と、柱谷監督はローテーションを用いることを暗に示唆した。怪我を負っている選手には無理をさせないつもりだ。

JFL前期第1節 栃木SC3―1FC琉球 @栃木県グリーンスタジアム 観衆6338人

〈栃木SC〉交代:上野(→横山)、松田(→石舘靖樹)、向(→久保田勲)

〈FC琉球〉GKライス・エンポリ、DF三好拓児、エメ・ラヴィ、久保篤史(→栗田泰次郎)、澤口雅彦、當間正人(→納谷伊織)、高松健太郎、杉山洋一郎、林田光佑、FW山下芳輝、白尾秀人(→白井博幸)
  

PMレポート:対アルテ高崎戦@栃木SC通信

2008年3月 9日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

074.JPG1週間後に控えた開幕戦を迎えるにあたり、悔いを残さないように。総仕上げとなるアルテ高崎とのプレシーズンマッチは、集合時間、食事、ミーティングなど、当日と全く同じタイムスケジュールが組まれ、「今日が開幕戦くらいの気持ち」(GK小針清允)で選手達は試合に臨んだ。サポーターも本番に備える。今年から陣取るゴール裏からリハーサルを行った。

来週には間に合うとのことだが、大事をとってコンディションが万全ではない佐藤悠介、鷲田雅一、松田正俊の主力3選手はベンチからも外れた。栃木SCの陣容は上野優作と石舘靖樹の2トップ、中盤は左に深澤幸次、右に小林成光、底には落合正幸と向慎一が入り、DFラインは左から斎藤雅也、山崎透、川鍋良祐、岡田佑樹と並び、ゴールマウスには小針が立った。

高崎も4―4―2を選択。

序盤からポゼッションで勝ったのは栃木SCだったが、「自分は硬かった。いけるかな、と思ったが・・・」と向が言うように、全体的に体が重い。「後ろで動かして前へ入れたかった。前線と中盤の連動がなく、ボールを前へ入れられない」(柱谷幸一監督)展開が繰り返される。アンカー(舵取り役)の落合がDFラインからボールを受け、ルックアップしても前が動き出していなかった。ボールを散らすことは出来たが、ゴール方向への勝負パスは少なかった。複数人が絡んだプレーは数えるほどだった。

前線にボールが収まらないのだからサイドが活性化されるはずがない。両サイドバックは上がるタイミングを見出せなかった。タメを構築できる佐藤の不在も響く。その佐藤とコンビネーションを磨いてきた斎藤は言う。「悠介さん、鷲さんと一緒にやっていたので、正直合わせるのに時間が掛かった」。柱谷監督曰く「ぎくしゃくした」左サイドは、いつものように起点と成り得ない。それでも、向のパスに抜け出た小林の左クロスを石舘がヘディングで合わせたあたりから、カタチを崩してでも前に出る姿勢が垣間見られるようになる。34、36分には上野が連続してゴールに襲い掛かる。相手の好守に阻まれるも「コンディションは一番よかった」と上野。逸機したことには苦笑したものの、1ヶ月前のキャンプでは歩くことすら困難だったのだから驚異的な回復ぶり。果敢にゴールを狙い、ベテラン健在をアピールした。

プロ契約選手の大量解雇により「マイナスからのスタート」(渡辺克之監督)を切った高崎。昨季の低調なサッカーからの脱皮段階にある。会見ではネガティブな発言が目立つも、それほど悲観することはないのではないか。環境と待遇に恵まれていないとはいえ。

前半ゴールを奪えなかった栃木SC。後半に入ると僅かながらサッカーの質が向上するも、上野、石舘の2トップが巡ってきた絶好機を決めきれない。ボールが動くようになり、リズムも好転するなどしたが、その矢先に斎藤が2枚目の警告でピッチ外へと追い出されてしまう。幾分か動揺したのか、ミスから窮地を招く。これを耐え凌ぐと入江利和を投入し、4バックを維持。4―4―1の2ラインを敷き、コンパクトフィールドを保ち高崎の攻撃を封じては、反撃の時を待った。スルーパスに反応した川勾に冷や汗をかかされるも、GK小針の好判断で危機を回避すると、ロスタイムに交代出場の久保田勲がFKを右上段へ直接突き刺し、さらに落合のフォアチェックを足掛かりに最後は石舘が追加点を奪い去った。90分、苦しんだことが嘘のように、あまりにもあっさりと2度、ゴールネットが揺れた。

「退場者を出すのはよくないが、リーグ戦ではこういうゲームもある。勝点1、チャンスがあれば3を取るのが勝点を積み上げることになる。内容はよくないが、シーズン前にはいい経験ができた」

数的不利、スコアレスで推移した試合。ドローで勝点1を拾うことも覚悟したが、4バックのブロックで攻撃を跳ね返し、機を伺う策がはまり、勝利をものに出来たことに柱谷監督は一定の評価を与えた。表現こそ異なるが選手たちも一様に「開幕前にいいシミュレーションができた」と口にしていた。

リハーサルは終わった。いよいよ本番である。来週は開幕戦の相手、FC琉球を想定したトレーニングを入れ、勝点3を手にする確率を上げるための戦術を練り上げる。

指揮官は欲した。

「勝ちたい。なんとか勝って勢いに乗っていきたい」

プレシーズンマッチ 栃木SC2―0アルテ高崎 @栃木県グリーンスタジアム

〈アルテ高崎〉GK岡田大、DF小柴翔太、西村陽毅、山田裕也、杉山琢也、MF今井政貴、里見仁義、川勾邦明、白山貴俊(→ファブリシオ)、FW田中靖大(→田中翔太)、久保田圭一(→チアゴ)

〈栃木SC〉交代:向(→久保田)、小林(→高安亮介)、上野(→入江)  

TMレポート:対湘南ベルマーレ戦@栃木SC通信

2008年3月 2日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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平塚から世界へと飛翔した中田英寿が愛した大神グラウンドは、かつての親会社であったフジタが売却したことにより、今は松蔭大学が所有、使用している。相模川(馬入川)に面している点は一緒であるが、湘南ベルマーレの練習グラウンドは馬入ふれあい公園サッカー場へと2006年に移転。「ヒデも悲しんでいました」とは広報の方の弁。中田英寿が唯一、Jでプレーしたクラブであることを嬉々として話してくれた一方で、「最も愛した河川敷とグラウンド」に話題が及んだ際には、寂しげだった。

さて、湘南とのトレーニングマッチである。場所はもちろん、馬入ふれあい公園サッカー場。栃木SCの並びはGK小針清允、4バックは左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田佑樹、中盤の底には落合正幸と向慎一、左ワイドに佐藤悠介、右ワイドに小林成光が入り、2トップには上野優作と松田正俊が指名された。前半の交代は34分にGK小針から武田博行(筆者計測)。

開幕を翌週に控えトップチームがジュビロ磐田との非公開マッチを行った湘南はサテライト主体のメンバーで臨んできた。

これまではDFラインの前でアンカー役を担っていた落合が前に出ては果敢にプレスをかけ、奪ったボールは佐藤へ。起点はこの日も左に設けられた。前線にどっしりと松田が構え、左右のスペースへと相棒の上野が流れる。ボールの循環が向上したのは、前線にボールが収まり、人が動くことでスペースを生み出せるようになったからである。また、サイドでボールを持ち過ぎる嫌いがあった佐藤の稼動域が左から中央まで広がり、ボールタッチ数が格段にアップし、シンプルにさばけるようになったことも好循環の一因だろう。松田のポストプレーから佐藤がオーバーラップしてきた斎藤に叩いた一連のプレーは、うまく連動できていた。序盤の勢いそのままに佐藤がロングレンジから強烈なシュートを放ってゴールを脅かすものの、前半も半ばに差し掛かると形勢が逆転する。受けに回ってしまい、立て続けに窮地を招いてしまう。GK小針の好守と相手のミスに救われるも、時間の使い方、90分間のゲームマネジメントをどうするのか。考えていかなければならない課題のひとつが浮かび上がった。ペースが落ちてしまうことと、握っていた手綱を明け渡すことがイコールであってはならない。劣勢の展開を変えたのが松田である。クサビから自分の間合い、ボールをミートできる位置にボールを置いて左足を振り抜き、佐藤と斎藤のホットラインから供給されたクロスに詰めた(クリアされる)。スローインからゴールを割られそうになるも、またしてもGK小針が耐え凌ぐと栃木SCがゴールを陥れる。向が執拗にフォアチェックし、奪取したボールを佐藤に繋ぐと左サイドをえぐり、マイナスのクロスを上野がスライディングシュートで先制。試合開始当初は落合が前方、後方に向が控える縦関係だったが、これだと推進力が殺がれる。2人の間で特段、取り決めがないことから、状況に応じて前後を使い分けられれば、中盤をかき回せるに違いない。

後半の頭に栃木SCは佐藤、落合、岡田、上野の4人がアウト、石舘靖樹、久保田勲、山崎透、稲葉久人がイン。岡田の抜けた右サイドバックにCBの川鍋がポジションを移し、鷲田と山崎が2CBを組んだ。その他の交代は以下の通り。小林→高安亮介(12分)、松田→深澤幸次(15分)、向→鴨志田誉(17分)、斎藤→入江利和、川鍋→赤井秀行、鷲田→照井篤(20分)、武田→柴崎邦博(37分)。

後半から登場の山崎。向のCKを頭でジャストミートし、あっさりと追加点をもたらす。足が止まったことで湘南のプレスが甘くなったのを尻目に、栃木SCはスピーディでアグレッシブな攻撃を繰り返す。山崎のクロスバー直撃のヘディングシュートを皮切りに、向と2トップの一角に入った深澤が目が覚めるようなミドルシュートでゴールを強襲。「決定機を決めきる。2-0、3-0にすれば相手に『強い』という印象を与えられる」と柱谷幸一監督はリードを更に広げられなかったことに些か不満げだったが、湘南を圧倒できたことで若手にとってはかなりの自信になったのではないだろうか。前後半に1点ずつを決め、シャットアウトした栃木SC。柱谷監督の誕生日を勝利で飾った。

「攻守に締まりのあるいいゲーム」

柱谷監督は対湘南戦をそう振り返り、付け加えた

「高安、深澤、川鍋、石舘など状況により使い分けられる目処が立った」

先の4選手は複数のポジションをそつなくこなせることを実証した。高安は本来のワイドからひとつ下がったサイドバックを(この日はワイドでの起用)、深澤は貪欲にゴールを狙ったFWと左ワイドを、川鍋はCBと「守備固め」(柱谷監督)のために右サイドバックを、石舘はFWと本職の左ワイドを。先週の水曜日、対大宮アルディージャ戦で先発、湘南戦でもスタートから起用されたメンバーが開幕のピッチに立つ11人と捉えても差し支えはないだろう。ほぼ陣容が固まったことから、湘南戦は本番を想定したテストを幾つか実施した。高安を後半途中からスーパーサブとして投入し、深澤をFWでトライさせ、逃げ切るために川鍋を右サイドバックに配した。GK小針、CB鷲田、ボランチ落合、ワイドの佐藤、トップの横山聡(松田)と代えのきかない背骨となるスペシャリストに、ユーティリティ性のある選手を絡ませることで戦力に厚みをもたせ、アクシデントにも即座に対応できる態勢を整えた。勝ち点3を取るための準備は着々と、滞りなく進んでいる。

開幕まで2週間は守備面での計算が成り立つことから、セットプレーを含む攻撃のオプションを増やすこと、コンディションの調整をすることの2点に時間と神経を割く。来週からはシーズン中を意識したトレーニングを入れる。プレシーズンマッチとなる対アルテ高崎戦では18人枠、3人交代、集合時間、食事のとり方をシミュレーション。リーグ戦を戦っている雰囲気を徐々に醸成していく。

トレーニングマッチ 湘南ベルマーレ0(0-1、0-1)2栃木SC @馬入ふれあい公園サッカー場

TMレポート:『前線の駒が揃う』 対福島ユナイテッドFC@栃木SC通信

2008年2月23日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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柱谷幸一監督は苦笑いを浮かべるしかなかった。

「風が強くて寒いので、きつかったですね。(試合が)やれてよかったぐらい・・・」

大田原市美原公園陸上競技場の上空をグレーの厚い雲が覆った。キックオフの13時にあわせるように鮮烈な稲光に雷鳴がとどろく。死傷者を出す恐れがあることから当然ながら試合は行えない。天候の急変により、しばしの待機を余儀なくされる。雷は止むも、続いては強い雨がピッチを叩く。30分の中断後、栃木SCは福島ユナイテッドFC(東北社会人リーグ2部南)とのトレーニングマッチ(TM)を実施するが、強風は最後まで猛威をふるった。

前半の栃木SCの並びはGK柴崎邦博、DFに左から斎藤雅也、鷲田雅一、川鍋良祐、岡田佑樹、中盤は底に落合正幸と向慎一、左ワイドに佐藤悠介、右ワイドに小林成光が入り、坂本勇一と石舘靖樹の2トップ。交代は岡田→赤井秀行(前半31分)。

上空を舞う強い風にボールは押し戻された。ゴールキックが飛ばない。ロングボールは尽く、勢いを削がれた。目標地点に達しないどころか、急降下を繰り返す。まるでミサイルに迎撃されたようだった。風下に立った栃木SCは自然の脅威と福島のラフプレー(10分過ぎに退場者を出すものの、TMが成立しないことから柱谷監督が申し出たことで11対11が継続された)によりストレスを溜め込む。思うようにボールをポゼッションができない。それでも、完成度が日増しに高まりつつある佐藤と斎藤のコンビネーションから、左サイドのスペースを有効活用してゴールへと迫る。石舘が左へ開き佐藤のアーリークロスを右の小林が右足一閃。惜しくも枠を反れるがフィニッシュまでの過程は悪くなかった。豊富な運動量とモビリティを生かして前線に顔を出した向。強烈なミドルを打ち込むも、これまた枠外へ。Pボックス内で前を向いた坂本もフリーでのシュートを決めきれず。劣悪なコンディションにもかかわらず、好機を作り出しはしたがゴールネットを揺らすまでには至らなかった。スコアレスで45分は終了。

後半のメンバーは以下の通り。GK柴崎、4バックは入江利和、照井篤、山崎透、赤井秀行、中盤はボランチに久保田勲、鴨志田誉、左ワイドに深沢幸次、右ワイドに高安亮介、2トップは前半から据え置き。交代は坂本→上野優作、石舘→松田正俊、柴崎→武田博行(いずれも後半15分)。

風上に回った栃木SCは久保田のサイドチェンジを受けた高安がドリブルで縦へと勝負。シュートは防がれるも猛攻の口火を切る。力量差があり、なおかつ有利な条件を掴めればペースが一方に傾くのは道理である。ボールへの意欲的なチャレンジ、ゴールへの高い意識から立て続けに好機をこしらえる。水戸ホーリーホックとのTMは目にしていないが、横河武蔵野FC戦よりも高安の生かし方が格段に向上していた。高安の圧倒的なスピード。遊ばせておくのは宝の持ち腐れである。

「2トップを上野と松田に代えてからボールが収まり、攻撃のカタチができた。ボールが入らない、収まらない。石舘と坂本では厳しい。起点ができなかった」(柱谷監督)

途中から負傷離脱していた上野と松田が登場すると、ゲームはワンサイドの様相を色濃くする。後半27分、手にした先制点は相手GKからのプレゼントパスを上野が冷静に流し込んだものだった。ここからゴールショーの幕開けである。再び上野がこぼれ球をプッシュして差を広げ、力んでしまい絶好機を2度も逸した深澤が今度は力を抜いたシュートをゴールに収めて3点目。最後はCKから松田がヘディングシュートを突き刺し、4-0で栃木SCが福島を退けた。

カテゴリーが2つ下の相手、殴られたような感覚を抱くほどの厄介な風に悩まされたことで「今日は参考にならない」と言いながらも、「2人(上野と松田)が30分プレーできた。岡田も30分プレーできてメンバーが揃ってきた。大宮戦(27日)はいいメンバーが組める」と、柱谷監督は怪我人が戦列に復帰し、実戦をこなせたことを成果とした。先の水戸戦で捻挫をした横山聡、リハビリ期間の長かった星大輔も来週には合流できる。ごっそりと欠けていた前線の選手が戻ってきたことで、ようやくチームビルディングの次の段階へと移れる見通しが立った。開幕へ向けてゴールをこじ開けるための策を練り上げる。

トレーニングマッチ 栃木SC4(0-0。4-0)0福島ユナイテッドFC @大田原市美原公園

<福島ユナイテッドFC>GK荒裕和、DF中原丈聖、青柳雅信、時崎悠、渡部正彰、MF藤本雄基、桑原剛、小倉大昌、広沢佑兵、間下浩延、FW岡本勇輝 *ビブスを着ていたために交代選手は把握できず*

TMレポート:対横河武蔵野FC戦@栃木SC通信

2008年2月17日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

 開幕を待ちきれないサポーターがスタジアムに集った。その数、およそ450人。2、3年前の状況を知るものには信じ難い数字である。ホーム、アウェーを問わずに駆け付けるサポーター数人が寒さに耐えながら、来るべきシーズンに思いを巡らせて静かに選手の様子をチェックする。それが、これまでシーズン前の当たり前の光景だったからである。“異常”なまでの観衆の数からは、栃木SCの認知度が高まり(サッカー熱の高い足利という土地柄も影響しているのだろうが)、注目度がより一層増したことが伺え、加えて「今年こそJへ」という期待感も伝わってきた。千葉キャンプで3試合、昨日はJ1の横浜Fマリノスとトレーニングマッチ(TM)を行ったが、全てがアウェーゲームだった。つまり、対横河武蔵野FC戦が今年初めての地元でのTMであり、新チームのお披露目となった。「たくさん見に来てくれたのでゴールを見せたかったが、残念だった」と柱谷幸一監督。ゴールを奪っての勝利を早速、届けたかったが、思うに任せなかった。

前日からほぼ総入れ替えの栃木SCは、サテライトの選手が大半を占めた。スタメンはGK武田博行、4バックは左から入江利和、山崎透、川鍋良祐、赤井秀行、中盤はボランチに久保田勲と鴨志田誉、左ワイドに深澤幸次、右に高安亮介が配され、稲葉久人と坂本勇一が2トップで起用された。交代は以下の通り。武田→柴崎邦博(後半13分)、稲葉→石舘靖樹(同)、高安→小林成光、深澤→佐藤悠介、鴨志田→向慎一(後半32分)。

「多少ピッチが緩く、風も強かったので中盤でつけるパス、奪ってからの最初のパスでミスが起き、2トップに(ボールが)収まらなかった」(柱谷監督)

核と目されている選手はベンチに控えた。相手はJFLに属する横河。アピールするには十分な時間と機会を与えられた。しかし、好機をものにできなかった。立ち上がりに何度か素早い攻守の切り替えからゴールに迫るも、次第にトーンダウンしてしまう。選手間の距離が遠いためにボールが繋がらない。前線でボールを収められないから飛び出しやサポートに行けない。ボランチからの配球も少なかった。リズムが乱れた原因である。「ボールをつけてもらってからさばくことが全然できていない。できるように徹底しないと」。久保田は組み立てを図れなかったことを悔やみ、「自分の準備不足です。イメージは出来ていても、頭が追い付かない」と反省ばかりが口をついた。横河のひとつの特長であるロングボール攻撃には一度、冷や汗をかかされてから川鍋を中心に修正ができたものの、守から攻へと移行する際に中盤で何度も引っかかる攻撃面の微修正はきかなかった。効果的だったカウンターも鳴りを潜め、時間と手間が掛かってしまう。DFラインからトップにロングフィードが入り、右の高安がドリブルで仕掛け、上げたクロスをファーサイドで稲葉が頭で合わせた絶好機も、GKに阻止されてしまった。

アタッキングサードにボールを運べているのに勝負しないで逃げてしまう。ボールは中盤から最終ラインまで下がり、結局は苦し紛れのロングボールを蹴っては拾われてばかり。その繰り返しに不満を抱いた柱谷監督からハーフタイムに指示が出る。

「アタッキングサードに入ったらクロスを上げ、トップにつけてから3列目が入っていく。ゴールに直結するプレーをしないと点は取れない。思いっきりボールを入れて行こう」

相手のDFラインに張り付いていた2トップが機転を利かせた動きをするようになり、全体の運動量が上がるとボールの循環も改善された。2度も招いてしまった窮地を辛うて脱し、FWとして石舘が投入されてからは前にボールが入り始める。起点が構築されたことで流れを手繰った。その石舘が好機を演出する。右から出したパスを中央の深澤がスルーし、後方から走り込んだ鴨志田が左からシュートを放つ。DFを完全に釣った連動したカタチからのフィニッシュだったが、間一髪でカバーされ逸機してしまう。その後もショートCKから深澤とパス交換した久保田が突っかけ、Pボックスに侵入。フリーで右足を振り抜くが精度を欠いた。枠を大きく外れる。前後半90分でゴールネットを揺らすことは叶わなかった。

「勝ちたかった。90分のチャンスをもらえたのでアピールできれば・・・」

消化不良に終わった試合をそう振り返った深澤。歯がゆさはスタメンに名を連ねた選手全員に共通する思いだろう。

スコアレスの結果よりも個々のプレーに対してフラストレーションを感じながら、柱谷監督は90分近く選手がプレーできたこと、状態の悪いピッチでプレーできたことの2点を収穫とした。前線に怪我人が多いことで攻撃面のトレーニングを積めない点はマイナスだが、守備は計算が立ち、日程も順調にこなせていることから現段階では「イメージ通り」と語った。

トレーニングマッチ 栃木SC0(0-0、0-0)横河武蔵野FC @足利市

<横河武蔵野FC>GK金子芳裕、DF小山大樹、瀬田達弘(→熊谷寛)、大澤雄樹(→西口広海)、片山育男、MF太田康介、中島健太、遠藤真仁(→常盤亮介)、野木健司(→柳沢晶)、FW長沼圭一(→岡正道)、高橋周大

TMレポート:対横浜Fマリノス戦@栃木SC通信

2008年2月16日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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横浜Fマリノス(以下、横浜)の豪奢なクラブハウス内での囲み取材に応じる柱谷幸一監督。0-3の敗戦にもかかわらず、うっすらと笑みが浮かぶ。柔和な表情に険しさは伺えない。辛辣な言葉を並べる変わりに、課題が浮き彫りになったことをむしろ喜び、「収穫」と言い切った。

「課題がいっぱい出ました。前半(横浜が)3-5-2だった。3-5-2の相手とはやっていなかったのでよかった。かなりやられましたが、(キャンプでのトレーニングマッチ)3試合は相手が強いチームではなかったので狙い通り。いいゲーム設定でした」

当初から計算通りだった。千葉キャンプでのトレーニングマッチ(TM)は肩慣らし程度。90分フル出場した選手がいなかったことが、それを物語る。キャンプ明けの一発目、「やられる相手とやりたかった」(柱谷監督)。念願叶い、J1でも上位に顔を出す横浜に胸を借りられた。噴出した課題を開幕までの残り1ヶ月で徹底して克服する。そう考えれば、結果も内容も想定内だったといえる。

向慎一も言う。

「(これまで)やってきたことをチャンレンジしないで(課題が)生まれないより、課題が出た方がいい」

マリノスタウンに乗り込んだ栃木SCの布陣は、2トップが横山聡と坂本勇一、中盤は左ワイドに佐藤悠介、右ワイドに小林成光、ボランチを落合正幸と向が務め、4バックを左から斎藤雅也、鷲田雅一、照井篤、赤井秀行が組み、GKは小針清允。

ちなみに、桑原隆新体制の横浜は3-5-2。GK榎本哲也、DF栗原勇蔵、松田直樹、田代真一、MF長谷川アーリアジャスール、兵藤慎剛、小宮山尊信、田中隼磨、水沼宏太、FWロニー、大島秀夫。東アジア選手権に参加している日本代表の山瀬功治と中沢佑二が不在ながら豪華な面子が並ぶ。

序盤、左サイドを起点に好機を演出したのは栃木SCだった。佐藤の大きなサイドチェンジとクロスから横山聡と坂本がPボックス内でボレーシュートを放った。「(斎藤)雅也からボールを運べて(佐藤)悠介からチャンスを作れた。攻撃は左サイドがよかった」と柱谷監督からもお褒めの言葉を頂戴する。が、肝心のシュートは枠外へ。逸機するとリズムは徐々に横浜へと傾き、前半20分(本稿著者の自己計測)過ぎからは防戦一方になる。ショートパスにダイレクトプレーを織り交ぜられ、後手を踏む機会が増える。当然ながらポゼッションで凌駕された。劣勢に回り、プレスが厳しくなったことで攻撃も単調になる。ボールを繋げられない。意図のないロングボールが目に付く。2トップにはストッパーが張り付いていたことで容易にボールを収められなかった。

バイタルエリアからフリーで水沼にミドルシュートを許し、続け様にCKから栗原にも完璧なヘディングシュートを打たれるも、ここはGK小針が好守で凌いだ。辛うじて窮地を脱した栃木SCであるが、30分に長谷川からのパスを受けた小宮山に左サイドをえぐられ大島にニアサイドで詰められてしまう。先制点を奪われてからは立て続けにネットを揺らされた。35分には大島のポストプレーから飛び出した水沼にドリブルシュートで追加点を献上し、38分には中央からややアンラッキーではあったが兵藤にミドルシュートを叩き込まれ、止めを刺された。下りてきた大島と小宮山に加えてボランチの一枚が絡んで形成するトライアングルに手も足も出なかったことが決壊を招いた。3失点はいずれも栃木SCの右サイドを攻略されたものだった。

後半の頭に坂本、赤井アウト、稲葉久人と高安亮介イン。水漏れしていた右サイドバックの位置に高安が入ったことで持ち直す。また、ハーフタイムに「右も真ん中もFWに入った時にルーズになる。トップ下の20番(水沼)を上手く捕まえよう。CBとボランチがちゃんとみよう」(向)と確認したことも、守備組織が幾分か安定した一因となった。

セットプレーを手にするなど攻勢に回る時間帯もあったが、前半同様に時を経るに連れて横浜がイニシアチブを握った。ロニーのシュートはポストに嫌われ難を逃れるが、ボールへのアプローチの速さに対して戸惑い、前にボールを運べない状況に然したる変化はなかった。ボールを失う恐怖が先立つのか、バックパスが多発する。川鍋良祐(照井)、久保田勲(向)、石舘靖樹(横山聡)、深澤幸次(佐藤)、鴨志田誉(小林)とフレッシュな選手がピッチに立ったことで、一時的に活性化が図られたものの、結局フィニッシュに至ったのはドリブルから深澤の一度きりだった。45分を無失点に抑えられたことよりも、圧倒的なシュート数の少なさを反省すべきだろう。両者の力量の隔たりが小さくなかったにしても。

粗ばかりが目立った試合ではあったが、柱谷監督の鷲田、斎藤、向、川鍋への評価は高く、ボールが足につかないシーンがあった落合にも「球際の強さ。サイドチェンジのボールを出すなど特長が発揮されていた」と及第点を付けた。そして、「(相手が)3-5-2だとサイドで時間が作れるので、サイドバックがプレッシャーを受けられずにボールをもらえる。(全体を)見易い。いい攻撃に入れていた」と高安を褒めちぎり、最大の収穫とした。本来のポジションからはひとつ低いサイドバックでプレーしたが、「スピードがあり、1対1の対応も出来る」と手応えを口にした。右サイドバックは故障中の攻撃的な岡田佑樹、精彩を欠いた守備的な赤井の2人により争われると目されていたが、ここにきて高安がユーティリティ性(ポリバレントは死語か?)を披露したことで混沌としてきた。一方で離脱中の松田正俊、上野優作が復帰してくれば居場所を失いかねない稲葉と坂本には、「ここ2、3試合で結果を出さなければ厳しい」と伝えている。サバイバルの様相が色濃くなった明日の対横河武蔵野FC戦(@足利市)。「ガラッと(メンバーを)代える」ことを柱谷監督は明言した。果たして、プレッシャーをかけられた選手は発奮するのか。それとも、押し潰されてしまうのか。かつ目して欲しい。

トレーニングマッチ 横浜Fマリノス3(3-0、0-0)0栃木SC @マリノスタウン

TM戦評:対ソニー仙台戦@栃木SC通信

2008年2月 9日 大塚秀毅 | | コメント(0) | トラックバック(0)

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栃木SCは千葉県市原市の市原スポレクパークで2月2日から8日間のキャンプを張った。最終日はキャンプ中に組まれたトレーニングマッチ(TM)3試合(ジェフリザーブズ、国際武道大学)の締めとなるソニー仙台と対戦した。試合形式は45分×2本だった。

1本目のスタメンはGK小針清允、DFは左から入江利和、鷲田雅一、山崎透、赤井秀行と並び、中盤はボランチに落合正幸と向慎一、左に深澤幸次、右に小林成光が配され、2トップは横山聡と稲葉久人が組んだ。交代はGKのみ。小針に代わり途中からGK柴崎邦博が入った。ちなみに、昨季まで栃木SCに所属していた谷池洋平はソニー仙台のCBの一角として出場していた。

電光石火の先制劇だった。右サイドからのスローインに好反応した向が倒されてPKを獲得。これを横山聡が豪快に突き刺す。落合がアンカーとして最終ラインの前にどっしりと構えていてくれるからこそ、向は大胆にゴール前に顔を出すことができた。ボランチのお手本のような米田兼一郎(徳島ヴォルティスへ移籍)が抜けた穴は大きいように思えたが、どうやら中心選手の1人として柱谷幸一監督が期待を寄せている落合が埋めてくれそうである。あっさりと先手を取った栃木SCだが、波に乗り切れない。攻撃陣に故障者が続出したことで攻撃のトレーニングに時間を割けたのが1、2日だったことから、コンビネーションを駆使してゴールに迫る回数は数えるほどだった。攻守が入れ替わっても動き方はぎこちなく、スペースメイキング、セカンドボールに対するサポートなど、改善する余地があるだろう。「前線のクサビの意識付けを、かなり意識的にやった。まだ、合っていない部分が結構ある。反省をして、まだ日が浅いので、これからよくなるし、よくなっていけば」とは横山聡。流れるような展開は1度だけ。入江のクサビを横山聡が落とし、ドリブルで持ち込んだ深澤がシュートを放ったシーン(GKに弾かれる)。それ以外はアタッキングサードにボールを運んでも詰まってしまう場面が散見された。

拙攻が目立ったのは事実。しかし、無理にパスを回して引っ掛かることを避けてミドル、ロングボールを多用したのは、意図的だったようだ。不出場だったものの佐藤悠介が明かしてくれた。単調に映った攻撃にも明確な意思が存在していた。仙台が4-4-2でラインを浅くしてきたこと、前線にボランチからクサビが思うように入らなかったことで、左サイドの入江のところに起点を設けた。攻略が困難なエリアを避け、サイドバックとワイドがポイントになり、一旦サイドに預けてからFWを背後へと走らせる。ポゼッションだけに固執することなく、相手のやり方に対して自分達がどうアクションを起こすのか。この日は敢えて裏を突き、DFラインを下げさせることで全体を間延びさせる戦術を採用。ある程度、サイドを利した狙い通りのカタチは作れていた。

守備陣をリードしたのは鷲田だった。仙台の執拗なロングボール攻撃にも臆することなく、強気なラインコントロールで何度もオフサイドトラップの網にかけた。常時、前線との距離感を確かめながら、コンパクトフィールドを壊さないように努めた。小刻みなライン設定、空中戦の強さ、足元の確かなスキル。頼もしいDFリーダーになってくれそうである。気掛かりは右サイドバック赤井のところ。2度も赤井のサイドから窮地を招いてしまった。一人だけの責任ではないが、ワイド、ボランチ、CBとの連携を深める必要があるだろう。試合は横山聡がプレスを掛けて奪ったボールを自らが蹴りこんで追加点を挙げ、2-0で45分は終了した。「練習試合で点を取りたい、アピールしたいと思っていたので2点取れてよかった」。横山聡は安堵の表情を浮かべていた。

2本目はGK柴崎、4バックを斎藤雅也、川鍋良祐、照井篤、赤井が形成し、ダブルボランチに久保田勲と鴨志田誉、左に深澤、右に高安亮介が入り、2トップに起用されたのは稲葉と坂本勇一。交代は柴崎→武田博行→飯田健巳、赤井→岡田佑樹、稲葉→石舘靖樹。岡田と石舘は交代した選手と同ポジションに就いた。

安易なパスミスが多発。波状攻撃を仕掛ける前に失ったボールをカウンターに繋げられる。落ち着かない試合運びも、右の久保田から稲葉→坂本→深澤とボールがピッチを横断し、最後はオーバーラップした斎藤が惜しいシュートを打ったあたりからリズムを掴み始める。この一連のプレーは綺麗だった。その後もサイドチェンジを織り交ぜながら、高安の突破力を生かした、アグレッシブな攻撃からゴールを伺う。が、シュートは枠を反れるばかり。高安が2本、坂本が1本、枠を捕らえなければならないシュートを外した。守っても全体的にプレスが緩く、仙台に攻め入られ、好機を演出されもしたが、無失点でクローズ。CKから坂本がニアサイドで競り、ルーズになったボールを再びプッシュし、1-0で2本目も栃木SCが勝利した。

トレーニングマッチ 栃木SC3(2-0、1-0)0ソニー仙台 @市原スポレクパーク